9歳児とゆく春の花と光る沢そして大パノラマの山伏【山梨百名山】
- GPS
- 07:32
- 距離
- 7.7km
- 登り
- 1,133m
- 下り
- 1,111m
コースタイム
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2023年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
やや荒れ気味だけど本格的な危険箇所はなし。ただ蓬峠手前の崩落地トラバースはちょっと怖い(みために反して安全そうだったけど)。 また崩れやすい山ゆえルートがところどころ変更されているようで、登りとくだりそれぞれ1回ずつ本ルートを外したまま進んでいる。使われなくなったルートもときどき見かけた。ピンクテープを追いながら、随時ヤマレコのマップで確かめていくと安心。 ちなみに最初の沢の渡渉はコツがいるかも。僕はドラム缶で足を滑らせて見事に水没しました! |
その他周辺情報 | 黄金の湯→月曜日休館 コンヤ温泉大野木荘:リノベーションによる美しい宿、条件によって日帰り入浴が可能、夢のような美しい貸切湯に入れる。日帰りの受付は「客がゼロでなく混んでもいないとき」のみ。 |
写真
感想
息子と目指す山百コンプリートの山旅、東京から近い山や軽めの山はもうほとんどなし。先日「二十六夜山」に登ってしまったので、ここから先は遠くの山を目指すしかない。
息子は春休み、前泊という手が使える。ヤマビルのいる南部に、今のうちに行っておこう。
というわけで今回選んだのは「山伏」。やんぶし、と読むそうだ。
身延から林道で1時間ほど……なのだが、この林道は台風でダメージを受けたせいかこのところずっと閉鎖中。山梨と静岡がケンカしててどっちも直す気がないなんてウワサすらある。ここに行くには、静岡市側から行くしかない。
晩ごはんを食べてから、夜の東名で静岡市へ。朝ごはんを仕入れてホテルに泊まる。
翌朝、ねむい息子を起こして山伏登山口へ。静岡市スタートなら早く登り始められるかと思ったけれど、梅ヶ島温泉近くの登山口まで行くのに1時間。なかなか遠い。
山伏に登るには、森の中を淡々と登るコースと、ザレを登ったあと稜線を歩くコースがある。富士山の練習もかねて後者がよいかと思ったけれど、息子がザレをずっと登るのはこわいかも、という。よって前者に決定。
梅ヶ島温泉の手前あたりで林道に入り、登山口近くに車をとめる。車が多い時は河原に停められそう。ここからスタート、予定よりも約1時間遅れ。がんばろう、少し急ごうと息子に言い含める。
ミツマタが満開の林道を進むと、ヤマレコマップ上の登山口付近に到着。……って、ここなの? コンクリートの橋の上を沢が乗り越えていて、すぐそばにハシゴで作った簡易橋がつけてある。この先が登山道には見えないけれど……?
ヤブのスキマを見つけて、突入。このとき枝に頭皮をガリッとやられて戦乱後の野武士みたいな姿になってしまったが、ヤブのむこうにちゃんとした登山道があった。登山口はちゃんと他にあったんだね。
物資運搬用のモノレールと沿うように登山道があり、沢から高度をゆるやかに上げる。このまま登っていくのかなと思いきや、沢におりる階段に到着。なんだかもったいない。
沢、とはいえ安倍川の源流のひとつゆえ少し荒々しい。雪解けのせいで水量も多め。心して渡渉しよう……と思ったのだけど、あきらかにあやしいドラム缶橋に行き着いた。マジかこれ。
息子はトトトッと渡ってしまった。さすが人生の半分を渡渉しているだけのことはある。俺も気をつけよう、と思いながら片足をドラム缶にのせた瞬間、
ツルリ?︎
5年間の登山人生で初めて、沢に本格的に落っこちた。登山開始早々でこれである、今日いちにち下半身ズブ濡れで過ごすことになりました! ヤダーー!!
