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Yamareco

記録ID: 3565111
全員に公開
沢登り
白山

【白山】中ノ川・地獄谷

2021年09月27日(月) ~ 2021年09月28日(火)
情報量の目安: S
都道府県 石川県 岐阜県
 - 拍手
GPS
--:--
距離
29.8km
登り
3,196m
下り
3,194m

コースタイム

1日目
山行
9:30
休憩
0:00
合計
9:30
6:10
310
新岩間温泉駐車場
11:20
230
見返坂の頭(ゾロ谷への下降開始)
15:10
30
中ノ川本流とゾロ谷の出合
15:40
仙人谷・地獄谷の二俣
2日目
山行
16:30
休憩
0:00
合計
16:30
6:00
150
仙人谷・地獄谷の二俣
8:30
190
2段40m大滝
11:40
160
下部ゴルジュ終了
14:20
120
2020m二俣
16:20
370
中宮道に合流(遡行終了)
22:30
新岩間温泉駐車場
天候 両日とも晴れ
過去天気図(気象庁) 2021年09月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
新岩間温泉の駐車場に駐車。
コース状況/
危険箇所等
 火の御子峰で有名な地獄尾根の西縁をめぐるように流れる中ノ川地獄谷は,日本百名谷の一つに数えられていたり,古白山火山の火口の推定地とされていたりと,いろいろと興味深い谷なのだが,アプローチの面倒さも手伝ってか近年はあまり人が入っていないようで,上部については主に山スキー等による記録があるものの,下部ゴルジュ帯も含め通しで遡行した記録がネット上にほとんど見当たらず,気になっていた。昨年の地獄尾根,仙人谷に続き,今回は地獄谷で白山の地獄見聞。

【中ノ川地獄谷】
※岐阜県側の大白川支流の地獄谷とは別ですのでご注意を(あっちにもゾロ谷という枝谷があるのでまぎらわしい)。
・アプローチは中ノ川支谷のゾロ谷から。その理由としては,最も入渓しやすそうにみえる岩間噴泉塔から入渓した場合,岩間噴泉塔のすぐ上流に出てくる大ゴルジュ帯の2段20m滝の突破に苦労しそうなため(「日本百名谷」の遡行記録によると,この滝の左岸側にかつては鉄ハシゴが設置されており簡単に通過できたようなのだが,現在このハシゴは存在しない)。ゾロ谷は多段70m滝をはじめいくつか滝が出てくるが,ロープを出さずに下降することができる。
・地獄谷の核心部は,仙人谷出合からすぐ上流側に出てくるゴルジュ帯の通過。2段40m滝を筆頭としていくつか大きめの滝が出てくる。今回は主に右岸側を高巻いたが,側壁が高い岩壁であるうえに藪が非常に濃く,かなりの大高巻きを強いられる。また,滝も簡単に登れそうなものは少なく,正面突破はそれなりの技量を要すると思われる。(「日本登山体系」では2段40mでゴルジュ終了となっているが,実際にはゴルジュは更に長く続き,2段20m?ほどの滝で終了となる。遡行図としては「日本百名谷」のほうが実際に近いと思われる。しかし,こちらも谷の崩壊で滝が埋まったせいか,何かちょっと現状と違う気がする…)
・核心部の下部ゴルジュを越えると,2万5千図の源頭付近の滝記号のある個所までは悪場はなく,基本的に賽の河原のような荒涼とした風景の中の河原歩き。特に右岸側に突き上げる地獄尾根の眺めは凄まじいの一言。ただ,今回,昨冬に比較的多く雪が降ったせいか,断続的に大規模な雪渓が残っていてその処理に慎重を要した(今回は上に乗って進めたが,状況によっては下をくぐらざるをえないこともあるかもしれない)。
・この谷は標高2020m付近で二俣に分かれるが,詰めは滝記号のある左俣を取ることをおすすめする(遠目で見ただけだが,右俣は大汝峰北面の岩壁帯に突き上げており,稜線に出るのがかなり困難そうだった。)滝記号の箇所には15m・5mくらいの2段の滝があり,直登もできなくはなさそうだったが,今回は右岸側の細いリッジから灌木帯に入ってまとめて巻いた。詰めは大汝峰東側のP2416のすぐ西側のコルに出て斜面を下り,中宮道に合流したが,中宮道に出るまでは灌木とハイマツの藪こぎが結構大変。

※注意(飲用水について)
 地獄谷の水は濁っているうえに鉄分や温泉成分が濃いようで,かなり味が悪い(体にも悪いかも)。仙人谷の水は比較的ましなので,仙人谷出合である程度水を汲んでいったほうがいいと思う。あとは枝谷から流れている水でしのげるが,これもかなり味が悪いものが多い。2020m二俣から左俣に入ると,普通に飲める水になります。
新岩間温泉に車を停め,楽々新道からアプローチ開始。ちなみに,岩間道方面の県道は,この冬に起こった大規模な崩落により,未だに閉鎖中(このあおりで導湯管が破断したため,新岩間温泉の山崎旅館も未だ閉館中)。まあ,こちらから入渓した場合,岩間噴泉塔の先の2段20m滝で苦労しそうだが…。
