小樽内川・岩魚沢左股から定山渓天狗岳
- GPS
- 08:07
- 距離
- 10.7km
- 登り
- 1,113m
- 下り
- 1,144m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2012年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス タクシー
|
写真
感想
「札幌近郊の忘れられた登山コースを行く」シリーズの第2弾・沢登り編は、百松沢山の常次沢とどちらにするか迷ったが、定山渓天狗岳の岩魚沢に決定。
地形図では天狗沢となっている、この定山渓天狗岳東面の沢は、昭和4〜50年代まではガイドブックにも載るほどポピュラーだったようだが、最近は登ったという話をとんと聞かない。どこかで「定山渓ダムの完成とさっぽろ湖の誕生によってアプローチが不便になり、あまり行く人がいなくなった」という趣旨のことが書かれているのを読んだが、林道入口から入渓点まで30分ほどなので、それほどのこととも思えないし、それ以前からあまりポピュラーではなかった気がする。
そんなことを考えながら、アルパインガイドの「北海道の山」(昭和52年版)を見たら、この沢が紹介されていて、「小さい沢だが、滝も函もあっておもしろい」の後に、だが「近年造林のための林道や歩道が多数つけられ、流入土砂などで荒れてきている」と書かれていた。そのあたりにも不人気の原因があるのかもしれない。
近年人気がないからにはそう多くは期待できないが、まったく楽しめないこともないだろう。何よりも定山渓天狗岳(通称:定天)に登れるのがこの沢の魅力だ。ピークへの直登沢ではないが、左股はI峰とII峰のコルに突き上げている。それに定天に登ったのは高校生のときが最後なので、36年ぶりの登頂になる。ということで、天気も好さそうなこの週末に、岩魚沢左股から定天に登ることにした。
定山渓までバスで行き、そこからお馴染みのつばめタクシーを呼んで、札幌国際スキー場方面へ。途中から、さっぽろ湖の向こうに、目指す定天が見えてくる。小樽内川林道と滑川林道のゲートが並んでいるところで車を降りる。ここから小樽内川の右岸につけられた小樽内川林道を下流方向へ。林道上には熊の糞が散見され、ちょっと緊張する。
しばらく行くと、道は右に曲がって岩魚沢の沢筋に入っていく。正面には目指す定天が大きく見えてくる。I峰とII峰のコルと、そこに突き上げる沢もはっきり見える。正面から見ているせいもあるが、かなり急に見える。「あそこを登れるかな?」と不安にもなるが、何とかなるだろう。
林道の屈曲点、白い植物群落保護林の看板が立っているあたりから、道を外れて入渓。道の反対側には大きな岩塔のようなものがある。沢は林道の下をコンクリート製のトンネルで潜っている。入渓点付近の川原はかなり土砂が堆積しており、この沢への期待感がちょっと薄れる。すぐに430m二股に達する。右股はII峰、III峰間のコルに突き上げる沢で、I峰に登頂するには、上部の岩壁の基部をかなりトラバースしなければならないようなので、ここはやはり左股へ。しかし、右股に比べて水量が少なく、ちょろちょろの流れで、さらに期待感がしぼむ。
それでも、1m内外と小さいながらも、ナメ滝めいたものもあり、ゴーロ歩きよりは面白い。まあ、こんなものかと思っているうちに、490m二股に着く。ここは、ちょっと楽しそうなところ。左股は日陰、葉陰にちょろちょろの水量だが、右股は木漏れ日の中に、0.5m、0.5m、5mの三段の滝が白く浮き上がって見え、登行意欲をそそる。ここはもちろん右股へ。これ以降はすべて右。
5mの滝を左から越えると、その後も1〜2mのナメ滝が現れ、快適に越えていく。木漏れ日を浴びたサイハイランや、滝や側壁に見られる柱状節理が目を楽しませてくれる。530〜540m付近で倒木がかなり溜まったところを越え、その上の土砂が堆積したところを過ぎると、水流が少し細くなる。
570m付近で、右岸の斜面が崩れて土砂とともに雪渓が落ちてきたようなところに出る。そのすぐ上には6mほどの滝。この沢で一番立派な滝か。傾斜もこの沢にしてはきついが、細かいホールドは多い。倒木も使って中段まで登ると、傾斜が緩くなるが、ホールド外傾している上にぬめって滑り、かえって登りにくい。慎重にジグザグに登る。
上には、たぶん第II峰の頂上岩壁が見えてくる。沢沿いには、下流部では既に散っていたタニウツギの花がちらほら見かけられるようになる。チシマフウロも咲いている。だいぶ水量も減ったきたように思われる頃、二股が見えてくる。660mの二股だ。左股は二股のすぐ近くまでスノーブリッジが迫っている。右股は、高さ3mほどの傾斜の強いナメ滝で合している。もちろん、ここは右股へ。左股は行こうにも、ちょっと怖くて行けない。スノーブリッジが薄くなっていて上は怖いし、下も低くて通り抜けられるかどうかわからない。迂闊にもスノーブリッジのことは何も考えていなかったが、考えてみればまだ6月だ。
