加藤文太郎のトレーニング山・高取山(神戸市)
- GPS
- 02:02
- 距離
- 6.0km
- 登り
- 359m
- 下り
- 356m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2015年11月の天気図 |
アクセス |
写真
感想
六甲山の高取山。標高328m。
六甲全山縦走などで何度もこの山の頂上を踏んでいます。
高取山の麓に住んでおり、毎朝この山の頂上を見ながら出勤しているのですが、高取山を目的として登山したことがありませんでした。
この2週間、加藤文太郎に関する書籍を集中して読みました。
・「孤高の人」 新田次郎 著
・「単独行」 加藤文太郎 著
・「単独行者 〜アラインゲンガー〜」 谷甲州 著
加藤文太郎は大正から昭和初期に活躍した登山家です。
兵庫県の日本海沿いに位置する浜坂で生まれ、神戸の和田岬の造船所に勤務していました。
サラリーマンを続けながら、日々トレーニングを積み、厳冬期の北アルプス縦断など当時は誰もなしえなかった山行を次々に行ってきました。
現在関西の登山者が憧れる、六甲山を塩屋から宝塚を1日で縦走する「六甲全山縦走」も彼がトレーニングとして始めたと言われています。
※彼は宝塚に到着した後、そのまま和田岬まで歩いて帰ったとか。
彼のトレードマークは「単独行」
厳冬期の困難な山行は、大学山岳部や社会人山岳会が案内人を雇ってパーティで実行するということが一般的な時代に、単独で挑み次々と成功させることが注目を浴びました。
いつかはヒマラヤへ、という夢を持っていましたが、昭和11年、30歳の時に厳冬期の槍ヶ岳北鎌尾根で遭難し、命を落とします。
彼がトレーニングの山として最もよく登った山がこの高取山と言われています。
会社の寮生活をしていた和田岬からもよく見え、彼の足の速さであれば出勤前に簡単に往復できたと思われます。
亡くなる前年に結婚しますが、新居は長田神社近くの池田広町(今の神戸市長田区池田広町)に構え、さらに高取山が近くなります。
毎朝、出勤前に長田神社にお参りしてから高取山まで30分ほどで駆け上がっていたんじゃないかなぁと想像します。
ということで、今日は加藤文太郎の足跡を辿りながら、高取山へ向かいました。
スタートは長田神社。
地下鉄長田駅・高速長田駅から10分ほどです。
ここから高取山の登山口へ向かいますが、例によって六甲山は登山口までに道に迷うことが多いです。
住宅街に入ってしまうと道がクネクネしていて迷うので、川沿いの道を北上して行くのがよいでしょう。
登りのルートは「豊春コース」で。
高取山の山頂に高取神社があり、このコースは表参道のような雰囲気です。
コンクリートで舗装され、石の階段がしっかり整備されています。
途中、小さな神社や祠がたくさんあります。
茶屋を過ぎ、少し登ると高取神社に到着。
ここから眺める神戸の街並みがとても美しい。
標高が300mほどなので街がものすごく近いです。
自分の家も見えます。
ゆっくり歩いて長田神社から1時間ほど。本気で歩いたら45分ほどで来れそうです。
のんびり景色を眺めてから下山開始。
下山は「滝道コース」で。
茶屋のあたり、ちょうど六甲全山縦走路で通る広場のあたりに滝道コースへの分岐点があります。
こちらは山道ですが、危険個所はありません。
大きなモミジの木があり、これが紅葉で赤く染まればものすごくきれいでしょう。
途中、「高神の滝」という名所がありますが…、水がちょろちょろとしか流れておらず、どれが滝かわかりませんでした。
緩やかに下ってあっという間に下山口に到着します。
往復で2時間ほど。
忙しくて遠出できないときのトレーニングにちょうどよいお山です。
最後に本の感想を
■「単独行」 加藤文太郎 著
彼が生前に書き残した雑誌への寄稿や登山記録等の遺稿が編集され、関係者に配布されましが、その後1941年に再編集され出版されました。
私が読んだのは2010年に山と渓谷社から出版された「新編 単独行」
随筆や記録が組み合わさったもので、物語のようなつながりはなく必ずしも読みやすくはないのですが、正直で力強い文体から、彼の思いや生き方が見えてきます。
また、「単独行」が批判されることについて、比喩を使って間接的に反論するなど、彼自身が「単独行」にプライドを持っており、失敗しないように研究を重ね努力していたことがうかがえます。
「新編 単独行」では、彼をよく知る上司の遠山豊三郎氏、奥様の加藤花子氏、登山用品店の島田真之介氏の回想や、当時の登山界に関する解説もあり、人物像により深く迫ることができました。
■「孤高の人」 新田次郎 著
加藤文太郎に関する書籍としては最も有名で、この小説で彼のことを知ったという人は多いと思います。
小説の冒頭は「高取山」から始まります。
加藤文太郎がモデルとなり、登山だけでなく、当時の日本の情勢、彼の私生活、心の葛藤、恋などが盛り込まれており、小説としてとても面白く読み進めることができます。
ですが、あくまでこれは小説であり、50%ぐらいは著者の創作と思います。
ストーリーの根幹に「孤高≒単独」があり、「彼の技術に及ぶ者はおらず、単独であれば山で死ぬことはない」という論理を成立されるために、「たった一度他人とパーティを組んだがために、彼は判断を誤り遭難死した」という強引な結末になってしまっていて、しっくりきませんでした。
■「単独行者 〜アラインゲンガー〜」 谷甲州 著
「孤高の人」はフィクションであった加藤文太郎に対し、本作では登山家で作家の著者がノンフィクションとして描きました。
地図を持っての道歩きから始まり、夏のアルプスを次々に登り、六甲山トレーニングと行動食・ビバークの研究を重ねながら厳冬期のアルプスに挑んでいく加藤文太郎の伝記のような雰囲気です。
「単独行」の内容と重なる部分が多く、忠実に彼の足跡に迫ろうとしたことがうかがえます。
終盤、単独では無敵の彼が「パーティを組むことによる制約」に悩む姿が印象的でした。
この小説の最後は「高取山」で終わります。
「孤高の人」とリンクを持たせているところが著者の悪戯心なのでしょう。
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