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新岩間温泉に車を停め,楽々新道からアプローチ開始。ちなみに,岩間道方面の県道は,この冬に起こった大規模な崩落により,未だに閉鎖中(このあおりで導湯管が破断したため,新岩間温泉の山崎旅館も未だ閉館中)。まあ,こちらから入渓した場合,岩間噴泉塔の先の2段20m滝で苦労しそうだが…。
楽々新道を登っていく。楽々新道では,昨年10月,富山県のトレイルランの男性が,このフィックスロープのある箇所から滑落され,亡くなられた。樹林で穏やかに見えるかもしれないが,この箇所の谷側は下までかなり切り立っている。しばし瞑目し,合掌した。
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楽々新道を登っていく。楽々新道では,昨年10月,富山県のトレイルランの男性が,このフィックスロープのある箇所から滑落され,亡くなられた。樹林で穏やかに見えるかもしれないが,この箇所の谷側は下までかなり切り立っている。しばし瞑目し,合掌した。
ところどころ紅葉が始まりかけた小桜平を通過。
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ところどころ紅葉が始まりかけた小桜平を通過。
昨年10月の地獄尾根や仙人谷訪問時と同じく,見返坂の頭から北側の中ノ川支谷・ゾロ谷を下降して中ノ川本流にアプローチする。ゾロ谷までは灌木の藪が濃いが,一旦谷に降り立ってしまえば,スムーズに下っていける。
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昨年10月の地獄尾根や仙人谷訪問時と同じく,見返坂の頭から北側の中ノ川支谷・ゾロ谷を下降して中ノ川本流にアプローチする。ゾロ谷までは灌木の藪が濃いが,一旦谷に降り立ってしまえば,スムーズに下っていける。
多段70m滝の滝頭に出た。昨年より水量が多く,幅広のスラブいっぱい広がって水が流れ落ちていく。右岸の草付きスラブを慎重にクライムダウンしていく。
3
多段70m滝の滝頭に出た。昨年より水量が多く,幅広のスラブいっぱい広がって水が流れ落ちていく。右岸の草付きスラブを慎重にクライムダウンしていく。
4段目の下から多段70m滝を見上げたところ。この下にもまだ数段滝がある。
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4段目の下から多段70m滝を見上げたところ。この下にもまだ数段滝がある。
多段70m滝をクリアしてさらに下降を続けると,中ノ川本流との出合の直前でこの2条の10mほどの滝が現れる。この滝は右岸側を巻ける。
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多段70m滝をクリアしてさらに下降を続けると,中ノ川本流との出合の直前でこの2条の10mほどの滝が現れる。この滝は右岸側を巻ける。
1年ぶりの中ノ川本流が眼下に見えてきた。
2
1年ぶりの中ノ川本流が眼下に見えてきた。
中ノ川本流に到着。よく発達した岩盤の間をどうどうと流れる水が美しい。
3
中ノ川本流に到着。よく発達した岩盤の間をどうどうと流れる水が美しい。
中ノ川の水は相変わらず濁っており,水に含まれる成分のせいか,水に触れる箇所の岩は腐食したように赤く染まっている。
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中ノ川の水は相変わらず濁っており,水に含まれる成分のせいか,水に触れる箇所の岩は腐食したように赤く染まっている。
相変わらずの物凄い岩壁。この壁は玄徳壁と呼ばれ,昔,白山麓の村人たちがオウギ採りをしていたらしいが,この険しさを見てしまうと正直想像がつかない…。
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相変わらずの物凄い岩壁。この壁は玄徳壁と呼ばれ,昔,白山麓の村人たちがオウギ採りをしていたらしいが,この険しさを見てしまうと正直想像がつかない…。
地獄谷・仙人谷の二俣を目指して上流へ。
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地獄谷・仙人谷の二俣を目指して上流へ。
河原には,このように黒っぽくて表面がボロボロになった岩が頻繁に目につく。まるで黒焦げになったパンのようだ。おそらく,白山が火山活動をしていたころの名残だと思うが,こういうの,パン皮状火山弾っていうんだっけ?
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河原には,このように黒っぽくて表面がボロボロになった岩が頻繁に目につく。まるで黒焦げになったパンのようだ。おそらく,白山が火山活動をしていたころの名残だと思うが,こういうの,パン皮状火山弾っていうんだっけ?
