那須 朝日岳
- GPS
- 03:29
- 距離
- 5.4km
- 登り
- 437m
- 下り
- 446m
コースタイム
- 山行
- 1:53
- 休憩
- 0:07
- 合計
- 2:00
天候 | 1日目:快晴 2日目:暴風雨 |
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過去天気図(気象庁) | 2022年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
朝日岳はいわゆる難しくはないけど危険な山です。滑落死しそうな崖があちこち口をあけています。踏み跡が割りと明瞭に残っていて、危険箇所には鎖やステップが整備されていますのでうまく使って丁寧に歩きます。 那須は強風で知られており、風で飛ばされて滑落という事故も起きているそうなので用心します。 |
その他周辺情報 | 那須は立ち寄り湯が豊富です。今回は鹿の湯を使いました。8時開店から駐車場はほとんど満車状態でした。 |
写真
装備
備考 | 雨具上下 ダウン上下 目出し帽 ミトン オーバーグローブ シュラフカバー ツェルト オーバーグローブ ゴーグル ヘッドランプ スマホGPS 水 行動食 |
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感想
ビバークは厳しいけど生きてる実感を得られる。銀河も拝めて再開の登山は好い体験となった。
ーーー以下 自分のためのメモーーー
■山で寝たい
最近のキャンプブームに刺激されてか、無性に野宿したくなった。最後の野宿は2017年の12月、最後のビバークは2017年9月だからもう5年も野宿してない。別の山を目指したり、台風で奥多摩の登山道が荒れて入山規制がかかったり、コロナがあったりと、地元以外の山に行くことがまるきりなくなってしまったからだ。
地元の山でも野宿できないことはないが、地元奥久慈の山でやりたいことはどちらかというと日帰り登山でできることが多かったから、野宿やビバークを伴う登山からはすっかりご無沙汰だったのだ。
金曜日に郡山に出張だからその帰りに那須岳でビバークしよう。朝日岳山頂直下なら落石もないしという安易な気持ちで有頂天になり、いそいそと準備を整えて(?)仕事に出かけた。仕事のあと、ショッピングモールの駐車場で背広から山服に着替え、夜道を那須高原へ車を走らせた。
■天の川
峠の茶屋駐車場についたのは20時。車を降りて空にかかる銀河に歓声を上げてしまった。最近視力ががた落ちだから、もう銀河は見えないと思っていた。星が見えるとわかっていたら、星座をおさらいして来ればよかったと後悔しながら登山を開始した。トイレの建物が新しくなり、避難小屋のようなものまで併設していて驚いた。
■ゆっくり登ろう
山歩き自体が8月以来やってない。それどころかトレーニングも1ヶ月以上休んできた。トレーニングで膝だのひじだのに痛みが出てきたから、まずは運動を休んで痛みが抜けるのを待っていたのだ。今日は復帰第1戦。朝日岳までの登りはごつごつの岩場だけれども急でもないし距離も短い。時間はたっぷりあるのだから、足取りと身体の反応を確かめながら一歩一歩歩けばいいのだ。
久しぶりの斜面が心地よい。ヘッドランプの明かりを頼りに登山道を登っていくのも心地よい。見上げればいつでも銀河を拝むことができる。風も疲れをいやす程度の微風しか吹いていないから、登山道を歩く楽しそうな靴音が良く聞こえる。あっという間に峰の茶屋避難小屋までやってきた。那須高原方面を見ると夜景と銀河が同時に楽しめて愉快だ。
避難小屋の中からは薄明かりが漏れている。顔を出したい気持ちは山々だが、もう眠っているかもしれない。安眠妨害したらいけないなと思ってスルーした。もっとも、もし小屋の中に人がいたら、夜中に靴音がして小屋の周りを回る音がして、こんな時間に誰だろうと思っても誰も入ってこないんですよ、という怪談パターンだったかもしれない。
避難小屋から山頂までは滑落注意箇所。手すりも鎖も使いまくり、足許を一歩一歩確かめつつ登っていく。夜間登山では手すりつきの滑りやすいトラバースよりも、むしろ幅の広いざれ気味の斜面をルートファインディングしていくことのほうが難しかった。視界が開けていればどうということがないところだが、ルートを外れれば滑落必須の急斜面がある。2014年の11月に来たときには下山時ここが真っ白の吹き溜まりになっていてどこに降りていいのかよくわからなかったときがあったな、などと快走登山を楽しみ見つつ朝日の肩にたどり着いた。
