毛勝三山《日本二百名山》

山キチどん
その他2人 - GPS
- 15:12
- 距離
- 24.1km
- 登り
- 2,339m
- 下り
- 2,339m
コースタイム
- 山行
- 10:13
- 休憩
- 2:52
- 合計
- 13:05
- 山行
- 2:05
- 休憩
- 0:02
- 合計
- 2:07
| 天候 | 1日目(5/22):晴れ 2日目(5/23):小雨 |
|---|---|
| 過去天気図(気象庁) | 2010年05月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
| コース状況/ 危険箇所等 |
毛勝谷、猫又谷共に夏道は無く、残雪期にのみ歩行可能 |
| その他周辺情報 | 魚津市の金太郎温泉(\700) |
写真
感想
1日目(5/22)
四条烏丸でN野車に乗り込み山科駅でT胡さんをPick upし深夜の名神・北陸道を走った。魚津ICで降り県道で片貝川沿いに遡り片貝第二発電所を過ぎた。ネットの記事ではここまでしか車が入れなかった年もあったようだ。幸い積雪は無く南又林道分岐を過ぎた。第四発電所の車両通行止めの柵をすり抜け少し先にある広場で一旦車を止めたが、後から来た車はまだ先に入って行った。準備を始めていたが、今日の行程は長く、できるだけ奥まで入ったほうが良い。再び車を走らせ先に2台車が置かれている地点で車を止め先客に先の状況を聞くと残雪がありこの先は無理とのことだった。
5:01に歩き出し、東又谷の林道を進んだ。すぐに堆い残雪が道を阻め車の進入を阻止していた。これでは先に行けなかったと云うのも頷ける。林道脇には発電所への冬季歩道があり、黒部峡谷のトロッコ軌道沿いで見たコンクリートのトンネルと同じものがあった。その横には林道があり残雪の塊と冬季歩道との間にできたトンネルを潜り抜け先に進んだ。左岸から右岸に渡り片貝第五発電所が見えてくるとその傍に片貝山荘がある。魚津市の管理する小屋で利用するには10日前までに申し込まなければならないそうだ。
片貝山荘のすぐ先で東又谷から阿部木谷が分岐する。阿部木谷とその先に続く宗次郎谷の彼方に大明神山(2,083m)が聳えている。少し行くと左手に僧ヶ岳登山口の表示があり北への尾根を急登が続いていた。東又谷を渡り阿部木谷林道に入った。高巻くためS字にカーブする辺りに夏道登山道の北西尾根取り付きがあったようだ。林道は宗次郎谷分岐を過ぎると右岸へ渡り、ヘアピンカーブで高度を稼ぎ堰堤を幾つも過ぎると林道の終点となり最終堰堤を越えた。標高は既に1,030m、駐車地点から500m余り高度を稼いで来た。
休憩の傍らアイゼンを付け本格的な雪渓歩きに備えた。今年は雪が多く厚みは十分あるようだ。最終堰堤付近で一ヶ所水流が露出していた他は全て雪に覆われている。S字に湾曲する阿部木谷を遡り谷が真っ直ぐになると正面は大明神沢、見上げると誰か登っている人がいるようだ。分岐点の標高は1,234m、P2249から北に派生する尾根の先端を左に折れるといよいよ毛勝谷に入った。
傾斜は徐々にきつくなり三の又(標高約1,480m)に達した。毛勝山南峰から北北西に伸びる尾根の先端で谷を二分している。そして北西尾根の途中から発した谷の三つの谷が合流する地点だ。毛勝谷は真ん中だが、右の谷にも一人登っているようだ。そちらは稜線へ乗り上がる所が相当険しそうだが大丈夫なのだろうか。駐車場を出たときは一番だったが幾組にも追い抜かれた。その人達も急斜面で速度が落ちたと見え、だんだん差が縮んできた。雪渓の表面は緩みだしているがツボ足になることはなく、若干のクレパスができようとしている箇所があるがまだ問題はない。雪渓の上には大小様々な岩が転がり、歩行中も小さな落石を2度ほど目撃した。
時々立ち止まり息を整えていたT胡さんはいよいよバテてきたようだ。歩行速度はガクンと落ちてきた。見上げると前方を行く人たちの足取りも重そうだ。スキーで登っていた人達も皆スキーを外してしまっている。距離はあと1.6辧標高差は800mも登らなければならない。山頂は近くに見えているが中々近づいて来ない。この傾斜ではザックを下ろして休憩することもできない、雪渓の真っ只中だ。毛勝谷は毛勝山と毛勝山南峰の間に乗りあがる。真ん中に小ピークがありそこから派生する尾根の先端で二股に分れ、左を通れば近そうでそちらではないかと思っていたが先行者は皆右を登って行くので後に続いた。
漸く稜線に辿り着くと結構風があるようだ。T胡さんは露出した這松の上に倒れ込むようにして大休止。毛勝山は300m余り北東にある。T胡さんは休憩を継続し、N野さんとY本TCの二人が空身で山頂を目指した。毛勝山(2,414m)山頂部は東面に雪庇が発達しているが8畳分程の山頂は雪が無く2等三角点「毛勝谷」が露出していた。山頂には先客が5人寛いでいた。ここは剱岳の北方稜線の延長線上、剱岳は勿論のこと東方には後立山連峰が全て見える。一番左の優雅な山体は朝日岳、後立の盟主白馬三山、ギザギザの不帰ノ嶮、どっしり構えた五竜岳、ツインピークの鹿島槍ヶ岳、一寸控えめな爺ヶ岳etc.
