【裏木曽】天狗岩(1824m)
- GPS
- 10:27
- 距離
- 26.1km
- 登り
- 1,572m
- 下り
- 1,564m
コースタイム
- 山行
- 10:28
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 10:28
「天狗岩」の記録を昔の裏木曽のガイド・ブックに見つけた。この山が登山のガイド本で取り上げている自体に驚いた。まさか、という感じだ。ルートに関しては概念図レベル。あとは文字による解説。しかし、そのルート説明は客観的にみえながら、どうとでも取れた。
普段は、SNSの過去レコはググらないようにしている。もちろん、現地へのアクセスとか、登山道の通行止め情報は例外だけど。
だが、今回に限っては、妙に気になってググってみた。だが、さすがに「天狗岩」のレコは見当たらなかった。探し方が悪いのかもしれない。唯一、個人のブログが一件ヒット。でも、ルート図や画像は一切なく、テキスト情報だけだった。
でも、記録らしい記録のない登山は、スリリングで楽しい。未知数の多い登山は、個人の独創性と判断力が試されるからだ。
過去天気図(気象庁) | 2022年12月の天気図 |
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アクセス |
写真
感想
<ルートをどう引くか>
車が冬季ゲートで止められるのは織り込みズミ。チャリで突っ込む。途中、カモシカに遊んでもらう。ルートは井出ノ小路山の登路とかぶる。冬季ゲート(標高640m)から近江平橋(標高1230m)までは標高差590mに及ぶ。単純計算でビル197階までチャリを上げることになる。
出水林道分岐から道が荒れてきた。適当なところ(標高1070m・ビル143階分)でチャリをデポ。
スタート地点の近江平橋は橋名板が剥がれ落ちていた。計画を立てた段階で心配していたのは、この沢筋がルートとして適切かどうかだった。
かつて、井出ノ小路山に登った時のこと。一般的なルートは本流の右俣。私は記録にない左俣を辿るつもりだった。ところが、いざ現地に着いてみると、その左俣はたっぷり水をたたえていた。やむなく一般的なルートの右俣を使わざるを得なかった。
そんなわけで、今回も「近江平橋」から入渓する沢筋の水量が予想を超えていれば、今回の天狗岩の攻略計画は、ガラガラ音を立てて崩れてしまう。
<沢筋から攻める>
ドキドキしながら現地に立った。心配には及ばなかった。けれども、傾斜の立った沢筋には岩塊が詰まっていて、緊張感が走った。
予定では、標高1360mで右俣に入る。行動中は、地図を見なくても、右俣を選ぶのは簡単そうだった。地図に水線を入れてみると、ここに至る前に大きな分岐はなかったからだ。しかも、右俣は集水域が広く、水流があるなら出合は2:5と予想していた。
ところが、どこまで登っても分岐らしい分岐はなく、沢筋は急斜面に飲み込まれていく。空はどこまでも青く高く、稜線はどこまでも緑の堤とそびえ立っていた。
1610m地点で、左俣をトレースしていることに気がついた。予定を捨てて、そのまま登り詰めることも考えた。だが、右俣に比べてヤブ漕ぎが長くなるリスクがあった。
さて、どうする。余計なヤブ漕ぎを覚悟して、左俣にトラバースする手が頭に浮かんだ。そのためには、両俣を隔てる尾根を登らないといけない。けれども、思いのほかヤブが濃い。やむなく、右俣までトラバースすることにした。
右俣は左俣と違って、樹林下のコケむした渋い登りだった。最後は、凹地のササを分けて支根に登りついた。王滝側の景色がのぞく。一安心?いや、とんでもない。ここから仰ぐヤブの高みは遥か見上げる位置だった。山頂との標高差は100mちょっとなのに、この高度感はなんだ。
<ヤブの向こうに>
気を取り直してヤブを漕ぐが、はかどらない。獣目線で針路を探る。ヤブの薄い部分を見つけても、すぐに激ヤブに飲み込まれる。
急斜面のヤブにはギャップがあって、厄介だった。時間との戦い。気の遠くなる頃、ようやく左から枝尾根が合流してきた。同時に斜度がゆるむ。雪を踏んで山頂を求める。そして叫んだ。山頂だ!!