肩から山頂までは一瞬だと思っていたが、一瞬というよりはもう少し歩いたか。背の低い潅木帯にたどり着くまでが記憶していたよりも長いな。潅木帯の地面がキラキラ輝いていたのは霜が降り始めたのかな。そんなことを考えているうちに、今晩のお宿、山頂標識に到着した。
■静かに就寝
どこに寝るか。もし夜中に強風が吹いた場合、避けるならば南側だが、南側は狭い上に崖になっている。セルフビレイするものは何も持っていないから、寝返りを打っても死なないように十分広いところにしようというわけで、山頂標識のそばの岩陰を寝床にすることにした。おにぎりをひとつ食べて、寝床を準備した。
宿泊準備はいたって単純、ダウン上下、雨具上下を着込み、目出し帽をかぶり、ミトンにオーバーグローブをはめ、雨具のフードを目深にかぶり、靴を履いたまま身体をシュラフカバーに突っ込んでツェルトを身体に巻くだけだ。気温が低い場合にはさらにゴーグルをはめて皮膚の露出を防ぐつもりだったが、そこまでする必要はなさそうだ。
これでヘルメットがあれば、岩稜がどこでも枕になるのだが、今晩はザックを枕代わりに決めていたので持ってこなかった。しかしいざ使ってみると高さが合わなかったので結局適当な石が枕になった。通常は痛くて枕にならないのだがうまくあったのは自分が石頭になったからだろうか。
何かが足りないと思っていたら、銀マットを担いでこなかった。最後の野宿では銀マットも使わなかったからだろう。岩稜で銀マットなしは結構寒い。今夜は冷えそうだ。当然地面に接触している背中や肩が冷え込むので、寝返りを打ちながら朝を待つというのがいつものパターン。
靴を履いたまま寝たのに、思いのほか靴の中の足が冷えた。今までのビバークや野宿で足が冷えたことはなかったので意外だった。
いつもの野宿のパターンは、眠くてたまらないからひと眠りして疲労を回復するというものだが、今回は目がさえて眠気が襲ってこない。久しぶりの野宿に興奮しているのか。何度もツェルトから顔を出して星を見た。茶臼岳のほうにオリオンが出ていたのか。カシオペアは銀河の中に輝いていた。
■天候悪化
何べん目かの銀河鑑賞で、星の見え具合が悪くなったことに気がついた。これは雲が出てきたかと起き上がると下郷方面の山が雲に覆われ始めている。
かぶっているツェルトがばたばた言いはじめた。星はあっという間に見えなくなった。それでも眠れればいいのだが、ツェルトの音がうるさくて眠れない。しかも久しぶりのビバークだからツェルトに身体をうまくくるむことができない。このまま風が強くなったらツェルトを持っていかれるかもしれないと思ったので、ツェルトをザックに押し込んでしまった。
ありがたいことにシュラフカバーはマミー型なのでこれだけで前進を覆い隠すことができる。頭部を屋根のようにかぶり、すっぽりシュラフカバーに包まって眠ろうとした。風が結構強くなってきたようだ。那須名物の強風がやってきたのだろうか。岩陰で地面に貼り付いているとそこまでの強風ではないが、身体を起こすと、立ち続けていることが辛いほどに吹いていることがわかったので、あわててシュラフカバーをかぶりなおした。
やがて、包まっているシュラフカバーを砂粒が叩くような音が聞こえ始めた。もしかして雪が降り始めたのか。もう11月間近だから雪になってもおかしくはないよなと思いながら恐る恐る顔を出す。シュラフカバーに雪がついてはいなかった。とりあえず雪ではないということで安心して再び引っ込んだ。
■寒さ対策
足が寒い。シュラフカバーには靴を履いたままもぐりこんでいるのにどうしたのだろう。通常のハイキングシューズだとここまで冷えるのか。上半身が地面に触れて冷えるのは知っているし、寝返りを打てば解消するのだが足の冷えるのはどうしようもない。
このまま冷えた状態を続けて、凍傷にでもなったらいやだと考えて(実際には気温は凍傷を懸念するほど低くなかったと思う。雪が降ったわけでもないので)、シュラフカバーから身体を出して足踏み運動、軽い腕立て伏せなどをして身体を温めてみた。
