奥久慈男体山 座禅岩(筆者勝手に命名)


- GPS
- --:--
- 距離
- 387m
- 登り
- 175m
- 下り
- 27m
天候 | 曇りのち快晴 |
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過去天気図(気象庁) | 2015年12月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
ちなみに大円地トイレ横駐車場は8時ごろの時点でほぼ満車。おおみそかだというのにびっくりでした。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
(注意1) 本ルートは一般ルートではありません。ちょっとしたルート取りの違いで命を落とす可能性もありますのでその前提でお読みください。 (注意2) 本山行記録に登場する「座禅岩」、「座禅小僧」、「座禅岩のコル」は筆者が勝手に命名したものです。正しい呼び名をご存知の方はぜひお知らせください。 (注意3) 今回歩いたピーク、細かい沢などは国土地理院地図では見て取ることができません。 「座禅岩」と「座禅小僧」は谷を挟んで奥久慈男体山健脚コースと向かい合っている岩稜です。「座禅小僧」は「座禅岩の」前にある小岩峰です。いかにもかつて弘法大師様がこの岩の上に座って修行したというような雰囲気の前衛峰なのでこう勝手に命名しました。考えてみればもし弘法大師様がお座りになるなら中途半端な岩稜ではなくて男体山山頂をお選びになるはずですよね。ちなみに筑波山男体山にも親鸞聖人が餓鬼救済のために念仏したという立身石があります。山頂よりも前衛峰、突き出した場所のほうがなんとなくそういう場所に向いているように感じるのでしょう。 あだしごとはさておき、 登はんの難度は鎖と踏み跡のない健脚コース程度なのです。しかし枯葉が厚く積もった土の急斜面が難儀しますし、滑落すれば死ぬかもしれません。本来の使い方ではありませんが、ピッケルを用意すると安心です。体重をかける可能性が高いのでストックでは力不足です。道はないので、安全なルートを見つける能力も求められます。ちょっとしたルートの違いで安全の度合いが大きく変わります。 後述するトラバースルートには文字通りいばらの道があります。雨具のような目の詰まったジャケット・パンツを着用しないと痛い目にあいます。手袋も通常の軍手ではとげが手に刺さります。筆者は岩での摩擦のよさととげを通さないという点を買ってゴム引き軍手(商品名「タフレッド」)を今回も含めてたいてい用いてますが、いばらとタラノキには無力でした。やぶ漕ぎには革手袋があればなと感じました。ただ革手袋でもタラノキのとげは通ってしまうかもしれません。うっかりつかまないように。 取り付きは健脚コース途中にある割れたヘルメットの乗っている標識です。標識の裏に回って巨岩がごろごろした涸れ沢を登って行きます。やがて右前方に鞍部が見えてきます。これが座禅岩のコル(筆者勝手に命名)です。鞍部から座禅岩の頂上までは軽い藪こぎをしながらの容易な尾根歩きです。ただ両脇は切れているやせ尾根なので、油断は禁物です。 下山には男体山正面壁下部の樹林帯を一般健脚コースへ向かってトラバースするルートを取りました。トラバースルートは一見楽そうに見えるのですが、途中かなり急な岩の涸れ沢のトラバースが2回あります。適当に上か下に巻くことによって危険を回避できるのですが、このようにして巻き道を見つけながらトラバースルートを使って下山することもかなり危険であるため、下山にトラバースルートをわざわざ使うメリットはあまり感じられず、同じ努力で来た道を戻るほうが早く安全に下山できると思いました。なお今回の登山では一般ルートにおいてステンレスの鎖と麻縄が2本並んでぶら下がっている箇所に飛び出しました。 今回のトラバースルートは若干の踏み跡が見て取れました。座禅岩稜線にも何かを掘った跡も散見しました。いのししと思われるふんもありましたから、獣道の可能性もありますが、他に登山者がいる可能性もあります。落ちてきたものかも知れませんが、トラバースの終盤、空ペットボトル1本も発見、回収しました。 |
写真
装備
備考 | 今回は靴が重登山靴であるほかはハイキングの装備 |
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感想
