津軽半島 増川岳 難攻不落の藪山に新ルートで挑む
- GPS
- 08:19
- 距離
- 3.6km
- 登り
- 547m
- 下り
- 548m
コースタイム
天候 | はれ 気温: たぶん18℃くらい |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2024年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
登山道、元登山道でもない、完全なる藪ルートです。 ヤブの状況 基本的に標高が上がるほど密藪になります。 ■標高200~400m付近 期待していたヒバ林の下草なしではなかったけど、そこまで濃くもなく、比較的普通に歩ける。ただ斜度はかなりあるのでグイグイ登る。 ■標高500m付近 この辺りから笹薮がかなり濃くなってくる。ほとんど背丈より高いヤブで見通しがきかないし、時おり黒くて屈強な「ブラックキラー藪」も登場し始める。ただ、まだそこまで密藪ではなく、足を置いて進める空間はある。まだまだ急登が続く。 ■標高600m付近 かなり濃密なヤブになる。笹の目に沿った上下方向の移動はできるが、横方向の移動は困難を極める、というか、実質ほぼ無理。登りは良いけど、下りでは笹の目が必ずしも稜線方向に沿っているわけではないので、降りる方向を少しでも間違えると稜線復帰までとんでもない苦労を強いられる。横移動は出来ないので、基本、登り返し。下山時かなり足に疲労がたまっている状況でそうなるとあっという間に足がバーストする可能性も。 ■標高650m付近 斜度が一段落し、あまりアップダウンの無い道となる。まあそれなりに密藪だけど、斜度が無い分体力的にはかなり楽に感じた。ここで多少の体力回復。 ■標高 700m~山頂稜線部 これまでとは異次元のスーパー密密密藪。感覚的に植毛密度10倍以上、数メートル移動するだけでも全力で笹をかき分け、足を思いっきり上げてないと進めない。体力消耗もハンパない。ただ山頂部一帯だけは少し低めの笹薮でした。 |
写真
感想
前回5月のGWに、山頂稜線まで行ったものの、密ヤブに行く手を阻まれ結局敗退をした増川岳。このまま呪縛の一座にしたくないーとは思っていたけど、やはりどうやっても頭から離れない。いっそのことヤマレコの「登ったことにする」機能を使って登頂したことにして自分の目の前から消そうとも思ったけど、今まで苦労の末に登頂されてきた諸先輩方は皆さんそれ相応の苦労の末に登頂を果たしていることを考えると、自分だけそういうズルっぽいことをするというのも憚られるし、かといって自分にはどうやっても登頂は無理そうだし、一体どうすれば、、、
基本的には残雪なんだよな、でも自分は残雪登山はどうしても苦手。今まで自分が危険な状態に陥ったのはいずれも残雪期、積雪期だし。無雪期であれば最悪その場で寝転んで待てば体力は回復する。ビバークだって出来なくはない。待てば体力は絶対に回復するものだ。しかし残雪だとそうはいかない。雪の上で横になるわけにもいかないし、止まった瞬間から体温がどんどんと奪われてあっという間に低体温症になってしまう。また滑落の恐怖も人一倍感じるほうなので、ちょっとでも斜度があるところはホントに歩けない。なのでこの増川岳を攻略するにも、どうしても無雪期のヤブ漕ぎというのは自分にとっては避けられないんだけど、前回経験したあの山頂稜線のスーパー密藪はとても突破できる自信がないし。。。
と考えながら地形図を眺めていると、一つの秘策が頭に浮かんだ。山頂稜線を歩くのが無理なら、いっそのことダイレクトに登る尾根で山頂に直接登り詰めれば山頂まで行けるのでは?幸いにして車道もその近くまで来ているし、山頂まで水平距離も約1.5kmしかない。1.5kmと言えば山頂稜線を歩くのと同じ距離だ。あのスーパー密藪を滑落の危険を感じながら1.5km歩くのであれば、ヤブが薄そうなところを1.5km歩く方がまだマシなのではないか。前回登山道で登った際も、下のほうはヒバ林でずいぶんと歩きやすかったし。それで少しでも標高が稼げれば、大分楽になるはず。またスタート地点も登山口に比べて標高で150mくらい高い。もし自分が登頂できるとすれば、もうこの方法以外考えられなくなってきた。
というわけで敗退から1か月後、再び降り立った三厩の地。事前調査で 5/30 にアクセス道が冬季閉鎖解除になっていることは確認済み。前回閉じていたゲートも無事開いている。車で目的地まで行く。登山口の分岐から約4km、川の近くのスペースに駐車した。ここなら車を停めていても釣り人かなと思われるだろうから不自然は無いだろう。正面に増川岳が壁のようにそびえるのを一瞬見てしまったが、なるべく忘れるようにする。、。、
林道脇のヤブからおもむろに入山。前回すごく歩きやすかったヒバ林を期待していたが、残念ながらそれは叶わず、でもまだ笹の背丈も低く、そこまで歩き辛くもない。ただ斜度はかなりのもの。1.5kmで標高差550mも登るんだから、まあ急登だよね。
標高400m付近で一度目の大休憩。なかなか縮まらない標高差に少し焦りを感じながら、でも着実に体力をマネジメントしながら歩くことに集中する。標高が上がるとどんどんと深さを増す笹薮。高くなり、硬くなり、密になる。歩く場所を見定めながら、急登の尾根を登っていく。標高650mあたりで地形がなだらかになる。経験上、平らなヤブはむしろ歩き辛い印象があったけど、ここはそうでもなく、今までの急登に比べたらずいぶんと楽に歩けた。ここをゆっくり歩き、多少の体力回復が行えたおかげで、山頂付近のスーパー密藪にも耐えられたような気がする。このまま行けば何とか登頂できそうな気がしてきた、でも山頂直前での大どんでん返しは今まで何度も経験しているので、不測の事態が起こることも想定しつつ、気負わず、油断せず、平常心で。、、。、