靴を脱いで足の指をもんでみた。確かに寒いけれども指をつまんだ感触はしっかりある。痛くなったり、無感覚になったりはしていない。これならばしんどいけれども大丈夫だろう。
加藤文太郎の「単独行」で登山中に川に落ちてズボンを濡らしてしまい、座ると冷たいので一晩岩屋で立ったまま過ごしたなどと書いてあったことを思い出した。横になって目をつぶれることはなんとも有難いことよ。
夜通しヘッドランプなしで過ごして、目が暗さに慣れてきたのだろうか、町の明かりも、星明りもないのに完全な闇にはならなかった。ヘッドランプなしでも何とか朝日岳の山頂標識を読むことができた。人間の視覚の鋭さと、自分の夜目がまだ利くことを確認して、少しうれしかった。
寒さ対策の運動は多少眠気を催すことにも役立ったようだ。いつどのようにどれだけ眠ったかはわからないのだが、多少は眠ることができたと思う。
■朝が来た
どのくらい経ったかわからない。闇夜のガスの中に白いものが走り始めた。まずい、稲妻が走り始めた。山での雷は斜面に沿うという。自分は山での雷は全く経験していない。雷鳴などは聞こえていなが、これからさらに悪くなるのかと心配していたら、ヘッドランプだった。
とりあえず「こんにちは」と声をかけて自分が生きていることを相手にわからせてから、「今何時ですか」と尋ねてしまった。「えっと、4時半です」「ずっといらっしゃったんですか?」「ええ、昨日の10時から」短い会話を交わした。
どうやらご来光狙いの方らしい。東側の斜面のほうへ移られた。自分が風除けの場所にしたかったが寝場所には危険だと思ってやめたところだ。日の出まで強風を避けて待機するにはいい場所だと思う。
程なくして二人目、三人目と登山者が登ってきた。そろそろ自分も起きることにしよう。シュラフカバーをザックの中に突っ込む。ザックがぐっしょり濡れていることにこのとき初めて気がついた。
雨とガスと闇の中、シュラフカバーから出てじっとしているのは寒いので、夜中にやった足踏み運動をして、とりあえず足だけでもほぐして今日の山行に備えた。
ビバーク中には吹いていた強い風も和らいできたが、ガスは相変わらずひどい。ご来光組の登山者たちも一人降り、二人降りして、再び自分ひとりになった。身体もほぐれていたし、自分も動き始めることにしよう。ザックからチョコレートを出して一粒口に入れる。チョコレートはこんなにおいしいものだったか。ちょっと元気を増して歩き始めた。
■下山
朝日の肩まで来た。当初の予定では三本槍岳まで行く予定だったが、清水平方面は完全にガスの中。GPSがある今日ではガスでもひどい道迷いはしないだろうがやはり気持ちが悪い。風雨のビバークでそれなりに消耗しているし、何よりも今日は登山復帰トレーニングの初日だ。もっと長く歩くのは次の機会にしようと決めて降りることにした。
ガスの中岩の立ち並ぶ斜面を見ていると、異なる星にでも来た様な気分になり愉快だ。ガスの向こうに微かに見える恵比寿大黒が岩の大ボスだ。
避難小屋に寄った。登山者が何人も集まって登山談義はいつもの光景だ。空いているスペースを使ってダウン上下を脱ぎ、身軽になろうダウンをしまうビニール袋がザックのそこにもぐっていたようで、取り出すには濡れて泥んこのシュラフカバーとツェルトを狭い小屋の中で広げなければならないことがわかり、諦めた。着ていて暑いということはなかったので、あと一息歩いてしまおう。
左手に朝日だけを感じながら下山した。本来ならここで明礬沢越しに朝日東南稜の険しい岩肌。鬼面山の名前に反して優美な稜線に血を躍らせることができるのだが、あと一息ガスが晴れない。時折見通しが良くなると、草紅葉の名残がまだ感じられるので、もう一息晴れてくれと願うも、かなえられなかった。天候はどんどん回復傾向にあるから、これから登り始める登山者は絶景を楽しむことができるだろう。
登山口まで降りてきた。鳥居で手を合わせて、快適な登山と久しぶりのビバークを厳しいながらも楽しく乗り切れたことを感謝した。その後、トイレの建物の方向へ降り損ねて古い売店方面へ出てしまった。お手洗いとザックの荷物の整理をしに引き返そうとしたら、ちょうどトイレの建物の上にくっきりと虹が出ていた。今日はお天気になりそうだ。
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