2014〜2015年にかけて崩壊が発生し,濁水が問題になった中ノ川右岸の大崩壊地。しきりに落石音が響いていて,いまだに崩壊は進行中のようだ。
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2014〜2015年にかけて崩壊が発生し,濁水が問題になった中ノ川右岸の大崩壊地。しきりに落石音が響いていて,いまだに崩壊は進行中のようだ。
地獄谷(右)と仙人谷(左)の出合に到着。昨年10月の地獄尾根アタック時に泊まった場所だ。なつかしい。
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地獄谷(右)と仙人谷(左)の出合に到着。昨年10月の地獄尾根アタック時に泊まった場所だ。なつかしい。
地獄谷の下部ゴルジュの通過に備え,まだ時間は早いが,今回もここで泊まっていくことにする。雨の心配はなさそうなので,タープは張らずにゴロ寝。これが一番気持ちいい。
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地獄谷の下部ゴルジュの通過に備え,まだ時間は早いが,今回もここで泊まっていくことにする。雨の心配はなさそうなので,タープは張らずにゴロ寝。これが一番気持ちいい。
この二俣は良く乾いた薪が豊富に転がっており,焚火するには天国のようなところ。ゴロ寝して文庫本を読んだり,それに疲れたら焚火を眺めたりして,夜が更けていった。
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この二俣は良く乾いた薪が豊富に転がっており,焚火するには天国のようなところ。ゴロ寝して文庫本を読んだり,それに疲れたら焚火を眺めたりして,夜が更けていった。
谷の朝。手早くお茶漬けをすすって荷物をまとめた後,地獄谷の遡行を開始する。初めは穏やかなゴーロから始まる。
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谷の朝。手早くお茶漬けをすすって荷物をまとめた後,地獄谷の遡行を開始する。初めは穏やかなゴーロから始まる。
地獄谷の特徴は,とにかく岩が赤いこと。おそらく,水に含まれる酸化鉄か何かのせいだと思われるが,まるで血に染まったようで,まさに地獄といった風情。
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地獄谷の特徴は,とにかく岩が赤いこと。おそらく,水に含まれる酸化鉄か何かのせいだと思われるが,まるで血に染まったようで,まさに地獄といった風情。
不気味に濁った水の流れる赤い谷を遡っていく。
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不気味に濁った水の流れる赤い谷を遡っていく。
谷が左に折れると,それまでの穏やかな河原から一変,急に両岸が切り立ち始め,険悪な雰囲気が漂い始めた。地獄谷の下部ゴルジュの入り口だ。
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谷が左に折れると,それまでの穏やかな河原から一変,急に両岸が切り立ち始め,険悪な雰囲気が漂い始めた。地獄谷の下部ゴルジュの入り口だ。
激しく水煙を上げる小滝を越えるたびに,緊張が高まっていく。
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激しく水煙を上げる小滝を越えるたびに,緊張が高まっていく。
そして,両岸が完璧に屹立した中に,3mと5mの2連瀑が出現。さしづめこれが地獄の門か。手前の3mは簡単に越えられそうだが,その奥の5mはボルトでもない限り無理そうな雰囲気…。
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そして,両岸が完璧に屹立した中に,3mと5mの2連瀑が出現。さしづめこれが地獄の門か。手前の3mは簡単に越えられそうだが,その奥の5mはボルトでもない限り無理そうな雰囲気…。
右岸側のこの壁を登り,高巻きに入る。この壁自体は大まかな登りで難しくないが,その上が問題。まず先ほど5m滝の落ち口の上に続くバンドを辿ろうとしたが,あまりに外傾しているため諦め,さらに上の樹林帯を目指すが,傾斜の強いスラブに泥がのっかったような嫌な登りが続き,かなり肝を冷やした。(余裕がなかったため,写真なくてすみません…)
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右岸側のこの壁を登り,高巻きに入る。この壁自体は大まかな登りで難しくないが,その上が問題。まず先ほど5m滝の落ち口の上に続くバンドを辿ろうとしたが,あまりに外傾しているため諦め,さらに上の樹林帯を目指すが,傾斜の強いスラブに泥がのっかったような嫌な登りが続き,かなり肝を冷やした。(余裕がなかったため,写真なくてすみません…)
樹林帯に入ってからトラバース。昨年の地獄尾根アタック時にこの尾根の藪の濃さは思い知っているとはいえ,やはり濃密な灌木の藪に難渋させられる。しかも傾斜も強く,何度も前進不可能な地形に突き当たっては上に追い上げられ,時間だけがいたずらに過ぎていく。
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樹林帯に入ってからトラバース。昨年の地獄尾根アタック時にこの尾根の藪の濃さは思い知っているとはいえ,やはり濃密な灌木の藪に難渋させられる。しかも傾斜も強く,何度も前進不可能な地形に突き当たっては上に追い上げられ,時間だけがいたずらに過ぎていく。
と,灌木の間から谷底の様子を伺うと,物凄い赤茶けたゴルジュの光景とともに,その間をくねり落ちる大滝の姿が目に飛び込んできた。これは絶対に間近で見てみたい。
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と,灌木の間から谷底の様子を伺うと,物凄い赤茶けたゴルジュの光景とともに,その間をくねり落ちる大滝の姿が目に飛び込んできた。これは絶対に間近で見てみたい。