当初の予定では29日の晩から2泊のハイキングの予定であった。それが正月以降の行事の準備の関係でハイキングの準備が遅れてしまった。しかし遅れたというよりも、モチベーションが足りなくて遅れる状態を放置していたというほうが正しかった。
仕方がないので、代わりに1泊のハイキングの予定に切り替え、準備はしたものの、気持ちが折れてしまってこれも見送ってしまった。
せめて1年間の反省と、10月以降のジョギングの成果を見るために、なじみの奥久慈男体山へ登ってみることにした。
車を走らせてから、時計と雨具のスボンを持っていないことに気がついた。どちらも今回は無くても困らないものではあるが、登山の基本用具であり、最近の注意不足の低下が感じられた。果たして今まで山に行くたびに感じていた興奮を感じることができるのかどうか、少々不安に感じながらのスタートであった。国道118号線を大子町方面へ暫く走ると低山ながら登山意欲をそそるピラミッドピークが見える。この山の裾野を右へ曲がれば湯沢へ、男体山へつながる。左へ曲がれば西金駅入り口の交差点でもある。かつてのプチボッカトレーニングのときと同様に西金駅の駐車場へ車を入れた。
西金駅を7時少し前に歩き出した。暫く冬らしい寒さが続いていたが、今日は寒さが一段落の様子。その代わりに空が雲に覆われていた。ピラミッドピークをみてわくわくするということは、まだ山への愛情が希薄になっているわけではないようだ。荷物が軽いので完全復活かどうかはわからないが、心配された体の切れの悪さもなく、快調に大円地登山口を目指して距離を稼いだ。途中民家の煙突から昇る煙と薪の燃える匂いに心が和まされる。
やがて奥久慈の岩稜の数々が目に入ってきた。気持ちが高揚する。まだ男体山以外の岩稜には一度も足を運んでいない。いつかあの岩稜をつないで篭岩山から竜神峡まで歩きたいと考えてきたまま今になってしまった。またその考えがわいてくるということは、まだ大丈夫。息も上がらず、大円地のトイレ脇駐車場を通過。大晦日だといのに駐車場はほぼ満車状態。さすがは登山ブームである。ウールキャップを手ぬぐいに、毛糸のミトン(この冬のダイソーの掘り出し物)をゴム引き軍手の「タフレッド」に換えて、いよいよ山登りの開始である。
いつものように登りは一般コースを選んだ。今回は山頂までなるべく止まらずに歩ききることを心がけた。果たして10月からのジョギングの効果は山歩きにも出ているのかどうか心配されたところだったが、忘年会太りの体であってもトレーニングの効果はあったようで、山頂まで写真撮影以外の休憩はなしで歩ききることができた。
男体山頂の祠で一年間の感謝と、来年の庇護を祈る。祠の裏に回って展望を楽しむ。足許には憧れの座禅岩が見えるが、そこで面白いことに気がついた。今まで独立した岩塔だとばかり思っていた座禅岩が、男体山の正面壁から延びている尾根のひとつであることがわかったのだ。今までは座禅岩に登るには谷底から岩壁のクライミングルートしかないとばかり思っていたのだが、今回の観察によって谷底から尾根の鞍部まで沢をつめれば、そこからは比較的容易にピークを踏めそうであることがわかったのである。
下山はいつものように健脚コースから。健脚コースの入り口に立つと、まっさかさまに落ちるような急斜面が恐ろしい。1年前に明山の北東尾根を登ったり、雨の中北穂の東稜を登ったことがうそのようだ。それでも降りる。やることはわかっている。一歩ずつ降りれば体が少しずつ思い出してくれるのではないか。その期待に応えて、体のほうも徐々に自動的に動くようになってきた。そういえばいつもは落としてしまいがちな石もひとつも落ちていない。気のせいか動きが去年に比べると少しやわらかくなったような。徐々に自信を回復しながら、座禅岩の高度まで一般コースを降りた。男体山の正面壁を見るとなにやら座禅岩の方向へつながるトレースのようなものが見える。どうやら同じことを考えている人がいるようだ。この場所を記録しておこうということで写真撮影した。
座禅岩は下山中も気になってしょうがない。鎖場途中にある展望台のような岩場に立つと、朝の曇り空から打って変わっての快晴となっていた。男体山も、座禅岩もくっきり見える。座禅岩の上では、鷹かトンビか、ゆっくりと旋回している。鷹の巣でもあるのだろうか。一段ときになるような、鷹に来るなと脅されているような。
健脚コースの核心部分を過ぎて、割れヘルメットの標識まで来ると、取り付きの沢に日が差していて、登っておいでと誘っているような気がした。いけるところまでいってみようということで、標識の裏に周り、巨岩がごろごろしている涸れ沢を詰めていった。