ちなみに息子は大爆笑。まあいい、君が笑ってくれるならどんな水没でもやる。
さて渡渉のあとは(ズブ濡れでなければ)非常に気持ちのよい林を進む。小さな滝や水場もあって楽しい。ほどなく、昔のワサビ田に到着。
深い森の中にあって、開けていて人造物があるのでなんとなく公園のような雰囲気、ほっとする。ここで少しティータイム。靴の中の水をぬいて、タオルを入れる。
そこから進むと、ふたつの大きな岩が並ぶポイント、「大岩」。左側のより大きな岩には無数のつっかえ棒が置かれていて、その左手には小屋がある。通称、わさび小屋。
支えるから写真とってね、と息子さん。わくわくしながら両方の岩でポーズを決める。
このあたりにはキバナネコノメソウ、ヨゴレネコノメソウがたくさんあった。小さな滝のそばに生えているものなど、寄ってみるとそれは見事。春にしか会えない花に会えるのは、山歩きの楽しさのひとつだと思う。
林を抜けると「水場」というポイント、たしかに水場があって沢が暴れた感じに岩だらけになっている。見上げると、涸れ沢の急斜面の上のほうにピンクテープ。マジか。でもしかたない、直線的に登る。(※山頂方向左手にきちんとした道があります)
ドラム缶がさしてあるあたりで、ジグザグのちゃんとした道が現れた。助かった。沢の反対側には、崩落で使われなくなったと思われるかなりしっかりした道。やはりこの山、地盤がゆるいのね。
この急登を登り切ると山の向こう側が見えた。このへんが蓬峠かな、と思いきや、もう一発。というかこれが本物の大ボスか、「崩落地のトラバース」が現れた。急角度のアリジゴクみたいな砂の坂を横切るように、ごく細い踏み跡がある。これを、行けと?? 思わずでっかい声で「マジで???」と叫んでしまった。
息子が先に行く。ズルっときたらすぐ息子をつかめるように。しかし、歩いてみると見た目ほどヤバくはない。踏みしめた足元が、想像よりずっとしっかりしているのだ。これならすべり落ちることはなさそうだ。ここ落ちたら終わるねえ、という息子はなんとなく楽しそう。何でだよ。
ここを抜けるとすぐ、蓬峠に到着。ここでこの日唯一のハイカーさんとすれ違った。こんな時間にここにいるってスゴいね、なんて息子と話す。
蓬峠にはベンチがあり、山の向こう側を眺められる。見事な岩もあって、ちょっとした景勝地のような雰囲気。少しゆっくり目にひと休みしていこう。
峠からの道、おっけっこう平坦かな? と思いきや、尾根を回り込むようにして九十九折りで高度をガンガン上げていく。うん、確かに地図を見たら等高線的にぜんぜんまだ楽じゃない。
木々越しに富士山が見え始めたあたりにベンチがあった。ひと休みする、とその向かいに小さなかわいらしいお花。バイカオウレンというそうだ(教えていただきました)。
道に3段しかないハシゴがかけてあって、なんだこりゃと思ったけれど息子いわく「あなどるなかれ」。いちばん上をふむと後ろにひっくり返りそうになる、と。
3段ハシゴからほどなくして、道の傾斜がほぼなくなった。へこんだ地形のところに雪がたまっている、たぶん今年最後の雪だろう。ていねいにさわっておく。
西日影沢分岐、ここが最後のチェックポイント。あともう少しで山頂、なのだがここで息子の空腹が限界を迎えた。正確無比で知られる息子の腹時計は12時を過ぎると鳴りっぱなしで、この時点で12:40、もう一刻の猶予もならないのであった。仕方ないのでおむすびをひとつ食べる。
少し進んだところで、シカの家族と遭遇。あちらもこちらの様子をうかがっているし、息子もじっと見ている。白いおしりがかわいいねえ、と何度も言う息子。そんなお前がかわいい。
さあここから先は、天国そのもの。木の階段がこわれた坂を越えると、高山植物の保護柵があって木道が敷かれていた。木道大好きなんだー、とウキウキしながら歩く息子。しばらくして木道が終わり、右に曲がると山頂に到着。
山伏に登ったよ!
