ヤマレコなら、もっと自由に冒険できる

Yamareco

記録ID: 601955
全員に公開
無雪期ピークハント/縦走
積丹・ニセコ・羊蹄山

洞爺から岩内まで羊蹄山・ニセコ岩内連峰を越えて

2012年06月29日(金) ~ 2012年07月01日(日)
 - 拍手
体力度
10
2~3泊以上が適当
GPS
28:03
距離
105km
登り
5,940m
下り
5,933m
歩くペース
とても速い
0.50.6
ヤマレコの計画機能「らくルート」の標準コースタイムを「1.0」としたときの倍率です。

コースタイム

1日目
山行
0:00
休憩
0:00
合計
0:00
23:59
宿泊地
2日目
山行
17:28
休憩
1:19
合計
18:47
20:17
0
スタート地点
2:52
2:53
164
5:38
5:44
5
5:49
5:49
5
5:54
5:55
5
6:00
6:03
4
6:07
6:10
5
6:15
6:15
6
6:21
6:21
9
6:30
6:33
11
6:44
6:45
11
6:56
6:56
10
7:06
7:06
7
7:13
7:13
9
7:22
7:25
2
7:27
7:31
16
7:47
7:54
21
8:15
8:15
171
11:06
11:06
42
11:48
11:56
1
12:07
12:07
16
12:23
12:23
18
13:03
13:03
37
13:40
13:44
21
14:51
15:00
15
15:15
15:15
18
15:33
15:33
6
15:39
15:40
7
15:47
15:50
7
15:57
16:01
54
16:55
16:55
24
17:19
17:19
29
17:48
17:49
50
18:39
18:39
22
19:01
19:01
47
19:48
19:49
86
21:15
21:15
24
21:39
21:39
0
0:20
ゴール地点
またまた無茶苦茶長文です.

「羊蹄山4往復2011」を終えて,しばらくすると次の計画がいくつも頭に浮かんできました.計画を立てている時が最も楽しいときかもしれません.コースを設定し,実際にそこを走り,山々の姿が記憶に加わることで完成する壮大な作品.そこには美しさが必要です.当初,今度は,羊蹄山からニセコ・岩内連峰を走ろうと思っていましたが,スタート地点へのアプローチの問題がなかなかクリアーできず,悶々としていました.金曜日の仕事が終わってから向かって月曜日の仕事に間に合う公共交通機関がない.しかし,ふと,どうせなら岩内と洞爺,日本海と太平洋を繋げたらどうだろうと思いつき,一気に計画が形になっていきました.Sea to Sea beyond Summits in Hokkaido 2012.6.29-7.1の記録です.無事にやり遂げることが出来ました.

いつも通りに勤務をして,18時13分発JR特急北斗20号で,洞爺まで.少し遅れて8時10分に洞爺駅着.駅の前の道をまっすぐ行くと,そこが太平洋.太平洋に手を触れて,8時19分スタート.最初に向かう三豊トンネルは,全長1970m,2005年に開通.洞爺から,洞爺湖畔に抜けるルートを検討していて,発見した時,これだと思いました.海岸からの洞爺湖畔までの最短ルートです.有珠山噴火時の避難所も兼ねているため,歩道が広く出来ていることも,あらかじめ確認済み.ただ,夜なのに非常に車の往来が多く,やかましい.一刻も早く,通り抜けたくて,足早になります.

23時過ぎに,洞爺湖畔道路に入りました.通り過ぎる車は,ほとんどありません.こんな夜中にヘッドライトをつけて走っているのを見たら,ドライバーはびっくりしますね.ヘッドライトの照度は,最低にして,少しでも明るい場所ではこまめに消灯します.洞爺湖湖畔は,ロードですが,途中,蛙の鳴き声が賑やかに聞こえたり,なんとなくのどかで,なかなか楽しめました.

とうや・水の駅についたのが,22時30分.スタートしてから2時間ちょっとで良いペースです.洞爺寺横の坂道を上り,林道に近い砂利道で,大原に抜けます.洞爺町からルスツへ向かう最短ルート.地図に載っていない道が分岐したりしているので,GPSで慎重にチェック.大原の手前くらいから霧がかかり,数メートル先しか見えません.一度,霧の国道230線に出て,再び,車通りの少ない道へ.ここも入り場所を間違えました.こういう時,GPSって本当に便利ですね.その後,貫気別川を越えて,黒田を通り,ルスツに向かいますが,
ここが,長かった,霧で,前が見えないし,走っても走っても,ゴールが見えない感じ.