本来ならば登はん具一式は保険として用意するのであるが、今回はハイキング程度の装備である。せめてヘルメットとゴルジュハンマーくらいは持ってくればよかったと少し後悔しながら、枯葉厚く積もった急斜面を登っていった。実はこの沢2012年の秋にも試登したことがあり、途中で岩場と枯葉に撤退を余儀なくされたのであったが、3年間の間に進歩している。ずり落ちる可能性の低い場所を狙ってあるときは岩場を攀じ、あるときは大木の木の根に沿って登った。
やがて、男体山頂から見た鞍部が手に届くところの距離になった。そこまで来ると、鞍部から頂上までのコースがただのやぶがちなやせ尾根を歩けばいいだけであることがわかった。踊るような気持ちで頂上を目座したが、踊っていると稜線の針葉樹林に腕を刺されて痛い。正気に返りつつ、頂上に到着。お決まりで「やったー」と絶叫した。
頂上の先にもうひとつ露岩があり、そこで小休止した。健脚コースの展望台岩が良く見える。今まではあちら側から「いつか行くから待ってろよな」とつぶやいていたものだ。
男体山の正面壁が圧倒的に迫ってくる。この場所から男体山正面壁や男体山頂、一般コースの稜線を眺める人はそう多くはいないに違いないと考えると、結構うれしい。
改めて正面壁を見ながら、下山路を考えた。下山はトラバースして健脚コースに合流しようかと考えていたが、そのコースは巨大な岩壁にさえぎられており、岩壁の下側に回ることによって辛うじてトラバース可能なようだ。10月の奥穂南稜の失敗が思い出される。いけるんじゃないかと思って未踏査で突っ込むとたいてい失敗するのだ。だが今回はそうしたルートを探るという目的もある。たどり着けないということもひとつの結果だと考え、いざとなれば着た道を戻るという保険をかけてあるので、トラバースを決行した。
まず第一の試練、トラバースに入ったとたんに、谷の急斜面に遭遇したのだ。谷には若干水も流れているようで岩が湿っている。仕方がないのでまず谷の様子を観察して、上部の比較的越えやすい箇所を探してトラバースした後、再度降下した。何しろ上りすぎると最後岩壁で行き止まりになってしまう。高度は一定以上あげることはできなかった。
今度は岩壁の根元までの浅い涸れ沢の下降である。少し高巻いて傾斜の緩い箇所から沢底を降りるのがホールドが多く、いやらしい土の急斜面もないのだが、どうやらいばらがたくさん生えているようだ。今まで暑くて脱いでいた上着代わりの雨具を再度取り出して羽織った。この雨具には今までずいぶんと文字通り命を助けてもらったものだ。おかげでぼろぼろだ。今回も自分に変わっていばらに引っかかれてもらわなければならないと思うと少し申し訳ない気がするけれども、仕方がない。
これで健脚コースまではトレースをたどるだけかと思ってみたらもうひとつ沢のトラバースがあった。今度は沢を下るようにしながら横切り沢底に降りたら今度は木の根に沿って高度を稼いだ。すると、今度はゆるい礫岩の斜面。ここのホールドはすぐにポロリと落ちるからなと思いながら、そろそろとはって行った。はい終わると、トレースがかすかに見て取れ、あとはひたすらそのトレースを追って健脚コースへ。途中健脚コースを登山中の方に「大丈夫ですか?」と心配される場面も。
何とか健脚コースに合流し、一安心。気になるのは合流地点。下山中にあてをつけておいた場所ではない。コースを登り返してみて、あたりをつけたトラバースのスターと地点よりもかなり下に飛び出したようである。もっともここはコースがあってないようなもの、その日の状態やハイカーの気分でまた変わることであろう。
再度、健脚コースを下山し、展望台岩で今一度、座禅岩をじっくりと眺めてから下山した。
今回の思いがけない憧れのピークへの到達は、今年一年失敗続きであった自分の登山に対して、山の神様が少しくらいは日ごろの努力に報いてあげようということでくれた贈り物だったのかもしれない。大円地駐車場の前から男体山が良く見える。一年間大きな事故も無くすごせたことを感謝して手を合わせた。
あとは西金駅までひたすら歩く歩く。気がつけば朝からここまで、登山中に口にしたものは乾杯代わりに座禅岩で口に入れた飴ひとつである。補給なしでもどんどん歩けたということは、普段のジョギングでスタミナがついていることのようだ。重い荷物が背負えるかどうかは別として普段の精進、まるで無駄ではなかったようだ。
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