やはり、というか、やっぱり悪い予感は当たるもの、標高700m、もう山頂は目の前と言うところで、今までとは全く異次元の超スーパー密藪が現れた。そこを突破しないことには山頂には近づけない。かと言って周囲をウロウロする余裕もない。意を決してそのスーパー密藪に突入、全力で笹をかき分け、体をくねらせ、引っかかるザックを全力で引き抜き、足を思いっきり上げ、何度も笹にはじき返されながら進むこと数メートル、ようやく突破すると山頂広場に出た。広場と言っても低めの笹が生い茂っている。GPSを頼りに正確な山頂位置を探すと、大きな石の陰に「増川岳」と書かれた山名板を発見。ついに登頂したんだな、あの増川岳に。三角点は軽めに探したけど見つからなさそうなので早々に諦めることにした。
山頂からは大展望。自分的に一番見たかったのは、何といってもヤブ山で登った隣の平舘山地、袴腰岳と丸屋形岳。これ以上ないくらいはっきりと見える。これ以上なにを望もうか。
山頂でゆっくり休憩する予定だったけど、日差しは強いし、一面笹薮だし、結局まともな休憩も出来ないまま下山に入る。先ほどのスーパー密藪は少しぐるっと回ったら回避できた。もし山頂稜線を1.5km歩いてきたらあのスーパー密藪を何度くぐり抜けないとここに到達できないんだろうということを思いながら。
下山は想定以上に大変だった。最も苦労したのは標高650m付近の密藪での下山方向決め。過去の経験でスマホを片手に持ちながら頻繁に現在地を確認すれば尾根を外すことは無いだろうと思っていたが、それでも何度も外してしまう。原因はスマホGPSの反応速度。現在地が更新されるまでに少しタイムラグがあるようで、その間にどうしても行き過ぎてしまうのだ。また地形図の等高線も10m間隔なので、細かい地形までは把握できない。密藪だと横移動がとにかく大変というか実質無理なので、稜線復帰は基本的に登り返しとなる。実際、何度登り返したことか。一度、横着して下りながら少しずつ方向修正しようともしたが、ますますあらぬ方向に行きそうになったのにはびっくりした。面倒くさがらずに登り返さないと本当に大変なことになる。
で、スマホばっかりに頼っていてはいけないと反省したところで、自分の目で、しっかり地形を見るようにしてみたら、これが思いのほか非常に効果的だった。歩く前に左右を見渡し、自分が左右より低い方向に行きそうになってないか、もしそうであれば早めに少しずつ方向修正する。これで稜線外しは格段に減り、安定して下山の歩を進められるようになった。こうやって自分の目でしっかり地形を見ることの大切さを身をもって実感できたのは今回の大きな収穫の一つだったような気がする。
標高が下がると沢地形も増え、そちらのほうが明らかに藪も少ないので何度もその誘惑に負けそうになったが、そこは一貫して「沢に下るな」を貫き通した。沢を下った時の恐ろしさは以前の「大森」で痛いほど実感させられてるのでね。もしあのまま沢を下って行ったら二度と戻れないところまで下ってしまうでしょう。
というわけで、無事下山。これにて津軽半島のヤブ山4座、全て登頂となりました。ついに難関、みちのく120山達成へのグリーンランプがようやく灯った気がする。というわけでこの4座の個人的難易度を勝手に付けさせて頂くと、浜名岳 > 増川岳 > 袴腰岳 > 丸屋形岳、の順番かな。浜名岳は1度目の残雪期チャレンジであれだけ危険な状態に陥ってしまったのと、結局日帰りでは無理で1泊2日で登頂、それでも足攣りアクシデントもあったということで、やはりこの中では大変だったと思う。袴腰岳は登頂した3年前は本当にとんでもないと思ったけど、今考えれば登山口からはしばらく踏み跡もあるし、急登部は笹が低くて見通しは効くし、南峰〜北峰間も樹林帯で笹薮は薄いところを歩けるということを考えると、まあ他の2座よりはそうでもなかったのかなと今となっては思う。丸屋形岳はヤブ漕ぎ距離も少ないし、笹もそこまで強くないし、山行時間も他の3座よりも圧倒的に少なくて下山後に蓬田の袴腰岳14kmを登りに行こうとしてたくらいだから (結果的に林道通行止めで靄山へ移動)、まあ他の山に比べたら楽だったと言えるんじゃないかな。袴腰岳と丸屋形岳はもう一度登っても良いかなーという気もするけど、逆にもう絶対二度と登りたくないのは、、、この増川岳か。(笑)
1か月前の敗退記録
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-6737215.html
コメント
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増川は何かに取り憑かれないと、この頂には立てないと思いますし、バリエーションルートでよく成し遂げましたね。
みちのく120のお山も十和田山以外は登りやすいので…というか北津軽の山々に比べればどこも快適に感じると思いますが!
本当にお疲れ様でした。
確かにね、やっぱ取り憑かれてるのかな。薄々感じてたけど、、
ま、でも本当にあの山頂稜線のスーパー密藪はどうやっても自分には無理だったので、このルートが自分に残された登頂可能な唯一の方法だったと今でも思う。しかしえのひ殿はすごいね、あれを突破するなんて。信じられない。多分、自分より取り憑かれてると思う。
ちなみに今回、マダニ被害は見つけただけで4匹。もしかして噛まれたかもしれないけど、今こうやって生きてるから恐らく大丈夫でしょ。ね。
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