塩見岳(過去レコです)。
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- GPS
- 56:00
- 距離
- 23.8km
- 登り
- 2,148m
- 下り
- 2,150m
天候 | 晴れ。 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2010年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス
|
コース状況/ 危険箇所等 |
左程の危険個所はありません。 |
写真
感想
毎年恒例、親友Sさんとの登山、昨年はお兄さんが亡くなられて計画していた赤石岳登山が中止になった。今年はアミューズトラベルの企画「ゆったり塩見岳」に二人で参加することにした。2010年8月28日の土曜日、朝7時半に名古屋駅に集まったのは、名古屋から10人、大阪から8人、それに加えてアミューズから3人の計21人である。出発前に缶ビールを買い込み、「丹生川観光」のバスに乗り込んで朝から一杯。ガイドはニュウジーランド在住の小川さん、添乗員は大阪の宇津木さん、サブは名古屋のミンミン。小川さんはニュウジーランド国籍を持つ山岳ガイドで、只今現地は冬なので仕事が無く、夏場の日本に出稼ぎにきていると云う。宇津木さんは入社1年目の新人。明銘(ミンミン)は中国四川省から朝日大学に留学しているバイト生。中央高速松川ICで降り、本来の道は工事中とかで何だか細い山道をグネグネと走る。鳥倉林道を登り、ゲートで閉ざされている終点までバスが入る。12時25分、ゲートの横から林道に入り、列を作って歩き始める。最後部は宇津木さん、その前に大阪から来たおっちゃん、そしてわたし、わたしの前をSさんが行く。宇津木さんは入社1年目の若い社員で、山の経験は少ない。おっちゃんが赤石岳の話しをするとついて行けないので、「自分は知らんのか?」と宇津木さんをいびる。自分、自分と連発するが、しばらくして自分というのは自分自身の事ではなく、相手を指しているという事が判った。40分程林道を歩いて登山口に到着。バス停があり、皆さん一様に、「ここまでバスを入れて呉れてもいいのに」。「南アルプス大鹿登山口、日本で最も高い峠三伏峠まで約4km、徒歩約3時間」と記された標識がある。どの地図を見てもコースタイムは3時間となっているので4時半には小屋に着けるだろう。ジグザグの急登から始まる。カラマツ林の中の登山道であるが、木漏れ陽が差し込み暗さは無い。木の幹にはビニールテープが巻き付けられているのは、クマやシカによる皮剥ぎ対策なのだろうが、果たしてこんな程度で効果があるのか疑問。ジグザグ道から豊口山のトラバース、そして一旦下って鞍部でひと休み。「三伏峠まで約2km、およそ2時間→」の標識を見て、まだ半分か。カラマツ帯からシラビソ帯に移り、あのビニールテープは無くなっている。植林されたカラマツとは違い、苔むした倒木が多くなり、その上に新しい芽吹きもある。いかにも南アルプスらしい雰囲気が漂う。下山してくるグループに出会う度、口を揃えて、「今日は三伏峠小屋は一杯だろう」と云う。全ての人がそう云うんだから間違いはなさそう、覚悟を決めて登る。右山で登り、水場で口を注ぎ、狭いルンゼを通って塩川小屋からの道と合流。ジグザグ道を登り、やがて道は平坦となり、16時25分、三伏峠小屋に到着。こんなに多くの人がいるツアーなのに、全員が順調に登り、ほぼコースタイム通りであった事に感心する。小屋の前には何人もの人が休んでいて、今晩の混雑ぶりが危惧される。クールダウンの体操後、案内されたのは「三伏峠新館」。やや細めの布団ではあるものの、一人一枚で、危惧されていた事態とは大違いで皆さん大喜び。5時からの夕食は本館で、カレーライスではあるが結構美味しく、お代わり。小屋の前のベンチに腰を下ろし、Sさん持参の泡盛で旧交を温める。すっかり出来あがって小屋に戻り、隣りの人とは逆向き横になり眠りに着いた。
ここら辺りは東海パルプ社有林という看板が目につく。東海パルプは現在特殊東海製紙と名を改めている製紙会社である。その社有林は、東は間ノ岳から農鳥岳、笊ヶ岳、西は塩見岳、荒川岳、赤石岳に挟まれた大井川に流れ込む山々、その面積は山手線で囲まれる面積の4〜5倍と云われている。この膨大な山林は、江戸時代においては天領で、酒井家が管理をしていたものである。明治になって東海パルプの創業者である大倉喜八郎が酒井家当主酒井忠惇から購入し現在に至っている。民間の所有地に、遠慮しながら山登りをするというのは余り愉快な事ではない。経緯から見ると本来は国有林でなければならない筈なのだが、何とかならないものかと思うのはわたしだけでは無いだろう。
