カーナーボン・グレート・ウォーク
- GPS
- --:--
- 距離
- 85.7km
- 登り
- 2,414m
- 下り
- 2,394m
コースタイム
- 山行
- 5:10
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 5:10
- 山行
- 6:15
- 休憩
- 0:30
- 合計
- 6:45
- 山行
- 5:10
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 5:10
- 山行
- 8:45
- 休憩
- 0:45
- 合計
- 9:30
- 山行
- 5:40
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 5:40
天候 | 1日目 曇のち晴れ 2日目〜5日目 快晴(雲が全く無い!) |
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過去天気図(気象庁) | 2024年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
長距離運転が嫌であれば、途中のローマという街までブリスベンから飛行機の便がある。ただローマからトレイルヘッドまでも240キロあるし、豪州内の国内線は高額である。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
2日目の戦艦スパーの登りを除けば危険箇所は全く無い。標高差が少なく体力的には楽なルートだが、その分1日で歩く距離は長い。 踏み跡が全般に薄いので、怖いのは道迷いだが、マーキングがしつこいほどあるので、こまめに確認していれば大事にはならないだろう。 事故の確率は少ないものの、起こってしまったら人の居住地域から隔絶されているだけに、大変なことになる。特に単独行では致命的になる可能性が高い。クイーンズランド州ではPLB(パーソナルロケータービーコン)の携帯を推奨している。私は持っていかなかったが。 私はスマホアプリのMapsMeで現在地確認していた。MapsMeにはカーナーボン・グレート・ウォークのルートも入っている。 各キャンプ地は有料で予約が必要(1泊AUD7.5)。オンラインで予約と支払いができる。 https://parks.desi.qld.gov.au/parks/carnarvon-great-walk |
その他周辺情報 | トレイルヘッドから一番近い人の居住地は150キロ離れたインジューンである。モーテルは3件ほどあるが、私が泊まったInjune Motelは安くて快適だった。近くのロードハウスで朝早く(6時半)から朝食を食べることも出来た。 |
写真
感想
日本があまりにも暑く、山の混雑も嫌気がさすので、季節が逆の豪州で数日のトレッキングを計画した。初めはノーザン・テリトリーのジャトブラ・トレイルを狙っていたが、予約開始のわずか3分後に全日程が埋まるという凄まじい人気ぶりで諦めた。次点のクイーンズランドのソーズボーントレイルも満杯で、結局同じクイーンズランドのカーナーボン・グレートウォークが空いていたため、ここに決めた。
ゴルジュの底からスタートし、アボリジニの壁画や狭い回廊を見ながらゴルジュを詰めて幕営し、翌日に枝沢の急なルンゼを登って台地(中学で習ったグレートディバイディング山脈!)の上に出て幕営しながら周遊し、最終日にまたゴルジュに降りてくる変化に富んだルートである。通常6日間だが、台地の上は長くて単調みたいなので、頑張って5日間で歩いてみることにした。日本人の完走記録は見つけられなかったが、変化があって面白そうなルートだ。オージーには人気みたいだが、冬はかなり寒いようなので、あまり歩く人はいないようだ(ただ夏は山火事になるので、トレイルは閉鎖される)。
ブリスベンからは公共交通機関が全く無いので、レンタカーでアクセスしたが、トレイルヘッドまで720キロもあるので、150キロほど手前のインジューンという村のモーテルに泊まった。翌朝更に運転し、ようやくトレイルヘッドに到着である。
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■7/28 --1日目 Sun 曇のち晴れ
