佐武流山(厳冬期ワンディ)


- GPS
- 11:47
- 距離
- 20.0km
- 登り
- 1,773m
- 下り
- 1,757m
コースタイム
- 山行
- 10:28
- 休憩
- 1:13
- 合計
- 11:41
天候 | 曇り一瞬青空 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
切明温泉発 林道6km 檜俣川への下降150m 痩せ尾根通過難儀 うまく巻きを作らないと帰りが大変 |
その他周辺情報 | 秋山郷温泉多し、コロナの影響で入浴できたのは萌木の里のみ食事もできておばちゃんは優しかった。 秋山郷への道路は凍結してて危険スリップして車の前横が壊れてしまった。 |
写真
感想
秋山郷2日目は佐武流山 へ。"さぶりゅうやま"と読む。長い林道、渡渉、急な痩せ尾根。無雪期でも日帰りするには結構ハードらしい。僕らはこんな山に真冬に行く。今日は2時起床の3時発。久々に晴れて冷え込んだので寒い車中泊だった。3時に外に出ると誰もいないし。みんな早すぎ。まあラッセル、ルーファイしている先行にはすぐに追いつく。慌てずに支度して時間通りに出るのが僕のスタイル。ぱらぱらと雪が降る林道を一人、トレースを追いかけてゆく。月が明るくて風がなく、良い夜だった。しかし歩けど歩けどヘッドライトの灯りは見えず、結局渡渉地点まで追いつけなかった。みんなは2時半にフライングしていた。はやっ。更に名人さんは激ラッセルしていたらしい。追いつけんわけだ。檜俣川の渡渉ができなかったら敗退だがスノーブリッジ豊富で渡渉は問題なかった。第一関門クリア。川を渡ったら1,300mから1,574のポコまで登りが始まる。ここからは高速道路に乗ってきた僕の出番だ。せっせとラッセルしてポコ到着。ここからはいくつもポコが出てくる。巻き名人たちの出番だが…左手北側は急、右手南側は激藪。更に尾根の雪は風に飛ばされている。これはかなりシビれる状況だが藪名人カタヤさんが激藪に突っ込んでルートを切り開いていく。もう見てるだけでもホント大変。笈ヶ岳の激藪トラバースを思い出す。僕なら帰ってる。こりゃあ帰りも大変だ。あまりの厳しさにポコは巻ききれずスッゲー下ってスッゲー登る。それを2回もやった。この時点で時刻は9時を回っていた。目指す山頂は見えない。西側は風雪が強くて体温を奪われる。今日は7時間くらいでサクッと行けると思っていたがこれは厳しい。ここからピークまでずっとこれが続くなら山頂は12時、帰りも4時間以上かかるだろう。
「今日は必ずピークまで行く、明日は山行ナシで休養日になってもいい。」ボスから指令が出た。そうと決まれば制限時間無制限。やるしかない。ヤブはカタヤさんが突破し、厳しい巻きは先生がルートを作り、ラッセルは僕がやる。みんなで力を合わせてただただ前に出た。名人さんはマジで満身創痍って感じで心配になるレベルだった。僕らは今シーズン何度も厳しい山へ行ってもう仕上がっているから、そりゃあ急に合流したら地獄を見るってもんですよ。
本当に厳しい激藪トラバースが2回出てきて、それを抜けると藪は少し収まってピークまでいけそうな雰囲気が出てきた。僕が「激藪を2度抜けたあたりで、これがピークまで続くなら敗退かと思いましたよ」と言うとカタヤさんも「俺もやめようかと思ったよ」と言っていた。よかった。こんな状況なら帰るという僕の感覚はまともだった。山登りはいつもそうだ。霧が濃くて何も見えなくて今日はダメそうだから帰ろうかなーと思っていたら、ブワッと雲の上に出てスカッとした青空と太陽が出迎えてくれる。眠くて寒くて超しんどい夜明け前を耐えて耐えて耐え抜けば、必ず素敵な夜明けがやってくる。夜明け前が一番つらい。もうやめたくなる一番つらい状況を、あとほんの少し耐えれば素晴らしいことが起こる。たぶん人生もそう。
山頂でシールを剥がしたら重力に身を任せて落ちていくだけではない。帰りはいくつもの登り返しが待っている。痩せ尾根を滑ってシール張って登り返して、再び滑って登り返し。1,574ポコまで戻ってきたらようやく安全地帯。ここから沢までパウダータイム。こんな厳しい山でもしっかりタマランチ会長。沢に下りたらシールを貼って登り返し。林道も途中で登るのでそのままシールで歩いていって、三俣でシールを剥がしてあとは駐車場まで再びパウダーをいただいた。サクッと終わると思って油断していたが行動時間11時間、歯応え十分の山行だった。伊賀を出て今日で10日目。旅ももうすぐ終わりだ。
いよいよ今回の核心山行、記録のない佐武流山の厳冬期ワンディ、長い林道と、徒渉、アップダウンの多い痩せ尾根通過など夏でも難儀なこの山は今から20年ほど前の秋に剣と一緒に登っている。当時から岳人のあこがれの山であった。
