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Yamareco

記録ID: 22645
全員に公開
沢登り
札幌近郊

漁岳 漁入の沢遡行、オコタンペ湖下降<32>

1975年08月24日(日) ~ 1975年08月26日(火)
 - 拍手
tanigawa その他1人
GPS
56:00
距離
16.6km
登り
875m
下り
835m

コースタイム

8月24日
1505札幌・真駒内駅〜バス〜1610定山渓〜タクシー1650定山渓トンネルの中山峠側〜林道下降・豊平川〜1815二股橋〜1830工事現場の番屋に泊めてもらう

8月25日
0610番屋発〜0945北漁橋(Co700F1 入渓)〜Co770二股〜1305Co830二股〜ナメが続く〜Co930上二股〜さらにナメ続く〜階段状の小滝をへて、水が涸れ、ヤブコギ〜1550漁岳山頂Co1318 幕営、苫小牧方面の夜景と漁火を眺める

8月26日
0800山頂発〜南東尾根の深いヤブコギ〜0850オコタンペ湖源流の沢〜Co910、12メートルの細いナメ滝〜1235オコタンペ湖北岸の砂州、Co610〜湖を半時計回りに半周→1610車道〜運良くタクシーを拾う〜1710札幌・真駒内駅
天候 うす曇のち晴天。入渓前日に、雨で増水
アクセス
コース状況/
危険箇所等
 注)1975年夏の記録です。
  漁(いざり)岳は、札幌市内を流れる豊平川の最上流部に位置する。標高は1318メートル。現在は林道が標高900メートル付近までのび、車も林道に入ることができる。しかし、1970年代当時は、中山峠手前の定山渓トンネルから林道を歩いて行く、長いアプローチがあり、入渓地点も標高750メートル付近からだった。
 山頂をめざすには丸一日かけて沢から上がり、翌日、また沢へ下降するというルートをとるしかない。
 標高770メートルの二股からは、沢で一番の美しいナメ滝が連続する、すばらしい遡行が始まった。ナメは930メートルの上二股まで標高差100メートルにわたって連続しており、この二股から上で水流幅がわずか1メートルほどになってからも続いていた。
札幌から近くて、遠い漁岳。樹海と湖、ナメが続く沢に囲まれた、登りごたえのある山だった。
 詳しい記録は、
http://trace.kinokoyama.net/hokkaido/izaridake75.8.htm
2017年06月11日 22:19撮影 by  Canon MG7700 series, Canon
6/11 22:19
標高770メートル二股の本流の滝
標高770メートル二股の本流の滝
漁岳山頂からオコタンペ湖、恵庭岳、支笏湖
漁岳山頂からオコタンペ湖、恵庭岳、支笏湖
オコタンペ湖の砂州に降り立ち、昼食をつくる
オコタンペ湖の砂州に降り立ち、昼食をつくる
撮影機器:

感想

 沢をつたい、頂に立ち、沢を下降

 漁(いざり)岳は、札幌市内を流れる豊平川の最上流部に位置する。標高は1318メートル だが、登山道がまったくない山だから、山頂をめざすには丸一日かけて沢から上がって 頂上に立ち、翌日、また沢へ下降するというルートをとるしかない。ガイドブックによると、 ルートのなかでは漁入の沢と豊平川本流が、ナメが連続しておもしろいと書いてあったし、 山好きの知り合いからは、漁入の沢は、ナメに入って滝が連続するあたりではイワナが たくさんいると聞いたので、このコースから登高することにした。

 夏も終わりの8月24日、今日は林道の途中で適当な泊り場を見つければいい、という 気安さで、午後4時すぎに定山渓温泉に着く。タクシーで中山峠方面に走ってもらい、定 山渓トンネルを越して300メートルほどいった林道の入り口で車を降りる。あとになって、豊平 川の谷底に行くには、林道入り口からさらに国道を走った、小さな沢型のところから、コン クリートの土管や溝をたよってヤブをこぎ、強引に下降すると早いということを知った。が、 このときは初めての場所だったので、はるか下方の豊平川へ蛇行しながらだらだらと下る 林道を歩いて時間を費やすしかなかった。

 途中、原付のカブに乗った監視員が登ってきて「それは釣り竿か?」と聞いてきた。どう やら、ザックに付けているダンロップ・テントのフレームの袋を釣り竿と見とがめたらしい。 豊平川の本流は、豊平峡ダムにヤマメを放流して自然涵養につとめており、禁漁河川とな っている。僕たちは、「これはテントのポールですよ。それに漁入の沢へ向かうところですか ら」といって、この場の追及を逃れた。実は、僕のザックには釣りの仕掛けだけはしのばせ ておいたのだが、これは連続する堰堤のさらに上流の漁入の沢(禁漁河川ではない)で使う 予定のものだった。

