大門山…静かなる 色鮮やかな ブナの森
- GPS
- 03:43
- 距離
- 4.8km
- 登り
- 599m
- 下り
- 591m
コースタイム
天候 | くもり 時々 はれ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2018年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
・国道156号線の道の駅上平より約10kmでブナオ峠に到着。全面舗装された林道であるが、車両1台分の幅員しかなく、傾斜もかなり急である。片側が切れ落ちた崖のへりの通過や多くの落石もあるため、運転には神経を使う。 【ブナオ峠】 ・車両15台程度の駐車が可能。 ・峠より北側は未整備。ブロックで通行止めにされている。雑草が生い茂りアスファルトの路面が埋もれている状況。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
・登りはじめから1246m地点まで急傾斜。1246m地点で一時的に傾斜が緩くなるが、その後は稜線直下まで急傾斜になる。北側に開けた箇所があり、下山時に勢い余って突っ込むと転落するはめになる。 |
その他周辺情報 | 【道の駅上平】 ・塩硝街道と国道156号線の合流地点より南へすぐのところにあり。 |
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
Tシャツ
ズボン
靴下
手袋
雨具
冬季用キャップ
靴
ザック7L
行動食(ミニミルクドーナツx4)
非常食(ドライフルーツ / 柿ピー / ピーナツあられ / ブラックサンダー)
水1000ml
スポーツドリンク500ml×1
レジ袋
ガイドブック(アルペンガイド)
コンパス
ヘッドランプ
クマよけ鈴
スマホ
腕時計
一眼レフカメラ
コンパクトデジカメ
一脚
財布
保険証
タバコ
ライター
ポケット灰皿
|
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備考 | ミルクドーナツとピーナツあられが食べやすくて美味しかった。 【思い出の曲】 No Age "Fever Dreaming" Katy Perry "Firework" |
感想
北陸シリーズ第2弾は大門山。台風25号の影響を受けそうなため、短時間で簡単に登れる山を選んだ。前夜の満点の星が嘘のように、早朝から弱い雨がテントを叩いている。「やっぱり降ってきたか」と嘆くも、「今日は終わりだ」という深刻さがない。少々の雨でも往復4時間程度の山。雨が弱まった時に「サクッと行けばいいか」と気軽に構える。天気予報では、あと2時間で雨がやむらしい。テントに籠り、またひと眠りすることにした。
7時半になると予報通りに雨が上がり、強い日差しが射している。テントの天日干しが出来るくらいだ。「なんて、ついているんだ」と後輩と今日の一日のはじまりを喜んだ。
9時半にテントを撤収し、登山口のブナオ峠に向かう。昨日、国道156号線を南下して白川郷に入る手前で、ブナオ峠へと続く県道54号線が途中閉鎖されているとの看板を見た。県道54号線はもともと通行止めの多い道路で、「県道さえ通行できれば大門山に行けたも同然」と何かの本に書かれていたのを見たことがある。せめて通行止めが峠の近くであって欲しい。車で少しでも奥に入ることが出来れば、それだけ後の行程が楽になる。
県道54号線に入るといきなりの急坂が続く。休むことなく終始登りである。舗装はされているが落石によりボコボコで、尖った石も至る所に散乱している。通行する車が少ないのは間違いない。道幅は「対向車が来ればどうするんだろう」という細さ。それに片側は絶壁でガードレールすらない。ハンドルの操作を謝れば奈落の底。登山より運転の方が危ない山はあるが、ここはそのトップクラスかもしれない。落石らしいものに車の側面を痛いほど打ち付けながら、長い長い10kmの林道を40分かけて走り抜け、ようやくブナオ峠に到着した。
