【日光】雲竜渓谷(雲竜瀑&七滝沢)アイスクライミング
- GPS
- 21:07
- 距離
- 17.1km
- 登り
- 2,575m
- 下り
- 2,576m
コースタイム
- 山行
- 2:05
- 休憩
- 8:10
- 合計
- 10:15
天候 | 1日目:曇り時々小雪 2日目:晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2023年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
【雲竜瀑まで】 ・雲竜瀑までは、非常によく歩かれており歩きやすい。チェーンスパイクがあると安心。雲竜瀑の下に氷結した小滝が2つあり、明瞭な巻き道はあるが、アイスクライミングも可能()。 ・雲竜瀑はRS100m程度。1p目は60m一杯で傾斜が緩むところまで。2p目は40m程度で落ち口まで。 ・雲竜瀑の上流のゴルジュの滝も氷結しているが10m、IV程度と思われ、わざわざ登る価値もなさそうなので登らなかった。 【胎内滝から上流】 ・胎内滝は水量が多く氷結が不十分で、左岸から巻く。雲竜瀑の滝壺から右岸の小尾根を越えてトラバースしていくと巻けるが、やや悪い。 ・胎内滝の上は平らで幕営適地。 ・胎内滝の上流は小滝が3つあるが、いずれも氷結が悪い。今回は、左岸から2つまとめて巻いて懸垂下降した後、最後の滝の右岸を簡単なミックスクライミングで越えた。復路は、黒岩滝の上部から小滝を1つまとめて巻いて懸垂下降した後、2つ目の滝をV字スレッドで下り、最後の滝は左岸から巻いた。 ・黒岩滝も中央は氷結していないが、右岸の氷が良い感じにつながっていたので登った(IV+)。 ・黒岩滝から次の滝までは雪が深くラッセルが大変。 ・七滝沢の2つ目の滝は+,RS20m程度。左岸に立派な氷瀑がある。 ・大滝までのラッセルも大変。時々左岸から落氷があるため要注意。 ・大滝はRS40m,V-程度だが、立木まで雪斜面をさらに17m程度あり、60mロープでちょうど。 |
その他周辺情報 | 2022年10月に沢登りをした記録:https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-4768470.html 【七滝について】 七滝は、地理院地図では36.805153,139.548640にある1つの滝であるように描かれているが、「日光四十八滝を歩く」(奥村隆志,2000)によれば、七滝沢左岸にある複数の滝の総称である。「女峰山の湧き水のため、七滝とはいえ四〜六滝のときもあり、八滝以上の時もあるようで、宗教的な意味で七つとしたのかもしれない」とも書かれている。また、同書では「日光歴史」(塚田金三,1908)を引用して、『七條の大瀑布は匹練の如く懸れり 其左より数え来りて二ノ滝と五ノ滝とは最も大に七ノ滝と四ノ滝とは最も奇なり 其状長蛇急流を降か如く蛟龍の中空に踊るが如く』とある。 顕著な滝は5つ程度しかないのでやや無理があるものの、黒岩から見て左から順に番号を付けるとし、二ノ滝と五ノ滝が大きい滝となるようにすると、各滝の位置は下記のように推定される。 ・一ノ滝:36.804766,139.545819 二ノ滝の上流 ・二ノ滝:36.804285,139.546280 ・三ノ滝:36.804156,139.547439 ・四ノ滝:五ノ滝の下流の連瀑帯? ・五ノ滝:36.805144,139.548587(地理院地図の「七滝」) ・六ノ滝:36.803315,139.550217? ・七ノ滝:36.805144,139.549863? また、この推定に基づき、大滝があるのを本流とし、支流の名称を二ノ滝沢、三ノ滝沢、五ノ滝沢、六ノ滝沢とする。 [2023.3.1追記] 国会図書館デジタルライブラリーで調べたところ、上記で引用した「日光歴史」は、田山花袋「日光」(1899)を参考に書かれていると思われることが分かった。七滝を紹介する一節の画像を追加した。「奇極り快極り壮極れるの瀑布」と、物凄い讃えようだが、120年以上前のことなので、現在は地形が大幅に変わっているのかもしれない。 https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/764310/1/28 【雲竜渓谷上流の氷瀑について】 アカナ沢枝沢の鉄鉱泉滝については、2022年に初登とする記録(https://okutama-axe.com/post-568/ )が公開されている。また、上記ブログ記事では七滝沢も探索・登攀済と書かれているが、詳細は公開されていない。 なお、現地でお会いした、雲竜渓谷に10回以上来ているベテランの方によると、記録は出されていないものの、大体の氷瀑はかつて県内の方により登られているとのことである。鉄鉱泉滝はその頃に登られているそうであるし、今回確認した七滝沢の大滝や二ノ滝、五ノ滝等も登られているのだろう。月山夫婦滝も、青鬼が登る前に地元の方は登っていたと言われているし、初登というのはなかなか難しいものである。 [2023.2.20追記] 七滝沢大滝の過去の登攀記録を発見した。大滝の上まで詰めているが、特に氷瀑はないとのこと。 http://www.big.or.jp/~arimochi/kiroku.01.02.23.03.html |
写真
装備
備考 | 七滝沢のラッセルは長いので、かんじき類があると良い。 |
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感想
【計画の経緯】
10月に雲竜瀑を懸垂下降した際、ロープが回収できなくなった。観光地に見苦しいロープを残置してしまったため、今シーズンは是非とも登りに行き、回収しなければと思っていた。
当初、1/21-22を予定していたが、氷結が不十分で断念。その後寒波が来て、ようやく登れそうな状態になったため、決行。メンバーも、うまいこと、10月に残置した時と同じyamakurumiとになった。それにしても、この氷瀑は毎日のようにハイカーによる滝の写真が上がるため、有り難い。
【山行】
○アプローチ
駐車スペースの混雑を警戒して前夜のうちに入って車中泊。起きると想像以上の大混雑で、県警の方まで来ていて、交通整理や登山指導に来ているのかと思ったが、後で分かったことには、栃木県警もアイスクライミングの訓練のために来ているだけだった。
洞門岩まではしっかり除雪されていて、車でも入れる状況だが、秋に来た時と違いゲートは閉まっている。県警の車だけは奥まで入っていた。洞門岩からは、遠回りな車道を離れて、沢沿いのルートを取ったが、踏み跡が非常に明瞭で楽。
車道終点に到着し、ヘルメットを着けて雲竜渓谷へ入ろうと思ったところで、yamakurumiがヘルメットを車に忘れたと言う。さすがにノーヘルでアイスは有り得ないので取りに戻ってもらうことにし、その間、tamoshimaは先へ向かうことに。翌日、七滝沢探索を予定していたので、まずは胎内滝が登れるかどうかを見に行ったが、氷結が甘く登れない。雲竜瀑の滝壺から巻くことを考え、まずは滝壺へ。残置したロープはしっかり存在感を放っている。回収、できるだろうか…
周辺を見て回ると、雲竜瀑右岸の小尾根の岩には残置支点があり、そこから懸垂下降で胎内滝の上には降りられそうだったが、帰りはどうするのだろうか。それよりも、トラバースで巻けるならその方が良かろうと、探りながら狭いバンドをトラバースすると、ちゃんと巻くことができるではないか。それに、都合の良い平地もあるので、ここにテントを張ることにして、いったん引き返して幕営装備を持ち、テントを設営。