翌朝4時前から小屋で朝食。4時半、満天の星のもと三伏峠小屋を出発。ヘッドランプの明かりを頼りに、テン場の横から林の中を進む。5時前になると空も白み始め、左に天狗岩、右に北俣岳を従えた目指す塩見のシルエットが浮かぶ。シラビソ帯はハイマツ帯に変わり、三伏山に到着。これを下って再びシラビソ帯を進む。5時を回ってヘッドランプも必要なくなり、周囲の山々も見渡せるようになる。鞍部からシラビソ帯を登ると再びハイマツ帯となり、小屋から1時間20分で本谷山に到着。雲海に蓋われた伊那谷を挟んで、中央アルプスが朝日を浴びて横たわっている。木曾駒ケ岳、空木岳、南駒ケ岳、越百山と、いつか登った山々が同定出来る。その向こうに御嶽山が頭を少しのぞかせている。右手奥には乗鞍岳、笠ヶ岳、穂高連峰に槍ヶ岳、そして後立山連の峰々が連なり、さらに右手を覗きこむと、仙丈、甲斐駒が現れる。そして5時59分、塩見のテッペンからご来光が、「ダイヤモンド塩見だ!」。朝の澄んだ空気の下、山々を眺めながらゆっくり休んでから出発。本谷山を下ると再びシラビソ帯に入り、立ち枯れの林を通って最低鞍部へ。沢の源頭に水場があり、樹林帯からハイマツ帯に出ると勾配は急になって目指す間ノ岳も近づいて来る。岩が重なる急勾配を登って、8時少し過ぎた頃に塩見小屋に到着。平屋の小さな小屋で、こんな大人数のツアーが泊まれるのかな?とちょっと心配。若いお姉ちゃんが出て来てトイレの説明をする。外のトイレブースでの、紙の携帯トイレの使い方を細かく説明し、女性には3枚、男性には1枚づつ無料で配布してくれる。お茶とレインウェアーをサブザックにつめ、ザックはデポして塩見の山頂へアタック。塩見岳の手前に大きく構えている天狗岩を目指して、稜線上に登山道が続く。2週間前に登った山々、間ノ岳、北岳、そして甲斐駒ケ岳、仙丈ヶ岳を眺めながら登る。天狗岩を周ると、大岩が重なり小岩が転がる岩稜を渋滞しながら登る事になる。小さな石が転げ落ちて、「ラク〜」の声が飛び交う。Sさんは手で掴んだ場所が崩れ落ち、石が落ちないように懸命に手で押さえているがどうしようもなく困っている。難所を登り切り塩見岳西峰 3,047Mに登頂。三角点はここにあるものの、最高点はすぐ先の東峰。なだらかな尾根を歩き、10時に「塩見岳東峰 3、052M」に登頂。今年は太平洋にど〜んと居座る高気圧のため、連日35℃を越す猛暑が続いている。下界では汗ダクの毎日であるが、お蔭で空は晴れ渡り、360度見渡す限りの大展望。北岳の手前に大きく間ノ岳・農鳥岳が横たわり、間ノ岳から三峰岳、熊の平、そしてここ塩見岳へ、うねうねと続く稜線上の長い登山道、仙塩尾根だ。三峰岳から仙丈ヶ岳へと続く尾根、二週間前、両俣小屋へ下った道も一部見える。仙丈ヶ岳と北岳の間に見える白い山、甲斐駒ケ岳だ。北に目を転じれば北アルプスが、そして中央アルプスが連なる。ここ塩見から南へ続く山々、悪沢岳、赤石岳、遠く聖岳、西には蝙蝠岳、そこからつづく尾根、奥深い南アルプスの主要な山が全て見渡せる。極め付きは富士山、幾重にも重なる山の向こうの外輪山、その中にひときわでっかく黒々と、さすがニッポンイチの富士山である。ガイドの小川さんが云う、「わたしは何度もこの塩見岳に登ったが、こんなに良く見えたのは始めてです」。「塩見岳東峰 3、052M」の柱の横でSさんの記念撮影。Sさんが柱に寄りかかると、柱が倒れてあわや落下寸前、クワバラクワバラ。東峰の頂上は狭いので、西峰まで戻って昼食とする。塩見岳は南アルプスのほぼ中央、幾重にも重なる山脈を眺めながら頂上でゆっくりした時を過ごし、山々の姿を脳裏に写して山頂を後にする。落石に注意しながら岩場を無事通り過ぎ、うねうねと続く長い山脈の尾根道を快適に下る。塩見小屋に帰り着いたのは1時前。取り合えず小屋に入り、自分の場所を確保。小屋の左側は2段になっていて、女性陣はそちら。男性陣は右側で、狭いながらも一人一枚の布団を与えられる。裸になって身体を拭き、下着を着替え、さっぱりとして外の広場でSさんと酒盛り。4時過ぎにはもう夕食。岩塩でいただくテンプラ、なかなか洒落た食事である。夕食終わって広場で夕べのひと時を過ごす。6時20分頃から夕焼が始まる。小高い場所に上がって、赤く染まる塩見、厚い雲海に浮かぶ中央アルプス、その上にたなびく雲が刻々と色合いを変えて行く様子を眺める。
翌朝は3時半に起床、朝食の弁当をザックに入れ、4時に小屋を発つ。ヘッドランプで足元を照らしながら慎重に進む。ハイマツの尾根を下り、シラビソ帯の山肌をアップダウンを繰り返しながら進み、本谷山へ。振り返れば荷揚げ用のヘリがホバリングしている。昨晩、塩見小屋のおねえさんが、トイレから汚ブツ袋をヘリポートまで運びながら、「明日の朝7時頃にヘリが来る」と云っていたのを思い出し、あそこに小屋があるんだという事が判る。三伏峠小屋で大休止。そこからは林の中の長い道を下って10時45分に鳥倉林道終点の登山口に降り立った。バス停の時刻表を見ると、1日3便しかないバスは昨日で終了していた。鳥倉林道を足早に下り、11時30分にバスの待つ駐車場に帰り着いた。7時間半の長い下りであった。
途中のコンビニでビールを買い、バスの中でまず一杯。信州松川温泉清流苑で気持ち良く汗を流し、生ビール。昼食の信州サーモン丼は旨かった。帰りのバスにも缶ビールを持ち込み、うつらうつらして名古屋駅まで。名古屋駅でSさんと別れ、今年のSさんとの山旅は終わった。
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