なかなか岩壁が緩まず下降点が見つからなかったが,やっとここしかない!というようなガレた草付きを見つけ,手持ちのロープ(40m,ダブルにして20m)いっぱいの懸垂で谷底に降り立った。
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なかなか岩壁が緩まず下降点が見つからなかったが,やっとここしかない!というようなガレた草付きを見つけ,手持ちのロープ(40m,ダブルにして20m)いっぱいの懸垂で谷底に降り立った。
中ノ川地獄谷で恐らく一番の大滝,2段40m滝(実際は40mないかも?とりあえず日本登山体系に合わせて40mにしておきます)。写真に写っている一番上の滝の奥にも大きな滝の気配があるのだが,残念ながら下からでは見ることができない。
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中ノ川地獄谷で恐らく一番の大滝,2段40m滝(実際は40mないかも?とりあえず日本登山体系に合わせて40mにしておきます)。写真に写っている一番上の滝の奥にも大きな滝の気配があるのだが,残念ながら下からでは見ることができない。
この滝の魅力は,やはり周囲に屹立した岩壁の圧倒的な光景だろう。まさに地獄谷に立ち塞がる獄卒と呼ぶにふさわしい滝だ。
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この滝の魅力は,やはり周囲に屹立した岩壁の圧倒的な光景だろう。まさに地獄谷に立ち塞がる獄卒と呼ぶにふさわしい滝だ。
ついでに,高巻きで巻いてしまったゴルジュの下部も見に行く。下流側にも,倒れ掛かってきそうなほど切り立った岩壁が続く。
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ついでに,高巻きで巻いてしまったゴルジュの下部も見に行く。下流側にも,倒れ掛かってきそうなほど切り立った岩壁が続く。
しばらく下降していくと,さきほど越えられなかった5m滝の頭に出た。これで見るべきものは見た。
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しばらく下降していくと,さきほど越えられなかった5m滝の頭に出た。これで見るべきものは見た。
さて,今度は先ほどの2段40m滝の右岸に降りてきている大きなルンゼから高巻きに入るのだが,滝を眺めていた時から危惧していた通り,樹林帯に取りつくまでもかなり大変なうえ,凄まじい大高巻きになった。高い岩壁が続き下降点が見つからないうえ(ロープ2本持ってくればよかった…),とにかく藪が濃い。かなりの時間を要した。
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さて,今度は先ほどの2段40m滝の右岸に降りてきている大きなルンゼから高巻きに入るのだが,滝を眺めていた時から危惧していた通り,樹林帯に取りつくまでもかなり大変なうえ,凄まじい大高巻きになった。高い岩壁が続き下降点が見つからないうえ(ロープ2本持ってくればよかった…),とにかく藪が濃い。かなりの時間を要した。
苦難の大高巻きの末,やっと見つけたこのルンゼの底に懸垂下降で降り立ち,何とか谷に戻ることができた。
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苦難の大高巻きの末,やっと見つけたこのルンゼの底に懸垂下降で降り立ち,何とか谷に戻ることができた。
少し下流に戻ってみると,目測で2段20mほどの大きな滝が。恐らくこの滝が,下部ゴルジュ出口の滝だ。できることならこの滝を懸垂して下の様子も見てみたかったのだが,滝の形状的にロープが滝の流芯に思いっきり入ってしまい,登り返しに相当苦労することが予想されたため,思いとどまった。
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少し下流に戻ってみると,目測で2段20mほどの大きな滝が。恐らくこの滝が,下部ゴルジュ出口の滝だ。できることならこの滝を懸垂して下の様子も見てみたかったのだが,滝の形状的にロープが滝の流芯に思いっきり入ってしまい,登り返しに相当苦労することが予想されたため,思いとどまった。
上から見るだけでも十分迫力が伝わってくるような,凄まじい岩壁帯だ。この下に降りたら,二度と生きて上がって来られないのではないか,そんな妄想にさえ囚われてしまう。
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上から見るだけでも十分迫力が伝わってくるような,凄まじい岩壁帯だ。この下に降りたら,二度と生きて上がって来られないのではないか,そんな妄想にさえ囚われてしまう。
さて,泥臭い高巻きに終始してしまったが,何はともあれ懸案の下部ゴルジュ帯の上に抜けることができた。大きな安心感とともに,上流へ歩を進める。この小滝は左側から簡単に越えられる。
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さて,泥臭い高巻きに終始してしまったが,何はともあれ懸案の下部ゴルジュ帯の上に抜けることができた。大きな安心感とともに,上流へ歩を進める。この小滝は左側から簡単に越えられる。
すると次第に谷が開け,若干穏やかな風情に。
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すると次第に谷が開け,若干穏やかな風情に。
ここからしばらくは河原歩きだろう,と安心し切っていると…ん? 雪渓の残骸…。もう10月だというのに。なんだか嫌な予感が…。
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ここからしばらくは河原歩きだろう,と安心し切っていると…ん? 雪渓の残骸…。もう10月だというのに。なんだか嫌な予感が…。
