南八甲田(57代春合宿)
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- GPS
- 94:05
- 距離
- 14.9km
- 登り
- 974m
- 下り
- 970m
コースタイム
3/19 停滞
3/20 停滞
3/21 11:10傘松峠−13:45ニセ駒ヶ峯14:30−15:33傘松峠
3/22 6:18傘松峠−8:15酸ヶ湯
天候 | 3/18 晴、3/19 吹雪、3/20 吹雪、3/21 曇、3/22 晴 |
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過去天気図(気象庁) | 2006年03月の天気図 |
アクセス |
写真
感想
3/18
前夜池袋発の夜行バスに揺られ、8:00頃青森駅到着。半年前の夏合宿でも一泊した場所でもあり、懐かしい気持ちに駆られる。各自テルモスを汲み、予約していたジャンボタクシーに乗り込み、酸ヶ湯へ。眼前に見える八甲田の山並みに高揚感を覚えながら、一時間弱で酸ヶ湯温泉に到着する。
各自準備をして10:10に酸ヶ湯温泉を出発し、まずはシートラでの林道歩きとなる。八甲田山(北八甲田)は回りをぐるりと八甲田ゴールドラインと呼ばれる道路に取り囲まれており、四月以降に運航するシャトルバスを使うと、手軽に楽しい山スキーが楽しめる。今回春合宿を行った三月中旬の時点では、酸ヶ湯〜傘松峠までが除
雪されており、ゲートを潜ればスキー登山者は道路を歩いていくことができる。
それにしてもこの道路は両側の雪壁が四メートルぐらいあり、かなりの圧迫感を感じる。さらに、この通称「雪の回廊」は、最長時でなんと九メートルもの高さを誇るということであるから驚きである。しばらく歩いても同じような状態なので、閉鎖空間による精神攻撃で少々参りそうだったが、途中ですれ違ったおじさんが一キロ先に上に登れる道があるよと教えてくれたので、頑張ってぼちぼちと進む。さらに進むと自転車でサイクリングしている人までおり、結構人の入りはあるようである。傘松峠までの半分ぐらいに当たる場所で、ようやく右壁に雪上へと続く階段を発見し、なんとか雪壁のプレッシャーから解放される。
初日の今日はそれなりに天気もよく、南八甲田や石倉岳を見ながら快適なシール歩行。傾斜もあまりないので、楽勝で行動が終了する。
12:13傘松峠着。峠の看板のすぐ横にテントを設営するが、少々時間も早いので15:30に食当点火を指定し、準備の時間までには戻るという前程で、メンバーを募って硫黄岳にピストンすることにする。志願したメンバーは四人。巨大なアポロチョコの様な高田大岳に見とれながら登っていると、目の前をカモシカが走り過ぎて行った。傘松峠から一時間程で、あっと言う間に硫黄岳山頂着。思えばこの時が合宿中で一番穏やかな天気であった、山頂からは大岳を始めとする北八甲田の山や、南八甲田がきれいに見渡せ、のんびりとした一時を過ごす。八甲田名物のモンスターもチビっこいのが何体か点在しており、鳴海はその上に乗って楽しそうに記念写真を撮っている。
下りの滑降も無木立の斜面全体が極上のアスピリンスノーになっており、新人もはしゃぎながら滑りを楽しんでいる様子。きれいな三角錐が幾つも並んだ様な北八甲田の地形は、バックカントリースキーに最適であり、さらに豪雪地帯ならではの良い雪質が楽しめるのが素晴らしい。居残り組も、幕場にいないで来れば良かったのに。
14時頃に幕場に戻ると、留守番組が傘松峠の除雪車の運転手にテントが近すぎて除雪の邪魔になると言われたそうなので、皆で幕場の移動を開始する。南八甲田の方は開けすぎていて風を防げないので、北八甲田側の樹林帯の中に再設営。天気図を見ると、なんと二つ玉低気圧が接近中。外をみると星空が広がり、気温も温かいぐらいだが、これも嵐の前の静けさに他ならないのであろう。
3/19
5:00起床。外を見ると風雲も弱く、稜線はガスっているが行動できそうな気配。予想ではもっと荒れていると思っていたが、すこし拍子抜け。しかし9:10 の天気図を書いてもらうと、日本海低気圧の寒冷前線が現在進行形で通過中であり、じきに二つ玉低気圧が猛威を震いだすことを考えれば、ここは停滞の一手である。