1人で出来ることは終わったので、あとは滝壺でyamakurumiを待つ。待ちくたびれた頃にようやくやって来て、準備をして登攀へ向かう。
○雲竜瀑
雲竜瀑は、杉並労山Pが先に取り付いていたが、幅広い滝なのでその左から登らせてもらう。tamoshimaリードで60m目一杯伸ばし、傾斜が緩むところまで。想像通り、氷結の甘い部分もあったが、垂直部は殆どなく、余裕をもって登れた。yamakurumiのフォローは時間がかかっていたが、日も射すのでそれほど寒くはなく有り難い。
2p目もtamoshimaリード。中央は水が流れているので、左の氷を登る。雪の乗った手の冷える氷を40m程度で、見覚えのある残置支点まで。上流にある、秋に懸垂下降したゴルジュ内の滝も見に行ったが、面白くなさそうなので登らず、懸垂下降へ。
残置ロープの回収は、懸垂下降の途中で行うしかないと思っていた。とりあえず氷沿いに懸垂下降し、トラバースで残置の支点へ向かってみるが、思いのほか遠い。木や岩が邪魔でロープを回すことはできず、トラバースの距離が延びていくにつれて、落ちたら振られる長さが増え、怖い怖い。足場もホールドも悪く、秋の苦労を思い出すが、何とか支点の右上まで達し、ロープに手が届きそうになる。しかし微妙に遠く、やっとの思いでロープを手に取っても、体制が悪くて重いロープを持ち上げることができない。さてどうしたものかと思ったところ、アックスを持っていることを思い出し、アックスをギアラックから外し、手を伸ばしてロープに引っ掛けると、漸くスムーズにロープが持ち上がった。このロープをいったんギアラックにかけ、ナイフを取り出して切断に成功。切った瞬間、ロープは下に落ちていったが、途中の木などでまた引っかかっていないことを祈るのみ。再び怖いトラバースをして氷瀑まで戻り、少し登って先行Pが残置した捨縄の中間支点まで。
2p目は普通に懸垂下降した後、2mくらいクライムダウンして滝下まで。降りてみると、幸い、残置されていたロープは殆ど引っかかっておらず、軽く引けば全回収することができ、仕事が終わった充実感に満たされた。
○燕岩の氷柱
雲竜瀑を登っている最中もずっと見えていた、垂直度の高い燕岩の氷柱。幸か不幸か、別の方々がTRで登り込んでいたが、行ってみると、リードさせて頂けるとのこと。
見た目、90度はないが、意外に水が滴っていて、氷結が良くない部分もあり、しっかり難しい。登り込みで開いたであろう穴も使わせていただきながら、何とかノーテンで完登。まだまだ下手だなぁと思う。
TRをセットしてyamakurumiも何とかノーテンで登り、薄暗くなってきたので急いで幕営地へ向かうと、4隅中3隅の固定が外れ、テントが風で飛ばされそうになっていた。危なかった…
○七滝沢へ
夕食と朝食は個食で簡単に済ませ、2日目は七滝沢の上流を目指すことにする。大系には登られていることが書かれているものの、冬季の詳細な記録はなく気になっていた。
幕営地から上流に向かうと、氷結の悪い滝が出てきて、とりあえず右から巻いて懸垂下降。いきなり空中懸垂。進むとまた氷結の悪い滝があり、今度は左端からミックス気味に越える。これで七滝沢とアカナ沢の出合。
○七滝沢
七滝沢出合の黒岩滝は、氷結が悪いが、うまいこと左側は氷が繋がっているので、tamoshimaリード。快適に登れたが、終了点探しには苦労して、結局凍りついた岩にスリングをひっかけた。
黒岩滝を登ると長いラッセル。秋に来た時も、ここはラッセルが長そうだなと思ったが、案の定。ラッセル自体よりも、時々踏み抜くのが嫌らしかった…
五ノ滝沢出合にF2があり、これはtamoshimaはフリーソロしたが、雪が載っていてあまり登りやすくないので、yamakurumiにはロープを出した。その先もラッセルだが、側壁の氷が興味深い。三ノ滝は繋がっていなかったが、長い氷柱状で、繋がれば面白いだろう。時折、三ノ滝沢から自然落氷が来るのはちょっと怖い。