!! あ,あれはまさか…。
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!! あ,あれはまさか…。
嫌な予感が的中。谷いっぱいに雪渓が出現。源頭でちょっとは出てくるかな,とは思っていたが,まさかこんなに大規模な雪渓が残っているとは…。
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嫌な予感が的中。谷いっぱいに雪渓が出現。源頭でちょっとは出てくるかな,とは思っていたが,まさかこんなに大規模な雪渓が残っているとは…。
うう…この下をくぐるしかないのか? でも先が真っ暗で何も見えないんですけど…。
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うう…この下をくぐるしかないのか? でも先が真っ暗で何も見えないんですけど…。
ついさっき崩壊したばかりです,と言わんばかりの崩壊雪渓も見受けられ,恐怖心をあおられる。
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ついさっき崩壊したばかりです,と言わんばかりの崩壊雪渓も見受けられ,恐怖心をあおられる。
周囲を観察すると,雪渓の上に這い上がれそうな箇所が見つかり,チェーンスパイクとアイスバイルを駆使して何とか雪渓の上に乗った。写真のように割れ目も見受けられるが,ありがたいことに大部分は結構分厚くて安定していそうである。
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周囲を観察すると,雪渓の上に這い上がれそうな箇所が見つかり,チェーンスパイクとアイスバイルを駆使して何とか雪渓の上に乗った。写真のように割れ目も見受けられるが,ありがたいことに大部分は結構分厚くて安定していそうである。
雪渓を振り返る。まさかこんなに広いところでに雪渓が残っているとは…。やはりこの冬は雪が多かったんだな。
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雪渓を振り返る。まさかこんなに広いところでに雪渓が残っているとは…。やはりこの冬は雪が多かったんだな。
こんな崩壊雪渓の迷路も出てきて肝を冷やすが,少しでも安定していそうな箇所を慎重に辿っていく。
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こんな崩壊雪渓の迷路も出てきて肝を冷やすが,少しでも安定していそうな箇所を慎重に辿っていく。
なんとか無事上流側に降り立ち,胸をなでおろした。
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なんとか無事上流側に降り立ち,胸をなでおろした。
すると,左手に凄まじい赤茶けた岩尾根の姿が。火の御子峰だ!
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すると,左手に凄まじい赤茶けた岩尾根の姿が。火の御子峰だ!
地獄谷の下部のハイライトが先ほどの3段40m大滝とするなら,上部のハイライトはこの壮絶な地獄尾根の光景だろう。まさに白山地獄絵巻中の針山地獄というべきか。
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地獄谷の下部のハイライトが先ほどの3段40m大滝とするなら,上部のハイライトはこの壮絶な地獄尾根の光景だろう。まさに白山地獄絵巻中の針山地獄というべきか。
その凄惨な地獄尾根の足元を,賽の河原のような荒涼とした流れが続く。
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その凄惨な地獄尾根の足元を,賽の河原のような荒涼とした流れが続く。
こりゃすごい。写真のように壁にはかなり黄色い箇所もあり,火山活動の名残の硫黄分を多く含んでいるものと思われる。(実際,地獄谷では随所で強い硫黄臭が漂っている。仙人谷と同じように温泉が湧いていないか気にしながら歩いていたが,残念ながら見つからなかった。)
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こりゃすごい。写真のように壁にはかなり黄色い箇所もあり,火山活動の名残の硫黄分を多く含んでいるものと思われる。(実際,地獄谷では随所で強い硫黄臭が漂っている。仙人谷と同じように温泉が湧いていないか気にしながら歩いていたが,残念ながら見つからなかった。)
ちなみに,中ノ川地獄谷にはもともと古白山火山の火口があったと言われている。今歩いている谷底は,かつては灼熱のマグマの通り道だったのだ。そう考えると,地獄尾根がこんなに赤茶けてボロボロなのもうなづける気がする。
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ちなみに,中ノ川地獄谷にはもともと古白山火山の火口があったと言われている。今歩いている谷底は,かつては灼熱のマグマの通り道だったのだ。そう考えると,地獄尾根がこんなに赤茶けてボロボロなのもうなづける気がする。
ぬおっ,なんだありゃ? 土砂崩れでできた小山かと思って近づいてみたら,何と巨大な雪渓のうえに土砂が載っているものだった。
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ぬおっ,なんだありゃ? 土砂崩れでできた小山かと思って近づいてみたら,何と巨大な雪渓のうえに土砂が載っているものだった。
そしてその小山の上に乗って谷の行く手を遠望すると…うわぁ,また雪渓出てきた…!
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そしてその小山の上に乗って谷の行く手を遠望すると…うわぁ,また雪渓出てきた…!
