試練と憧れ 剱岳(早月尾根日帰り)
- GPS
- 14:43
- 距離
- 19.2km
- 登り
- 2,587m
- 下り
- 2,701m
コースタイム
- 山行
- 12:48
- 休憩
- 2:19
- 合計
- 15:07
天候 | 晴れ予報でしたが山頂は曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2022年11月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
上部は冬装備が必須な季節になりました。 |
写真
感想
夏から秋にかけての3連休のどこかで剱岳の源次郎尾根に行く予定をしていたのですが、台風やら荒天やらですべて行けなくなってしまいました。でもずっと剱の天気予報を見たりしていたので、どうしても一度は行きたくなってしまい、早月尾根日帰りなら行けるかと、この週末にチャレンジすることにしました。
あと、自分の山行記録なのでいろいろ赤裸々に書くつもりですが、決してマウントを取ろうだとかは思っていないので、その点を記しておきます。
朝5時ごろ、無事に番場島荘前の公共駐車場に到着。時節柄、外は真っ暗です。ぼちぼち食事してザックの内容物を確認し、出発の準備を整えておりました。駐車場には数台停まっていましたが、フロントガラスの氷結具合からして今朝到着した様子ではなかったので、前を歩いている人はいないかななんて考えていました。そのとき、もう一台の車がやってきました。おお、試練と憧れへの挑戦者がほかにもいらっしゃいましたか。
お互い挨拶をし、とりあえず明るくなってくるまでご一緒しましょうかとのことになり、準備が整ったところで出発。試練と憧れの石碑にあいさつし、早月尾根に取り付きました。何年ぶりだろう?体力は大丈夫かな?今は便利なもので、事前に情報が集められたので、しっかり雪の対策もして出発することができました。いろいろ情報を提供してくださっていた方々に感謝です。
取り付きからしっかり登りです(^^;)。駐車場では6度ほどでしたが、すぐに暑くなってきました。天気予報では山頂はマイナス12度ほどでしたのでちょっと厚着だったかな。まあ脱いだらいいや。幸い風が弱いので助かります。が、もうちょっと吹いてほしいと思うほどすぐに汗が噴き出してきました。徐々に空に明かりがさしてくると、ヘッデンを外して進みます。
ちょっと開けたところに出ると、正面に大窓がどどんと見えます。おお、剱にやってきたという実感がしてきます。右には大日岳、左には小窓尾根が見え、とても贅沢な気持ちになります。自分が剱にいる。この先は大変な登りだということを忘れてしまいそうです。明るくなってくると、振り返れば日本海まで見えました。
今日の天気は先週の予報ではこの飛び石連休の中では一番良かったのですが、直前にちょっと変わっていました。とはいえ午後のほうが良いようだったので、山頂の眺望にも期待です。ちなみに一緒に歩いていた方、私が結構ファストハイクなのでそのうち別行動になるだろうと思っていたのですが、同じようなペースで歩いて来られます。なので付かず離れずのようになり、そのうち同行するようになっていきました。
順調に高度を上げていき、最初のほうの巨木なども気が付けばなくなってきます。そのうち笹に雪が乗るようになり、だんだん世界が白くなってきました。ただ、早月は西側にあるのでなかなか太陽の光は届きませんね。ようやく光がさすと、寝不足だった頭がすっきりしてきます。やっぱり太陽の光はありがたいものです。山頂はまだまだ見えませんが、ひたすら尾根を登っていきます。
200メートルごとの標識に都度達成感を感じつつ、やっと早月小屋に到着。ここで少し補給を入れ、この先に備えてアイゼンとヘルメットを装着することにしました。ちょっと早いかなとも思いましたが、この辺りですでに雪が付いているところが多かったことと、先でゆっくり装着できるような場所があるかわからなかったので、装備していくことに。まあ結果これでよかったと思います。雪の上に足跡がなかったので、昨日ある程度降ったと思われましたので。
しかしこの季節の雪は石の上にふわっと載っているだけなので歩きにくいこと(^^;)。植生も這松に代わると、雷鳥に期待してしまいます。最近はキツネにやられることが多いとも聞いていますが、できれば遭遇したいですね。そしていよいよ岩稜エリアがやってきました。まずは有名な鎖がかけられた岩。ルートは2本あります。シングルトラックだと渋滞が起こるので、こういうのはとてもありがたいです(^^)。とはいえ早月で渋滞なんて起こるのかな?小屋が営業している季節だと起こるのかもしれませんね。今日は今のところ前にも後にも人を見ていませんが。もっとも、トレースがないので前にはいらっしゃらないはず。遭遇したらびっくりするだろうなぁ。ここでポールからピッケルに持ち替えました。
だんだんと新雪も深くなってきました。同行の方はアイゼンが苦手なのかちょっと待つことが増えてきましたが、ここまで来て別行動もなんだか気が引けるので、そのまま一緒に行くことに。そうして、ようやく剱岳まであと0.7キロという看板に到着。あと0.7キロというと、普通の山ならビクトリーロードみたいに思いますが、剱はここからが本番ですね。やってきました、鎖エリア。
一昨日に登られた方が鎖を掘り出してくれたはずなのですが、しっかり埋まっています(^^;)。基本的に鎖は補助的に使うものとは思っていますが、岩が完全に覆われているようなところでは積極的に使わせていただきます。なんせ、手も足も見えないですから。鎖のない場所で急なところはピッケルで登っていきます。なんて便利な道具でしょう(^^)。トレースのない新雪なので時折ルートファインディングに迷うこともありますが、そんなときは岩への丸印がありがたいです。存分に使わせていただきました。
