中央本線の倉本駅に降り立つ。
駅がスタートだと、まさに山旅の始まりという感じでわくわくしてくる。
無人の静かな駅である。
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8/18 8:41
中央本線の倉本駅に降り立つ。
駅がスタートだと、まさに山旅の始まりという感じでわくわくしてくる。
無人の静かな駅である。
倉本から中八丁を越えていく登山道は、ガイド本によっては通行止めとされているが、手入れもされており問題なく歩けた。
植林が多いが、奥に分け入るにつれ写真のような気持ちいい自然林に包まれる。
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8/18 10:40
倉本から中八丁を越えていく登山道は、ガイド本によっては通行止めとされているが、手入れもされており問題なく歩けた。
植林が多いが、奥に分け入るにつれ写真のような気持ちいい自然林に包まれる。
中八丁。峠越えがある山旅はいいものだ。
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8/18 11:31
中八丁。峠越えがある山旅はいいものだ。
中八丁から急降下して、ついに伊奈川本谷に降り立つ。深い緑に包まれた中、澄んだ青い水が白い岩の間を沸き立つように流れている。ここをこれから遡ると思うと心浮き立つ光景だ。
しかし当然だが水量が多い。大丈夫かな…。
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8/18 12:08
中八丁から急降下して、ついに伊奈川本谷に降り立つ。深い緑に包まれた中、澄んだ青い水が白い岩の間を沸き立つように流れている。ここをこれから遡ると思うと心浮き立つ光景だ。
しかし当然だが水量が多い。大丈夫かな…。
少し遡ると取水ダムが現れる。ダムの右手の斜面を登ってダムの上に上がり、堰堤を越えてから梯子をたよりに流れに降り立つ。そして当然のごとく、この取水ダムを越えるとさらに水量は増す。
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8/18 12:31
少し遡ると取水ダムが現れる。ダムの右手の斜面を登ってダムの上に上がり、堰堤を越えてから梯子をたよりに流れに降り立つ。そして当然のごとく、この取水ダムを越えるとさらに水量は増す。
ダムを越えてすぐ、いきなり立派な巨岩と轟轟と落ちる滝にぶつかる。水量の多さと相まって、これから悪場が始まるのではないかと緊張する場面。(この滝自体は右から簡単に巻ける。)
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8/18 12:37
ダムを越えてすぐ、いきなり立派な巨岩と轟轟と落ちる滝にぶつかる。水量の多さと相まって、これから悪場が始まるのではないかと緊張する場面。(この滝自体は右から簡単に巻ける。)
そして滝を抜けると、ひたすらゴーロ。曲がった先もゴーロ。も一つ曲がった先もゴーロ。平流天国である。さっきの緊張はなんだったのか。
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8/18 12:55
そして滝を抜けると、ひたすらゴーロ。曲がった先もゴーロ。も一つ曲がった先もゴーロ。平流天国である。さっきの緊張はなんだったのか。
しかし、それがいい!
大きな山あいを緩やかに流れる本流を、ひたすらひたすら遡っていく。そんな沢旅にあこがれてここに来たのだ。空は青いし水もきれい。そして誰もいない。幸せである。
滝がなくてもいい。とにかく長い沢をひたすら歩きたい。そんなワンダラーにはお勧めの谷です。
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8/18 13:02
しかし、それがいい!
大きな山あいを緩やかに流れる本流を、ひたすらひたすら遡っていく。そんな沢旅にあこがれてここに来たのだ。空は青いし水もきれい。そして誰もいない。幸せである。
滝がなくてもいい。とにかく長い沢をひたすら歩きたい。そんなワンダラーにはお勧めの谷です。
時々このように谷が狭まることもあるが、簡単に通過できる。
ただし水量が多いため、渡渉時は注意を。
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8/18 14:12
時々このように谷が狭まることもあるが、簡単に通過できる。
ただし水量が多いため、渡渉時は注意を。
長いといっても、おそらく足の速い人なら一日で抜けられる伊奈川だが、せっかく長くて大きい沢に来たのだから、急ぎ足で抜けてはもったいない。途中で泊まることにする。
しかし意外なことに、河原は藪や石が多く、良い泊まり場が見つからない。仕方なく、少しはましと思える河原に、笹薮を分けてテントを張った(今回は稜線でもう一泊する予定のため、タープでなくテント。)。焚火を見つめながら夜が深まっていく。谷が深いほど、人の気配から離れているほど、焚火は楽しい気がする。
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8/18 19:56
長いといっても、おそらく足の速い人なら一日で抜けられる伊奈川だが、せっかく長くて大きい沢に来たのだから、急ぎ足で抜けてはもったいない。途中で泊まることにする。
しかし意外なことに、河原は藪や石が多く、良い泊まり場が見つからない。仕方なく、少しはましと思える河原に、笹薮を分けてテントを張った(今回は稜線でもう一泊する予定のため、タープでなくテント。)。焚火を見つめながら夜が深まっていく。谷が深いほど、人の気配から離れているほど、焚火は楽しい気がする。
朝。奥の藪にテント張ってました。
一晩過ごした場所は、どんなに微妙な泊まり場でも、立ち去るときに何となく一礼してしまう。
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8/19 5:30
朝。奥の藪にテント張ってました。
一晩過ごした場所は、どんなに微妙な泊まり場でも、立ち去るときに何となく一礼してしまう。
かなり遡ってきたはずだが、水はまだ滔々と流れている。
正面から朝日が昇ってきた。真東に向かって遡っているのだ。
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8/19 7:12
かなり遡ってきたはずだが、水はまだ滔々と流れている。
正面から朝日が昇ってきた。真東に向かって遡っているのだ。
はるか彼方に山が見える。三ノ沢岳かな?