ルスツ到着が午前1時.ルスツも霧.LAWSONルスツ店.カフェラテとチオビタドリンク一気飲み.一度,出てから,恐る恐る,ボトルに水を入れてもらえませんか?と頼んだら快く入れてくれました.羊蹄山に備えて,ルスツのふるさと公園で水を補給するつもりだったんですが,ルートから少し離れているので,ここで入れてもらって良かった.この時間に,開いていると思っていなかったので,「開いてて,よかった!」手がかじかんで,気がつかないうちに,うまく動かせなくなっているので,montbell Windshell glovesを装着.手袋も上手にはめられないくらいにかじかんでいた.

ルスツからは,尻別岳西側の道をひたすら北上.ここも全く車が通りません.12時頃は,眠いわけではないのですが,頭も身体も,すっきりさえない感じがしていましたが,1時過ぎて,2時頃になると,モードが完全に切り替わったのか,全く眠くないし,このまま巡航速度で,いつまでも走り続けることができるような感じ.満天の星空の下,ひたすら走り続けます.朝が近づくと,羊蹄山もぼんやりとシルエットを表し,気持ちが高ぶります.

羊蹄山は喜茂別登山口から登ります.登山口には,羆がいないはずの羊蹄山に熊出没情報.「気をつけてください」と言われても,最も熊が濃そうな時間帯に一人で入山しようとしている,この状況で,どうしろというのだ.熊鈴を頼りに進むしかない.入山者名簿は,かなり迷いましたが,やっていることが尋常ではなく,ここに戻ってくるわけでもなく,万が一,捜索騒ぎになっても嫌なので記載せずに通過しました.最短で,登山口にアプローチしたかったのですが,地図に記載している点線の道路は,笹刈りがされておらず,通行できないようだったので,仕方なく,迂回.登山道入り口が,既に2時52分.さらに,本来直進できるはずの登山道を発見できず,林道に入ってしまい,ことごとく遠回り.なんとなく去年と道が違うなあと思いつつ,そのまま進んでしまった.判断が甘い.夜明け前の,羊蹄山喜茂別登山道.3時5分.空が白み始めています.羊蹄山ピーク到着を4時と考えていたので,約1時間遅れ.ようやく正規の登山コースに合流.3時38分.ピークに辿り着く前に,日が昇ってしまいました.でも,雲海と尻別岳は美しい.
午前3時.喜茂別コースは,何合目かの表示がないのと,ひたすら登りがつらいので,最もきついルートです.昨年の4往復目ほどではないにせよ,今年も,けっこうこたえたので,途中で,カットパイン.最高に美味しい.この後も,ピンチの時に何回も助けられました.振り返ると,尻別岳,洞爺湖,そして太平洋.だいぶ高度が上がりました.あと少し.

5時39分.羊蹄山ピーク.1898m.先のことを考えれば,2時間40分は,まあまあのスピードでしょう.先客はたった二人.朝ご飯は,モリモトの珈琲アンパン.美味しいパンなのに,疲れている時は,いまひとつでした.倶知安コースへの下山開始が午前6時.今回は,倶知安コース上部の花が一番きれいでした.これ以降,花を撮影したりする余裕が急速に失われていきます.
倶知安登山コースは,比較的固い道に浮き石が多いので,羊蹄山の下りコースで最も要注意の道です.今回も1回,かなりひどく右足首を捻りましたが,テーピングのおかげでダメージはありませんでした.

これから向かう,ニセコアンヌプリ,目国内岳などニセコ連峰を雲海の向こうに望みながら下山.倶知安登山口に着いたのは,7時45分.モリモトのクリームパンもあの美味しさを感じることが出来ない.先に進みます.背後に羊蹄山,前方にアンヌプリを望みながら舗装道路を進む.日差しが強い中,のどかなニセコの畑を見ながら進みますが,これがまた遠い.
ヒラフのセイコマートで,再び,カフェオレを補給し,日陰で,日焼け止めを塗り,アンヌプリを登り始めたのが,9時15分くらいでしょうか.ゴンドラ横の清水は,工事のため使えず,仕方ないので,ニセコアルペンのトイレで,550mlのペットボトル2本に水を補給.強い日差しの中,永遠に続くかと思う,作業用階段をひたすら登っていきます.