再び雪渓の上に這い上がる。真ん中は穴が開いていたりして精神衛生上よろしくない眺めだが,端のほうは雪渓が分厚くて安定している。
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再び雪渓の上に這い上がる。真ん中は穴が開いていたりして精神衛生上よろしくない眺めだが,端のほうは雪渓が分厚くて安定している。
慎重に雪渓上を歩きながらも,目は地獄尾根にくぎ付け。これがYSHRさんらパーティーが火の御子峰への登路にしたルンゼか。
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慎重に雪渓上を歩きながらも,目は地獄尾根にくぎ付け。これがYSHRさんらパーティーが火の御子峰への登路にしたルンゼか。
火の御子峰(手前),そして火の御子峰北峰(奥)。
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火の御子峰(手前),そして火の御子峰北峰(奥)。
昨年10月に登った火の御子峰北峰のアップ。あの上に立ってたんだなぁ。懐かしい…。
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昨年10月に登った火の御子峰北峰のアップ。あの上に立ってたんだなぁ。懐かしい…。
何度も火の御子峰を振り返りながら,穴の開いた雪渓を慎重に登っていく。
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何度も火の御子峰を振り返りながら,穴の開いた雪渓を慎重に登っていく。
この雪渓は結構長く続いた。
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この雪渓は結構長く続いた。
ズタズタの雪渓迷路を慎重に抜けて…。
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ズタズタの雪渓迷路を慎重に抜けて…。
御手水鉢から降りてくる枝谷(右)との出合に到着。ここで雪渓は途切れた。
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御手水鉢から降りてくる枝谷(右)との出合に到着。ここで雪渓は途切れた。
谷の側壁に飛びついて雪渓から離脱。歩いてきた雪渓を振り返る。
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谷の側壁に飛びついて雪渓から離脱。歩いてきた雪渓を振り返る。
ここで御手水鉢に突き上げる枝谷経由で稜線に出てしまう選択肢もあったが,地形図上に記された源頭の滝記号の滝を見てみたかったので,本流を進む。
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ここで御手水鉢に突き上げる枝谷経由で稜線に出てしまう選択肢もあったが,地形図上に記された源頭の滝記号の滝を見てみたかったので,本流を進む。
相変わらず両岸には荒涼とした側壁が続くが,火の御子峰のあたりに比べれば迫力は若干和らいでいる。
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相変わらず両岸には荒涼とした側壁が続くが,火の御子峰のあたりに比べれば迫力は若干和らいでいる。
谷中はしばらく概ね穏やか。こんな5mほどの滝が出てくるくらい。
3
谷中はしばらく概ね穏やか。こんな5mほどの滝が出てくるくらい。
と,またまた雪渓が出現。雪渓が出てくるたび,本当に心臓に悪い…。
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と,またまた雪渓が出現。雪渓が出てくるたび,本当に心臓に悪い…。
再び雪渓上の人に。万が一にも滑落しないようにチェーンスパイクを効かせていく(ありがたいことに,アイゼンが必要になるほどの傾斜ではない。)
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再び雪渓上の人に。万が一にも滑落しないようにチェーンスパイクを効かせていく(ありがたいことに,アイゼンが必要になるほどの傾斜ではない。)
この雪渓,分厚いな…。厚さ10m以上はあるんでないか。
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この雪渓,分厚いな…。厚さ10m以上はあるんでないか。
と,雪渓が途切れ,途切れた先に8mほどの滝が見える。
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と,雪渓が途切れ,途切れた先に8mほどの滝が見える。
更に谷の奥を伺うと,ちょうど二俣になっており,谷に引っかかった嫌〜な感じの雪渓と,地形図上の滝記号の滝と思しき滝の姿(写真左上あたりに小さく写っている)が見える。
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更に谷の奥を伺うと,ちょうど二俣になっており,谷に引っかかった嫌〜な感じの雪渓と,地形図上の滝記号の滝と思しき滝の姿(写真左上あたりに小さく写っている)が見える。
今乗っている雪渓から谷底に降りるには側壁の登攀になりそうで面倒だったのと,その先に見えるどんよりした感じの雪渓とのやり取りを避けるため,雪渓上から直接右岸のこのリッジに取りつき,高巻きに入ることに。
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今乗っている雪渓から谷底に降りるには側壁の登攀になりそうで面倒だったのと,その先に見えるどんよりした感じの雪渓とのやり取りを避けるため,雪渓上から直接右岸のこのリッジに取りつき,高巻きに入ることに。
砂利の乗った急峻な細いリッジを慎重に登り切り,樹林帯に入る。この尾根も相変わらず藪が濃いが,下部ゴルジュ帯の巻きに比べればまだましなほう。