午前中はだいたい皆寝て過ごしていたが、風雪もどんどん強まり、徐々に陰鬱な気分になっていると、急に外から人の声が。なんと35代の大家さん夫妻が、わざわざ傘松峠まで陣中見舞いにやってきてくださった。この猛吹雪の中、わざわざ来てくださるとは、本当にありがたいと思うと共に、そのバイタリティにただただ感服するばかりである。一つのテントに皆が集まって差し入れのビールやおつまみを食べながら、沈みがちな停滞日を楽しく過ごすことができた。
その後、大家さん達は明日からは酸ヶ湯をベースに八甲田を周られるということなので、昼過ぎにお二人を見送ると、天気もいよいよ悪化。テントでいまだに慣れない細切れタプロの入ったハヤシライスの夕食を取り、連想ゲームで時間を潰して22:00 就寝。
3/20
5:00 起床。二つ玉低気圧が合体した低気圧による西高東低で、尋常じゃない風雪の量。今日も残念ながら停滞である。昼過ぎまで皆シュラフに潜って過ごし、午後から中金鍋に具材を投入し、じゃっぱ汁鍋を開始。冬山の食事と言えば、軽量化・高カロリーが原則であり、本来この様な食事はありえないのだが、ベースからのピストン行動のみという活動の縮小された春合宿に色取りを添えるため、今回は少々豪華な
メニューを三日目の食袋に採用しているのである。じゃっぱ汁の中身は、メインの鯛のあらに、大根、ねぎ、人参、白菜、しいたけで、赤味噌ベース。さらに、差し入れで、ニラ、魚、サツマ揚げ、カキのオプションが付く。鯛は、本来は鱈の予定だったが、買出しに行った際に見つからなかったので代用として購入したそう。後半からは雑炊に突入するが、米がアラに付いて少々食べづらい。しかし、鍋の味は絶品で、量の多すぎる白菜の処理に苦しみながらも、たっぷり三時間かけて、春合宿としては異例の豪華な食事を楽しんだ。
鍋後はやることもないので、相変わらずテントでだらだらと過ごす。明日の天気に期待しながら18:50からの気象情報を聞くと、この日の最大風速はなんと秒速約36メートル。青森の気象台では三月の観測としては史上最大の風速だったそうである。全く持って、とんでもない時に入山してしまったものだ…。
3/21
5:00起床。相変わらず西高東低による強風で行動は厳しそうだが、前二日間の停滞で皆かなり痺れを切らしているようなので、昼過ぎから様子を見てニセ駒ヶ峰ピストンに出発の可能性があることを告げる。
9:10 の天気図では北海道の東北に位置する低気圧は958hPaにまで達しており、期待していた高気圧は南へそれ、南高北低の様相を呈している。このままでは明日の天気もはっきり分らない…。幸い外を見ると、風は強いものの青空が時々顔を出しているようなので、11:10 意を決して傘松峠を出発することにする。
テントから出て、まずは道路を横断しなければならないが、除雪されていて絶壁になっており、どこからでも渡れる訳ではない。降り口と登り口を探してから下に降りて渡り、スキー体操を終えて出発したのは11:30。まずは尾根の取りつきに向って雪原を歩くが、かなり強烈な横風に叩かれ、ニット帽とネックウォーマーで完全に顔を覆わないと、すぐに凍傷になりそうである。疎林の雪原を抜けて樹林帯に突入するとかなり風が凌げるようになるが、1167m 手前の急斜面の登高に手間取る。さらに新人がシールトラブルに陥り、結局板を外して1167m まで登って一本。ここまで上がってくると北八甲田の視界も開けてくるが、陰鬱なグレーの雲と強風が相まって、かなり不気味な雰囲気。明治35 年、死の彷徨で幾つもの魂を吸い込んだ冬の八甲田の恐怖の姿の一端を、今まさに垣間見ている様な気分である。
スキーアイゼンを装備し、上部ではモンスターの間を縫いながら登っていくと、出発から二時間強で南八甲田の稜線に辿り着く。南八甲田と言えば駒ヶ峯や櫛ヶ峯、乗鞍岳が顕著なピークになるが、今回はニセ駒ヶ峰ということなので、曖昧だがこの辺が山頂だろうということで13:45 登頂と判断。モンスターの群れの中、皆思い思いに記念写真を撮る。稜線に経てば南方に十和田湖も見えるかと思っていたが、残念ながらそれらしいものは見当たらない。そのかわり、樹氷群に覆われた南八甲田の神秘的な山肌が、薄雲の中になだらかに広がっている。14:00八甲田大岳に向って式典を行う。
