6歳児とゆく台風後の山梨・高畑山【反省】
- GPS
- 06:42
- 距離
- 11.5km
- 登り
- 831m
- 下り
- 847m
コースタイム
天候 | 晴れ時々曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2019年11月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
よく整備されていた登山道、台風の影響でややワイルド気味 |
その他周辺情報 | どこかに寄るなんてとても |
写真
感想
このところ山登りの危険についてのニュースを目にする。ヤマレコでも1000メートルを滑落した方の手記が公開されていた。
気をつけなければ、と思っていた矢先。まさか自分が息子を連れて遭難寸前になるなんて……。
強い自戒を込めて記事にしておく。
【たのしいやまのぼり編】
三連休とあって、前日夜は少し夜更かしして遊んでいた息子。
山に飽きていないかな、という不安もあって、朝早く起こすのを控えた。
結局は山に行こうとなって出発、駅からすぐスタートできる山梨の高畑山を目指すことに。
JR鳥沢駅からしばらく国道を歩く。トラックが多く、歩道は狭い。息子さんが車道に飛び出してしまわないように慎重に進む。
手書きの道しるべにしたがい、民家脇から線路下のトンネルをくぐる。集落を越えて桂川を渡り、少し登るとまた集落。ネコがたくさんいる。思わずネコとお話しにいく息子さん。
その奥に、いかつい車止めゲートのある登山口があった。ゲートの横をよっこいしょと開いて、やっと土の道が始まった。ここで息子さんにあえなく捕まってしまったバッタさんは、大きなふくろに入れられて彼とともに山を登ることに。
貯水池を回り込んで、林道はやがて登山道らしくなる。沢のような、礫に埋め尽くされた道。「峠道文化の道入口」という標識を過ぎ、鉄骨がひとつズレた橋を渡る。
ときどき道に沢水が流れ込んでいる、息子の足を水から守らないと。
沢沿いを進んで杉林の中、ときどき登山道がわかりにくくなるところがある。これは暗くなったら難しそうだ。
そしてあまりキノコは見つからない。そろそろキノコシーズンは終わってしまうので、小さなキノコにも気を配りながら進む。
石仏のところからコースは二手に分かれる。急登をジグザグに上がってゆく、仙人小屋跡のほうのコースを進むことにする。
倒木で遊ぶ息子を急かすなどしながら、ジグザグに高度をあげてゆく。この登山道は急登らしいところもこまめなジグザグがつけてあり、整備が行き届いていることを思わせる。
あまりにジグザグがこまめなので、我が家のちいさな忍者はショートカットを狙い斜面に取り付く。だが無念にもすべりおちてしまった。おとなしく道を進もうぜ。
このあたりから、時間が遅いことがかなり気になってくる。なにかを見つけては立ち止まる息子を急かすけれど、自然の中に来ているのは発見をたくさんするため。山登りだけではなかったはず……
やがて尾根に出ると、道はゆるやかに。ここでおなかをすかせた息子さんの申し出により、おにぎりタイムとする。しかし、寒い。下手に稜線に出てしまったせいで、風が吹き抜けていく。息子も大急ぎでおにぎり大3つを平らげ、進む。持ってきたチーズは歩きながらにしよう。
このあたりで、退却すべきではないか、という考えが浮かんでくる。
やがて最初のうちおにぎりタイムの場所として考えていた仙人小屋跡という場所につく。暗く、とくに何もないところ。ここにしなくてよかった。
ここから、上の尾根を目指してこまめなジグザグで急斜面を登っていく。
台風のときの大雨のせいか、土が削れて小石の下だけが残り、あたかも小石が地面から生えたかのようになっている。息子はこれをイシタケと命名、のちにスギノミタケも見出した。最初に見つけたものはコケて粉砕してしまうも、根性でもうひとつ見つけてくれた。
急斜面を越えると、少し急な尾根に。でもここまできたらあと少しだよ、急いで頑張って登ろう。
岩がちの尾根を頑張って進むと、思いがけずキノコの大群に迎えられる。そして、やっと高畑山山頂!