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砂利の乗った急峻な細いリッジを慎重に登り切り,樹林帯に入る。この尾根も相変わらず藪が濃いが,下部ゴルジュ帯の巻きに比べればまだましなほう。
高巻きしながら右俣を遠望すると,嫌な感じの雪渓が断続的に続いている。入るのがこちらでなくてよかった…。
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高巻きしながら右俣を遠望すると,嫌な感じの雪渓が断続的に続いている。入るのがこちらでなくてよかった…。
進む予定の左俣は,地図の滝記号のとおり,15m・5m位の2段20mほどの滝となっており,なかなか美しい眺め。
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進む予定の左俣は,地図の滝記号のとおり,15m・5m位の2段20mほどの滝となっており,なかなか美しい眺め。
濃い灌木の藪をかいくぐり,ズルズルの草付き斜面を滑るように下って,先ほどの滝を越えた地点でうまいこと左俣に降り立った。こちらは右俣と異なり,穏やかな谷で崩壊雪渓の姿も見当たらない。とりあえず安心。
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濃い灌木の藪をかいくぐり,ズルズルの草付き斜面を滑るように下って,先ほどの滝を越えた地点でうまいこと左俣に降り立った。こちらは右俣と異なり,穏やかな谷で崩壊雪渓の姿も見当たらない。とりあえず安心。
そのまま穏やかな詰めを迎えた。
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そのまま穏やかな詰めを迎えた。
両岸の樹林が色づき始めている。
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両岸の樹林が色づき始めている。
左俣の源頭は,巨岩が点在するロックガーデンのような気持ちのいい草地であった。その向こうに聳えているのは,大汝峰の北面の岩壁帯。大汝峰は穏やかな印象のある山だが,北側はこんなに切り立っているなんて…。
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左俣の源頭は,巨岩が点在するロックガーデンのような気持ちのいい草地であった。その向こうに聳えているのは,大汝峰の北面の岩壁帯。大汝峰は穏やかな印象のある山だが,北側はこんなに切り立っているなんて…。
南に直行すると岩壁帯にぶつかって難渋するのが目に見えているので,やや左手のP2416m西側にある小さなコルを目指す。ここも灌木の濃い藪で,なかなか苦労した。
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南に直行すると岩壁帯にぶつかって難渋するのが目に見えているので,やや左手のP2416m西側にある小さなコルを目指す。ここも灌木の濃い藪で,なかなか苦労した。
P2416m西側のコルに到着。ハイマツに包まれていて当然道はない。写真に写っている岩峰はP2416m。
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P2416m西側のコルに到着。ハイマツに包まれていて当然道はない。写真に写っている岩峰はP2416m。
最後に遡行してきた地獄谷を振り返る。雪渓の冷気によるものか,谷底からガスが湧き出し始め,みるみるうちに地獄谷を視界から隠してしまった。
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最後に遡行してきた地獄谷を振り返る。雪渓の冷気によるものか,谷底からガスが湧き出し始め,みるみるうちに地獄谷を視界から隠してしまった。
さて,とにかく中宮道に出なければ,この山行は終わらない。中宮道は未だにはるか眼下で,無情にも濃いハイマツの藪が彼我の間を隔てている。もう勘弁してほしいと思いつつも,ハイマツの枝に乗っかりながら根気強く登山道を目指す。
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さて,とにかく中宮道に出なければ,この山行は終わらない。中宮道は未だにはるか眼下で,無情にも濃いハイマツの藪が彼我の間を隔てている。もう勘弁してほしいと思いつつも,ハイマツの枝に乗っかりながら根気強く登山道を目指す。
ようやく中宮道に合流。重いザックを投げ出すように下ろしてヘルメットを脱ぎ,稜線を仰ぐと,傾きはじめた秋の陽の淡い光の中に,剣ヶ峰と大汝峰のシルエットが浮かび上がっていた。
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ようやく中宮道に合流。重いザックを投げ出すように下ろしてヘルメットを脱ぎ,稜線を仰ぐと,傾きはじめた秋の陽の淡い光の中に,剣ヶ峰と大汝峰のシルエットが浮かび上がっていた。
【おまけ(岩間噴泉塔上流ゴルジュ1)】地獄谷の下部ゴルジュも凄いが,岩間噴泉塔の少し上流の中ノ川本流にある大ゴルジュ帯もなかなかのものなので,ついでにご紹介(別の日に撮ったものです)。地図の滝記号の位置にある2段20m滝。昔はこの滝の左岸に鉄ハシゴがあったらしいが,現在は見当たらず,この滝を越えるのは結構大変そう(逆に上流側からの下降は,30m程度の懸垂で可能)。
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【おまけ(岩間噴泉塔上流ゴルジュ1)】地獄谷の下部ゴルジュも凄いが,岩間噴泉塔の少し上流の中ノ川本流にある大ゴルジュ帯もなかなかのものなので,ついでにご紹介(別の日に撮ったものです)。地図の滝記号の位置にある2段20m滝。昔はこの滝の左岸に鉄ハシゴがあったらしいが,現在は見当たらず,この滝を越えるのは結構大変そう(逆に上流側からの下降は,30m程度の懸垂で可能)。
【おまけ(岩間噴泉塔上流ゴルジュ2)】とにかく壁。どこを見ても壁。
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【おまけ(岩間噴泉塔上流ゴルジュ2)】とにかく壁。どこを見ても壁。