14:30シールを外して、下山の滑降開始。登りでは気付かなかったが、東側に櫛ヶ峰コースの標識が点在していたので、それらを目安に滑ることにする。登りで使った尾根の右側の沢に下る様に滑降し、中腹の気持ち良い深雪の中を抜ければ、一時間余りであっという間に傘松峠に到着。短いが北八甲田の山並みを眺めながらの楽しい滑降であった。夕方頃に少し雪が強くなったが、夜になると星空がだんだん広がり、ようやく嵐も過ぎたなという感じである。最終夜では二年N海が3Lのビール缶を持って来ていたりと、今回の合宿では、なかなかアルコールや食糧面には事欠かない。停滞している時間が長すぎて、実質行動時間はほとんどない為、体重は逆に増えているんじゃないだろうか。今期最後の最終夜を済まし、22:00就寝。
3/22
4:00起床。外を見ると久方ぶりの青空が広がり、石倉岳や南八甲田の稜線が陽光で黄金色に染まっている。予定ではこのまま林道を通って酸ヶ湯に帰ることになっていたが、それではつまらないので、石倉岳と硫黄岳の間のコルに登って、トラバース気味に滑降して帰ることにする。
6:18行動開始。風はやはり強いが、展望の広がる北八甲田の雪原を、景色を楽しみながらシール歩行。石倉山のコルで突風に震えながらシールを外し、所々繋がっている標識を目安にトラバース気味に滑って行く。進行方向には神秘的な岩木山の姿が、ぼんやりと浮かんでいる。複雑な樹林帯の中で標識を探しながら進んでいき、途中で顕著な沢を越えると、後は一気に林道まで滑降。快晴の元、気持ちの良い滑降を満喫し、最後は地獄池に滑り下りる。
後は林道を酸ヶ湯まで少し距離を歩くだけなので、スキーを外して進んでいると、右側の雪原にトンネルを発見する。説明によるとこの先は酸ヶ湯まで繋がっているらしく、面白そうなので突入してみることにする。クネクネ曲がる雪のトンネルを抜けると、なんと酸ヶ湯温泉の二階のベランダに到着。8:15 酸ヶ湯温泉の前に荷物を降ろし、行動終了。Lの「春合宿お疲れ様でしたー!」の一言に、思わず歓声と拍手が起こる。必ずしも計画段階や天気の面で、満足の行く合宿という訳ではなかったが、やはり積雪期の最終目標である春合宿を無事に終えるという事は、部員にとって達成感の大きなものであるようだ。
酸ヶ湯は千人風呂という混浴の大浴場があるが、夏合宿で異様な雰囲気にうんざりしている我々は、シャワーのある普通の浴槽で汗を流す。風呂から上がってロビーでテレビを見ていると、日本がWBCで優勝したというニュースが流れており、優勝への軌跡がハイライトで映し出されている。春合宿無事成功の余韻褪めやらぬタイミングだったので、皆異常に盛り上がった。そういえば二月スキー合宿の終了時も、タクシーの運転手に荒川静香がトリノ五輪のフィギュアで優勝した事を聞いて喜んだ覚えがある。積雪期の合宿の最終日が、この冬の二大スポーツニュースとリンクしているというのは、何だか奇遇な感じである。
10:30 酸ヶ湯からバスで青森へ向かう。Lと二年の鳴海は、せっかく晴れ間があるのだからということで、ロープウェイ前のバス停で下車し、三時間程で八甲田大岳を登って酸ヶ湯へと周回するコースを楽しんだ。再びバスに乗り込んで青森市街に戻ると、全員深夜バスで帰京するということだそうで、図書館で映画を見たりして時間を潰していたらしい。
バス発車の時間になり、後はそのまま寝ながら東京に帰るだけ。これで57代上半期も終了である。若干、停滞が多く消化不良感が否めないが、昨年の積雪期に比べれば、少しはステップアップしたなという印象であり、新勧活動に向けても良い流れができそうだ。56 代、57 代と僅かではあるが、徐々に現役だけでレベルを上げてきたので、願わくば来期の積雪期は、客観的にも評価されるような、完成度の高い積雪期合宿をやってくれればなあと最後の積雪期リーダーをやり終えて思う次第であった。
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