荒船山
- GPS
- 32:00
- 距離
- 18.2km
- 登り
- 1,282m
- 下り
- 1,547m
天候 | 7日:雨のち晴れ、8日:曇りのち快晴 |
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過去天気図(気象庁) | 2023年11月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス 自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
・星尾峠への登路で枝沢を渡る箇所は金属製の橋に架け替えられている。 ・この時期は枯葉が積もり道が分かりにくい箇所がある。下りの方が苦労するかもしれない。テープを確認しながら歩く。 ・線ヶ滝への降り口は駐車場から30mほど手前。山と高原地図にトイレマークあるがトイレはない。「かじか倶楽部」と線ヶ滝の中間の神社横にトイレがある。 |
その他周辺情報 | 南牧川沿いの「蝉の渓谷」は立ち寄りたい。高さ30m、幅1m、水深3mほどのゴルジュ内を深緑色の水がゆっくり流れている様は神秘的だ。駐車場、トイレ、一周5分ほどの遊歩道あり。 |
写真
感想
荒船山には、中学か高校時代に大島亮吉の「荒船と神津牧場付近」を読んで以来、いつか行ってみたいというのが延び延びになっていたが、良さそうな季節になったので実現させることにした。どうせなら神津牧場とつなげたい、線ヶ滝を見たい、星尾峠を通りたい、では交通手段は・・と色々考えた末に、妙にひねった山行計画となってしまった。
11月7日(火)
線ヶ滝駐車場8:00〜星尾峠10:42/10:55〜経塚山11:23/11:38〜内山峠13:59/14:10〜荒船パノラマキャンプフィールド15:30
寒冷前線が通過するのを期待して自宅を出発。下仁田から次第に細くなる道を走っている間も、時々ザッと雨粒が落ちてくる。タイムリミットがあるので滝見物は翌日にして、雨具着用で歩きだす。最初は沢沿い。威怒牟幾不動への左岸コースを分けると、道は杉の落枝が積もり、荒れっぽくなる。(迷うことはない。)今はメインルートではなくなったらしく、あと数年で破線になってしまいそうだ。右下に見下ろせる渓谷は紅葉が交じり、ひそやかな趣がある。30分もすると雨はやみ、すぐに陽も差してきて気分が上がる。背後には樹林を透かして岩峰が聳えている。大岩に突き当たると左の支沢に移り、やがて幅の広い田口峠からの道に突き当たる。右にしばらく水平道をたどると、水流でえぐられた溝を横切り、その先の踏み跡が途絶え戸惑うが、左方にピンクテープが見えるので探すと良い。間もなく左岸コースと合流するが、この辺りは名残りの紅葉や黄色が陽光に映えてきれいだった。
谷間は広がり、一面に落ち葉が積もっているので道形が分かりにくい。ピンクテープを目印に右往左往しながら進む。特に、広葉樹林から唐松林の境い目になっているところで、左に曲がって沢を乗り換える箇所はテープが目立たないので要注意。沢水はおだやかに流れ、源流の雰囲気がとても気持ち良い。最後は枯れ木の斜面をジグザグに詰めていくと、ふいに星尾峠の標柱が目に飛び込んでくる。狭い切り通し状の鞍部で、向こう側には樹の幹の間から浅間山らしい紫色の山体が透けて見えている。思い描いていた秋の西上州そのものの渋い風情を静かに味わった。
最高点の経塚山を目指し、少しトラバース道を進んでから左の道に入る。もう樹木の葉は残っておらず、上の方からゴウゴウと風の音が響いてくる。稜線に出ると強風が吹き抜けるが、冷たくはないので助かった。経塚山はひと登りに見えるが、取付いてみると意外に長く急傾斜で疲れてしまった。狭い頂上には誰もおらず、西に青く蓼科から赤岳までの八ヶ岳が望まれた。永年憧れていた山ではあるが、特別の感慨はなかった。
