記録ID: 3446067
全員に公開
沢登り
日高山脈
ソエマツ沢神威岳南東面直登沢
2021年08月12日(木) ~
2021年08月14日(土)
- GPS
- 56:00
- 距離
- 19.4km
- 登り
- 1,462m
- 下り
- 1,266m
コースタイム
1日目
- 山行
- 3:40
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 3:40
11:00
150分
ソエマツ沢林道ゲート
13:30
70分
林道終点
14:40
Co640二股
2日目
- 山行
- 9:55
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 9:55
4:40
65分
Co640二股
5:45
310分
Co850二股
10:55
10:50
210分
懸垂終了
14:20
10分
20m核心滝登攀終了
14:30
核心滝下
3日目
- 山行
- 7:30
- 休憩
- 0:30
- 合計
- 8:00
6:00
320分
核心滝下
11:20
11:50
130分
神威岳
14:00
神威山荘
山谷に「未遡行」とある「ソエマツ沢神威岳南東面直登沢」。Co850二股の絶望的な函滝より先に足を踏み入れた人はいない。まだ誰も見たことの無い景色がそこには広がっている。日高という原始的なフィールドで、未踏の直登沢が残されている。これはもう行かないわけにはいかない。沢に飢え、ギラついた後輩2人と共に、日高を代表する名渓、中ノ岳ノ沢と継続する計画として、いざ出発。
8/12
神威山荘に自転車をデポし、ソエマツ沢林道ゲートに車を置いて出発。林道をしばらく歩いていつもの場所で入渓。一箇所函を通過し、ソエマツ南西面出合を通過。神威岳南東面および東面直登沢出合は荒れていて「これ本当に大丈夫?」という感じ。ガレで伏流した東面出合を通り過ぎて進むとCo680二股で滝。この先も等高線の混み具合的に滝が連続しそうなので、少し戻って東面出合で泊。夜はタープを張らずに焚き火横でペルセウス座流星群を眺めながら沈。
8/13
Co680左股の滝を直登すると、予想通り滝が連続。ザイルを出すほどでもないが、ツルツル逆層で登りづらいものが多い。程なくしてCo680二股に到着。南東面直登沢の右股は、深い函となって奥に絶望的な二段滝が待ち構えている。ふ〜ちゃん氏の記録からも、直登は大分厳しそうだが、とりあえず見てみる。一段目は右岸クラックから上がり、二段目を観察。周囲は垂直以上の岩壁で、水流をもろに浴びながらのシャワークライミングでしか突破できなさそう。今山行は、オホーツク海高気圧のおかげで完全に秋の気温である。♯上が決死のシャワークライミングで突破を試みるが、核心部をあと少しで抜けられるというところであまりの水の冷たさに惜しくも敗退。仕方が無いので二股まで戻って左岸リッジから捲く。脆くて悪い岩登りをして潅木帯に突入。あとは藪漕ぎかと思っていたら岩壁にぶつかる。ここはザイル出して成田リードで40m程の垂直の岩と木登り、もげる草付きなどの悪い登りで立ち木まで。そこからは木登りと藪漕ぎで下降点を探りながらトラバース。いい感じのところで潅木に捨て縄をかけて懸垂25mで下りる。その際、先に待ち構える深いV字谷と、またも絶望的な滝が見えた……。とりあえずロープは抜かずに次に待ち構える絶望的な20m滝を偵察するが、直登も捲きもかなり悪そうだ。これは突破できるのかと一同諦めかけるが、無理だったら下りるだけだ、と腹をくくり懸垂のロープを抜く。考えられるラインは2つ。右岸水流際の直登(エイドになりそう)か、右岸側壁の岩壁から草付きを経由して、浅そうなバンドをトラバースして落ち口へ出るかだ。とりあえず竹中が前者の直登を試みるが、次第にツルツルスラブへと追いやられ、進退窮まり何とか右岸の草付き帯へと突入しハーケン打って敗退。♯上がユマーリングで中間ピンを回収して上がり、二人とも懸垂で下りてくる。この時点でパーティーの敗退ムードはかなり色濃かったが、とりあえずトラバースラインの可能性も探ってみようということで、成田リードで右岸岩壁を登り、草付きとスラブを経由して竹中の敗退残置へ合流してクリップ、そのまま5m程脆くて悪い浅い凹角を登り、バンドへ突入。下からではよくわからなかったこのバンドだが、こうして見ると何とか行けそうだ。クラックにスモールカムを決め、浅くてぬめるバンドをトラバースしていく。中々悪い箇所もあったが、手持ちのプロテクションを冷静にセットして、安全にムーブをこなす。最後は少しのクライムダウンで水流に合流し、シャワーで落ち口へ。Ⅴ級以上はありそうな渾身のクライミングだった、が、完全に諦めムードだったため写真は無し。この時点で14時で、先に何があるかもわからず、泊まれるかどうかもわからないので、滝から少し下の平坦地で泊まることにする。ザイルをFixし、竹中が空身で中間支点を回収しながら上がり、♯上がユマーリングで上がり、3人でその上のCS滝が比較的容易に越えられそうなことを確認して下りる。竹中はテンバの整備、♯上と成田は二股の滝の敗退の際に残置したナッツを回収しに行った。その際、この20m滝と二股の滝の間に、1つハングした5mCS滝があることが判明した(直登可)。湿った薪の焚き火に苦戦しつつ、一旦火を着けてしまえばこんなV字谷の真っ只中でも快適に寝られた。