 谷底の林道には40分ほどで着いた。営林署の小屋をすぎ、二股橋(豊平川本流と漁入の 沢が分岐)をすぎると、すでに夕方の6時をまわった。林道はつぎつぎと分岐していて、暗くな ってからの行動はロスが心配だ。林道脇に工事現場の宿泊所があって、いい空き地もある。 僕たちはそこに頼み込んで、テントを張らせてもらった。作業に来ていた人達は親切で、「どこ の山に登るんだ?」とルートをたずねてきたり、炊事場を使わせてくれたりした。熊を恐れて のキャンプとはうってかわってのにぎやかさで、落ち着いて眠ることができた。台風が過ぎた ばかりだったから、夜は漁入り沢の大きな堰堤を落ちる水の音がすさまじかった。
ナメと小滝が連続する漁入の沢を遡行

 2日め(25日)、6時すぎに作業小屋を出るが、歩きだしてすぐに左右に分かれる林道にま ごつく。登山道があるルートではないので、これは仕方がない。北漁橋(標高700メートル)までくる と漁入の沢はぐんと水量が減っている。林道はまだ上部に続いているので先を偵察したが、 どうやら沢からは離れて登っているようだ。橋へもどって、ここから入渓する。9時45分。

 水流の幅は6〜7メートルか。いつもよりは水量は多いようだが、遡行には支障がない。少し 行ったところで左から滝となって合流する沢があり(標高770メートル二股)、漁入の沢の本流 もここで3メートル弱の滝を懸けてごうごうたる水煙を上げ、深い滝壺をつくっている。ここは階 段状になった岩場を利用して左岸を小さくまく。

上部では滝が連続して現れ始めた。沢が V字型になると水流は5〜6メートルでもすごみがある。釜や淵もごうごうと水が流れ、右岸に巻 き道を見いだして進んだ。ナメ状の釜が連続するあたりで、待ちきれずに釣りの仕掛けを 出し、ネマガリダケを竿にして試みてみたが、ここでは全然釣れなかった。

 標高830メートルの下二股で昼の一時をまわった。5万分の1地形図の崖記号はここにつけ られているが、これは誤りで、崖は770メートル二股にある。ここからは、沢で一番の美しいナ メ滝が連続する、すばらしい遡行が始まった。ナメは930メートルの上二股まで標高差100メートル にわたって連続しており、この二股から上で水流幅がわずか1メートルほどになってからも続い ていた。
漁火を見下ろす山頂に泊まる

 傾斜はぐんぐんきつくなり、沢は分岐が連続し、階段状の小滝にいたる。この滝を終える と水流は消え、伏流の石伝いに登って、ヤブコギとなった。踏み跡(溝道)がしっかりしてい るし、ようするに一番高いところをめざすだけだから、気は楽だ。僕らは踏み跡を登りつめ て稜線の一角に達し、100メートル足らずの稜線歩きをして、一番の高みに到達した。午後3時 50分。

 漁岳の頂上は小広いといった感じだが、遠目に眺めて予想していたよりは狭く、テントを 張る平らな場所は、小さな石の祠のそばに限られていた。周囲を見渡すと樹海が延々と続 く山また山の連なりで、その連なりの一番の高みが漁岳だった。南東には恵庭岳(1320メートル) が立ち、支笏湖が広がっている。目の下を見ると、意外に近い場所に黒みがかった色の水 をたたえたオコタンペ湖があった。あそこまでは、まだ3〜4時間は優にかかる。こんな山ま た山の山頂に少人数で泊まるのは、北海道ではちょっと勇気がいるけれど、僕たちに選択 の余地はなかった。

山頂の夜は、水の用意が足りなくて、きりつめた夕食になった。日が沈むと、苫小牧方面 の太平洋の沿岸に、漁船の灯が何十もともった。「イザリ」はアイヌ語の当て字かもしれない けれど、「漁岳」の名は言いえて妙である。周囲が暗くなるにつれて、苫小牧その他の夜景 も美しく広がり、僕たちは何度もテントから顔を出して、それらを眺め、おかげで眠るのが遅 くなった。
霧とヤブの中で下降ルートに迷う

 3日め(26日)。今日はなんとか早めに水流のあるところまでたどりついて、腹いっぱい水 を飲みたい。ところが周囲には霧がたちこめてきて、視界は数十メートル程度に落ちるような天 気だった。そのため、出発してすぐ、山頂から南東の尾根をつたうところで、左手の沢(漁川) に降りる踏み跡に入り込みかけ、危うくもとの尾根に引き返した。