トレイルヘッド9:55〜15:05ビッグ・ベンド幕営指定地△
前日夜に結構な雨になり、天気が心配だったが、朝には止んでトレイルヘッドに到着する頃には晴れ間も見えてきた。初日の今日は、日帰り観光客と一緒にゴルジュの5つの名所を見て回る。デカいバックパックを背負っているので目立つのか、グレートウォークを周回するのかと何人にも声をかけられた。各名所はそれぞれ個性があって楽しめたが、アンフィシアター、アート・ギャラリー、カテドラルの3つが予想外に素晴らしかった。
アンフィシアターは枝沢の狭いゴルジュで、ハシゴで登らなければならない上、途中あまりにも幅が狭くて一人通るのがやっとのところもある。そこを抜けると大きなホールのようなところに出て、遥か上にある穴の上の空を眺めることが出来る。あまりに規模が大きくてただただ驚きだった。欧州の天井が高い教会の中にいるようだった。
アート・ギャラリーとカテドラルにはアボリジニの古い壁画が保蔵状態良く残っている。たくさんの手形が印象的だが、解説によると、これは家族構成を表したものだそうだ。それ以外にもブーメランやチェーンなど面白い絵を見ることができる。豪州あちこちにある壁画の中でも保存状態がかなり良いものらしく、これを見るためだけにここに来る価値もあると思った。
ゴルジュの一番奥のビッグ・ベンドの幕営指定地に5時間ほどで到着した。声が反響する大きな壁の真下に川が流れており、風も当たらず快適な場所だ。この日はテント泊は私一人しかいなかった。今日はほぼ水平の道で、荷は重かったが楽だった。最大の難所が待つ明日を控えて、早めに休んだ。
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■7/29 --2日目 Mon 快晴
ビッグ・ベンド7:20〜10:10戦艦スパー10:40〜14:05ガッズ幕営指定地△
ビッグ・ベンドからカテドラルまで10分ほど戻り、そこから枝沢のゴルジュに入った。このゴルジュもとても素晴らしく、曲線美にため息が出るほどだった。ここには壁画はないが、メインルートからすぐなのに、観光客が全く来ないのは、もったいないのか逆に静かで良いのか…
30分ほど詰めると枝沢に登り口の表示がある。ここはゴルジュではなく急なルンゼだ。スリップと滑落の危険があるため、細心の注意が必要だが、20分ほど登るとルンゼは終わり、一旦平坦になる。しかしやがて急な細尾根をたどる様になり、戦艦スパーへの最後の登りになる。ゴルジュから戦艦スパーのてっぺんまで標高差600mある。きつかったが、日本の山登りではよくある程度の難所だ。3時間かからず順調だった。
戦艦スパーからは木々が邪魔をしてあまり眺めは良くないが、その手前何箇所かでパノラマがあり、カーナーボン国立公園一帯の様子がわかった。眺めは素晴らしいが、平坦な台地とその下の大平原がひたすら続く、いかにも豪州という広大さだった。爽快ではあるが、いかんせん単調なので見ていて飽きてしまう。ただ通ってきたゴルジュを上から見るとウネウネで、それはすごかった。多分グランドキャニオンとかもこんな感じなのだろう。
全日程の一番の難所をこれでクリアした。あとは台地の疎林の中のブッシュウォークが3日間続くことになる。危険はないが、ルートを外しやすいのでそれだけは注意だ。こんな人里から隔絶された地で迷ったら確実に野垂れ死ぬだろう。まず、どこもかしこも水がほとんど得られない。想像するだけでゾッとする。
カンガルーや野豚に遭遇しながら淡々と歩いた。カンガルーはともかく野豚がこれほど多いとは思わなかった。登山道の周りにも掘り返しの箇所が多くあった。ガッズの幕営指定地は丘に囲まれた平坦地で居心地が良かった。ただ水は雨水タンクなので、金属臭が若干する。この先、川はもう無いのでこの水で我慢するしかない。豪州での水の貴重さが身にしみてわかる。水に関しては日本の山はものすごく恵まれていると思う。
真っ暗になると、凄まじい星空になった。天の川が雲のように濃淡まで見えるのは驚いた。世界中で星空を見たが、ここ以上にクリアに見えたところはなかった。
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■7/30 -- 3日目 Tue 快晴
ガッズ指定地6:45〜11:55ウエスト・ブランチ幕営指定地△
