奥多摩/丹波川周辺沢登り(泉水谷大黒茂谷・小常木谷岩岳沢)
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- GPS
- 64:00
- 距離
- 12.1km
- 登り
- 1,462m
- 下り
- 1,404m
コースタイム
9:45 駐車スペース→10:05 大黒茂出合→12:50 終了点→13:25 出合→13:50 駐車スペース⇒三条新橋手前で幕営
7/19(日) 4:30 起床, 5:50 出発⇒6:15 余慶橋→6:30 小常木谷出合→6:40 火打石谷出合→9:00 F2下→10:15 岩岳沢出合→11:30 事故発生→12:45 登山道→15:20 余慶橋 16:00⇒16:15 奥多摩湖⇒20:05 茅ヶ崎
天候 | 7/18(土)晴れ時々曇り、7/19(日)曇り後雨後晴れ |
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アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
7/18
朝寝坊もなく奥多摩に向け出発。途中奥多摩周遊道路が開くのを待った(8:00〜19:00のみ通行可能)以外は順調に到着。泉水谷林道は92年に小室川谷に入ったときは通行不可であったがゲートはなくなっている。暖かく絶好の沢日和である。(一の瀬川は泳ぐのには寒く、前夜まで雨で水量が多いことが予想できたので変更した。)水量は多い。大きい淵を持った滝が次々と現れるがいずれも容易に越せる。一枚岩のナメ滝も綺麗である。岩はフリクションがあまり効かず滑りやすい。淵の砂が金色に輝いている。砂金かと思ったが金雲母のようである。楽しい河原歩きが続く。仕事道の橋で遡行を終了し大黒谷林道を下る。本には荒れていると書いてあるが十分下山用として利用可能である。この後河原にテントを張ってビールを飲みながらくつろぐ。
7/19
天気ははっきりしない曇り空。余慶橋まで車で。駐車は奥多摩湖よりに左右で10台位可。国道を三条新橋の方向に5分ほどもどり階段を下り、さらにワイヤーにつかまり下降して丹波川本流へ。すぐ前に両岸絶壁の小常木谷が出合う。壁の間を10分ほど進むと火打石谷が出合う。水量豊富である。しばらくは手頃な滝をいくつか越え、ナメ滝を歩き快調に進む。滝の釜には魚の陰が見え隠れしている。釜は深く暑い日には泳いで取り付くのも楽しそうである。(いざとなるとなかなかできないが…)花ノ木沢が出合ってしばらくすると兆子の滝が現れる。水流の左を登る。途中ビレー2カ所とれる。水流が多く、落ち口がいやらしい。tadomasa、N本、13Kの順にズブ濡れになりながら登はん。その上は右から巻く。不動の滝も右から巻く。草付きが滑りいやらしい。シュリンゲを使いA0。次々に滝が現れる。水流が多く無い時期(8月後半〜10月)ならば直登をじっくりと楽しめそうである。高巻きは不安定で時には懸垂下降も要する。置草履ノ悪場が終わり岩岳沢にエスケープすることにする。岩岳沢に入ると幅広の滝が続く(II〜III)。二俣で左はトイ状の滝。右へ入る。すぐに12mの滝。高巻きは悪い。直登がよい(III+〜IV)。その上の三俣は左へ入る。12m滝(III)があるが容易。更に二俣は右へ入る。5m滝(III)の上で事故が起こった。私はその時ラストにいて見ていないがセカンドにいたtadomasaさんが足に落石を受け立ち止まっている。その様子から大したことは無いと思ったがキズの一部を見たtadomasaさんから靴下を下げて傷を見て欲しいと言われ、靴下を下げて思わず息を飲む。靴下は全く切れていないが足は縦に8cmほど深さ1cm位、パッカリ切れている。見た目には15針は縫う怪我に見える。一瞬ヤバイと思うがtadomasaさんには「大したこと無いですよ」と声をかけ、あり合わせのバンドエイドを使い傷を塞ぐように傷に垂直に貼っていく。その上にテーピングテープを巻いていく。tadomasaさんは痛みもなく、歩ける様である。(不幸中の幸いだが、傷口が横であったら血管、腱が切れていたかもしれないし、当たり具合では骨折していたかもしれない。)歩きながらtadomasaさんに気づかれないように隙をみてN本さん、13K君に傷の様子を伝える。tadomasaさんは何事もなかったかの様に歩いている。傷を見てしまった私には信じられず、ただ出血が起こらないことを念じていた。二俣を右へ進むと4mの滝(III+〜IV)。非常にもろい。安全のためザイルをだす。このあとはもろいガレ場の急登が続く。傾斜のきつい斜面の藪こぎを10分ほどで登山道へ出る。一安心。登山道は荒れており、橋が落ちている、倒木が非常に多い。しかし登山道へ出るまでの事を思うと夢の様な道である。無事(ではないが)駐車場へ帰り着く。tadomasaさんの傷を消毒しテーピングをやり直す。
事故原因、反省点等は多々あると思いますが事故報告書に盛り込み今後の教訓にして行きましょう。取り合えずお疲れさまでした。
(Aki-CLさん記)
■事故概要■
1998年7月18日(土)〜19日(日)の奥多摩・沢登りにおいて、滝登攀中の落石によりtadomasaが左足首付近を負傷した.