深夜3時に切明温泉発と約束してあるが、気合が入っていてパク以外は2時半に準備が出来ていてスタートした。檜俣川の徒渉下降点まで6kmの林道を如何にうまくカットできるかが最初の関門である。地図を読んで帰りのことを考えてルートを作る。名人にも時折前に出てもらうが今ひとつ安心できないので後ろから修正を加えながら進む。
二時間半かけてようやく下降点に着きここから150m降りて檜俣川に出た。心配していた徒渉はブリッジがあり問題なかった。パクはようやくここで追い付いてきた。ここでパクが先頭に立って登って行く。スイッチが入ったパクはスポーツカーのように飛ばしていく。僕と大魔人は付いていけるが名人は早々に完全に千切れてしまいライトも見えなくなった。
尾根に上がってからが大変だった。痩せている上にガリと藪、当初尾根は巻いて行くつもりだったが右も左も崖と藪でうまく巻けず尾根通しで行くしかなかった。難儀なアップダウンで体力が削られ時間だけが過ぎていく。核心部分では1時間格闘して水平距離わずか100mほどしか進めなかった。
これはまずいGPSで確認すると山頂ははるか先このペースなら絶対帰りは暗くなる。この山を落とさないで遠征の成果はない、安全性はさほど問題ない、ただ時間がかかるだけだ。もう腹を括って明日の鳥甲は中止、無制限一本勝負でこの山だけに賭けようと皆に伝えた。鳥甲はもう厳冬期ワンディしているので記録的な価値はない。そう決まれば気は楽になった。林道は暗闇でも帰還できる。
藪は大魔人がラッセルはパクが難儀な巻はYSHRが率先して名人がお客様で満身創痍だった。それ以降は意外にドンドン進めて10時半スタートから8時間後に無事ピクることができた。僕以外は初登頂で皆嬉しかっただろう。ただ帰りも油断できない難儀な滑りと登り返しが何度もある。
スタートしてすぐに板が木に掛かり変な態勢になってしまい全く身動きできず脱出するのに15分ほどかかる。皆すでにドンドン先を進み焦る。何とか鞍部で追い付いたがそれ以降も必死で追いかける。核心部の痩せ尾根では段差で2mほど落ちた際に右腕を木に引っ掛けアウター、インナーともビリビリに破けて腕も30cmほど切れて出血した。腕は痛いが耐えて頑張ろう。ただ右腕は裸なので寒かった。
檜俣川への下降は激パウだった。ちょうど先行した大魔人とパクが20mほど先の渡渉点で休んでいて追い付いたと安堵したその時まさかの板が木に掛かり横倒しになってしまった。足が上になりスキーで宙ぶらりん顔はすれすれ水面上50cmほど頭からのドボンは免れたが全く身動きできない。大声で叫んだが気づいていない模様、助けてくれ何度か叫んでようやく気づいて来てくれた。まずは貴重な写真撮影、大魔人が板を片方外してくれて足場を作り思いっきり引き上げようとした時足場が崩れて大魔人と僕は川に転落、水は浅かったが膝下ドボン、ひえー寒すぎ、頭からドボンしてたら凍傷は免れなかった。
川から這い上がるのも難儀した。あの場面ではスリングで離れた場所から引き上げるべきであった。反省!単独山スキーは怖い、何があるかわからない、皆さん注意しましょう。この渡渉点で名人が来るのを30分近く待った。彼も遅れていて心配だった。ここから150m登り返してずぶ濡れの下半身と凍えた足で必死に林道を下る。もう足が冷たくて泣きが入ったが14時過ぎ12時間近くに及ぶ戦いに終止符を打った。
もう二度目はない、記録を作るというのは大変なことなのである。秋山郷で温泉に入り金沢まで雪道を6時間掛けて夜遅く金沢に着いた。完全燃焼であった。
遠征第6弾は以前から行ってみたかった佐武流山、地図を眺めながら絶対に決戦になるだろうと思っていたけど、大決戦だった。
前日行った山スキーの最適の山である笠法師山の拠点である切明温泉から今日もスタート。目指すは厳冬期の記録が無い佐武流山、以前から行ってみたかった山で最強メンバーで挑んだ。
深夜3時前にスタート、長い林道のラッセルは昨日お客様だった名人が担当した。昔は鳴く子も黙る名人でしたけど今は何処へ…、ルート工作で早くもYSHRさんからダメだしを食らっていた。それでも頑張りトレースを伸ばしていくが最後は僕が担当した。林道終点手前から登山口の河原まで下降する、雪は豊富でサックっと降りた。長いアプローチをこなし登山開始、急登の尾根をパクがガシガシラッセルして行く。
今日もブーツラッセルなので早かった、名人のライトはいつしか見えなくなっていた。尾根に登り上げると戦いが始まる、佐武流山は痩せた尾根が続き巻きが鍵になると予想していたが…。パクを先頭に1870mのワルサ峰から巻く作戦で1750m辺りから探り出す。地形図より痩せて切り立っていて崖も尾根もジャングルだった。たまらず尾根行くが落とし穴、岩、ジャングルで時間ばかりが過ぎて難儀した。
