【山岳医療パトロール】伯耆大山
- GPS
- 06:49
- 距離
- 7.8km
- 登り
- 1,003m
- 下り
- 992m
コースタイム
- 山行
- 4:48
- 休憩
- 1:58
- 合計
- 6:46
天候 | 曇のち雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2022年11月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
https://goo.gl/maps/s3TukM5MrtsSevt58 |
コース状況/ 危険箇所等 |
夏山登山道:階段。比較的なだらかで登りやすい分、下りやすい。下りルートでの使用を推奨している。 行者登山道:結構急な下りで、谷底の道も少しわかりにくい。大山寺や大山神社の散瞳を通るので、ご挨拶の意味も込めて登りルートでの使用を推奨している。 |
その他周辺情報 | mont-bellがある。 |
写真
感想
7月から足掛け5ヶ月間続けてきた、今年の夏山シーズンの山岳医療活動。
その締めくくりとなる今回は、鳥取の伯耆大山の山岳医療パトロールに参加しました。
この活動は、私が主として活動している北岳の山岳医療ボランティアに研修という形で来てくださったDrが主宰していて、交換研修、というわけではないけれど、私も別の山域の活動を体験したい、という思いがあり、この度参加する機会をいただきました。
山岳医療という分野は、他分野同様に、いや、それ以上に中央集権的で、地方での活動ステージは限られてしまっているのが実態です。
数年前、私がその分野の存在を知ったばかりの頃に山の診療所で知り合ったある山岳看護師も、日本アルプスから遠く離れた地域に在住していて、研修やら講習やらに行くのも、毎回遥々10数時間もかけて高速バスとかで出掛けていました。
今回の活動の場所は、それに比べるとだいぶ近い場所だったので、共に活動することができました。
紅葉全盛ということもあり、雨にも関わらず多くの登山者が訪れていました。
もっともよく歩かれる「夏山登山道」は、木段がきれいに整備され、六合目の避難小屋まで歩きやすいルートですが、そこから先は一層急登となり、尾根に乗ることもあって、悪天候の影響を受けやすく、雨の日に軽装備だとかなり寒くなります。
八合目を過ぎると傾斜がゆるくなりますが、森林限界を超えるため、風が強くなり、一気に気温が下がって体力を消耗します。
見かける登山者の方々の装備はまちまちで、きちんとした雨具や靴を履き、肌着の替えも持参する方から、スニーカーに踝までの短い靴下、雨具はポンチョ、という方まで、いろいろな方がおられます。
晴れの日であれば、それでも問題にならないことが多いですが、天候が崩れると、装備の良し悪しの影響が出やすいです。実際に、頂上避難小屋では、疲労と低体温で動けなくなりかけた方がおられました。
そういうときは、
・休む前にまず乾いた服に着替える!
・温かい飲み物を飲む!
・食べ物をしっかり食べる!
・ゆっくり休む!
ようにしましょう。
先に休んでしまうと、体が冷えて余計に状況が悪くなることがあります。
山の装備にはお金がかかります。
けれど、とにかく絶対に手を抜いてはいけないのは、足元と肌着とレインギアです。
コップは100均のプラスティックのものでもいいですが、街で履くようなスニーカーでは足元が不安定で滑りますし、綿のシャツではひとたび濡れると乾きません。また、ポンチョは防水性は高くても通気性が全く無いので、蒸れて結局中から濡れます。
工夫をすることでお金を節約する方法は沢山ありますが、それはまず必要なものとそうでないものを見分けられることが優先です。
=====
さて、伯耆大山は西日本を代表する山です。
かつて、昭和50年代後半頃には植生が破壊され、その山頂は丸裸となりました。その結果、山の保水力が喪失し、雨水によって頂上稜線付近を中心に侵食され、山が崩れていきました。
昔は縦走されていた最高標高点の剣ヶ峰(1,729m)は、崩落が進んだために通行禁止となっています。
そういった状況を危惧した地元有志の方々が、1985年(昭和60年)に頂上を保護する取り組みをしようと、「大山の頂上を保護する会」を結成し、登山者に「一木一石運動」を呼びかけました。これは、崩れて麓まで落ちていった石を、麓の南光河原駐車場に集積してそれを登山者に山頂まで上げてもらい、侵食溝を埋めたり、植物の苗を植えたり、登山道を木道で保護したりすることで、大山山頂を崩落から守ろうという取り組みです。
https://tourismdaisen.com/climb/9/
そんな大山は、同時に信仰の山であり、開山から1300年が経ちます。
総本山である大山寺の表参道から大神山神社奥宮を通る登山道を「行者コース」と言いますが、大山観光協会は信仰の山に入るからには、表参道から入ってほしいと呼びかけています。「夏山登山道」から登って「行者コース」から降りる方も多いようですが、「行者コース」は急なので下りでは危険が伴い、パトロール事案でもこの場所で発生することが多いそうです。
人間は、重力に逆らうことは得意ですが、重力を味方につけることはそれほど得意ではありません。重力を味方にするには、膝がカックンとならないよう踏ん張らなければならないのですが、地面を押し返すよりも、膝カックンを防ぐために踏ん張るほうが筋力を消耗するし、関節を痛めやすいのです。
そういう観点からも、「行者コース」から登り、「夏山登山道」から降りるほうがより安全かと思います。
そして、表参道で大山の歴史に触れてからお山に入るのは、実に趣深いのではないかと思います。
大山の表参道にある「とやま旅館」が、山岳医療パトロールの拠点です。主宰のDrがこの活動を持ちかけた時に、まっさきに協力の手を上げたのが「とやま旅館」のご主人だったそうです。実際に、今回の活動後にお風呂に入れさせていただいたり、大山の山岳救助の実態や「一木一石運動」に関する話を聞かせていただいたりと、大山愛溢れる方でした。
主宰のDrが常日頃から仰っているのは、「地元の関係者と救助関係者が自分たちに何を望んでいるか」ということです。私が普段活動している南アルプスの北岳や尾白川、日向山、八ヶ岳の編笠山でも、それは同様のことが言えます。
いろいろな方とお話をし、改めて原点に立ち返ることを学んだ、今回の遠征でした。
山岳医療活動の締めくくりに来られて本当に良かったです。
関係者の皆様、登山愛好者の皆様、ありがとうございました。
地図
https://yamap.com/maps/36/trails
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