応急処置後、幸いにしてtadomasaは時間をかけながらも1人で歩くことができたので、我々は自力で下山することができた.
以下に概要を説明する.詳細は山行記録と事故報告を参照下さい.
7/18(土)大黒茂沢遡行.途中の仕事道を経由し下山.付近にて幕営.
7/19(日)小常木沢遡行.6:30余慶橋付近を出発し遡行開始.雨が降り始めたこともあり10:40エスケープルートの岩岳沢に入る.11:30頃1300m付近の10m程度の滝にてトップの13Kが5m程登ったところで,左手で5kg程度の岩を落とす.下を見ると,1m程度登っていたセカンドのtadomasaの左足に石が当たり,石ごとtadomasaが落ちるのが見えた.落石は当突で,「ラク」と叫ぶのが精一杯であった.状況から考えて骨折したかと思ったが,tadomasaが平然(?)と立っているのを見て,少し安心した.tadomasaは「一つ目は避けたが,二つ目は避けきれなかった」と言っていた.見るところ傷口は縦に長く出血は少い.Aki-CLが治療にあたり,足首上の傷をカットバン約6枚で傷を抑えてテープで補強した.Aki-CLは13Kに小声で「10針ぐらい縫いそうだ」と言った.tadomasaは傷の痛みはないと言い,その後の登りと稜線からの下りは普通に歩いた.12:45稜線着.15:20余慶橋駐車場着,着替え時にtadomasaの左膝付近も負傷していることが解った.足首の傷と共にオキシフルで殺菌しカットバンで抑えて,テープで補強し応急処置する.膝の傷は約3cm,足首の傷は10cm程であった.20:00茅ヶ崎のtadomasa邸着.20:30頃病院着,治療を受ける.
なお、tadomasaの治療費は、後日、13K加入の山岳保険・賠償責任特約により支払われたことを補足する.(\1000のみ自己負担)
(13Kさん記)
■事故報告■
岩岳沢に入ってからの状況はAki-CLの参考報告に詳しい。
本件の滝の手前には5m滝(III)があったが、Aki-CLとN本が滝上に看板が見えると言った。登ってみると、そのようなものは無く、単に濡れた岩が反射していたようである。13Kはここで、「こんなところで看板のようなものがあるとすれば遭難碑でしょう。」と言ったが、それに対してtadomasaは「こんな貧相な沢で遭難するのも浮かばれない。」と答えた。事故とは関係の無い些細な会話であるが、妙に詳細が思い出される。
問題の滝は13Kの報告で10mとあったが、tadomasaの立っていたところからはそのような高さには見えなかった。正面の涸滝は60〜70°程度の傾斜で5m程の高さで立っているが、見たところブロック上のホールド・スタンスが豊富で困難さは感じられない。滝の基部からは傾斜が30°程度の勾配であり、浅いV字状になっていた。
トップの13Kが取り付き、滝の真ん中に居る頃、tadomasaは基部から5m程手前でとどまっていた。N本はその直後に、ラストのAki-CLは更に後方に居た。
先に書いたように乗越すには容易な滝であり、V字の中央で13Kの登攀を待ち周囲の状況を眺めていたりした。瞬間、「ラクッ!」と13Kの声が上がった。先ず、数cm程度の丸い小石が飛んできて、ついで、15cm立方程度の岩が落ちてきた。小石はあっという間に脇を抜けていったが、次の岩はこれよりやや遅くtadomasaの所まで達した。これは左足を上げてよけることが出来、岩は足元に止まった。だが、更に同程度の岩が落ちてきており、左膝上に当たった後、左脛を引っかくように当たって止まった。落石を受けた衝撃と言うものは余りなく、体が後ろに押された感じであった。衝撃も、また、痛みも無く、「当たってしまったか。2つ来たからな。」と思っていたが、足を見ると、足首の上脛の左側がぱっくりと口を開けて切れている。下の方は靴下に隠れて見えないが見えているところで長さ5cm、深さ1cmといったところか。