ニセコアンヌプリのピーク 1308m が,11時6分.山頂は,人だかり.かなりへばってきました.とにかく暑い,風があるのが救いです.当初は,羊蹄山あるいは,少なくともニセコアンヌプリまでたどり着けば成功を確信できると思っていました.しかし,実際は,この段階でも先が見えず,さらにこの後,混沌となっていきます.ひとつひとつは,いわゆる初級の山でも,それが10山以上連続するとなると話は違ってきます.ニセコ連峰全山縦走の記録でも,みんな早朝に出て,日没にかかっていますから,この時点で,11時と言うことは,後半は,夜間行動になるでしょう.でも,それは想定内.前に進むだけ.

ニセコアンヌプリから望むこれから越えていく山稜.イワオヌプリ,ニトヌプリ,チセヌプリ,シャクナゲ岳,白樺山,前目国内岳,目国内岳,岩内岳,幌別岳,雷電山,前雷電山,中山が一望.

ニセコアンヌプリ下山,11時48分.キャンプ場で,たっぷりと水を飲み,ペットボトルに水を補給.暑さも厳しく,かなり疲れています.実は,この地点が,リタイヤして,自力で帰ることができる最終地点.これ以降は,万が一,リタイヤした場合は,なんとか国道まで出てきて,ピックアップしてもらう必要があります.疲れていても,まだまだ行けます.ここでリタイヤするなんてあり得ません.

しかし,次のイワオヌプリは,今回,一番きつかったかもしれません.大勢の下山者とすれ違いますが,道を譲るエネルギーがありません.もちろん,登りのこちらが優先と言えば,そうなのですが,笑顔も見せることが出来ず,かろうじて,「今日は」と挨拶するだけ.途中で,何度も引き返そうかとも思いましたが,なんとか奥まったピークに辿り着きました.イワオヌプリ,1116m.12時42分.

ロープでイワオヌプリの急な下りを下った後は,比較的走りやすい道が続き,少し,元気が出てきました.ニトヌプリ,1080mは,13時40分.イワオヌプリの後は,その後,誰一人として登山者に会いませんでした.多分,この日,ニセコ連峰山中にいた人間は,限りなく少なかったと思います.

その後,暑さのため,水分摂取が多く,水が欲しくてたまらなくなってきました.キャンプ場で補給した水だけでは,後半,どう考えてもたりません.節約して,ほとんど飲まずにいたら,ニトヌプリからパノラマラインに降りる頃には,もう,のどの渇きでどうにもならなくなってきました.パノラマラインの駐車場に降りてみると,名古屋ナンバーの道内をキャンプで回っている雰囲気の人が,休憩していました.「水を分けてもらえませんか?」とお願いすると.快く,1Lくらい残ったペットボトルの水を分けてくれました.それだけではなく,未開封のお茶を開け,好きなだけ飲んでいいよと...
飲んでも,飲んでも身体が要求する感じ.お茶をたっぷり飲んで,しばらく足を伸ばして,休んだら,チセヌプリに登る元気が少し出てきました.水をペットボトルに足し,さらにマルトデキストリンを飲み終えたHydrapak Soft Flask 237ml 2本にも入れました.今回の最大のミスは,この部分の水計画でしたね.五色温泉のキャンプ場で,最低でも2L,あるいは3Lは給水するべきでした.そのためには,ハイドレーションパックを持ってくる必要がありました.幸い親切な人に水を分けてもらえたから良かったものの,その幸運に恵まれなければ,計画自体が頓挫した可能性が非常に高い.幸運に計画を依存させてはいけません.
まあこれも冒険です.

チセヌプリのピーク1134.2mは,14時50分.チセヌプリからシャクナゲ岳の道は,あまり記憶に残っていません.等高線を見ると,比較的,走りやすかったと思うのですが.登山道からシャクナゲ岳へのピストンは,急斜面の岩場,距離的には,たいしたことはなさそうですが,今の疲労の度合いとゴール時間との兼ね合いを考えると,今回はパスするべきだろうかと迷いました.イワオヌプリの時も少し迷いましたが,シャクナゲ岳では,真剣に考えました.「撤退する勇気」という言葉が頭に浮かびます.でも,もしかしたら二度とこのような機会はないかもしれません.チャンスは一度だけでしょう.一度は,先に進みかけたのですが,やはり挑戦することにしました.決めてしまったら,カテコラミンが,分泌されて,火事場の馬鹿力というか,両手を使って,一気にガシガシと登りました.シャクナゲ岳,1074m.15時48分.
シャクナゲ沼横の登山道は,冠水もなく無事通行できました.振り返ってみたシャクナゲ岳は,形が,とてもきれいな山でした.白樺山,新見峠,前目国内岳,目国内岳,岩内岳.
まだ越えなければならないピークは,残っている.