この山頂の気持ちよさときたら! 広い芝生、遠くには笊ヶ岳と南アルプスがどーん。林からは富士山が顔を出している。ここでずっと過ごしたい、そんな山頂。
カップ麺を作っておにぎりとともにいただく。南アルプスと富士を交互に見ながらのラーメンは絶品だった。息子は麺しか見ていなかったようだが。
腹をふくらませて、ひととおり絶景を眺めたら名残惜しいけれどもおりることにしよう。今日も時間的にはちょいと遅めだ、このちょい荒れの山の中で日没となるのは絶対に避けるべし。
さっき通ってきた木道ではなく、富士山寄りの道をくだってゆく。こちらもこちらで富士山といっしょに歩ける。どこまでも素敵な山頂エリアだ。
やがて道は林に入り、階段のこわれた坂をおりて西日影沢分岐へ。ここを右にいくと山伏小屋、無人の避難小屋としては珍しくトイレが近くにあるとのことで、ここはいちど泊まってみたい。
「牛首のルートは危険」という古い看板があってちょいとぎょっとするが、牛首がどこかわからない(蓬峠を直進するルートのこと?)。あんまり気にしないようにして下山開始。
分岐からしばらくして降下が始まる。3段のハシゴを過ぎたあたりになかなかの痩せ尾根が登場……ってあれ、こんなとこ来たっけ? ピンクテープはきちんとあるし踏み跡もしっかりあるけれど……と思っていたら、100mくらいで本ルートに合流。こっちは旧ルートなのかな、ちょっとあせった。
トコトコ降りていって蓬峠、ここはなんともよい雰囲気のあるところ。目の前に大きな岩の小ピーク、ここに登るとよい景色が見られそう(だけどそれをする人がいないということはそういうことか)。
峠から少しおりると崩落地トラバース。相変わらず恐ろしい見た目だけど、いちど通って「それほどでもない」ことをわかっていると怖さは半減する。半分になるだけでなくなるわけではない、気をつけてわたる。
砂のハードな直登をキメたところにあるドラム缶、よく見るとその右側(山頂方面に向かって左側)にちゃんとジグザグの本ルートがあった。この山はちょくちょくルートが分かれていて、気を抜くと「こっちじゃなかった」ほうにまぎれこんでしまう。
「水場」の取水口でカラになったペットボトルに水をつめ、妻への土産とする。やがて大岩、ここからは沢と進むので斜度がゆるくなる。ほどなく旧ワサビ田に出た。
旧ワサビ田には使われていない小屋、石組のワサビ田跡、きちんとした道があってどことなく里の雰囲気。キブシとダンコウバイが満開なのも里らしい。なんとなく仙人が住んでいそう。
ゆるゆると下ってゆき、さあ最後の渡渉。すっかりもう忘れていたが、僕は今日ここで水没するところから登山を始めているのだった。ふつうにわたると、順当にあの魔のドラム缶に行き着く。
息子は沢に沈む父を見ているので、まったく違うルートを探している。こちらはドラム缶の直前で別の岩に向かう。2メートルほどの高さをジャンプして降り、なんとか渡ることに成功。そこに余裕で別ルートから渡ってきた息子さんがいた。山の経験値は彼の方が高いようだ。
沢から少し上がり、モノレールの軌道に沿うように進む。軌道は2本あり、1本は山の上へ、1本は対岸へ向かっていたようだが倒木が放置してあるなどもはや使われていない様子だった。対岸には現役と思われるワサビ田、息子とふむふむ観察する。たしかにここでできるなら、あんな山深くには行かなくていい。
やがて登山口に到着。なるほど、林道の橋のあとちょい先だったのね。
その橋の上を、ちょっとそのまま渡るのは無理かな?という水量の沢が乗り越えてしまっている。朝わたった簡易橋はこれを渡るためのものだった。地図を見てそのままヤブに突進したのはミスだったようだ。致命的ではないにしろ、ルートを外したのはこれで合計3回。ちょっと気を引き締めていこう。
すぐに車に到着。林道の古い分岐のほうにミツマタが咲き乱れていたので息子とにおいをかぎまくる。ミツマタの花は素敵な春のにおいなのだ。それにしてもこの細い木を使って和紙をつくるのは想像を絶するほどに大変そうだ。
さて、温泉に入って帰ろう。月曜日ゆえに公営の黄金湯は開いていない。いろいろ探した結果、コンヤ温泉の大野木荘さんにおじゃました。ここは4つのお風呂に貸切で入るスタイル、通常は日帰りで使えるレベルの宿ではないのだけれど、「満員でなくノーゲストでもない」ときに限り日帰りを受け入れてくれる。果たして、息子も大感激するほどの美しい、素敵どころではないお風呂だった。次回はぜひとも泊まりで来たい。
このあとは新静岡インターから新東名→東名で東京に帰り晩ごはん。大充実の山登りだった。
最初に無理なヤブ越えをしたとき頭にガリっという衝撃を感じたのだが、後でみてみると頭から刀で斬りつけられたような傷になっていた。
コメント
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息子さんその年で山伏制覇はすごいですねえ!立派です。
将来楽しみですねえ。
「ウメバチソウ」とある花は今話題の「バイカオウレン」です、朝ドラで話題で皆が見たがってる
貴重なものですよ。見れて良かったですね。
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