富士山



- GPS
- 24:45
- 距離
- 10.0km
- 登り
- 1,601m
- 下り
- 858m
コースタイム
- 山行
- 3:53
- 休憩
- 1:18
- 合計
- 5:11
- 山行
- 4:10
- 休憩
- 0:58
- 合計
- 5:08
新富士駅= 富士宮口五合目(11時00分発)− 六合目(11時30分)− 宝永山火口底(11時45分着/12時00分発)− 宝永山山頂(13時05分着/13時15分発)− 御殿場口六合目(14時00分)− 赤岩八合館(16時00分着)
■ 二日目
赤岩八合館(06時35分発)− 御殿場口山頂(07時45分着/07時55分発)− 富士山山頂(09時00分着)− 神社(09時15分着/09時30分発) − 砂走館(11時45分)− 宝永山火口底 − 富士宮口五合目 14時40分着
過去天気図(気象庁) | 2016年08月の天気図 |
---|---|
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
|
予約できる山小屋 |
御殿場口七合四勺・わらじ館
|
写真
感想
■ 一日目
職場の酒の席で、同僚たちと「日本一高い山に登ろう!」と思い立ったのは、新緑も深まる4月の半ば。その日から、高尾山や丹沢の大山などと練習登山を重ね、ようやく実現する日がやってきた。
コースは、富士山の南側の富士宮口から登るプリンスルート。皇太子様と同じく、宝永山を経由して赤岩八合館に宿泊。翌朝に富士山頂を目指す、一泊二日の道程だ。ただし、下山は、お鉢巡りを省略し、御殿場口までの長い下山をせず、登りと同じコースを下る予定でいる。
東海道新幹線の新富士駅で待ち合わせをして、そこから富士宮口五合目まで富士急行バスを使う。バスの時刻表では、新富士駅を08時25分に出発し、終点の五合目には11時00分に到着すると書かれている。タクシーなら1時間ほどなのに2時間半もかかるとは、どれほどゆっくり登るのかと心配していたら、何のことはなかった。富士宮にある浅間神社に寄り、30分ほどの参拝時間が設けられていた。他にも30分のトイレ休憩があるなど、高度順化を目指しているわけではないだろうが、とてもゆっくりな旅程だ。まあ、あせっても仕方がない。
下界は暑く、よく晴れている。バスのカーテン越しに差し込む太陽の熱線が体を射抜くようだ。あいにくと富士山には雲がかかり、輪郭をわずかに認めるだけである。登るにつれ、ガスがかかり始め、視界が悪くなる。その代わり、ようやく涼しさを感じ始める。
五合目もガスである。同僚が「硫黄の臭いが富士山らしい!」と感嘆するが、残念ながら、これはトイレの悪臭だ。水蒸気など、噴火の兆候を示す印はまったくないので、富士山は安心して登ってよいはずだ。赤岩八合館に携帯電話で出発の連絡を入れ、トイレ休憩をしたのち、さっそく出発する。みんな寒いのか、雨具を着用しているが、すぐに暑くなるはずだ。
すぐに六合目に到着する。ここから本道を離れて、宝永山に向かう細い寂しい道を進む。みんなも、こんなに人のいない道を進むとは、予想しなかったようだ。たいした登りもなく、大きくトラバースをし、宝永山の火口の底に到着する。ここで昼食をとるが、視界はガスに遮られ、見通しが悪い。ときどき切れ目ができるが、そのたびに別のガスに取り囲まれてしまう。そのため、富士山の山頂はおろか宝永山の山頂も確認できない。ただし、ガスの中へ続く登山道はよく見える。
この宝永山への登山道が最初で最後の難関かもしれない。ここさえ登ってしまえば、あとは楽勝だ。見た目には普通の坂道にしか見えないが、実は難物だ。火山灰が堆積しただけの崩れやすい道なのだ。バランスが悪いとすぐにずれ下がってしまう。みんなに「歩幅を狭くして、ゆっくり登るように」と伝える。予想に反して、今日の道は少し湿っているようだ。前回のようにずり下がるようなことはない。一歩一歩確実に進めば、問題はないようだ。しかしながら、ゆっくり歩くことに慣れていないみんなは、そうもいかないようだ。ズルズルッとすべる音が終始なりやまない。ようやく地面も固くなり、ほどなく宝永山の山頂に達する。
こんなに登ったのに、「まだ、六合目」という事実がみなの頭にのしかかる。再び登り始め、御殿場口コースの下山路を横切り、再び横へ横へと大きくトラバース。ほどなく登り専用の道と合流する。ここも六合目でしかない。落胆の色がみんなの表情から読み取れる。ただ、ここからはどんどん高度が稼げる。まあ、どんなにゆっくり登っても、16時前には八合目の山小屋に到着するはずだ。
静かな登山路をもくもくと登り続ける。みんなにも順調に高度を稼いでいるのがわかるようで、表情が明るくなりはじめる。数少ない他のパーティーはかなり苦しそうだ。その分、こちらには自信と余裕が生まれる。ようやく、楽勝ムードが見えてきたようだ。だが、自分はそうではない。完全にエネルギーを使いきった感じがする。いわゆる、シャリバテだ。昼食が少なすぎたようだ。行動食のカロリーメイトを一本食べる。麦茶を飲みながらでないと、口の奥の方へと入っていかない。苦労して飲みこむ。キャンディーも口に入れ、ようやくエネルギーが満ちてくるのを感じる。再び登り始める。