8/14
朝イチのシャワーユマーリングは中々しんどい。その上のCS小滝は左岸岩壁から小さく捲いて登る。一箇所悪いのでクラックにNP決めてシュリンゲ垂らした。このあたりが最も側壁が高く、両岸100mはありそうな絶壁に囲まれた見事なV字谷となり壮観だ。小滝をいくつか越えると再び7mCS滝。成田がシャワーで登り、CSは確保してもらって左側をボルダリーなムーブで突破。その先は徐々に沢は開けてくるが、10m規模の絶妙に登りづらい滝が連続する。一箇所、右岸竹中、直登♯上、左岸成田と登って、竹中のみが登れてザイル投げてもらった滝があった。その後も岩盤の登りをこなすが沢は開けて気持ちは明るい。お花畑からハイマツへ突入し、程なくして神威岳ピーク。この気温で岳ノ沢はリアルに低体温症で死ぬ未来が見えたので、夏道から下山することに。バカ尾根をズルズル下って、沢に入ってからは夏道なのかよくわからないまま河原歩きとかで神威山荘まで。
神威岳南東面直登沢は、Co850二股の滝と、そのあとの20m滝の通過が、捲くにしても直登するにしてもかなり悪い。この2つを的確に対処できれば、他はさほどの困難は無いだろう。中間部のV字谷は日高でも指折りの圧倒的な光景だ。2つのかなりの強烈な核心があるため、山谷!!!よりは敷居が高いような気がするが、後半の尻すぼみ感は否めず、!!!*程の満腹感は得られないかもしれない。強めの!!!といったところか。ともあれ、この穢れなき日高の沢で、誰も踏み入れたことの無い沢を遡行できたことはとても嬉しい。日高の沢は、いつでも僕達に至上の冒険を提供してくれる。
8/12
神威山荘に自転車をデポし、ソエマツ沢林道ゲートに車を置いて出発。林道をしばらく歩いていつもの場所で入渓。一箇所函を通過し、ソエマツ南西面出合を通過。神威岳南東面および東面直登沢出合は荒れていて「これ本当に大丈夫?」という感じ。ガレで伏流した東面出合を通り過ぎて進むとCo680二股で滝。この先も等高線の混み具合的に滝が連続しそうなので、少し戻って東面出合で泊。夜はタープを張らずに焚き火横でペルセウス座流星群を眺めながら沈。
8/13
Co680左股の滝を直登すると、予想通り滝が連続。ザイルを出すほどでもないが、ツルツル逆層で登りづらいものが多い。程なくしてCo680二股に到着。南東面直登沢の右股は、深い函となって奥に絶望的な二段滝が待ち構えている。ふ〜ちゃん氏の記録からも、直登は大分厳しそうだが、とりあえず見てみる。一段目は右岸クラックから上がり、二段目を観察。周囲は垂直以上の岩壁で、水流をもろに浴びながらのシャワークライミングでしか突破できなさそう。今山行は、オホーツク海高気圧のおかげで完全に秋の気温である。♯上が決死のシャワークライミングで突破を試みるが、核心部をあと少しで抜けられるというところであまりの水の冷たさに惜しくも敗退。仕方が無いので二股まで戻って左岸リッジから捲く。脆くて悪い岩登りをして潅木帯に突入。あとは藪漕ぎかと思っていたら岩壁にぶつかる。ここはザイル出して成田リードで40m程の垂直の岩と木登り、もげる草付きなどの悪い登りで立ち木まで。そこからは木登りと藪漕ぎで下降点を探りながらトラバース。いい感じのところで潅木に捨て縄をかけて懸垂25mで下りる。その際、先に待ち構える深いV字谷と、またも絶望的な滝が見えた……。とりあえずロープは抜かずに次に待ち構える絶望的な20m滝を偵察するが、直登も捲きもかなり悪そうだ。これは突破できるのかと一同諦めかけるが、無理だったら下りるだけだ、と腹をくくり懸垂のロープを抜く。考えられるラインは2つ。右岸水流際の直登(エイドになりそう)か、右岸側壁の岩壁から草付きを経由して、浅そうなバンドをトラバースして落ち口へ出るかだ。とりあえず竹中が前者の直登を試みるが、次第にツルツルスラブへと追いやられ、進退窮まり何とか右岸の草付き帯へと突入しハーケン打って敗退。♯上がユマーリングで中間ピンを回収して上がり、二人とも懸垂で下りてくる。この時点でパーティーの敗退ムードはかなり色濃かったが、とりあえずトラバースラインの可能性も探ってみようということで、成田リードで右岸岩壁を登り、草付きとスラブを経由して竹中の敗退残置へ合流してクリップ、そのまま5m程脆くて悪い浅い凹角を登り、バンドへ突入。下からではよくわからなかったこのバンドだが、こうして見ると何とか行けそうだ。クラックにスモールカムを決め、浅くてぬめるバンドをトラバースしていく。