何もなかった、山頂にはホントに何もなかった。シャクナゲやコメツガ、ヒノキの切り拓きにひっそりと三角点が埋まっている。一年のうち一体何人がこの三角点を目にするのだろう。夕森山がすぐそば。その遠景に、付知川と白川を隔てる山並みが並んでいた。
下山は三つのルートを検討した。〆庫鵑慮仔に降りる⇔硝鵑龍界尾根を降りる1λ鵑愃巴撒離で降りる、の3つ。´△牢箴譴両紊卜った時のルート選択に困る可能性があった。,浪椎柔はあるが、△魏執瀟に選択するのは不確定要素が多かった。時間を見ながら、結局は安全策のを選んだ。
樹林下を使って1300mまで下降。雨裂に阻まれ、ここで登って来たルートに合流した。雪のついた白い近江平橋が見えた時には、ほっと胸をなでおろした。近江平橋で息を整える。
達成感に包まれて快適なダウンヒル。笑みがこぼれる。風になった気がした。
コメント
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藪の急登の中、天狗岩に登られていたとは流石です。
自分ならスラブ帯で間違いなく引き返してます!っとゆうか、恐れ多くて天狗岩を目指す事もないと思います。
1つ質問があるのですが、地形図に水線を引かれたようでしたが、どの様にして沢筋を見分けられるのでしょうか?
やはり地形図から読み取るものなのでしょうか?
とても気になったので厚かましい質問ですが差し支えなければ、ご教授お願います。
こんばんは。返信が遅くなり、申し訳ありません。
国土地理院の地形図に書かれた水線についてですが、勿論、水流のある場所すべてが、水色に着色されているわけではありません。ですから、谷筋を把握するためには、自分で谷筋を追うしかありません。具体的には油性ボールペンで水線を引きます。
さて、ルートがある山の場合は、コースを表す地形図上の点線を追えばいいですよね。ですが、ルートがなければ、尾根をたどるか、谷筋を詰めるのが一般的です。
どちらを選ぶか、あるいはどうミックスするかについては、これは一種の駆け引きです。ニオイとか気配から判断する側面もあります。尾根筋のヤブが濃くても、谷筋を選べば有利なこともありますし。また、植生や地質の違いにもよります。また、季節によってとか、積雪の有無、雪の状態によっても、戦略が違ってきます。
尾根が激ヤブの場合、ルートファインディングが成功して本流をトレースできれば、楽して鞍部に上り詰めることもできます。逆に、沢は滝やゴルジュなどの困難な地形が立ちはだかることがあります。
さらに、谷は携帯の電波が届きにくいし、GPSを捉えることが難しくてログが迷走するデメリットも考えられます。
谷筋に水線を入れる理由は、GPSが信頼できない場合にも、支流の方角や、出合の水流比を推定することで、現在地を特定できることにあります。谷と谷の出合の水流比が何故わかるかと言うと、水線を入れることで尾根と尾根に囲まれた集水域が可視化できるからです。これらは、沢登りの技術の1つだとも言えるでしょう。
最近では、高度計が使えるので、現在地の判断はとても楽になりました。GPSという良い味方もできました。けれども、テクノロジーに頼らなくても、人間の感性や野生の声に耳を傾けながら登る山は格別です。
近年の登山は、限りなく科学技術と登山者の感性とのミックスになってきたように思います。
beech477さん、コメントありがとうございます。
地形図を読み取る感覚、想像力など、完全に自分感覚を超えていて、ルートファインディングの奥深さと、レベルの違いに驚きを隠せません。
ふらりさんの仰る、感覚的なものと、テクノロジーな物との融合、それでも最後は自然の声に耳を傾ける、臨機応変な対応、それを裏付ける事前の地図読解、どれを取っても私には出来そうにありませんが、地図、地形の読解力、沢登りの技術など少し勉強してみたくなりました。
とても厚かましお願いをしてしまい申し訳ない思いでしたが、中々聞けない貴重な実践的な内容を丁寧に教えて頂き本当にありがとうございました。
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