しかし、右股にスノーブリッジがないという保証はないぞ、と気を引き締めていたら、案の定、すぐに右股にもスノーブリッジが現れた。幸いこちらは、天井部分の真ん中が一部落ちていることもあって、中を立ったまま通り抜けられた。それでも、崩落しないことを祈りながら、早足で通り抜けた。このスノーブリッジは場所を選べば、まだ上も歩けたと思う。
傾斜が緩めの階段状の滝、ナメ滝が続き、周囲にはオオバミゾホオズキの花。振り返ると烏帽子岳、百松沢山が見える。720mぐらいからまた堆積物が現れ、740m付近には、いつ落ちてきてもおかしくないように見える巨岩がいくつも。スノーブリッジ同様、落ちてこないことを祈りながら、なるべく落ちてこないところを、急いで通り抜けるしかない。
巨岩に気を取られていて、水量がかなり少なくなっていることに気づかなかった。770m二股であわてて、ナメ滝をちょろちょろ流れる水を汲む。ここで、サッポロビールの空き缶発見。「誰だ!?こんなところに捨てたのは!」と見ると、何だか懐かしいデザインの缶。しかも口のプルトップ?が完全に切り離されるタイプ。20年以上は前の缶だろう。記念(何の?)に持ち帰ることにする。
当然、この770m二股も右へ。ナメはスラブの様相を呈し、ガリー状のところも出てくる。傾斜も強まり、涸れ滝を乗り越えていくと、950m付近で沢型が浅くなり、周りの木々もなくなって開け、II峰の頂上岩壁が右前方に大きく立ちはだかる。ここまで来れば、もう大丈夫。前方の一番低く見えるところ、I,II峰間のコルへ向かって登ればいいのだ。
と思ったのは甘かった…?傾斜が強くなって、滑る斜面をコル目指して登っていったのだが、ふとGPSを見ると、I峰の山頂に向かって直登していることになっているではないか!どうも方角がおかしいし、地形から考えても直登しているはずはなく、コルへ向かっているとしか思えないのだが…。GPSも急におかしな挙動を示したのではなく、自然な軌跡を描いている。うーん、おかしい。まさかII峰だと思っていたのが実はI峰だったりして?いや、そんな筈はない。しかし、とりあえずII峰(と思ったピーク)寄りに戻ってみることにして50mほど下る。だが、やはり先ほどのルートが正しかったとしか思えない。そこで再び登り始めると、急にGPSの軌跡が激しく動いてあらぬ方向へと動き出した。やはりGPSがおかしかったのだ。GPSを盲信するのも問題、事故にもつながりかねないと再認識し反省。結局、30分以上のロスとなる。
先ほどは使わなかったが、どうしても足元が滑る。足袋のフェルトが剥がれてきている。そこでアイスハンマーを出し、斜面にピックを打ち込んで、これを支点にして登る。ときどきピックが岩に当たって跳ね返るが、かなり有効だ。少々笹薮をこいで、I,II峰間のコルに出る。地形図で見るのとは違って割と細い尾根。薮をこいでこの尾根上を行くが、なかなか夏道に出ない。尾根の向こう側にあるようなので、斜めに下っていくと道に出た。
ここからI峰の頂上へ向かって急登。下から登山者が登ってくる音が聞こえる。見覚えのあるガリー状のところで下山者とすれ違いながら、固定ロープを使って登ると、右手にはやはり見覚えのある岩塔。頂上は左だ。かつてこの岩塔に埋め込まれていた遭難碑(プレート)はなくなっていたが、それがあったらしい痕跡は見て取れた。このあたりで、後から来た人に先に行ってもらう。II峰,III峰の向こうに白井岳が見える。そこから頂上はすぐだった。36年ぶりの登頂。しかし、三角点のある場所は視界が効かず、東にちょっと行ったところが展望台になっていた。先ほどの人の他にもう一人いて会話を交わす。霞んではいるが、小天狗だけでなく一応札幌近郊の山はひととおり見渡せる。羊蹄山もうっすらと。
三角点のところに戻って、昼飯の残りを食べ、下山の途につく。この道も36年ぶりだ。見覚えがあるというよりも、昔撮った写真で覚えている景色を眺めながら下る。
固定ロープが2,3ヶ所あり、かなり下ったナメ滝のあるところでひと休み。また歩き始めると、後ろから、先ほど頂上手前で会った人が追いついてきた。そのまま下り、林道に出たところで、定山渓まで車に乗せてもらえないかとこの人に頼む。快諾してもらい、一緒に林道を歩く。今年、札幌に転勤してきた人で、かつては谷川岳の厳冬期のアルパイン・クライミングなど本格的に山をやっていたとのこと。車の中でもいろいろ山の話をし、住まいが我が家の割と近くとわかって結局家まで送っていただくことになってしまった。
アルパインガイドによると、右股には20mの滝や、1時間弱続くナメ滝があるという。今もあるかはわからないが、いつか行ってみたいものだ。
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