中々悪い箇所もあったが、手持ちのプロテクションを冷静にセットして、安全にムーブをこなす。最後は少しのクライムダウンで水流に合流し、シャワーで落ち口へ。Ⅴ級以上はありそうな渾身のクライミングだった、が、完全に諦めムードだったため写真は無し。この時点で14時で、先に何があるかもわからず、泊まれるかどうかもわからないので、滝から少し下の平坦地で泊まることにする。ザイルをFixし、竹中が空身で中間支点を回収しながら上がり、♯上がユマーリングで上がり、3人でその上のCS滝が比較的容易に越えられそうなことを確認して下りる。竹中はテンバの整備、♯上と成田は二股の滝の敗退の際に残置したナッツを回収しに行った。その際、この20m滝と二股の滝の間に、1つハングした5mCS滝があることが判明した(直登可)。湿った薪の焚き火に苦戦しつつ、一旦火を着けてしまえばこんなV字谷の真っ只中でも快適に寝られた。
8/14
朝イチのシャワーユマーリングは中々しんどい。その上のCS小滝は左岸岩壁から小さく捲いて登る。一箇所悪いのでクラックにNP決めてシュリンゲ垂らした。このあたりが最も側壁が高く、両岸100mはありそうな絶壁に囲まれた見事なV字谷となり壮観だ。小滝をいくつか越えると再び7mCS滝。成田がシャワーで登り、CSは確保してもらって左側をボルダリーなムーブで突破。その先は徐々に沢は開けてくるが、10m規模の絶妙に登りづらい滝が連続する。一箇所、右岸竹中、直登♯上、左岸成田と登って、竹中のみが登れてザイル投げてもらった滝があった。その後も岩盤の登りをこなすが沢は開けて気持ちは明るい。お花畑からハイマツへ突入し、程なくして神威岳ピーク。この気温で岳ノ沢はリアルに低体温症で死ぬ未来が見えたので、夏道から下山することに。バカ尾根をズルズル下って、沢に入ってからは夏道なのかよくわからないまま河原歩きとかで神威山荘まで。
神威岳南東面直登沢は、Co850二股の滝と、そのあとの20m滝の通過が、捲くにしても直登するにしてもかなり悪い。この2つを的確に対処できれば、他はさほどの困難は無いだろう。中間部のV字谷は日高でも指折りの圧倒的な光景だ。2つのかなりの強烈な核心があるため、山谷!!!よりは敷居が高いような気がするが、後半の尻すぼみ感は否めず、!!!*程の満腹感は得られないかもしれない。強めの!!!といったところか。ともあれ、この穢れなき日高の沢で、誰も踏み入れたことの無い沢を遡行できたことはとても嬉しい。日高の沢は、いつでも僕達に至上の冒険を提供してくれる。
天候 | 8/12 小雨→晴 8/13 晴→曇 8/14 晴 オホーツク海高気圧によって9~10月並の気温だった。 |
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過去天気図(気象庁) | 2021年08月の天気図 |
アクセス |
写真
装備
共同装備 |
タープ
のこ
8.1×60mロープ
お助けひも
ナッツ
トライカム
スモールカム
ハーケン
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感想
昨年は卒業論文に疲れたら地形図を眺めてリフレッシュを繰り返した1年でした。日高はもちろん北海道ではまだまだ宝探しが楽しめそうです。
猛烈シャワーに敗退した後に感じる薄いヴェールに包まれた陽光、草木に宿る安堵の情念。
この暖かみをアイヌの人々はカムイと呼んだのだろうか。今回の山行はまさに感覚遡行だった。
ps.敗退の時残置したナッツはスタッフがビショ濡れになりながら回収しました。
先に何があるかわからないワクワク感。かつて日高の沢を開拓していった方々はこんなワクワクを毎回感じていたのかと思うとただひたすらに羨ましい。日高の沢登りは、北海道の夏にできる最上級のアルパインクライミングだと思う。僕はいつまでも、この地とここで繰り広げられる冒険を愛していたい。
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コメント
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ありがとうございます
おかげさまで充実した溯行をすることができました。
こちらこそありがとうございました。
メンツも揃って羨ましいね〜
写真の臨場感に久しぶりに心臓がドキドキしました
このような沢に入って行ける実力とその仲間に敬意を表します
また次の記録の発表を楽しみにしています
未知の渓谷に足を踏み入れるのはとてもワクワクします。こんな素晴らしい体験を提供してくれる日高の山々にただただ感謝です。
強い後輩たちにも感謝です。
ただ、僕はこんなもんじゃ終わりません。
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