【谷川岳】一ノ倉沢本谷4ルンゼ奥壁〜芝倉沢下降
- GPS
- 11:46
- 距離
- 17.9km
- 登り
- 1,886m
- 下り
- 1,885m
コースタイム
- 山行
- 10:47
- 休憩
- 0:58
- 合計
- 11:45
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2023年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
遡行図と記録参照 |
その他周辺情報 | 【他の記録】 ○一ノ倉沢本谷〜4ルンゼは記録多数。遡行図のある記録は下記のみを確認。 ・その空の下で(2010):http://sonosoranoshitade.web.fc2.com/sonosoranoshitade5/page033.htm ○4ルンゼ奥壁の資料は登山大系のみ。 |
写真
装備
備考 | ・ラバーソール適 ・クライミングシューズは持参したが不使用 |
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感想
【計画の経緯】
一ノ倉沢本谷は、雪の少ない今年に是非行きたいルートだとは思っていたが、多くの知り合いが登るにつれて、そんな手垢にまみれた沢へ行ってもなぁ、とだんだんモチベーションが下がってきた。
しかし、混まなそうな平日で、休みが取れ、天気も良さそうで、気温も暖かそうで、紅葉も見頃そうとあっては、下がったモチベーションも上がってくる。平日に行けそうな何人かに声をかけた結果、K西と行くことになった。
【記録】
○アプローチ
無届山行禁止エリアなので登山指導センターにちゃんと計画書を提出してから、一ノ倉沢へ向かう。時間に余裕があるかも分からないので本気で歩いたら、こんな時期の早朝なのに暑くなってきた。
一ノ倉沢出合について沢を見上げると、最上部はガスっていてよく見えないものの、その巨大な岩壁には威圧感を感じる。
○遡行
一ノ倉沢出合より一ノ倉沢に入ると、予想以上に水は少ない。しかし伏流ゴーロはすぐに終わり、ナメと小滝が続いて癒しの渓相。多少のゴーロを経て一ノ沢出合を過ぎると小滝が出始め、フリクションもよく快適に登れるが、アルパインクライミングのアプローチ用と思われる残置の量が凄い。使えなくなったのも沢床に落ちて景観を乱しており、こういうのを設置した人には使えなくなった物の回収もちゃんとやって欲しいものである。なお、2段6m滝がヒョングリの滝だったらしいが、全くひょんぐっていなかったので気づかずに通過していた。
残置に導かれつつ4m滝を左から、18m滝を右から登り、衝立沢出合を過ぎて9m滝を左から巻くと、急に両岸がスラブの超開放的な沢になり、非常に素晴らしい景観。スラブ滝群をできるだけ水線から離れないように気を付けて登っていくが、景観のすばらしさにため息が出る。所々でお助け紐使用。
二ノ沢出合は二ノ沢の方が水量が多く見え、興味を惹かれる。その先でゴルジュ状になり、容易なCS滝を2つ越えると幻の大滝。この滝は左壁と水線が登られているが、オブザベすると水線も普通に登れそうに見えるので、せっかくだからと水線をリード。カムの効くクラックが多く不安は少ない。「その空の下で」の弘田さんがVを付けたにしては容易で、体感としてはIV+〜V-程度。少ない水量の割には濡れて、手はかなり冷えたが、暖かい日だったのが救いである。
幻の大滝の上の14m滝を容易に登ると、大スラブが始まる。登っても登ってもスラブで、どこまで続くのかと思うが、帰ってから確認すると標高差200m程度であった。下部のスラブで手間取っていたK西もスラブに慣れてきたようで良かった。途中、滝沢が、登られているとは思えないほど厳しそうな滝で合流していた。個人的には登攀意欲はそそられない。