毛勝谷下降点に戻ると折からスキーの人達が滑降を始めた。上から見ると垂直ではないかとも思えるあの斜面をだ! 見ているだけでも恐ろしい。今日は1日良い天気だが明日は雨になると云う。当初稜線で幕営を考えていたが、雨の雪渓下りは絶対に避けたい。今日は無理をしてでも猫又山まで縦走し猫又谷を下ってしまいたい。T胡さんの体力次第で毛勝谷を下ることも考えたが、「大丈夫」とのことで縦走を続けることにした。
先ずはすぐ西にある毛勝山南峰(約2,400m)に登る。先を歩く人は誰も見えないがトレースは付いている。雪に覆われた南峰には山頂標識はない。毛勝に登った人の殆どは再び毛勝谷を下るようだが、二人の男性が後から登って来た。三山を縦走するのかと聞いてみると西の尾根を通り大明神谷を下るそうだ。この先縦走者は誰も居ず、我々三人だけとなってしまった。南峰南の鞍部は標高2,286m、ずっと続いていた雪庇が一部切れてハイマツやシャクナゲが露出していたが雪の壁を下り、又登り何とか通過した。切れ目で入りこんだ藪の中には微かな踏み跡があった。雪の下には這松、石楠花林の中に微かに夏道が続いているようだ。
毛勝山南峰から見た釜谷山は雪庇の発達が凄まじく、広い稜線のように見えるがずっと雪庇の尾根だ。登り返しは130m、釜谷山(かまたんやま2,415m)は毛勝三山の最高峰で、振り返ると毛勝山が静かに横たわっていた。西の谷間は中谷で、これが小黒部川となり黒部峡谷鉄道の欅平付近で黒部川に合流する。山頂には逆ルートで登ってきた二人組のスキーヤー、山頂からスキーを履いたが、余り急なので少し下ったところでまた外していた。
山頂で1時間休憩し毛勝三山最後の猫又山(2,378m)に向かう、鞍部の標高は2,250m、登り返しは120mある。山頂付近は標高線が詰り雪の壁が立ちはだかっていた。トレースは爪先部分だけで岩に穿った穴のように続いている。北側に小ピークがあり山頂はその先で3等三角点「猫又」が露出し山頂標識もあった。ブナグラ乗越を挟み赤谷山、白萩山、赤ハゲ、白ハゲと続き、一段高く池ノ平山があり、その右小窓の切戸の先には剱岳の雄姿が圧倒的な存在感を誇っていた。一時薄雲が出ていたが、また太陽が照り注ぎ最高の展望だ。
山頂で30分休憩し南の尾根を猫又谷下降点へと下った。猫又山は富山県魚津市・宇奈月町・上市町の境界で山頂からは魚津・上市町境の尾根を下った。分岐する宇奈月町・上市町境の尾根を下ると赤谷山へ到るが途中に等高線が詰まった処があり険しそうだ。猫又谷への下降点は標高約2,200mで直前に大きな雪の壁があり、N野Lは斜めに下って行ったが、T胡さんが足を滑らせ7m滑落! 露出した木の枝に掴まりなんとか停止し腕に掠り傷を負っただけで事なきを得た。
T胡さんの疲れは甚だしいが明日の天気の崩れを考えると如何ともしがたく雪渓を下り、「あの川床の見えているところまで下ろう」と目的地を告げた。猫又谷は川の露出している林道終点まで4.5匍せちのいい程一直線に続く谷だ。しかし放物線状に抉れ、稜線付近は急傾斜、トレースを辿って下り出すが、地形図を見ると3个隆岾屬謀高線が5本、ここで滑ればまず止まらない。N野Lが安全を考えロープを出しT胡さんを確保しながら後ろ向きに下降、標高1,800m辺りまでは全く気が抜けなかった。
猫又山から西に派生する尾根先端の二股では釜谷山と猫又山の鞍部から発する谷が合流する。この辺りまで来ると傾斜が緩くなり滑落の危険もなくなり、ザクザクと雪を蹴って進む。毛勝谷ほど大きな岩は落ちていなかったが小さな岩やデブリは至る所にあった。1,092mの標高点で釜谷と出合うと雪渓が切れ水流が露出していた。雪解け水を集め凄い水量だ。この川の上を歩いて来たのかと思うとおっかなくもあり、数メートルの雪の厚みに感謝するのみ。さらに250m程下ると最終堰堤があり左端から堰堤を越えたところが林道の終点だった。テン場を探し少し行くと第二堰堤のすぐ横に絶好の場所を見つけた。
