高畑山-倉岳山 〜静寂の刻、光と影〜 B23
- GPS
- 05:46
- 距離
- 11.6km
- 登り
- 1,038m
- 下り
- 1,070m
コースタイム
- 山行
- 5:23
- 休憩
- 0:20
- 合計
- 5:43
天候 | 曇りのち晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2015年02月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車
復路 梁川駅13:24-13:49高尾駅、京王高尾駅13:54〜 |
コース状況/ 危険箇所等 |
北側斜面の登り下り故、滑り止めは必携、高畑山〜倉岳山間の尾根道については今日は不要でした。標識は完備され、駅から駅への無駄のない山行を楽しめます。 |
写真
感想
やりきれない気持ちを収めることも、今回の山行目的だった。いつものように井の頭線始発電車に乗るべく家を出たが、路上は既に濡れておりしかも小雨がパラついてきた。体調が今一つ優れないこともあって早くも引き返す勇気が湧いてきたが、まだ微かに吹いている北風に期待を寄せ、進むことにした。
高尾発大月行の乗客は少なく、私は1車両を占領して身繕いを始めた。車窓は、時間を追うごとに朝靄にけぶる町並や山々を映し出す。定刻どおり鳥沢駅に着き、そのまま歩き始める。車道歩きでウォーミングアップ、早めにペースを掴むため登山口で念入りにストレッチを行う。幸い雨は降っていない。小鳥のさえずりのみが響く気持ちの良い静かなスタートだ。
小篠貯水池、思いがけず美しい。しばらく見とれたのち、沢沿いの清々しい道を進む。今のところ予報に反して風も無い。今日は、富士が雲に隠れぬうちに山頂へというプレッシャーも無い。気持ちに余裕のある登りは、やがて現れる凍結個所でも落ち着いた対応をもたらしてくれた。それでもペースダウンをきらい、早めにアイゼンを装着し、ストックのゴムキャップを外す。脱着の手間に代えられない安心感を得てからは、トラバース、急登にも時間のロスは無い。
この季節にしては気温も高く、早々にセーターを脱いだにもかかわらず、高畑山直下の登りでは、発汗を抑えられなかった。当然のように「秀麗富嶽」は見えないが、雨が降らないだけでも良しとしなければならないのだろう。珍しく山上で空腹を覚え、天候の悪化も気になるためここで大休止とするか迷ったが、昼頃一時的に晴れるというピンポイント予報に僅かな期待を託し山頂を後にする。
天神山、穴路峠を経て倉岳山へと続く尾根道では滑り止めは必要なかった。100メートルあまりの標高差を登り下りして1時間ほどで山頂に着く。南からの風が吹き始めていた。いよいよ来るか。ベンチに座り、風と富士に背を向けて慌ただしく昼食を取る。しかし、食後ふと振り返ると青空が見え始めた。今にも雲間から陽の光が射してきそうな気配である。恐るべし「てんきとくらす」。昼に本当に晴れてきた。風も予報どおり5、6メートルだ。
出発しようと準備をしていると5人組のパーティが上がって来た。駅を出てから初めて会う人だ。下り始めて2パーティとすれ違ったが、その後駅まで出会う人はいなかった。立野峠へと急坂を下ったのち左に折れて梁川駅までの道を進む。やはり北面沢沿い、十分に凍結している。
11日の報に接してからは、しばらく山に行く気がしないだろうと思っていた。僅かとはいえ、つながりの無いわけではない二人の極限状況や無念さを想うほど、やりきれなさが込み上げてきた。当然のごとく15日に予定していた山行は中止し、相変わらず多忙の日々に身を投じていた。数日前、登山に関して先輩である義父と話をしているうちに少しずつ気は晴れ、いつしか天気図や交通予想に目を向けられるようになった。
峠からほどなく倉岳山水源である水場に到着した。実に気持ちの良い場所だった。沢のせせらぎだけが響き、周囲には雪が残り、そして見上げると木々の間から青空が覗かせていた。ザックの中にいつの間にか忍び込んでいた相棒を雪の中に佇ませてみた。ベンチに座り、ボーッと眺めていると、不思議と気持ちが和んできた。感謝の気持ちと共にゆっくりと立ち上がり、もう一度空を見上げた。
沢の渡渉個所でアイゼンを外し、泥を洗い流す。その後の凍結個所で装着と勘違いしないよう、冷たい水で頭も冷やす。バスを気にせずのんびり歩ける時間を楽しみながら進むと、名残惜しいかな登山道は終わり林道に出る。見上げなくてもわかるほど晴れていた。もっと遅い時間の行程にすればもしかすると出会えたかもしれない。一瞬脳裏を過ぎったが、富士が見えなくても十分良い山だった、すぐに気を取り直して歩き始める。
しかしながらせめて下山後の楽しみがないだろうか。これも一瞬にして打ち消された。梁川駅前に何もないことは往きの車窓から確認済みだった。梁川大橋を渡り、無人駅である終着点に着く。列車は1時間2本、時にバスを1時間待っていることを思えばどうということはない。のんびり南風を受けながら、いくらか軽くなった心を感じていた。
優しい方だなあと思いながら読みました。やり切れなさ、若い人を喪うやり切れなさ感じます。貴方も気をつけてと家人に昨夜言われたのも、痛く感じました。気をつけて行きましょう。お互いに。
roadwalker様、メッセージをありがとうございます。ヒマラヤの未踏峰を征したパーティの隊長であり、日本山岳会をこれから牽引するはずだった、かけがえのない人であることを知り、どんなに無念であったかを想い、そして祈りました。私はもう雪の高山や岩稜帯のような危うき場所には赴けませんが、たとえ低山ハイクでも用意周到に慎重に行動してゆきたいと思っています。roadwalker様にとってこれからも安全で楽しい山行となることを願っております。
kimichin様
苦しいお気持ちが、お山によって癒されて、少し軽くなられた御様子でよかったです。
山での事故や遭難のニュースを聞くと、心がぎゅっと苦しくなります。roadwalker様もおっしゃっていらっしゃいましたが、kimichin様の山を愛するすべて方々への深い思いを感じました。
次回の山行もお天気に恵まれますよう、心より祈っています。
reochi19様、いつも暖かいメッセージをありがとうございます。遭難のニュースを知ってもこれほどのダメージは受けなかったのですが、若くても責任感や思いやりに満ちた人であったことを知り、どうしようもなくなってしまいました。単純なので、優しい心遣いを感じたり、静かで穏やかな空間に身を置くと、立ち直りも早いのですが。これからもreochi19様の山での時間が、さらに優しさを増してくれることを願っております。
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