朝は−3℃まで下がった。強い寒気が入っており、平年より気温が低くなるのは予報でチェックしていたが、予想以上に下がった。朝方寒くて目が覚めたが、ここまで冷えるとは思っていなかった。寝袋を冬用にして正解だったが、防寒着を着て寝なかったのは甘かった。
今日と明日の行程は台地の上を歩くので標高差が少なく距離を稼げる。今日は前半は古い車道を登り、あとはゆるい下りのブッシュウォークで半日でウェスト・ブランチに到着した。天気もよく体調も良かったので順調だった。
ウェスト・ブランチ指定地は、グレートウォークのうち唯一車でアクセスできるキャンプ地だ。設備は整っており、快適だった。最初は誰もいなかったが夕方に2台ほど車がやってきた。敷地はウォーカー用とキャンピングカー用に分かれており、300mほど離れているので、お互い接触することなく過ごした。この日は燃料節約のため焚き火をして炊事した(火を炊ける炉が準備されているが、もちろん火の元には注意して)。ユーカリの枯れ葉にライターで火をつけたらあっという間に木に燃え移って、何の苦も無く火を起こせた。これだも山火事がバンバン起きるわけだ。
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■7/31-- 4日目 Wed 快晴
ウェスト・ブランチ指定地6:30〜11:40コンスエロ指定地12:25〜16:00キャベツの木幕営指定地△
この日もテントがバリバリに凍るほど冷え込んだ。日本で言えば宮古島と同じ緯度なのにこの寒さは何なのだろうか。冬装備で大正解だったが、それでも朝方少し寒くて目が覚めた。
今日は台地の上の起伏の少ない単調なルートなので、出来ればキャンプ場を一つ飛ばしてキャベツの木まで行ってしまいたかった。日の出前の薄暗いうちに出発した。標高差450mを2回に分けて登るが、日本の山に比べれば斜度は緩くきつくはなかった。標高1100mほどでほぼ水平の道になり、スピードを上げることが出来た。地図にマホガニーの森と書いてある場所はこのルート最高点の1220mである。特に看板も何もなかったが、写真に収めた。どの木がマホガニーなのかはさっぱりわからなかった。
予定より早く5時間ちょっとでコンスエロのキャンプ場に到着した。誰もいない。カップラーメンを作って昼飯にする。いつの間にか土が赤土に変わり、ユーカリの木と合わせてアフリカの風景のようになってきた。体調も良いのでそのまま先に進む。
コンスエロからキャベツの木までは全く起伏がない古い車道でとにかく単調だった。重い荷物でも疲れないので、2時間歩いて休憩を取った。あと2時間歩けばキャベツの木のはずだが、1時間半で到着してしまった。道が良いと流石に早かった。
昨晩まで私一人のキャンプが3泊も続いたが、ここへきて2パーティもオージーがいてびっくり。別に寒がりじゃなくてちゃんと冬も歩く人がいるんだと安心した。昨晩までたまたま会わなかっただけだったようだ。
英語が難ありなので雑談に加われず悲しかったが、31キロもの長距離をトラブルなく予定通り歩けた充実感は大きかった。食料を食い尽くすため、いっぱい作って食べた。予定通り明日は下山だ。
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■8/01-- 5日目 Thu 快晴
キャベツの木指定地6:40〜12:20トレイルヘッド[下山]
老夫婦がまだ暗いうちに出発したが、私は日の出の少し前に出発した。もう一つの若いカップルは逆回りで今日が2日目だ。
最終日のルートは変化があって面白かった。乾燥林とブッシュの逆光の風景が綺麗だった。途中、台地の東端に到達したが、果てしない平野が続いていることにまた驚いた。途中で老夫婦を抜かしたが、ペースは遅いものの健脚のようだ。私もこのくらいの年齢まで山歩きをしていたいものだ。
順調に歩き、ブーリンバ・ブラフの分岐に到着。荷物をおいて展望台を往復してきた。カーナーボン・ゴルジュの入口から眺めるパノラマはなかなかの迫力で大満足だった。ゴルジュへの下りは戦艦スパーのときと同じようにルンゼを使うが、比べ物にならないくらいちゃんと整備されていた。スニーカで登れるくらい配慮されたハイキング道だ。
