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Yamareco

記録ID: 391664
全員に公開
アルパインクライミング
道北・利尻

利尻岳南稜( + 剣岳)

1979年05月30日(水) ~ 1979年05月31日(木)
 - 拍手
Downpour その他3人
GPS
37:25
距離
16.1km
登り
1,742m
下り
1,728m

コースタイム

 5 / 30
鬼脇キャンプ場 03:15
東稜分岐 04:20
大曲 05:05 〜 05:20
P1200m 08:35 〜 08:55
P1300m 10:00 〜 10:15
大槍取付 13:25 〜 13:45
仙法師稜合流 14:45 〜 15:00
P2 15:40
P1基部BV 18:30
 5 / 31
P1基部 05:00
本峰 10:10 〜 11:50
馬の背 12:05 〜 12:15
ヤムナイ沢出合 13:30 〜 13:55
鬼脇キャンプ場 14:10
天候 晴れ(6/10のみ雨)
アクセス
利用交通機関:
電車 バス
5/26 19:08上野発急行八甲田→30:17青森着
5/27 7:20青森発十和田丸→11:20函館着 11:50函館発急行宗谷→16:30札幌着 21:20札幌発急行利尻→30:20稚内着
5/28 海上時化のため欠航、足止め。
5/29 稚内→鴛泊→鬼脇
利尻
6/1 鬼脇→鴛泊
6/2 北稜往復・鬼脇→稚内発急行利尻→
6/3 札幌発急行すずらん→
6/4 青森発急行きたぐに→
6/5 富山→室堂→真砂沢

6/10 真砂沢→阿曽原
6/11 阿曽原→欅平→富山発急行越前→
6/12 上野着
コース状況/
危険箇所等
 林道は東稜分岐まで一本道、ヘッドランプの灯りをたよりに一目散に歩く。東稜を右に分け大曲に近づく頃、あたりはようやく明けてくる。じきに砂防ダムに到着。
 砂防ダムを越えいよいよ南稜に取付く。ヤムナイ沢右岸はこの時期まだ残雪の張り付いた斜面となっているため、標高差の小さい所を選び難なく尾根へ抜ける。
 1200mピークまではところどころ灌木の突き出た広い雪野原。ピークを越えると南稜は急に痩せる。ヤムナイ沢側は崩壊が激しく、左側のマオヤニ沢を巻くようにアップダウンを繰り返し1300mピークへ。所々でフィックスロープが空中をユラユラ揺れている事から、積雪の多さが容易に想像出来る。
 1300mからハイマツを支点に懸垂下降。10m程下りテラスに至るが足元が悪く崩れやすい、なおも下降を続け大きな浮石のたまるガレ場に降り立つ。この懸垂下降、途中でピッチを切れないためロープのながれがすこぶる悪い。四名の下降に一時間、ロープが引き抜けず登り返してロープ回収、このため更に1時間かかってしまった。
 いったん1100mまで下った南稜を大槍まで一気に登り返す。大槍基部にもかぶり気味の岩を直上していく残置フィックスが揺れているが、右に回り込み大槍に迫る。リッジを越えると濡れてグズグズの草付きルンゼに入り、直上・左上と繰り返し大槍直下の稜線上に戻る。大槍は頭上に聳えているが、左方の岩場をトラバース気味に登ってしまうため、奥穂から西穂へ行く際のジャンダルム同様、直登せずに突然終わる。これまで聳えたって見えていたローソク岩も既に足下となった。
 我々は煎餅岩と呼んだが、ブロック塀状の岩を越えると左から仙法師稜と合流、正面には南稜核心部であるバットレスが圧倒的な迫力で姿を現した。付近には残置フィックスが多数有り、ルートは一目瞭然。右上するルンゼ状をフィックスに導かれリッジに戻り、大きな岩の右側へ回り込み灌木伝いにP2の頭に着く。
 この日二度目の懸垂下降はP2を2ピッチ。(P2はラダーを掛けない限り、降りたら戻れない)
1ピッチ目、P2頭の岩を支点に20m下降。両側が数百m切り立った幅20cm程の岩に、厚さ20cm程の土が乗ったリッジに降り立ち馬乗りにまたがる。傾斜のきついリッジをまたがったまま4mから5mズリ降りピッチを区切る。
2ピッチ目、下降者の負荷がかかると、支点の上に亀裂が入る細い灌木を支点とした35mの下降。下15m程は空中懸垂となるためP2P1のコルに苦労して戻る。生きた心地のしないハラハラものの空中懸垂となる。P2下降2ピッチに四名2時間40分。冬にやって来た早大山岳部はここにラダーを張って登り降りをしたと聞く。ラダーがあってもかなり難儀したはず。
 先に降りた者は、ありったけの器を使い壁からしみ出す水を集める。全員の下降が終わった頃には日も傾き始め、水のしみ出しも止まった。狭いテラスに腰を掛けビバーグ、下界の灯りと漁り火がよく見えた。西壁の落石音が一晩中轟きわたり、寒い上に極めて居心地悪し。