立ったまま、呆然とした。肉が妙に白い。出血は少ない。こんなに深い傷にもかかわらず、痛みがないのは何故だろう、或いは、痛みが無いのに何故こんな深い傷なのか、と考えながら、取りあえず足はどうかと思い足指をゆっくり動かすと、きちんと動く。足裏感覚も無くなっていない。膝も曲がる。
応急手当をする段で、余り傷を見ていると意欲が萎えてきそうでAki-CLに処置を頼んだ。雑菌が入ることを恐れ水で洗わず、そのまま傷口を合わせ、N本が持っていたバンドエイドで横に5〜6列ほど傷口を押さえ、その上からtadomasaが持っていたテーピングテープを圧迫しないように気を付けながら巻いた。靴下は切れていないが、傷はその下にも及んでおり、長さ8cmにもなっていた。靴擦れを感じていたので、朝足首にテープを巻いていたのだが、そこで傷は止まっていた。
Aki-CLは「大した事無いですよ。」と声を掛けてくれたが、横になりながらも傷を見ていたtadomasaは10針以上の傷だな、と感じていた。しかし、痛みが無いのが幸いである。今のうちなら、登って尾根を降りることもできると思った。何時痛みが襲ってくるのかが不安であり、また、余り困難なところが無いことも祈った。
13Kが滝の中間で立ちすくんでいるが、大丈夫と声を掛け、先に進ませる。その後の状況はAki-CLの報告に記述されるとおりである。尾根に出たところで、Aki-CLが何処かからちょうど杖になる手頃な枝を見つけてきてくれた。杖には下りで大分助かった。
上述のように、落石が生じた瞬間をtadomasaは見ていない。13Kの話によると、左手を置いたブロックが何の前触れもなく落ちたと言う。5kg程度の岩というが、おそらく、これが2つに割れて(先にクラックが入っていたか、或いは、落ちながら割れたか)落ちてきたと思われる。割れた鋭利な岩角による外傷と思われる。ズボンと靴下には損傷らしきものはなかった。
原因としては先ず、tadomasaが注意散漫であったことが責められる。容易なところと感じ、油断があったとも言えるが、危険を感じさせないところに事故が多いのは交通事故とも共通することかもしれない。
先行者との距離は通常この程度に保つ習慣であったが、かえって、本事故のケースのように危険が伴う場合がある。10m離れていれば落石を避けられる確率はかなり高いと感じる。本当に落石が有りそうに感ずるところではこれを避けるように待機場所を探すものだが、現実には沢登においては何処にでも落石の危険性があることを銘記しなければならない。
また、ポジショニングについてもV字の底で待っていたことが落石を受ける原因の一つである。落石は自ずとV字の谷に集合してくるものであり、足場は良いものの危険性が高い
今回は不幸中の幸いであったが、装備としても医薬関係は省略できないことを思い知った。外傷の恐れが高いため、消毒液、ガーゼ、包帯類は必携すべきものと教えられた。
7月21日夕方に再度病院に行き、外科医の診断を受けたが、脛の傷はよく着いているとのことである。膝上の傷はもう一つかとのこと。膝上の傷は当初気が付いておらず、しばらく経ってから少し痛むことで気が付いたが、処置は下山するまでしなかった。この3時間の違いのせいかとも思う。また、原則的に6時間を経過したら縫合はしたらいけないと言うらしい。tadomasaのケースでは約9時間経過していたが、今後記憶しておいた方が良いだろう。
(tadomasa記)
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