15:45……。まずい気がする。
秀麗富嶽十二景、またしても富士の姿は見えないけれど、遠くにかすむ山がきれい。息子は今回のごほうびドリンク「ぜりーめりんぐ」をおいしくいただいた。
さあ、急いでおりないと。昔からの峠道という、穴路峠経由にしよう。
山頂直下は急な斜面、でもジグザグにしてあって進みやすい。快適に進むと、なぜか登り坂。あれ……とピークに到着、天神山山頂だという。ここからは街が見下ろせる。夕日に照らされた大きな橋が見える……夕焼け? ほんとうにまずい、進もう。
歩きやすい尾根道をどんどんおりて、穴路峠。峠道は、倉岳山と高畑山を結ぶ尾根道から少し掘り込まれていて、ここが生活道路だったことを忍ばせる。
【遭難寸前暗闇下山編】
そんな悠長なことを言っているヒマはない、おりないと。穴路峠から道は大きくジグザグに高度を下げる。こちらは北側斜面、すでにかなり暗い。
暗いね、こわいよ、という息子。ここは昔からの道だからよくできている道のはず、大丈夫だよ、と言いながら早足で進む。
高度が下りきると、岩だらけの道。沢を飛び越え、石を踏みしめて歩く。もうかなり暗い、そして道がよくわからない。かろうじてピンクテープが見える、頼りに進む。
そして、夫婦杉にたどり着いたときには……山は、道は暗闇に包まれていた。
携帯、ヤマレコ記録用のほうはもう充電がダメそう。写真用のもう1台のほうもギリギリだ。けれど、こいつの懐中電灯機能がないともう前に進むことができない。切れないように祈りながら前に。
怖いと泣く息子、そうだよね。今回はパパが完全に計画を間違えてしまった。出発時刻、山選び、装備、引き返さない判断。全部間違いだった。
ただ、この山の中で過ごすわけにはいかない、なんとか家に帰ろう。怖いよね、でもあきらめないで、ふたりで頑張ろう、協力して。いっしょなら大丈夫だから。祈るように息子に語りかける。半泣きだけれど、力強く前に進む息子。
沢の音に耳をすませて、そこから外れないように、近づきすぎて落ちないように。携帯が照らし出す道の掘り込みの影、礫の続きをたどってゆく。
熊をよけよう、と、持ってきた竹笛を大きくならす息子。ありがとう、こんなひどいことになっているのに。
やがて石仏が光の中に見えた。ついでもうひとつ。なんとか、なるかもしれない。携帯の充電がもちさえすれば。
前を照らし、息子の手を引き、礫を踏みしめて歩く。しかし礫がなくなったあたりで道がわかりにくくなる。登りのときに、これはわかりづらいと思った場所だ……沢と離れないように進む。足をとられ、転ぶ。いや自分はいい、息子を転ばせないように。
礫が多い道に戻ってこれたようだ。けれどそれゆえに暗闇の中では歩きづらい。流れ込んだ沢水に2人とも踏み込んでしまう。もうぼくたちはおしまいかなあ、なんて言うわりには前に進んでくれる息子。強い子に育ってくれた。
そして携帯のライトが鉄骨の橋を映し出す。何も見えない暗闇だけれど、ここまで来たならあと少しのはず。礫を踏みこえて進む、息子は竹笛を鳴らす……割ってしまった。われちゃったよ!どうしよう! 大丈夫だよ、もう帰れる。帰れたらなにかひとつ好きなものを買ってあげるよ。笛もなおすよ。
「おそくあるいちゃってごめんね」なんて言う息子。そんなことない、悪いのは全部パパだよ。最悪なことになってしまったけれど、頑張ってくれてるきみは強いよ。ありがとう。
足元のよくない闇の中を進み続けて、ライトが「峠道文化の森入口」の標識を照らし出したとき、相当安堵した。そして、街の光が見えてくる。登山道が林道になる。助かった。
やったね! と足取りが軽くなる息子。ってあれ? 川は左手側だっけ? 右にあるはずでは? 道間違えたかも、と逆戻り、街に帰れたのになんで逆に進むの!!と泣く息子。
いかん、少し冷静になろう。Googleマップを開く。川は、いやこの時点ではもう貯水池、はまさしく左手にあることがわかる。そうだった、あまりの恐怖感から何もかもがわからなくなっていた。
ゲートに着いたころには息子はすっかり元気。あっそうだばったさんをにがそう、とリュックを開けている。すごいな君、とうちゃんはもう全部使い切って抜け殻だよ。
ほんとにごめんね、と息子に謝り続けながら駅に向かう。いいけどこれからは懐中電灯もってこうね、と息子。そうだね必ず持っていよう、でも懐中電灯が必要な時間には二度と山に来ないよ。
「ぜんぜんしらないまちだよね」「でももし君が大きくなってここから来た子と仲良くなったりしたら一気に知ってる街になるんだよ」なんて話をしながら鳥沢駅へ。
こんなひどい山歩きになったのに、ときおり空を見上げて、今日はどれだけ月が美しいかを語る息子。そうだね、この月が見られて、本当によかった。勇敢な君に助けられたよ。「よくあきらめないで歩いてくれたよ」「うん、ままにあいたいし、ごはんもたべたいから」
駅前の自動販売機でコーンスープをふたつ買い、電車に乗り込む。ああ、ひどい旅になってしまったけれど、ひとまずはリラックスして帰ろう。
遅い時間に山に入らないこと。
撤退する勇気を持つこと。
懐中電灯をもつこと。
山歩きをはじめて1年、超初心者なのに抱いていた過信を改めるいい機会になった。息子と、あたたかいスープで迎えてくれた妻に深い感謝を。
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