しかし、まだ遠いな…三ノ沢岳のコルまで詰めないといけないのだが…
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8/19 8:03
はるか彼方に山が見える。三ノ沢岳かな?
しかし、まだ遠いな…三ノ沢岳のコルまで詰めないといけないのだが…
しかし、さすがに水量は減ってきて、次第に見慣れた沢の水量になってくる。
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8/19 12:02
しかし、さすがに水量は減ってきて、次第に見慣れた沢の水量になってくる。
さらに水量が少なくなり、ゴロゴロした白い岩ばかりが目立つようになる。山が近い。そして雲も近づいている。高度が上がってきたのだ。
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8/19 16:02
さらに水量が少なくなり、ゴロゴロした白い岩ばかりが目立つようになる。山が近い。そして雲も近づいている。高度が上がってきたのだ。
周りの山肌が高山特有の背の低い灌木と草原に覆われるようになった。
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8/19 16:35
周りの山肌が高山特有の背の低い灌木と草原に覆われるようになった。
ついに沢が傾斜を増し始める。息が切れるが、釣りやら何やらでゆっくりしすぎて、時間が押しているため歩を早める。すると霧の向こうから大きな水音が近づいてきて…
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8/19 16:59
ついに沢が傾斜を増し始める。息が切れるが、釣りやら何やらでゆっくりしすぎて、時間が押しているため歩を早める。すると霧の向こうから大きな水音が近づいてきて…
たどり続けた平流の果て、初めての滝にして最後の滝、多段50mの滝の一段目が姿を現す。これをクリアすれば今日の目的地、三ノ沢カールにたどり着くはずだ。最後の最後でラスボスを用意してくれているあたり、心憎いはからいである。
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8/19 17:26
たどり続けた平流の果て、初めての滝にして最後の滝、多段50mの滝の一段目が姿を現す。これをクリアすれば今日の目的地、三ノ沢カールにたどり着くはずだ。最後の最後でラスボスを用意してくれているあたり、心憎いはからいである。
といっても、この滝の登りはそんなに難しくない。フリーで直登可能で、大体3級下くらいだろうか。ずっと50m登攀が続くわけではなく、写真のような緩い部分も挟みながら多段の滝が続く感じなので、心理的な圧迫感も少ない。
今日は高度の高いカールで泊まる予定なので、あまり濡れたくなかったのだが、最後の最後でシャワークライミングさせられてしまった…寒い…。何といっても、ここの高度はもう2,500mくらいあるのだ。
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8/19 17:30
といっても、この滝の登りはそんなに難しくない。フリーで直登可能で、大体3級下くらいだろうか。ずっと50m登攀が続くわけではなく、写真のような緩い部分も挟みながら多段の滝が続く感じなので、心理的な圧迫感も少ない。
今日は高度の高いカールで泊まる予定なので、あまり濡れたくなかったのだが、最後の最後でシャワークライミングさせられてしまった…寒い…。何といっても、ここの高度はもう2,500mくらいあるのだ。
もうすぐ登りきる。最後の小滝の上には、今までと違う大きな空間が広がっているのがわかる。
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8/19 17:34
もうすぐ登りきる。最後の小滝の上には、今までと違う大きな空間が広がっているのがわかる。
三ノ沢カールに出た。
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8/19 17:35
三ノ沢カールに出た。
来し方を振り返る。
改めて、高い山に囲まれた深い谷を辿ってきたことに気づかされる。
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8/19 17:41
来し方を振り返る。
改めて、高い山に囲まれた深い谷を辿ってきたことに気づかされる。
三ノ沢カールは、草原とハイマツの間を小川のようになった伊奈川源流がゆるやかに流れる別天地。何年か前、三ノ沢岳に登った時に見下ろして、日本庭園のような眺めに心ひかれた場所だった。記憶の中のその場所の、ど真ん中をいま歩いている。不思議な感じだ。
カール底の一角に平らな砂地になった天然のテント場を見つけ、今宵の寝床とする。
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8/19 17:59
三ノ沢カールは、草原とハイマツの間を小川のようになった伊奈川源流がゆるやかに流れる別天地。何年か前、三ノ沢岳に登った時に見下ろして、日本庭園のような眺めに心ひかれた場所だった。記憶の中のその場所の、ど真ん中をいま歩いている。不思議な感じだ。
カール底の一角に平らな砂地になった天然のテント場を見つけ、今宵の寝床とする。
アーベントグリューエンに染まった稜線。
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8/19 18:26
アーベントグリューエンに染まった稜線。
夕焼けとくっきり空に浮かんだ稜線、そして雲海がきれいだった。
いつまでも見ていたかったが、最後の滝の登攀で濡れてしまった体に容赦なく高山の冷たい風が吹きつけて、寒くて仕方がない。ここまで登ってしまうとさすがに焚火ができないのがつらい。早々にテントにもぐりこんだ。
