【険刃作戦】剱岳(早月尾根往復)【甲57.0】
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- GPS
- 11:58
- 距離
- 15.9km
- 登り
- 2,494m
- 下り
- 2,482m
コースタイム
- 山行
- 10:12
- 休憩
- 1:46
- 合計
- 11:58
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2018年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
短い距離を一気に3000m近くまで登るので、なだらかな箇所は僅か。体力勝負。 雪の上を歩く箇所が何箇所かあるが恐れることはない。ただ、雪融けで道が緩くなったり崩れたりしている箇所あり(ヒロシ氏が正規の道ではないと思って歩みを止めた程) 岩場は思ったほど難しくないが、かなり気をつけないと昇降する際に小さい石を落とすことになる。 |
写真
感想
ここ最近は季節の変わり目の体調不良があったり、気温が高過ぎて出かける気が起きなかったりで山行というと稲庭高原を歩いたくらいだったが、結構ブランクができてきたので、夏山山行をどこか一つと考える。一枚2000m級のステップ山行を噛ませることも考えたが、眠っている身体を目覚めさせるにはガツンとしたカンフル剤的山行が必要だと剱岳・早月尾根往復を対象山域に選定。富山は三連休中、最も天候が安定し、かつ、気温も猛暑というほどには上がらないと予報されていたので適地と言えた。
【早月尾根雑感】
馬場島には多くの車が泊まり、連休さながらの様相を呈している。眠りに就いてからもチリンチリンと山行に出発する者の鈴の音が時たま聞こえてくる。寝起きがよかったこともあり、予定より10分早く出発する。
他にも日帰り往復を企図する人が結構いるらしく、端からやや急な傾斜を、他の人達と前後しながら歩く。一名だけゼーハー言いながら登っている人がいたが、大体は手練れと言うか足練れの人ばかり。我々も何人かに追い抜かされる。元よりスピードを競っているわけではないが、やはり年をとってきたのだなと思う。しかし、こう思えることが大事。老いや衰えを自覚することなく「以前はできた。まだできるはず。」と分不相応な山行をやって遭難したのでは元も子もない。身の丈身の程を常時顧みることが安全山行の基本だ。
剱岳・早月尾根はハードだと言われる。それは距離に対して標高差が大きいからだが、そんなルートでも辛さを軽減して歩く術はある。それは「山頂まであと何キロ」、「次のランドマークまでどのくらいかかる?」といったことを一切考えないことだ。そもそも標高差は2000m以上で片道7時間8時間は優にかかるルート。頻繁に時計や高度計を見たところで劇的に距離や高度が縮まるわけでもない。むしろ精神がジワジワとダメージを受ける恐れさえある。
タイムトライアルのために来ているのでなければ、もっと周囲に目を配り、関心を向けてみたら良い。見上げれば堂々たる立山杉、足元には白黄紫ピンク等々色とりどり多種多様な花々、左を見れば猫又や毛勝の山々、右を向けば大日の稜線、後ろを振り返れば広大な富山の野と海、前には屹立する岩壁・・・。「うぉーすげー!」、「絶景かな〜!」、「何だこれ!?」、「雪だ〜!」などと箸が転がっても笑う年頃のような感じで歩いていれば、いつの間にか山頂に着いている。別にそうしようと努める必要は無い。山好きなら自然とそうなる。
そうは言っても時間も気にしないと・・・と言われるかもしれないが、自分のペースを把握した上で十分余裕のある計画を立てておけば、予定から大幅に遅れることはそうそう無いだろう。
花満ち満ちて、岩場あり、残雪あり、上空快晴、展望絶好と爽快な早月尾根を経て剱岳に到着。山頂は既に多くの山行者で賑わっている。時間が許せばカニのタテバイ、ヨコバイまで足を伸ばそうかと考えていたが、既に渋滞が発生しているとのことだったので断念。その分、剱岳をまったりと堪能する。遠くの山域では早くも雲がモコモコし始めているのがうかがえたが、上空はなおも快晴。数ある候補の中から富山を選んで本当に良かった。
山の世界には「上り優先か下り優先か」という議論があるらしい。そんなもの、「より安全な方」が優先に決まっている。そして早月尾根の岩場では、確実に上り優先の方が安全である。というのは、大体の人は岩場を昇降する時に浮石や砂利を落とすからだ。蹴飛ばされた岩石は上の方に行くことは無い。重力に従って下にいる人の方に落ちていく。自明のことだ。自分の落とした石が下で待っている人に当たる可能性の低からぬことを思えば、自然と上る人に先に行ってもらうようになる。
もし、下りに譲る場合があるとすれば、昇る側に岩場に不得手な人がいて、通過に時間を要して昇り下りともに渋滞を招き岩場の危険を増大させる恐れがある場合か、自分の山行ペースのことしか考えていない独り善がりな山行者が下ってきた場合に君子危うきに近寄らずで退避する場合くらいだと思うが、早月尾根ではそのような山行者・グループに出くわすことは無かった。
もう一つ、岩場の安全通過のために付言しておくと、前の人とは一定距離を空けること。変に間合いを詰めると前の人を煽る形になって危険だし、何かあったときに自分も巻き込まれる恐れが増す。
下山途中、岩場でルートを外れて間違った方向に昇っている単独女性に声をかけたのだが、難儀している人を周囲の人がサポートすることも安全山行に資するだろう。
岩場を過ぎ、早月小屋で休憩すれば暑さをやり過ごせる木陰の中。折り良く雲も出てきた。と思っていたのだが、実際はその後も暫くは日の照りつける中を歩く。山とは言ってもやはり昼過ぎは暑い。こんな中森林限界上を歩いている人は大変だろう。夏山は早朝の涼しい時に歩くに限る。立山杉の巨木が林立する段になって暑さもしのげるようになり、体力、水分、養分に余裕を残しての下山となった。しかし、これは楽な山行だったということを意味しない。無事な下山は十分な準備と睡眠と覚悟の結果である。
【総括】
私のような者がアルプスなどの高く険しい山に登ることを考える時、まず訪れるのは”不安”である。「初心者は来るべからず」的な言説がまかり通る世界だ。果たして歩ききることができるのだろうか、と。
しかし、不安に覆われたまま悶々としているだけではいつまで経っても初心者の域から脱することはできない。初心者の殻を破るためにも一歩踏み出そう。
山は覚悟を決めた者に応えてくれる。剱岳がまさにそうであったように。
〜おしまい〜
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