堰堤を流れ落ちる水音は絶え間なく、雪渓を吹き下ろす風は生温い。明日は雨、問題はいつ降り出すかだ。共同食糧はなくそれぞれが持参した夕食で思い思いに空腹を満たした。少し寒くなってきたのでテントに入り、持参のウィスキーで寛ぎの時間を持った。T胡さんだけではなく皆が睡眠不足、20時過ぎには寝についた。
2日目(5/23)
温泉に入って帰ることを考えると余り早く歩き出しても仕方がないので6時起床7:30出発と決めておいた。しかし5時になると習性でN野LとY本TCは辛抱堪らず起き出してしまったが雨はまだ降っていない。猫又谷の先に猫又山のピークまで見えている。標高1,045mとは言え寒くもなく、そのうちにT胡さんも起き出した。6時頃になると雨がポツポツ落ちてきた。本降りにならないうちにと撤収を始め6:11早くも歩き出した。
釜谷出合から西、猫又谷は南又谷と名を変え、南又林道は谷を高巻いて進む。谷に向かう分岐がありもしやと偵察すると、登って来る3人組があった。これは決定的に正しい道で、比良山コールで合図した。小雨とは言え雨の中雪渓に向かう人などないと思っていたがいるものだ。折角来たのだから二股辺りまで行ってスキーで下ると言う。お気をつけて!
地形図に「坂様谷」とあるそのまま読めば愉快な名前だ。この谷に沿って下り、南又川が見えると対岸に片貝南又第二発電所があった。釣られるように橋を渡って発電所に近づくが、渡ってはだめだった。林道は左岸をそのまま進んでいた。ここからは道が格段に良くなり実質上夏場に車が入るのはここまでなのだろう。新土倉橋で右岸に渡り暫く行くと“洞杉”と呼ばれる杉の巨木があった。案内版に依ると立山杉と同種の杉で樹齢は500年程度と云う。殆どの杉が転石の上に乗っており、特殊な環境下に育っているのが特徴らしい。少し下流の駐車場と新土倉橋を周遊する遊歩道が設けられているが駐車場すぐの所に「通行止」の表示があり、今年はまだ開いていないようだ。その駐車場には途中で出会ったスキーの人達のものと思われる車が置かれていた。見ると神戸ナンバー、遠くから来たので諦めきれなかったのだろう。
さらに進み蛇石橋を渡る直前に“龍石(りゅうせき)”という大岩をお祭りした祠があった。雨乞いの信仰によるもののようだ。南又谷と東又谷が合流し片貝川となる地点に片貝第三発電所がありその少し手前で林道が合流した。この合流点に荷物とT胡さんを残し駐車地点へと長野さんと二人空身で向かった。こんな日に誰も来ていないと思っていたが5台も止まっていた。
温泉に入れる時間にはまだ早い。何処か喫茶店にでも入って待とうと云うことになり国道8号線に出た。道沿いに“金太郎温泉”の看板を見つけ電話を入れてみると8:30から営業しているとのことですぐに向かった。朝9時前だと云うのに沢山の車で賑っていた。こんな時間から珍しい光景だ。館内も広く宿泊もできるようだ(入浴1h¥700)。入浴後は魚津ICから帰路に付き、徳光PAハイウェイオアシスに立ち寄った。併設の“とれとれ市場で海鮮丼の昼食を食べ、渋滞もなく帰京することができた。
体調不良のT胡さんには辛い登山だっただろうが、1日で延登高2,200m延下降1,681mをやり遂げたのは基礎体力が十分にあったということだろう。私自身も4年越しに実現した雪渓歩きの醍醐味は感動に絶えない。真北から見る剱岳、大日岳も印象深かった。そして冬山の確たる技術を持っているN野Lの存在は力強かった。
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