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8/19 18:32
夕焼けとくっきり空に浮かんだ稜線、そして雲海がきれいだった。
いつまでも見ていたかったが、最後の滝の登攀で濡れてしまった体に容赦なく高山の冷たい風が吹きつけて、寒くて仕方がない。ここまで登ってしまうとさすがに焚火ができないのがつらい。早々にテントにもぐりこんだ。
朝、霧に包まれたカールを稜線に向かって歩いていく。伊奈川はすでに細い流れになって、ハイマツのなかにくねくねと伸びる散歩道のように見える。
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8/20 5:45
朝、霧に包まれたカールを稜線に向かって歩いていく。伊奈川はすでに細い流れになって、ハイマツのなかにくねくねと伸びる散歩道のように見える。
ついに伊奈川の最後の一滴に別れを告げ、稜線への最後の登り。
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8/20 5:54
ついに伊奈川の最後の一滴に別れを告げ、稜線への最後の登り。
伊奈川よ、さようなら。最後に見た伊奈川は朝霧に包まれていた。
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8/20 5:54
伊奈川よ、さようなら。最後に見た伊奈川は朝霧に包まれていた。
そしてハイマツに突入。なかなか強烈で地面に足がつかない区間もあったが、地形図を見る限りすぐに登山道に出るはず。そう言い聞かせてハイマツを漕ぎ続ける。
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8/20 6:12
そしてハイマツに突入。なかなか強烈で地面に足がつかない区間もあったが、地形図を見る限りすぐに登山道に出るはず。そう言い聞かせてハイマツを漕ぎ続ける。
やっと道に出た!三ノ沢岳と宝剣岳を結ぶ登山道の中間地点よりも少し宝剣岳方面に寄ったあたりだ。
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8/20 6:21
やっと道に出た!三ノ沢岳と宝剣岳を結ぶ登山道の中間地点よりも少し宝剣岳方面に寄ったあたりだ。
ここからはもう下山気分といった感じ。しかし今回は、稜線を北上して木曽駒と将棊頭山を越え、桂小場へ下山するつもりなので、まだまだ先は長い。まず宝剣岳。
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8/20 7:03
ここからはもう下山気分といった感じ。しかし今回は、稜線を北上して木曽駒と将棊頭山を越え、桂小場へ下山するつもりなので、まだまだ先は長い。まず宝剣岳。
千畳敷がちらりと見える。
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8/20 7:06
千畳敷がちらりと見える。
霧に包まれた宝剣岳の岩稜はなかなかの迫力だ。
昔、中央アルプス北部を越百山から木曽駒まで縦走したときに、宝剣岳を初めて通ってめちゃくちゃ怖かったことを思い出した。今通るとそれほどでもない。何だか感慨深い。
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8/20 7:07
霧に包まれた宝剣岳の岩稜はなかなかの迫力だ。
昔、中央アルプス北部を越百山から木曽駒まで縦走したときに、宝剣岳を初めて通ってめちゃくちゃ怖かったことを思い出した。今通るとそれほどでもない。何だか感慨深い。
宝剣岳山頂。大岩の上の「真」の山頂にもちゃんと登頂しておきました。
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8/20 7:14
宝剣岳山頂。大岩の上の「真」の山頂にもちゃんと登頂しておきました。
稜線を北上。木曽駒は何度か登っているのでパスし、まだ行ったことがなかった濃が池(写真)を経由することにする。濃が池は静かな湖面に大きな緑の稜線が鏡のように写り、本当にきれいなところだった。
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8/20 9:24
稜線を北上。木曽駒は何度か登っているのでパスし、まだ行ったことがなかった濃が池(写真)を経由することにする。濃が池は静かな湖面に大きな緑の稜線が鏡のように写り、本当にきれいなところだった。
将棊頭山を通過。
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8/20 10:52
将棊頭山を通過。
美渓のあとに雄大な稜線漫歩もできて、天気も崩れず、ありがたいことだ。
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8/20 10:53
美渓のあとに雄大な稜線漫歩もできて、天気も崩れず、ありがたいことだ。
桂小場に下山。登山道の途中で呼んだタクシーで伊那市駅へ。2晩沢で寝泊まりした体臭(沢臭+汗+焚火臭)は強烈だっただろうな…タクシーの運転手さんごめんなさい。
伊奈川本谷の湿り気が残る文庫本を読んだり、居眠りしたりしながら、電車に揺られて家路についた。よい山旅だった。
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8/20 15:20
桂小場に下山。登山道の途中で呼んだタクシーで伊那市駅へ。2晩沢で寝泊まりした体臭(沢臭+汗+焚火臭)は強烈だっただろうな…タクシーの運転手さんごめんなさい。
伊奈川本谷の湿り気が残る文庫本を読んだり、居眠りしたりしながら、電車に揺られて家路についた。よい山旅だった。
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