白樺山のピーク 931m到着が,16時54分.ここも,なんとか先を急がなくてはという気持ちのせいか,ほとんど記憶に残っていません.日本海がしだいに近づいてきて,「よし!」と思いました.決して「後,少し」とは,思いませんでしたが.

新見峠は,前目国内岳,目国内岳への登山口.いよいよ最終核心部です.しかし,身体は疲労困憊.手も筋痙攣を起こして,ストックが持てません.芍薬甘草湯を飲み,マルトデキストリンを補給し,切り札のカットパインを食べます.石にかじりついても岩内まで辿り着くという言葉が,頭の中で,繰り返されます.前目国内岳ピーク 980.4mが,17時50分.前目国内岳までは,比較的あっさり到達しましたが,目国内岳は,遙か彼方です.辿り着く頃には,日が落ちているでしょう.前目国内岳から目国内岳を望むと,目国内岳の後方に岩内岳から1073ピークに連なる稜線が続きます.

目君内岳ピーク1220m(1202.3m),18時33分.びっくりするような岩場.本当は,じっくり眺望を写真に収めたいところですが,全く余裕がありません.少し,気を取り直して,今日登ってきた山々を振り返ると羊蹄山がぼんやりと見えています.目国内岳から1073ピークの稜線を望むと,まだ,残雪がだいぶ残っています.それが何を意味するのかこの段階では,全くわかっていませんでした.

パンケ沼.日没後ですが,残光が美しい.パンケメクンナイ湿原の登山道は,あらかじめぴよしろうさんに教えていただいた通り,冠水していたので,あらかじめ用意しておいた,ビニール袋を履いて突破しようと試みたのですが,あっさり浸水して失敗.冷たい雪解け水に足はびしょ濡れになってしまいました.
冠水部に到達した時に,「よし!ここだ」と勇んで,ビニール袋を装着.ブログのための写真も撮影.タイトルは「パンケメクンナイ湿原ビニール袋作戦,成功!」だったのに「パンケメクンナイ湿原ビニール袋作戦,失敗...」水に入って,何歩か歩いたら,水圧で,ビニール袋がずれて浸水してしまいました.疲れていたせいもありますが,本当は,心の中で,失敗を望んでいたのかもしれません.(ブログのうけ狙い?)すそをしっかりと絞って突入するべきでした.水抜けの良いトレイルランニングシューズで,Finetrack フラッドラッシュスキンメッシュソックスにウールのSmartwool PhD Outdoor Medium Crew重ね履きですから,足下が濡れるのは想定内.

しかし,本当のピンチは,この後でした.1073ピークの大雪渓です.雪渓と言うより氷の塊です.Montrail Rogue Racerのようなトレイルランニングシューズでは,まったくグリップしません.注意深く氷上をトラバースしようと試みましたが,途中で滑って,結局,一番下の笹藪まで滑落しました.雪渓をトラバースするのは諦めて,笹藪沿いの部分を歩きますが,それでも何回も転んで,手も足も泥だけです.さらに,登山道が覆い隠されているので,正しいルートもわかりません.登山道以外は,笹とハイマツのブッシュなので,下手をすると雪渓から脱出することも出来なくなります.幸い,前方に岩内岳が見えていて,そこに向かって登山道が延びているはずなので,それを目安に進み,なんとか登山道を発見しました.雪渓通過には,35分くらいかかったのではないかと思います.通過したのが,19時34分.