ブナオ峠は小さな広場のようで、県道はここで行き止まり。これより先の北側はブロックで閉鎖されている。ブロックの向こう側にアスファルトの道らしきものが見えているが、雑草の勢力に呑み込まれ、どうすることも出来ない状況になっている。もう何年も整備されずに放置されているのだろう。おそらく国道にあった通行止めの看板とは、このことを指していたのだろう。それなら「ブナオ峠より先は通行止め」と表示してもらえれば、余計な心配をしなくてもすんだものなのに…。まあ、何はともあれブナオ峠まで車が入れたことに一安心。余計なアルバイトをしなくて済んだことに感謝した。峠には自分たち以外の車がなく、今日の登山者がいないことを伝えている。通行止めのブロックには、行方不明者の情報提供を呼び掛ける張り紙もあり、この山の寂しさと奥深さをより一層際立たせている。「心して登らないと」と気を引き締めて、登山口を出発した。
登り始めから立派な大きなブナに出会う。ブナは大好きな木だ。これらの大木を拝めただけでも、ここにきた甲斐がある。傾斜が少しずつ急になり、細いブナが密集してくるようになる。ただ、混雑した集まりというわけではなく、整然と規律良く突っ立っているという感じ。陽射しが射すと黄葉も輝き、登山口での暗さや不安を吹き飛ばしてくれる。途中、たくさんの木の実が含まれた大きなクマの糞を見つける。「ここにもいるんだな」とつくづく思う。クマも安心して住めるブナの森が北陸にも残っていることを嬉しく思った。
急登を喘ぎながら1時間程歩くと、展望が開けた平らな道になる。正面の西方向に目指す大門山、右手の北方向には医王山とその向こうに富山湾が見えている。目を凝らすと遠くに能登半島も見えている。周りはブナをはじめとした樹海がうねうねとしており、民家や人工物が全く目に入らない。ここの山域がいかに奥深く、人里離れているかがよく分かった。
軽く休みをとり、再び急登の連続となる。山頂付近が意外に近くに見えており距離感がない。恐らくかなりの傾斜で登っているのだろう。紅葉も黄色から橙、赤色と濃い色が目立つようになる。歩を休めるために、何度も写真を撮り自分を誤魔化してみる。ゆっくりと歩いていると小さな音でもよく聞こえるもので、”カサカサ”と足元で小さな音がなったかと思えば、大きなヒキガエルが横たわっている。周りの色とほぼ変わらない保護色のブツブツ肌。後輩と「M先輩に似ているな!」と言って大笑いをした。
紅葉の鑑賞と笑いの余韻で、あっという間に稜線に飛び出る。ここは、赤摩木古山分岐で簡単な標識と小さなベンチが置かれている。木が茂り展望が良いとも言えず、先を急ぐことにする。ここから先は白山国立公園の圏外となるため整備状況は今一つであるとのことだが、意外にも草刈りがされており歩きやすい。頭上は低木が真っ赤に紅葉し、まさに”赤色のトンネル”をくぐっているみたい。何度か頂上らしきピークに騙されながら厳しいアップダウンを繰り返し、ようやく大門山の山頂に到着した。
残念ながら山頂に着いた頃には、晴れ間がなく、周りの山々は雲で覆い隠されている。大笠山が姿を見せることはあったが、白山や笈ヶ岳は厚い雲の中で見える兆しがない。「仕方ないか、台風の直前だし。雨が降らず、黄葉が見られただけでも良しとしよう」。人がいなくて、風もない、音のない静かな山頂。つがいのアゲハ蝶の羽ばたいている音が聞こえるくらいだ。この静けさの中、ゆっくりとランチタイムとする。ヤマザキデイリーの安っぽいミルクドーナツが意外に喉を通りやすく、ピーナツあられの塩分がやめられない。タバコで一服が終わろうとした頃、にわかにジェットエンジンの轟音が響き出す。東の空から、この山頂を目掛けて小デブな自衛隊機が向かってくる。「こちらが何かしたのだろうか?」「ここは来たらいけない場所だったたのか?」と妄想が駆け巡る間も、すごいスピードでやってくる。「やはり、狙われている」…頭上にやってきた時には、二人して恐怖に怯え、そして観念した。「ごめんなさい…」。悪いことをした覚えがないのに…飛行機が立ち去った後、「空からの攻撃(監視)がこんなにも恐ろしく、人を無力にさせるものなのか」「二人には槍を持って立ち向う勇敢な気持ちがなかった」…と真面目に話し合った。そして我に返った途端、一気に笑いが起こった。それから暫くの間、静かな山頂では二人の笑い声だけが大きく響き、きれいな澄んだ青空が見られるようになった。