山小屋への到着はあっけなかった。みんなも「あっ、ここっ?」てな感じである。小屋の人に手渡されたホウキで靴とズボンの裾の汚れを落とし、広い玄関で振る舞われたお茶を飲みながら、支払いなどの手続きを済ます。二食付きの宿泊代は、トイレ代込みで、7500円。押し入れの上段のような場所に案内され、荷物を置き、ようやくくつろぐ。天井裏にまで案内されるパーティーもいて、今日は満員のようである。祝杯をあげようということで、600円の缶ビールを購入し、食事をする場所で、同僚たちと乾杯する。
夕食はカレーライス。お代わり自由だが、私は前回と同様に一杯に止める。さすがに仲間たちも疲労しているようで、食事が終わると直ぐに寝床に入る。私も壁に立て掛けたザックに背を預けながら、しばしまどろむ。21時過ぎのようだ。小用を足しに外へ出る。雨具を羽織って、外へ出たのだが、あまりの寒さに驚愕する。というか、酔いで感覚がおかしくなっているようだ。冷静に分析しても震えは止まらない。早く用を済ませて中に戻ろう。用を足している間中、震えは止まらない。それも酷く激しい震えだ。満天の星空を眺める余裕もない。部屋に戻って、直ぐに布団を被る。まるで、全力疾走したような感じで呼吸も荒く、動機も早い。とりあえず深く呼吸をしながら、血流をよくするようにと、リラックスを心がける。やっと平常に戻る。みんな雨具を着こんで布団に潜り込んでいるが、それほどの寒さではない。雨具は脱ぎ、タオルだけ首に巻いて寝床に入る。寝ては目を覚まし、静かに寝返りをうち、再び寝る。それを何度繰り返したことか。
■ 二日目
明け方の赤い夜空がガラスの窓越しに見える。4時過ぎ。日の出には時間があるが、そろそろ起きる時間だ。みんなもしだいに起き出し、固くなった体をほぐしながら、荷物の整理をする。もうそろそろだ。登山靴を取り出し、外で待機する。タブレットのカメラのファインダーを覗きながら、御来光を鑑賞。下界はうっすらと雲がかかり、視界が悪そうだが、今日の山頂は、晴天に恵まれそうだ。朝食のベーコンエッグを早々と片付け、出発準備にかかる。仲間の一人だけ、食欲がないということで朝食に手をつけなかったが、血色は良さそうなので、山頂には行けるだろう。
防寒用に雨具を着て出発するが、すぐに暑くなる。なかなか、きつい登りだ。思うようにペースがつかめない。呼吸のペースに足の動きを合わせようとするが、息が苦しくなるだけで思うようにいかない。ようやく、歩く速度が速いことに気づく。もっと、ゆっくり歩けばよい。大丈夫、こんなペースでも山頂には間違いなくたどり着く。ゆっくり、もっとゆっくり。
十合目の鳥居が見えてきた。もう、こんなに登っている。宝永山の山頂がはるか下に見える。鳥居を越え、みんなで富士山の巨大な火口を眺める。山頂まではあとわずか。火口を吹きわたる風が強いため、太陽は照りつけているのに、かなり寒い。帽子が飛ばされないように、雨具のフードで押さえる。山の背をじっくりと登り、山頂基部へとたどり着く。山頂での撮影をするために行列ができているので、それに並ぶ。強風に耐えながら、待ち続ける。30分くらいでようやく順番となる。確か8度目の山頂到達。みんなは、もちろん始めての山頂。レーダのドームがなくなった測候所跡に最近設置された電波標識。山頂を十分堪能したら、下山しよう。
山頂の神社で、トイレ休憩。こんな寒い場所で、ビキニ姿の素敵なモデルさんが水色の大きな浮き輪を持ち、笑顔で撮影に集中している。たいした根性だ。企画の意図は不明だが、この厳しい臨場感が読者に伝わることを願わずにいられない。
下山は、順調とは言い難い。大山の練習登山の下りで膝を痛めてしまった仲間の歩みが遅い。膝をかばうので、時間がかかるのは、やむを得ない。コースは代えない。いや、むしろ、膝を痛めているからこそ、火山灰が多いこのコースが下山しやすい。さらに、もう一人の仲間の登山靴が壊れかかっている。靴底が剥がれそうだ。テーピングで応急処置をする。NEXUS7の電源も底をつきそうだ。やむなく、GPSロガーを停止する。何が起ころうが、ゆっくりと下山していく。ようやく御殿場口コースの砂走り。「どんな風に下山するんですか?」という仲間からの質問に、実演して見せる。「こんな風に、ピョンピョン飛び降りるのさ!」「マジですか?」やってみれば、意外と簡単なもの。重力の小さい月の上を三段跳びをしている感じ。膝を痛めた仲間もそれなりの速度で降りられるようだ。
宝永山の稜線に到達。下界の視界はないが、火口は一望のもと。ここまで来れば、下山したも同じ。登りは滑らないように細心の注意を払ったが、下山はその逆。火山灰がたくさん堆積している場所を狙いながら、どんどん滑り下っていく。ほどなく、火口の底に到着。火口の淵の登り返しに、息も絶え絶えになるが、あともう少しだ。長いトラバースをすんなりクリアして、ようやく六合目。短い坂道を下れば、帰りのバスが待つ五合目が見えてくる。そして、無事に下山。富士登山の完了だ。
コメント
この記録に関連する登山ルート

いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する