大スラブが終わり、17m滝をお助け紐を出しつつ登ると、今度はぬめった小滝が連続する沢になる。これらを次々とフリーソロしながら要所要所でお助け紐出しつつ登っていき、20mの大滝は、右壁からtamoshimaリード。特に難しくはないが、落ちるとやばい上部がそこそこ厄介なので、ロープは出してよかった。
大滝の次の5m滝がとんだ伏兵で、右岸スラブから容易に巻けるものの、突っ込んだtamoshimaは登れない。結局ザックからカムを取り出してクラックに決め、A0で登る羽目になった。以降は全ての滝が、小難しいものも含めてフリーソロで直登でき、水は少ないしぬめるので爽快さはないが、結構楽しめる。
4ルンゼ奥壁が見えてくると、結構立派なスラブであり、興味を惹かれる。他方、4ルンゼの本谷は、ただの草付斜面で、あまり興味を惹かれない。ここまで順調で時間にも余裕があるので、4ルンゼ奥壁の登攀を試みることに決め、最後の5m滝の上から左へトラバース。高度感のあるスラブをフリーソロで登っていくと、奥壁核心のハングの下に至る。このハングを登る気も装備もないので、右の草つき交じりの斜面をtamoshimaリードで登攀。30m程度でハングを巻き終えてその上に辿り着き、傾斜も緩んだのでロープ出しは1pだけで終了。ロープを出しといてよかったと思う程度には悪かった。草と岩が混じった斜面をフリーソロで登っていくと、下から特徴的に見えていた岩峰の上に着いたので、ここで1枚記念撮影。最後は短いがきつめの藪漕ぎをして、登山道へ。
○下山
相変わらず時間に余裕はあるので、予定通り、登山道ではなく芝倉沢を下ることにする。最初は滑りやすい草原斜面で気を付けて下っても何度も滑ったが、岩が出てきてしまえば快適そのもの。予想よりは小滝が多くあったが、ゴルジュらしいゴルジュはなく、容易にクライムダウン又は巻き下れて、至極順調に下っていく。その上、開放的な渓相、周囲は岩壁が多く優れた景観、紅葉も見頃とあって、素晴らしい癒し系。あまり期待していなかったが、これほど下降に適している沢はなかなかない。
結構下ったところで、岩に丸印があったり残置ロープがあったりして、道っぽさが出てくる。帰って確認したところ、これは2018年に廃道とされた中芝新道の痕跡だった。本当に痕跡と言うほどしか残っておらず、僅か5年であれほどまでに廃れるのかと驚いた。中芝新道の跡は使わず最後まで沢下降し、国道に出て終了。
ここは酷道マニアには有名な、ほぼ明治時代のままの徒歩道国道で、廃道好きでもあるtamoshimaとしては一度歩いてみたかった所。馬車道らしい緩い勾配、如何にも古そうな空積の石垣などに、明治の想いを少しだけ感じることができた。
幽ノ沢出合と一ノ倉沢出合ではその慰霊プレートの多さに驚かされる。これが死者日本一の山と言われる一端か…。改めて一ノ倉沢を見上げると、今度はガスもなく最上部まで見通せた。しかし、一度登って親しみが湧いたその岩壁は、朝よりも少しだけフレンドリーに見えた。
最後は、下りなので朝よりは楽だが、朝も歩いた車道をひたすら歩いて車へ。昔のように、一ノ倉沢出合まで車で入れれば良いのに。
【感想・総評】
アルパインクライミングのゲレンデとして著名な一ノ倉沢だが、沢登りルートとしても想像以上に素晴らしかった。特に、立派な岩壁に取り囲まれた雄大なスラブは、数多くあるスラブ系の沢の中でも、殆ど類例がないものだと思う。その上下にある滝群も程よく登り応えがあり、中弛みのない沢となっている。さらに、今回のように詰めを4ルンゼ奥壁からとすると、最後までスラブ登りが楽しめるので、余裕があればお薦めである。
今回、天候、気温、水量、紅葉、貸切と全てで好条件に恵まれ、非常に快適に楽しく、かつ直登に拘ったライン取りで登ることができ、さらに下った芝倉沢も良かったため、非常に充実した1日を過ごすことができた。
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