そしてカニのはさみに到着。積雪のおかげか、さほど高度感は感じませんでした。そしてここからも鎖場が続いていきます。埋まっている鎖は掘り出して雪を飛ばし、露出している鎖は氷が付いているのでそぎ落としながら滑らないように注意して進みます。今日は防寒テムレスでしたが、もうちょっと分厚い手袋のほうがよかったかな(^^;)。まあ運動量が多いので、指が冷え切るということもなく耐えられそうです。
やがて連続する鎖場が現れました。これだけ続くとルーファイは楽です(^^)。が、しんどいことはしんどい(^^;)。この激登りはいつまで続くんやろ。頂上手前までとはわかってますけどね(笑)。しかし同行の方が顕著に遅れ始めました。多分この鎖場、怖いんだろうな。表情にも言葉にも出てますし。さりとてここまで来てから別行動なんてできるだろうか。もし撤退となったら一緒に撤退なのか。初対面の人なのに。でもここまでの鎖場を一人で引き返させるなんて、それこそできないわ。
そういえば若い頃、私も山で諸先輩方にいろいろ教わったものでした。今では携帯もあるので何かあれば警察へ連絡できますが、要救護者をザックを使って担ぐ方法やら教わったことを思い出します。そういったことも順番ですもんね。腹を決めたら遠慮を捨てていろいろ話しかけながらとりあえず登りを再開しました。
しかしながら時間も過ぎていきます。登頂予定時間を大幅に過ぎてしまっているので、自分としてもいろいろ決断を迫られます。そしていよいよ「撤退する?」と声をかけると、本人も決めきれないようでしたので、「もうちょっと行こうか」と言って進むことに。できるだけ登りを見てもらえるようにゆっくり行くも、気が付けば振り返っても姿が見えず。追いついて来られたとき、もしかしたら一人で撤退させられると思ったのか「これを降りていけるのかな」と不安そうな言葉をつぶやかれました。こんな時は気持ちも大事です。笑って「大丈夫!私との山行では絶対に死なせない!」と声をかけると、笑顔が戻られました。このとき、一緒にヘッデン下山が決定しました(笑)。
地図上ではそろそろ山頂直下のはず。次のピークをよく見ると、道標らしきものがうっすら見えます。しかし偽ピークだった場合、ショックも大きくなります。また少し登った先で、確信しました。間違いない、別山尾根分岐の道標でした。「もう頂上だよ!」声をかけて登ります。それは確かに道標でした。ここまで来ればもう登りは終わったも同然。そこからほどなく、ガスの中から山頂の祠の裏側が見えてきました。着いた。剱の山頂に到着できました。
山頂で握手を求めると、がっつりハグされました(^^)。やっと着いたぜ〜。感動!いっぱい写真を撮りますが、眺望がないので祠のみ(^^;)。それでも充実感がたまらない。周辺を見渡しても足跡がないので、今日は別山尾根からの登山者もいらっしゃらないようです。ということは今日の登頂は我々のみか。であればと一節披露後、名残惜しいですが、体が冷えないうちに下山の途に就くことにします。
さっき登ったばかりの鎖場を下っていきますが、付けたばかりの自分のトレースがあるので気分的に楽です。とても0.7キロとは思えない0.7キロの看板まで降りると、もう危険個所も少ないのでほっこりします。
とはいえ登山口はまだまだ先なので、なるべく明るいうちに高度を下げるべく下山を続けます。その道すがら「よく頑張りましたね」と声を掛けますと、「あのとき撤退していても下山で死ぬかもしれないと思っていました。であれば、どうせなら登り切ってから死んだほうがいいと思いました」とのこと。おお、熱いじゃない(^^)!なんか、今日の一日で戦友になった気分です。
やっとのことで早月小屋まで帰還。ここで安全装備を外すとぐっと歩きやすくなります。今日はここで2パーティーが幕営されるようです。明日は間違いない天気のようなので、ちょっとうらやましい。良いご山行を願っております。軽く補給しながらそのうちの1パーティーのメンバーさんといろいろ話をさせていただきました。これからテントで宴会なのがうらやましいわ〜。
さて、荷物をまとめてヘッデンをいつでも出せるようにすると、番場島へ向けて下山です。まだまだ長いな(^^;)。急登もしんどいけど、その下りもしんどいぜ。登りと同じような汗をかきながら下っていきます。とはいえあとは時間をかければいいだけです。雲海がとてもきれいに見えます。その雲海の色もだんだんと赤みを帯びていき、やがてきれいな夕焼けになりました。山で夕焼けを見るなんてやっちゃいけないんだろうけど、しっかり日没後行動の装備もあるし、暗闇でも単独でないというのは心強い。
気が付けば真っ暗に。ヘッデンを頼りに進みますが、夜露が付き始めた木の根が滑ること(^^;)。10分ごとに聞こえるヤマレコの現在高度のお知らせを唯一の楽しみにしながら高度を下げていきます。やっと道が緩やかになったということは松尾平あたりかな。ヘッデンが暗くなってきたので予備に交換。だんだん川の音が大きくなってきました。そしていよいよ番場島の明かりが見えました。早月尾根、終了。無事下山です。「試練と憧れ」、無事に達成できました。
せっかくなので連絡先を交換し、あとでお互いの写真を交換しましょうとのことに。さてさて、これで終わりではなく、ここから長いドライブが待っています(^^;)。山は終わりましたが、無事に家まで帰るまでが登山です。安全運転を心がけます。今日もありがとうございました。剱岳、私にとっては日本一です。
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する