 正規のルートは、尾根を恵庭岳方面に向かってしばらく進み、山頂から200〜300メートルほど 先の鞍部で尾根筋を離れて右へ折れ、オコタンペ湖へいたるオコタンペ川(湖の上流は本当 はオコタンペ川の名はなく無名沢)の源流に到達する。頂上直下は崖状になっているから、す ぐにはオコタンペ川へ入り込むことはできない。ある程度尾根をたどって崖をやりすごしてから、 適当なところで尾根を離れて右へ下降し、オコタンペ川をめざすルートをとるしかないのだが、 右手の崖が頭にあるとどうしても、左手に踏み込んでしまって、正規の尾根ルートを外れてしま う。

 尾根は途中から、ネマガリダケ(チシマザサ)の完全なヤブコギとなった。霧が吹き払われると、 僕と吾妻君は背伸びをして前方を確認し、尾根の先にある小ピークで方位を定める。ようやく第 一目標の鞍部状の地点に到達し、ここから右へ下降を開始する。下り始めてすぐに、溝道(降雨 時の水流跡)を見いだし、これに導かれるようにして涸れ沢に出、たちまち水流に到達した。

 オコタンペ川は最初から小さな小滝が連続し、2本ほど右手から枝沢を合流させると、高度感 のある滝が行く手をふさいだ。これは左岸をスリップに注意して下降する。落ち口では右手、漁 岳の頂上側から白い岩をつたって滝が合流していた。しかし、源頭部のおもしろいところは、こ こらあたりまで。それからは沢の傾斜が次第にゆるくなり、ついには平地を蛇行して流れるように なって、水底で砂地に足が埋まるような前進が始まった。僕は、沢の上に横倒しになった巨木の 丸太をつたっていたところで、つい気を許して足を滑らせ墜落。肩と右手を思い切り丸太と地面 に打ちつけてしまった。

 川の蛇行はいよいよ本格的になった。きっとここは、オコタンペ湖へ押し出してきた扇状地か砂 州のようなところなんだろう。12時35分、山頂を発って4時間半もかかって、ようやくオコタンペ湖 に張り出した、こんどは正真正銘の砂州に降り立った。

 事前の調査が不十分といえばそれまでだが、僕の頭のなかでは、観光地の一つのようなたとえ ば湖面にボートなんかが浮かぶような、少しはにぎやかさもある「オコタンペ湖」を想像していた。と ころが、降り立った湖は人の気配はまったくなく、建物はもちろん、道さえもない。曇った空の下で霧 がたちこめた、暗く静寂な湖面と、それを包む樹海があるだけだった。そこはとてつもなく寂しいとこ ろだった。晴れていれば、原始の自然が………なんて言葉も出るかもしれないけれど、現実のオコ タンペ湖はなんとも荒涼とした、迫力のあるほどの寂しいところに映った。僕は吾妻君と、雨にそなえ てテントを張り、昨日は水がなくて作れなかったラーメンを煮た。

 とにかく車道までたどりつかないと、札幌へ帰れなくなってしまう。僕たちは、すり鉢状に深くなって いる湖の岸辺をたどり、踏み跡にそったり、ときには増水した湖面に足を入れて、水中の木の根の 足場に乗ったりしながら、オコタンペ湖を3分の1周ほどまわりこんだ。そして踏み跡に導かれて右手 の森へ入り、急な坂を下って車道に下り立った。(午後4時10分)

 右は支笏湖岸の小さな温泉、左は札幌−支笏−千歳間の国道となる。このままではまた夜になる ので、人家のあるところへとにかく出てみようと、その小さな温泉へ向かいだした。すると運良く空車の タクシーが通りかかった。「どこに行くの?」と聞くので「札幌へ帰るんだけれど、とりあえず温泉へ行っ て車を呼ぼうかと思っていたんです」と答えると、「あそこへ行っても帰る手段はない。ちょうど札幌へ帰 るところだから、安くしておくから乗っていけ」という。僕と吾妻君は「助かった」とばかりに、とりあえずバ スが走っているところまで、と乗せてもらうことにした。

 車は国道に出てからも、人家のほとんどない山道を走った。見通しのきくところから見えるのは、森ま た森の樹海の広がり。見覚えのある集落まで来たら、そこは空沼岳方面へのバス道の分岐だった。車 は真駒内の地下鉄の駅をめざして走る。