進むと二ノ滝も見えてきて、日当たりは良いが非常に立派。しかし登っていると遅くなりそうなのと、支点がなく懸垂下降ができないリスクがあるので、今回はパス。
大滝の下にあった前衛滝はほぼ雪に埋まっていて、ラッセルで越えると、大滝。良く凍っているので、これを登ることに。傾斜も緩く簡単かと思ったが、それなりに長いのでまずまず登り応えはあった。40m程度氷を登り、17mくらいラッセルしたところで、都合の良い立木があり登攀終了。立木があって良かった…
yamakurumiフォロー後、沢の上流、見える範囲にまともな滝はないことを確認してから、さっきの立木で懸垂下降。ラッセルのない復路は非常に楽で、F2も懸垂下降、黒岩滝は巻いて、七滝沢は終了。
○帰路
黒岩滝から巻き続けてY字峡下流の小滝はパスし、その下流へ懸垂下降30m。さらに氷結の悪い滝をV字スレッドで下れば、幕営地はすぐ。デポしておいた荷物を回収し、誰もいなくなった雲竜渓谷を足早に下る。心なしか、昨日よりも氷が発達しているような気がしたが、帰って写真を見比べると明らかだった。
雲竜渓谷からの復路は、左岸側の道を選択。ずっと工事用道路を歩くよりは多少変化があり、暗くはなっていたが楽しめた。どれだけの金をこの谷に注ぎ込んだのだろう。最後に左岸から右岸に戻ったが、その時渡ったのが稲荷川第10上流砂防堰堤。変わった形の橋だなと遠目にも思っていたが、渡ってみるとその異質さに驚いた。堰堤の上を道路にしている所など、聞いたことがない。最後に珍しい土木構造物を見たところで、山行の良い〆となった。
【感想】
雲竜渓谷は、まだ中学生だった2010年に、氷瀑トレッキングに行った思い出の地である。その頃は、アイスクライミングをやるようになるなんて、思ってもいなかった。そんな過去もあり、雲竜瀑は、アイスを始めてからは、登攀対象として気になる存在になっていた。
昨年も良く凍っていたが、混雑を懸念して行かず、秋に沢登りで行ったところ、あろうことか、落命しそうになった上、ロープを残置してしまった。こんな目立つ場所に残置した以上、回収するしかない。今回、それが達成できて、とても良かったし、すっきりした。今年凍ってくれて、幸運だった。
沢登りで行って気になった、七滝沢の探索もなかなか面白かった。秋には登れそうになかった大滝が、アイスならさほど難しくなく登れるのだから面白い。アイスクライミングは沢登りの世界を広げてくれる。今後もこんなアイスクライミングを実践していきたい。
【感想】
10月のtamoshimaさんとの顔合わせ山行で墜死しかけ、ロープ残置までしてしまった雲竜瀑。滝が氷結したらロープの回収に行くと言っていたが、アイスの経験がほぼ無い自分はお気を付けて…としか思っていなかった。
が、なぜかtamoshimaさんが声を掛けてくれ、ロープ回収山行にお供させていただけることに。
山行直前にポチった中古の旧型ノミックと太古の縦爪アイゼンを携え、吹雪の中新潟から日光まで。運転が苦手なので事故る予感しかしなかったが、何とか辿り着けて一安心。
自分で危惧していた以上に足を引っ張りっぱなしの山行となってしまい非常に申し訳なかったが(ヘルメットを車に忘れて取りに戻る、フォローなのに絶望的に遅い、ワカン装着を横着した結果ラッセルお任せ状態、ロープを知恵の輪状態にして時間をロスする等々…)、良い経験をさせていただいたし、色々勉強になった。何よりも自分が残したゴミの後始末に微力ながら協力できて良かった。
登攀怖い人間なのでアイスを登るだけだと多分それほど楽しめないが、探索要素のある山行で非常に楽しめた。
tamoshimaさんありがとうございました。また声を掛けていただけるよう、まずは装備をもう少しマシにしようと思います。
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