1時間以上も頂上で過ごし、下山に取り掛かる。10分程で赤摩木古山分岐を過ぎ、本格的な下山となる。「よく登ってきたな〜」と思える急傾斜の坂道が続く。大きな葉っぱの紅色や順光に映える森の黄色など豊かな色彩に目が留まる。曇天であるのに色が鮮やか。手付かずの広葉樹の森は素晴らしいなとつくづく感じる。1246m地点の平坦地から先ほどいた大門山を振り返る。山としての貫禄が、周りの紅葉に押されて貧弱に見える。この辺りの紅葉はちょうど身頃であり、この山で一番の鮮やかさを出していた。
ここからまた急坂が始まる。途中の階段の道では、鉄の杭がこちらを睨み、牙をむき出しにしている。一転びでもすれば、奴らの牙に串刺しにされ大怪我するのは間違いない。慎重に歩を進め、30分ほどで無事に登山口に到着した。
登山口には1台の車両があって、1人の老女がうろうろとしている。遭難者の親族かもしれないと思ったが、単なるキノコ採りに来たとのこと。相棒は大獅子山の方でキノコ採りをしているらしい。しきりに遭難者の安否を気遣い、その家族のことを心配している。「自然の恵みを大事にする人に、せめて身の危険が起こりませんように!」と祈るばかりである。キノコ採りをする人の誰もが遭難したいとは思わないはずである。一般の登山をする人だってそれは同じで、こうしたことが他人事であるとは思えない。山と戯れ、無事に下山できていることを有難く思った。
【番外編…安曇野まで大移動】
下山したのも束の間、すぐに長野県の安曇野まで向かわないといけない。距離にして約170km。当初、上高地に行く計画であったため、ルートイン豊科に宿を予約していたのだ。ブナオ峠からきつい林道をひた走る。アスファルトであるためスピードが増し、カーブの多い林道では下りの方が神経を使う。途中、連るんだ3台の車とすれ違う。道幅が狭く対抗がギリギリで数センチも離れていない。この時間から登ってくる人たちは、恐らく地元の方なのだろう。何気なく運転している姿に脱帽してしまう。
林道を終え、道の駅上平に立ち寄る。ここならウォシュレットのトイレがあるだろう。登山中から●●●を我慢しており、ようやく解放されたと思いきや、そこはノーマルなトイレ。頭の中が真っ白になった。
そこからは各自が自由に運転し、待ち合わせの平湯温泉の宿泊案内所に向かう。道中には過去に訪れた高山市内や土産物店、民宿を見ることができて、懐かしさもひとしおだった。結局、お互いが別々のGSで給油したにも関わらず、5分違いで合流することができた。
あと70kmで宿泊地に到着。1時間程度で着くだろうと気楽な気持ちで平湯を出る。安房トンネル、道の駅風穴の里、新島々の駅、新村の交差点などが昔と変わらずにある。松本に住んでいた10年以上前の光景が蘇る。相変わらず、松本市付近の交通事情はひどいままだ。信号の接続の悪さや片側一車線での無理な右折車が目立つ。これなら渋滞しても無理はない。1時間半を経過し、ようやくルートイン豊科に到着した。
チェックインを済ませ、軽めの支度をしてから、この山旅の締めの”宴”に出かける。信州に来たからには、懐かしの”山賊焼き”をいただきたい。ホテルの受付に尋ねるも、山賊焼きを置いてある店をあまり知らない様子。たまたま近くに”養老乃瀧”がある。もう夜も遅いし、ここに居座ることにする。「恐らくここには山賊焼きはないだろう」、なかば諦めて、生中と野菜炒め、焼鳥盛合せを注文する。とりあえず「おつかれ…」今日もビールが美味い。やはり登山後のビールは最高だ。後輩と今回の山旅を振り返り、またまた笑いを連発する。それにしてもどこに行っても珍事は起こるものだ。思い出しては笑い、思い出しては笑いを繰り返し、気持ちよくなっていく。ちょっとほろ酔い加減になってきたころに、ふと目の前に”本日のメニュー”の黒板があることに気付く。「おっと、山賊焼きがあるではないか」、間髪を入れずに注文する。しょうゆベースの衣が鶏肉とマッチし、絶妙な味と食感。松本に住んでいた時によく食べたことを思い出し、何とも言えない気持ちになる。夜は更けていく。知らない間に閉店の時間。お酒は8杯程度でちょっと飲み足りない気分でもあったが、お互い登山と運転の疲れがあり、明日の道中も長い。何より昔のようにもう若くはない。このまま宿に帰りお開きとした。
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