 翌朝残置フィックスに導かれP1登攀開始。気温が上がらないため着膨れての出発となる。
1ピッチ目、灌木につかまりながら40m這い上がる。
2ピッチ目、左方の西壁側は大きく切れ落ち、傾斜が増してくる。40m。
3ピッチ目、アンザイレン。灌木と、引くと抜ける浮き石をおさえながらボロボロのルンゼを40m左上しP1の肩へ。肩から急な草付きを下りバットレスとのコルに至る。
 バットレスを見上げると、左正面には岩質が比較的安定して見える凹角ルートがとても目立つ、こちらはかなり傾斜のある人工ルート。中央から右手にかけては岩登りとは言えない代物のグズ付いた壁が立ちふさがる。ピトンは引けば抜けてしまう、ホールドの岩も握れば抜けてしまうとんでもない代物だ。コルからそのボロボロを一段登り凹角ルートを左に分け、ボルト二本の打たれた右手のテラスに這い上がりバットレス登攀開始。
1ピッチ目、右手に残置ピトンあり、頭上を逆層のボロ壁に阻まれ一名苦戦。もう一名はテラスから微妙なバランスでやや左に3m登り(残置ピトン1)右手のチムニーに向けてトラバース、チムニー入口からロープをたらし苦戦中の一名を引き上げる。チムニーを抜けると(残置ピトン2)浮石のたまり場、逆層の壁に頭を塞がれハイ松のテラスに向けて左上する。凹角ルートと合流。40m。
2ピッチ目、垂直と感じるハイ松の生えた壁の木登り。7m。
3ピッチ目、ハイ松帯を右上し比較的堅い壁を直上、傾斜のきついボロボロのガリーを避けて左上し再度右上し大きなテラスに入る。40m。
4ピッチ目、傾斜のきついボロボロのガリーに入り直上してテラスへ。30m。
5ピッチ目、S字状ルンゼ、上部で傾斜がきつくなるがハイ松が生えているため比較的容易。バットレス登攀終了。南峰が目の前に見える。40m。
南峰は基部を東側に巻込み通過、最後の岩峰を攀じ登り本峰到達、大休止。昨年の西稜・東稜に次ぐ登頂となる。
 下降ルートは勝手知ったる東稜。上部は残雪が多くグリセードで快適に飛ばすが、下り過ぎてしまい右手上方の東稜に苦労して登り返す。このあたりはまだ傾斜がきついため稜線を忠実に下る。馬の背上部は昨年往復した頃よりも左右ともに鋭く切れ落ちており、崩壊速度はかなり早いようだ。馬の背は礼文島の右奥に樺太が見える快適な休憩地点、小休止し着膨れから解放される。電光坂付近からは熊笹の中の道となり、灌木に囲まれる頃には斜度もおち広い尾根と変わった。14時40分鬼脇キャンプ場帰幕、下降は実働時間2時間15分、ほとんど走っていた。
 冬期に向けての偵察としては、充分な成果があったと考える。しかしここほど腐ったルートは今回が初めてだ。
( 利尻南稜偵察報告書より転記 )

 翌1日鴛泊移動。2日北稜長官山まで往復し離島、強化合宿合流のため富山県へ移動開始。5日雷鳥沢経由真砂沢入山。6日源次郎尾根登攀・長次郎谷。7日Cフェース登攀・平蔵谷。8日八峰縦走・三の窓BV。9日剣尾根登攀・三の窓雪渓から真砂沢。10日仙人池経由阿曽原小屋。11日欅平下山。
ヤムナイ沢から稜線上を目指す。
2014年01月12日 18:47撮影
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1/12 18:47
ヤムナイ沢から稜線上を目指す。
南稜核心部が見えた、・・・まだ遠い。
2014年01月12日 18:46撮影
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南稜核心部が見えた、・・・まだ遠い。
P1300mを振返る。
2014年01月12日 18:47撮影
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P1300mを振返る。
左から、ローソク岩・大槍・P1バットレス
2014年01月12日 18:46撮影
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左から、ローソク岩・大槍・P1バットレス
南稜のやぶ。
2014年01月12日 18:46撮影
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南稜のやぶ。
大槍の腐った壁。
2014年01月12日 18:50撮影
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大槍の腐った壁。
P2に至るガリー。
2014年01月12日 18:50撮影
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P2に至るガリー。
P2の頭とバットレス。
2014年01月12日 18:49撮影
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P2の頭とバットレス。
P1バットレス。
2014年01月12日 18:49撮影
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P1バットレス。
P2ラッペル、1ピッチ目。
2014年01月12日 18:54撮影
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P2ラッペル、1ピッチ目。
P2ラッペル、2ピッチ目。
2014年01月12日 18:48撮影
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P2ラッペル、2ピッチ目。
バットレスから振返る仙法師稜。
2014年01月12日 18:48撮影
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バットレスから振返る仙法師稜。
バットレス登攀中。
2014年01月12日 18:45撮影
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バットレス登攀中。
南峰基部へ抜けてきた。
2014年01月12日 18:45撮影
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南峰基部へ抜けてきた。
本峰への登り。
2014年01月12日 18:47撮影
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本峰への登り。
東稜馬の背から見上げる利尻山頂部。
2014年01月12日 18:44撮影
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東稜馬の背から見上げる利尻山頂部。
南峰・本峰をバックに小休止。
2014年01月12日 18:43撮影
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南峰・本峰をバックに小休止。
鬼脇からトレースを振返る。
2014年01月12日 18:43撮影
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鬼脇からトレースを振返る。

感想

 冬期トレースの偵察が目的でやってはきたけれど、これほど腐ったルートをたどるのは初めてだった。
しかし成果は充分得られ、この年12月には北稜往復後東北稜から北稜。2月から3月にかけては東北稜・東稜・南稜の3ルートに分散した合宿を行う事が出来た。三年に渡った利尻計画はこれにて終了。
 それから三十数年たった今、当時の報告書を懐かしむ。私にとってのエポック・メイクであったなあ。

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