5日ぶりにトレイルヘッドに到着した。トレイルは危険はほとんど無かったものの、何かあったら誰からも発見されずに野垂れ死ぬプレッシャーは相当なものがあり、とにかくホッとした。
ローマという街まで運転してモーテルに泊まり、5日間の汗を流した(とは言っても、寒かったので汗はあまりかかなかった)。翌日また1日かけて運転し、ブリスベンに無事に戻った。
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以下はウオーキングを終えた日の日記より:
日本の山に比べて変化がなく単調なのが否めないクイーンズランド中央高地ですが、ユーカリの疎林のブッシュの逆光の風景は日本ではまずあり得ない、明るく透明感溢れる光景でした。
5日間歩いて一番印象に残ったことは、写真ではわかりませんが、木々の根元が黒く焼け焦げていることです。ゴルジュの中から台地の上までことごとく全ての木が黒焦げなのです。この地域は夏は山火事が多いのでトレイルも閉鎖されるのですが、相当な頻度で燃えているのだとわかりました。この地で生まれた木は、遅かれ早かれ焼け死ぬ運命にあるのだな、としみじみ思いました。きっと太古の昔から、そうやって世代交代して森は存続してきたのだと思います。日本の森の成り立ちと全く別のものを感じました。
最後は観光客も訪れるブーリンバ・ブラフの展望台が締めでしたが、呆れるほど広くて何も無い平原が広がっていました。こんな平坦な地形、それもサバンナや砂漠でなく、森が果てしなく続く平原は今まで見たことがなかったです。歩いた台地も平坦でしたが、その下に広がっている平野も限りなく平坦なのでした。おびただしい木の量だと思います。これが燃えてしまうのだから、ものすごいことです。
このトレイルは危険箇所はほとんどないのですが、難しさはアクシデントがあったときに誰も助けてくれないシビアさだと思います。おそらく半径150キロ内に民家は無いです。あちこち注意看板がありましたが、全て自己責任、単独では行くな、発信機を携帯せよ、など仰々しい警告だらけでした。今更ですが、一人で歩くのは無謀な部分もあったと思います。特に人の少なさに驚きました。一日10人くらいは会うかなと思いましたが、観光客を除けば多いときで1日4人だけでした。3日目は誰にも会いませんでした。
豪州はタスマニアを除いて地形や植生的に興味の持てない地帯だったのですが、訪れてみるとそれなりの発見があり、面白かったです。ただそうはいっても今回はクイーンズランド中央高地だけですので、他の州はまたぜんぜん違うのだと思います。南部や西部も将来行ってみたいと思いました。
何にせよ、無事に終えられて良かったです。まだ日本が遠いですが、気をつけて帰ります。
コメント
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世界には色々なところがあるなあ、と改めて思わされました。
ほんと色々ですね。そして日本の山は世界的に見ても魅力的だな〜といつも思います。
今回は探すのにとても苦労したルートですが、行ってみてほんと面白かったです。ゴルジュの中と上とで全然景色が違うので楽しめました。日本にはない景観でした。
オセアニアというと、ニュージーランドの山歩きは時々聞きますが、オーストラリアで歩いたことがあるという話を聞いたことがありませんでした。
それにしても、100km以上も民家から離れているというのに観光地??ではあるんですね!そしてほどほどに整備されているのでしょうか?!不思議なところです!
カンガルーと豚さんが出てきましたが、熊的な猛獣はいないのですか?気になります。。
オーストラリアはタスマニアが有名で私も行ったことがあるのですが、今は真冬で雪も降るので、トレッキングレベルだと北の方しか行けません。ここは夏は歩けず、冬は雪は降らず天気も良いところで、今が一番いい時期だと思います。
一応トレイルヘッドには高級ホテルが一件と高いキャンプ場がありますが、救助体制などはないと思うので、遭難時にはどうなるのかさっぱり分かりません。あくまで自己責任だと思います。
猛獣はいないので安心して歩けますが、毒蛇とサソリはいるらしいです。一応ヘビよけでゲイターをつけてました。寒すぎるためか全く見ませんでしたが。。。
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