何とかポコの上に立つと絶望が…これ地形図に無いポコでワルサ峰は40m程一旦下りその先にあった。本丸はツボでもムズそうな痩せ尾根でジャングル、落とし穴も沢山あるだろう、名前通りのワルだな。巻くしかルートは無い、ジャングルの崖をトラバースしていく、落ちたら終わりの崖だがルート工作に必死で恐怖感は無かった。果てしない格闘で何とかポコを巻き終えた。もう時刻は9時を回っている、ここで作戦会議。明日の山行は中止にして今日は無制限1本勝負でピクる事にした。そうと決まれば行くしかない。体力の限界にチャレンジだ。モタモタしている間にようやく名人が追いついてきた。
この先の鞍部までポコはいくつかあるがワルサ峰から先は雪が豊富だった。一つ目は尾根遠しにパクが、2つ目は巻きルートでYSHRさんが攻略していく皆頑張り何とか鞍部に着いた。ラスト320m登ればピークだがまだ先は長い。この先もみんなで力を合わせて突き進むしかない。
ラッセルはブーツなので問題ないが雪は重く大変だった、そしてようやくピークをとらえた、名人も完全お客様ながら付いてきている。そして着いたぜベイビー感無量です。視界が無く寒いので記念写真を撮ったら帰ろう。帰りも長い戦いになる。
ピークから鞍部まではパウダーを食いまくりあっという間に滑り込んだ、登り返して巻きルートへ進む、完璧なので早い。そしてまた登り返したり下ったりの連続だった。さてワルサ峰に着いた、ここは帰りもヤバイ、滑走モードにして崖のトラバースラインに進む、ルートは完璧だったのでサックっと通過できた。そして痩せ尾根の滑降もなんとかこなして最後の登り返しとなった。シールを貼って登り返すと後は登山口の沢まで一気に滑り降りるだけ。
ご褒美が待っていた、激パウです。これ足が残っていなかったら楽しめなかっただろう。パクと写真を撮りあい登山口に滑り込み大休憩した。YSHRさんは名人の面倒を見ているからまだ降りてきていない、この先の林道も長いので先にトレースを作ろう。シールを貼って100m登り返して林道のラッセルだ。その時事件が…。
歩き出した瞬間にYSHRさんの声が聞こえたが姿は見えない。おーいと呼んでいたのでこちらもおーいと答えたが何度も叫んでいた。するとパクが助けてくれと言ってるみたいと言うではないか。穴にハマったのか再び対岸に渡り戻ると大変な事になっていた。藪でスキーが引っ掛かり転倒したのかスキーを真上に雪の間にハマって全く身動きが取れる状態ではなかった。雪の下は水が流れているから事態は尋常ではない。これ頭が水に浸かっていたら溺死だったかも。
雪を崩さずYSHRさんのそばに行き救出開始、とりあえず両方のスキー板を外してパクに渡した。上半身も埋もれてくの字になり頭と右腕しか出ていなかった。引っ張り上げるしかないので足場を固めて腕を引っ張る。慎重にやらないと頭から沢に落ちてしまうから時間がかかる。何とか両腕を掴み引っ張り上げようと踏ん張った瞬間雪の塊が足元から崩れて2人ともドボン…とても冷たいがYSHRさんは頭から落ちなくてよかった。
川から這い上がるのに苦労する、何とかステップを作り這い上がり救出完了、無事でよかった。単独なら間違いなく遭難事故だっただろう。名人はまだ来てないから一旦合流するまで待つ事にした。30分後疲労困憊で降りてきた、名人も無事でよかった。
さて最後の仕事開始、パクと2人で先にトレースを作る、途中でカモシカがスキートレースを使って逃げていく、パクは怒っていた。登り返し地点まで来たら後は滑り込むだけだが名人ルートはアップダウンの連続なので作り直すしかなかった。ようやく道路に降り立ちロード滑降して切明温泉に到着、長い戦いは終わった。名人は来てないけどもう安全地帯なので大丈夫。
終わってみれば激戦の佐武流山、記録にも記憶にも残る2度目は絶対にない貴重な山行でした。。。
コメント
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更新が遅くなっておられましたが、素晴らしいリポートを拝見し安堵と感動を頂きました。
この週末も寒波襲来の予報ですね。次の山行レポートも楽しみに致しております!
レス有難うございます。
たくさん痛い目に遭いましたが、無制限一本勝負と決めてからは心に余裕ができました。焦らないことが大切かと思います。二度目はないと思います。
普段から凄いと思っていましたが、この時期に山スキーで佐武流山を目標に定める気合が狂気の沙汰。それを完遂するパーティーの実力。笑うしかない。
レス有難うございます。心強い仲間がいれば大概はどうにかなるものです。単独では無理です。川に落ちた時は下半身だけなので何とか我慢できましたが頭からドボンして全身濡れたらやばかったです。山スキーは仲間と行くべきだと改めて思いました。
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