記録ID: 21128
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積雪期ピークハント/縦走
甲斐駒・北岳
鋸岳(2785m)
2004年02月26日(木) ~
2004年02月27日(金)


- GPS
- 34:00
- 距離
- 17.8km
- 登り
- 1,812m
- 下り
- 1,808m
コースタイム
2月26日伊那赤犬宅(6:30)→戸台(8:00)→角兵衛沢出会いC1(10:30)
2月27日C1(4:30) →角兵衛沢コル(9:20) →第一高点(9:30-10:00) →第二高点(13:15) →中の川のっこし(14:15ー30)→C1(16:30-50)→戸台(18:40)
2月27日C1(4:30) →角兵衛沢コル(9:20) →第一高点(9:30-10:00) →第二高点(13:15) →中の川のっこし(14:15ー30)→C1(16:30-50)→戸台(18:40)
過去天気図(気象庁) | 2004年02月の天気図 |
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アクセス | |
コース状況/ 危険箇所等 |
伊那の赤犬君と登った。夕方名古屋を出る高速バスで伊那インター下車、そのすぐ近くが信州大農学部で赤犬君の飯場のようなアパートだ。ここに前夜泊して翌朝出発。ここから戸台までは1時間ほど。戸台は一件を残してすべて無人。20年前に南アルプススーパー林道ができてから夏の登山者はこちらに来なくなった。橋本山荘のばあちゃんにあいさつして戸台川林道を歩く。左岸右岸とも100メートル以上の大岩壁が露出して、広大な河原だ。雪が全然無い。角兵衛沢出会いで一直線にルートを見上げるとやはり全然雪がない。どこかでイグルーでも作ろうかと思っていたが、これならこの河原で焚き火して泊まり、明日長時間行動のほうがいいと考え、ツエルトを張る。昼前から焚き火を始め青い空の下、雪煙、雪雲の逆巻く稜線を眺めて午後を過ごす。時折日が射したり、広い戸台川の谷一杯に雪が舞い落ちたりを昼寝しながら見る。雪は地面に触れると夢のように消えてしまう。今日は北海道に強い低気圧のある冬型で、寒気団が流れ込んでいる。稜線には雲が湧き起こり、雪煙が飛んでいる。焚き火の猛烈火力で作るラーメンはやはりうまい。麺のコシが違う。赤犬君実家の熊本でしか買えない棒ラーメンだ。 満天の星、氷点下13度、鹿の鳴き声。2時半に起きて、性懲りもなく棒ラーメンを食べ出発。真っ暗な針葉樹の中を登っていく。登山道とはいえ相当廃れている。このルートに何度も来ている赤犬君の先導で、いつしか樹林限界を超える。鋸岳はもろい岩塊だ。角兵衛沢は無数のガレに埋まった長大なガレガレ階段だ。荒れ地特有のカラマツばかりだが、降り注ぐ落石を浴びて幹はメタメタ、立ち枯れもめだつ。急斜面の足元は雪に埋まっていない上、コロ石のような小さな礫で滑りやすい。アイゼンを着けたりはずしたりを繰り返す。幸い気温が低く、落石は降ってこない。ひでえイモルートだと嘆くと、荒涼としたこの風景がいいと赤犬君は言う。イモではあるけれど稜線までズバッと一直線の特急ルートで魅力だ(落石さえなければ)。 コルや稜線の周辺と北面は多少の雪がある。イグルーも作れそうだ。アイゼンをきしませ第一高点(頂上)へ。形のいい城塞のようなすっきりした山頂だ。ここから第二高点の先までが鋸の刃のようなギザギザ稜線でお楽しみだ。第一高点の下りで数メートルの懸垂、第三高点に登って、鹿の窓という穴ポコの脇を通り、大ギャップを二ピッチの懸垂。下半分が谷側に寄りすぎて届かなくなり、やり直す一幕も。 その後急なガレルンゼを少し下って雪面から第二高点へラッセルして登る。第二高点もまた城塞の見張り台のように気持ちのいい場所だ。甲斐駒ヶ岳、北岳を眺める角度はこちらからが一番だ。お世辞抜きでどちらもK2のように美しい。そして仙丈、間ノ岳の間にはあこがれの塩見岳と悪沢岳が並んでいた。南アルプスからの風景は懐かしい。谷や盆地には雪が無く、高峰だけが真白く光っている風景だ。 赤犬君は8年前この山で遭難したことがある。第二高点の甲斐駒寄りの隣のピーク、熊穴沢の頭から小雪崩で滑落、急な雪面の下の断崖を標高差であわせて100メートル以上落ちた。吹きだまりに落ちたため助かったが、自力でコルまで這い上がり24時間後にヘリで救出された。しばらく山をやめていたが、4年前、僕の剱岳雪渓のバイトをきっかけにまた山を始めた。 第二高点からの下りは急なルンゼに雪少なく、かちんかちんに凍って嫌なところ。落ちたら50m滑ってたんこぶを作りそうだ。ここで赤犬君がコケたが1mで止まった。中の川のっこしで日を浴びてハーネスをはずして緊張を解く。熊穴沢も広大なガレ沢。だが角兵衛沢にくらべて礫は安定している。そのうち雪も多くなってきたので時折尻セードも駆使。中腹には苔むした美しい針葉樹林もある。黄昏気分になった頃、戸台川本流出会いの崖に。左岸の道を角兵衛沢出会いのC1へ。荷物を回収、戸台へ向けて帰る。切り立つ高い両岸、広い河原を二人で貸しきりだ。空気が澄んで遠くまで見える。真っ白だった甲斐駒ヶ岳が薔薇色に染まって金星が光り、やがて闇になったところで戸台に着いた。 橋本山荘に立ち寄り、ばあちゃんに挨拶すると、たっぷり醤油をかけた自家製野沢菜とお茶を入れてくれた。しょっぱいお菜を食べては茶を飲み、茶を飲んではしょっぱいお菜を食べる、信州の長く変わらぬおもてなしだ。伊那まで降りて信濃屋という店のジャンボカツ丼(4杯分のご飯に見える)に赤犬君が挑戦し、かろうじて喰いきる。僕はノルマル。このあと中津川発22時12分最終に間に合うよう、犬車で中央道をぶっ飛ばして送ってくれた。 |
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