 札幌から近くて、遠い漁岳。樹海と湖、ナメが続く沢に囲まれた、登りごたえのある山だった。

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コメント

現地の変貌
 この記録について、FYAMPのメンバーとの1999年時の、やりとりから。 99/08/12 20:01

 Nさん、沢の話を夏にするのは、楽しく涼しいものですね。

>tanigawaさんはいろいろなことをされていますね。
当時の自転車ですとマウ>ンテンバイクではないでしょうから大変でしたね。

 ほんとに砂利道は怖いですね。なにしろ、ドロップ・ハンドルのロード車で、前傾しているものですから、登りはまだ、えっちら、おっちらとゆっくり上がっていくものの、林道の下りは突っ込みすぎになって、ブレーキをかけたら「コントロール不能」になります。
 ああっつ、と思ったら、体が自転車から前に投げ出されて、顔面、とくにあごで、砂利混じりの道を滑降しました。
動けず、やっと立ち上がったら、また走り出してすぐに同じ目にあいました。

 両肘、ひざ、そしてあごが血だらけで、大通り公園で倒れていたら、通行する人がみんな、不思議そうに見下ろしていきました。
 はっはっはっつ。
 あんなこと、2度とやれません。

あごだけでなく、右手首にも、消えない傷が残
りました。
 自転車は、鉄人・Nんは走りこんでいるでしょうが、私の体験はごくわずかです。それだけに、アクシデントの率が高いのでしょうね。
 札幌からは街を抜けてから、とくにミスマイあたりから登りがきつくなって、定山渓の先は薄別登山口あたりから、かなり登ります。
 やっと林道のゲートまできて、急降下。そして、こんどは林道の登り。それでもイワナ釣りに自転車を何度か使ったのは(白井川左股川も行きました)、交通費がタダだし、林道のアプローチでかなり有効だったからです。
 今は、さすがにそう長い距離を走ろうと思いません。

 漁入りの沢では、前は、760メートル二股の滝壷は、全然つれませんでした。
 私は、最近、本州の沢でもよく体験するのですが、意外な場所、登山道そばや往年の沢ルートなどで、イワナの数が増えていることに気がつきます。沢を登っていた世代が中高年になってしまって、もうそう繰り返しは行けない。あとの世代からは供給がなくて、若い世代はフライ・フィッシングで管理釣り場や中流あたりに固まってい……。それで、上流の枝沢で運良く自然が残っていたところでは、イワ
ナが復活しつつあるのではないでしょうか。

 北海道でも、空知川上流のシーソラプチ川とか、倒産したトマム・スキー場あたりから入る沢とか、「70年代」に注目されていた沢で、イワナの資源が復活してきています。



         1999・8・12   
2019/4/10 20:51
プロフィール画像
ニッ にっこり シュン エッ!? ん? フフッ げらげら むぅ べー はー しくしく カーッ ふんふん ウィンク これだっ! 車 カメラ 鉛筆 消しゴム ビール 若葉マーク 音符 ハートマーク 電球/アイデア 星 パソコン メール 電話 晴れ 曇り時々晴れ 曇り 雨 雪 温泉 木 花 山 おにぎり 汗 電車 お酒 急ぐ 富士山 ピース/チョキ パンチ happy01 angry despair sad wobbly think confident coldsweats01 coldsweats02 pout gawk lovely bleah wink happy02 bearing catface crying weep delicious smile shock up down shine flair annoy sleepy sign01 sweat01 sweat02 dash note notes spa kissmark heart01 heart02 heart03 heart04 bomb punch good rock scissors paper ear eye sun cloud rain snow thunder typhoon sprinkle wave night dog cat chick penguin fish horse pig aries taurus gemini cancer leo virgo libra scorpius sagittarius capricornus aquarius pisces heart spade diamond club pc mobilephone mail phoneto mailto faxto telephone loveletter memo xmas clover tulip apple bud maple cherryblossom id key sharp one two three four five six seven eight nine zero copyright tm r-mark dollar yen free search new ok secret danger upwardright downwardleft downwardright upwardleft signaler toilet restaurant wheelchair house building postoffice hospital bank atm hotel school fuji 24hours gasstation parking empty full smoking nosmoking run baseball golf tennis soccer ski basketball motorsports cafe bar beer fastfood boutique hairsalon karaoke movie music art drama ticket camera bag book ribbon present birthday cake wine bread riceball japanesetea bottle noodle tv cd foot shoe t-shirt rouge ring crown bell slate clock newmoon moon1 moon2 moon3 train subway bullettrain car rvcar bus ship airplane bicycle yacht

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