【おまけ(岩間噴泉塔上流ゴルジュ3)】両岸の壁の高さだけで言えば,地獄谷の下部ゴルジュ以上かもしれない。
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【おまけ(岩間噴泉塔上流ゴルジュ3)】両岸の壁の高さだけで言えば,地獄谷の下部ゴルジュ以上かもしれない。
【おまけ(岩間噴泉塔上流ゴルジュ4)】白く磨かれたような岩の大廊下が続く。地獄谷下部の赤ゴルジュに対して,こちらは白ゴルジュ。同じ谷なのに岩質が違って面白い。
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【おまけ(岩間噴泉塔上流ゴルジュ4)】白く磨かれたような岩の大廊下が続く。地獄谷下部の赤ゴルジュに対して,こちらは白ゴルジュ。同じ谷なのに岩質が違って面白い。

装備

備考 ・側壁がかなり立っており,懸垂距離が長くなるので,ロープはできる限り長いものを携行することをお勧めします。今回,普段通り40m一本しか持っていなかったため,なかなか谷に戻れず,大高巻きになって苦労しました。
・中ノ川はぬめりがほとんどなくフリクションは良好なため,ラバーの沢靴がおすすめ。ただし,アプローチに使ったゾロ谷はちょっとぬめりあり。

感想

 緊急事態宣言の解除が決定されたとはいえ若干フライング気味だが,せっかく休みがいただけたので,久しぶりの白山。
 昨年10月に白山・中ノ川の左俣である仙人谷を遡行したので,右俣である地獄谷も当然ながらいつか訪れたいと思っていた。
 中ノ川地獄谷は,実は白山では大畠谷と並んで日本百名谷にも収録されている谷なのだが,大岩壁の二俣であまりにも有名な大畠谷に対し,中ノ川地獄谷は(谷の上部のスキー滑降等の記録を除けば)ネット上にほとんど記録が見当たらない。アプローチもいろいろと面倒だし,遡行図を見る限りそれほど滝の数が多いというわけでもないので,物好きでないと足が向かないというのも仕方ない気はする。しかし,「日本登山体系」や「日本百名谷」などの古い記録を読む限り,仙人谷との出合からすぐの下部ゴルジュ帯にはかなりの大滝が存在することが示唆されており,かつその通過は相当厳しい内容のようだ。また,2万5千図上で源頭近くの左俣にぽつんと表記されている滝記号にも興味を惹かれた。下部ゴルジュ帯にしても源頭の滝記号にしても,そこにはどんな風景が隠れているのだろう。白山の地獄の内奥に踏み入るような気分で不安を覚えながらも,同時にわくわくしながら山行当日を迎えた。
 地獄谷の下部ゴルジュは,さすがはあの地獄尾根のお膝元,容赦なく切り立った側壁が途切れることなく続き,不気味に濁った水に赤く染められた谷底を歩いていると,まるで奈落の底を歩んでいるような気分になる。しかも行く手に獄卒のごとく立ちふさがる滝は簡単に登らせてもらえないものが多く,力ない一単独行者としては当然,ずるずると大高巻きに引きずり込まれてしまう。このゴルジュの難しいところは,中途半端な長さのロープでは懸垂さえできないような高い側壁が続き,谷底との行き来を許容する弱点がわずかなガレ場などに限られることだ。高巻きの中で残念ながら見逃してしまった区間もあるが,それでもこの谷最大と思われる2段40m滝(実際は40mないかも?とりあえず日本登山体系に合わせて40mにしておきます)を間近に見上げることができたのは嬉しかった。赤茶けた巨大な岩壁の奥から勢いよく螺旋状に絞り出されたような,見事な滝だった。
 また,ゴルジュを抜けた後の中間部に聳え立つ火の御子峰の眺めは,既にネット上でも様々な形で紹介されているとはいえ,やはり圧倒的だった。それにも増して驚いたのが予想外の区間に予想外の規模で現れた雪渓の残骸の群れ。一時はどうなることかと思ったが,通過箇所さえ間違えなければ分厚くて丈夫な雪渓が多く助かった。昨年は8月の早い時期でも白山の谷にはほとんど雪渓を見ることはなく快適な遡行ができたが,今年は秋の遅い時期まで崩壊雪渓の処理に苦しめられそうだ。また,源頭付近の滝記号の箇所の滝は,思ったよりはこじんまりとしていたが,紅葉に染まり始めた中宮道の稜線を背景にして,奥の二俣の出合を飾るように落ちる美しい姿の滝だった。
 最後に,江戸期の「白山遊覧図記」から中ノ川地獄谷に関する一節を引用。往時の人々にとって地獄谷が文字通り「地獄」に似た,摩訶不思議な「異界」であったことが良くわかる。
「大汝劔峰。東西相対。其間邃然作谷。即地獄谷也。巌石砂礫其色赭黒。硫黄甚多。盛夏炎赫如燬。驟雨濺之。則濃煙巻天。其色爲黄。爲白。爲赤。爲紫。爲黒。随風延漫。頃刻埋峰。」
(大汝峰と劔峰(火の御子峰)は東西に相対し,その間は奥深くして谷を作る。即ち地獄谷である。岩石や砂や角ばった石があり,その色は赤黒い。硫黄は甚だ多い。真夏には炎が赤く烈火のようである。にわか雨がこれにそそぐと,濃い煙が天を巻き,その色は黄,白,赤,紫,黒を為す。風にたなびいて広がり,しばらくの間山の峰を埋める。)

<参考>
※中ノ川の左俣の仙人谷遡行時の記録はこちら(秘湯情報もあるよ)
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-2645350.html
※地獄尾根訪問時の記録はこちら
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-2622267.html

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コメント

こんばんは。
中宮道から地獄谷に雪渓は見えましたが、
想像以上に残ってたんですね…
2021/10/1 21:28
こんばんは!
中宮道からは雪渓見えてたんですね。楽々新道からは見えなかった(見逃してただけかも…)ので、油断してたらこの有り様でした笑 無事抜けられて良かったです。
中宮道の整備、お疲れ様でございます。好きな道なので、また歩いてみたいと思いました。
2021/10/1 22:06
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