先は長いので腰を上げる。頂上台地は本当に平で、美ヶ原には及ばないが、山上にこのような平地がある不思議さを感じながらの、楽しい散歩だ。この広さを感じるには、葉の落ちた季節にしたのが正解だ。避難小屋は半分が東屋になるように作ってあり、そこで風をよけてコーヒーを淹れ、目の前の艫岩展望台で飲みながら景色を楽しむ。まずは足元に切れ込んだ谷の深さと、そこをくねくねと上がる道路の様に目を奪われ、続いて遠くを見れば、浅間と鹿沢連峰の上に四阿山が覗き、佐久の街並みが秋の陽に黄色く照らされている。北アルプスは常念らしい三角形がかろうじて雲の隙間に見えたが、他はそれと分からなかった。東よりは浅間隠山が大きく、榛名山や日光白根と思しきシルエットが霞んでいる。崖下を覗き込む気は全く起こらなかった。
今日の目的地であるキャンプ場がはるかに遠いので、あおられるように再び腰を上げる。頂上台地の端からは急な下りとなり、岩も交じる。積もった落ち葉を踏んで行く感触は気持ち良いが、一度、葉の下が岩でツルリと滑り手を擦りむいてしまった。意外に尾根はやせており、細かい登り下りや左右に振るのが多く疲れる。ガイドマップを見た時に、距離の割にコースタイムが長いので不思議だったのだが、西上州という山域は、火山岩の芯が岩峰となって残り、その間は削られて平坦な尾根としてつながっているわけではないことが分かった。木の間から艫岩が次第に後ろに高く遠くなり、通ってきた星尾峠から兜岩山への稜線が紫色を帯びてきている。幕営装備を背負っているので脚が重くなってきた。いい加減うんざりした頃に、ようやく車が見えて内山峠の駐車場に出た。ここから帰りたいくらいだが、もうひと山越えなければならない。
この先はあまり歩かれていそうにないので、気を引き締め直して出発。針葉樹の植林帯をジグザグに登れば、車道がどんどん遠ざかる。踏み跡は細いが明瞭でテープもある。登りつめると裸木の尾根となり、地味な熊倉峰のピークだが展望はない。勘弁してというような小ピークの登り返しを終えて落ち葉の道を下っていくと、車道の横切る小峠に降り立つ。通る車もなく静かだ。最後のおまけのような林間の道を機械的に脚を動かし辿り、車道に出ればすぐにキャンプ場の門が現れた。
歩いてくる人間は想定外らしく珍しがられたが、バイク料金相当の700円で広大なエリアを貸し切りとなった。上の段のオートサイトには数張りあったが、このサイトからは夕焼けの八ツ、北岳、槍穂高、奥秩父が一望でき、ぜひ車でも来てみたいと思った。
11月8日(水)
荒船パノラマキャンプフィールド6:22〜市野萱バス停8:35−羽根沢バス停〜線ヶ滝駐車場
朝焼けの八ツ、北アルプスを期待していたがあいにくの曇り。寝過ごしたので慌ててラーメンをかき込みキャンプ場を後にする。管理棟の東側の車道から登山道に入る。雑木林を緩く登っていくと、物見岩の名のとおり露岩があるが、周囲の山は雲に覆われていた。道標に従い神津牧場への下り道へと別れる。朝の静けさの中を気持ち良く歩いて行けば、行く手に陽を浴びた牧場の白い建物が見えてくる。駐車場に出たので、メインストリートを歩く。まだ働く人の姿はなく、売店も定休日なので、ソフトクリームは今度車で来た時にもちこしだ。牧草地の周りの名残りの黄葉を惜しみ、市野萱へは残念ながら舗装道歩きだ。大島亮吉の紀行文にも出てくる屋敷集落が朝陽に照らされて一度開けるが、あとは単調な杉植林の中を、膝をかばいながら下る。市野萱の集落を抜ける道は、車もすれ違えない幅だった。
初めての西上州は期待どおりのひなびた風情と、名残りの紅葉、さらに思いがけない展望を楽しむことができ、非常に良かった。次は軽荷で淡々と歩きに行くことにしよう。
(この後、バスで下仁田駅へ移動。バスを乗り換えて「道の駅オアシスなんもく」下の河原で接続待ちをし、羽根沢から線ヶ滝駐車場まで歩いて車を回収した。線ヶ滝は一見の価値がある。また、さらに下流の「蝉の渓谷」も面白い。)
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