雪渓を脱出して,残るは,岩内岳,幌別岳,雷電山,前雷電山,中山.岩内岳は,一度,逆方向に進まなければならないので,ここに向かえばさらにゴールが遅くなりますが,ここまで来たら,行くという選択肢しかありません.再び,カテコラミンを全開にして,転げるように走っていきます.岩内岳ピーク1085.3m,19時50分.午後から,強くなってきた風が,岩内岳ピークでは,まさに暴風.ハイマツにしがみつきながら移動しないと,そのまま身体を持って行かれそうになります.万が一,ヘッドライトを飛ばされたら,行動不能に陥るので,ジャケットのフードを深くかぶり,ドローコードをしっかりと絞り込みます.
岩内岳から見る日本海は,美しいのでしょうが,そちらに目を向ける余裕さえありません.
早々に,岩陰に避難し,頂上標識だけ写真に収めました.
風に飛ばされそうになりながら下山.

ピンチは続きます.岩内岳を登頂後,比較的走りやすい登山道を快調に飛ばし,1073ピークを越え,幌別岳の登りにさしかかった時にひんやりとした空気を感じ,次の瞬間,川になった登山道に足を踏み入れていました.幌別岳(1174ピーク)への登りは,完全に川のような状態.再び,靴は冷たい水でびしょ濡れです.そして,その水の源は,再び雪渓.幌別岳の斜面に雪渓が広がっているのです.登りきるとそこに広がる雪渓.既に,暗くなっており,雪渓の全容がはっきりしないので,登山道を発見できるか,全くわかりません.
GPSで確認しながら,雪渓を通過します.暗くて,雪渓の下限がわかりませんが,かなりの幅.今度ばかりは,滑落したら,登り返してリカバリーできない.そもそも大怪我するかも.慎重に雪渓の上端を進みます.でも,白状すると,本当は,予期せぬ展開に,心底うれしくなっていました.疲れ切っていたはずなのに,頭が澄み切って,すごい勢いで情報を収集し整理します.この状況を乗り切るにはどうしたら良いか.だから冒険はやまられません.慎重にかつ大胆にルートを選択し,幌別分岐への道に至ることが出来ました.
幸い,登山道を発見.「山と高原地図」の記載通りのルートでした.冷静に考えれば,雪渓を滑り落ち,遭難する危険性もけっこうあったかもしれませんが,それも含め,極めて慎重にかつ大胆にルートを選択し,幌別分岐への道に至ることが出来ました.後から地図を見ると,この部分に雪渓が残ることは,予測可能で,登山道を川にして,最低部からパンケ沼に流れ込むのも明らかでした.まだまだ地図読みの力が足りません.それに,そもそも,目国内岳から,岩内岳,1073ピーク,幌別岳の山腹の雪渓は見えていました.

とにかく,少しでも先を急ぎます.しかし必死で先を急ぐのですが,もう,この辺になると疲労困憊です.水も,ほとんどなくなりました.幌別岳を,過ぎると,地図上は,比較的平坦に見えるのですが,ごくわずかな登りでも,足が前に進みません.何回も,このまま投げ出して,楽になりたいという気持ちがわき上がりかけますが,即座に打ち消します.身体が動く限り,前に進み続けるしかありません.単なる遊びで,捜索隊が出たり,ヘリが出たりして,みんなに迷惑をかけたらいい笑いものです.
雷電山ピーク,1211.7m.21時15分.前雷電山,1203.6m.21時36分.中山,841m.22時44分.

さらに過酷を究めたのは,下りです.ここまで兇悪な悪路は初めて経験しました.ハイマツが,足下を覆い隠し,さらに入り組んだハイマツの枝と根が,地面を縦横に走っていて,足を取られて転倒します.ハイマツの落ち葉が堆積して,それに滑って転んだりもします.何回,転んだかわかりません.むき出しの足は傷だらけ.顔面から突っ込んだこともありましたが,ヘッドライトで守られて,幸い眼鏡は大丈夫でした.ひたすら前に進みます.相当,遅い時間なのはわかりますが,もう時間の感覚もはっきりしません.岩内岳から,中山までの区間に3時間かかっています.

しかし,どんなにつらい時も必ず終わりがあるのです.最後の最後で,ようやくハイマツが減っていきます.そして,雷電峠分岐.
もうゴールしたようなものです.(でも,違いました...)
朝日温泉跡12時近く.しかし,まだ,ここはゴールではありません.最後の力を振り絞って,林道を走ります.ノドはからからで,足も痛いけれど,走ります.しかし,朝日温泉への林道ってこんなに長かったっけ...おまけに,後は,全て下りだと思っていたのに,以外と登りもあったりします.でも,地図で確認したら,その通りでした.(当たり前)

そして,波の音.日本海です.
土曜の夜8時に,太平洋にタッチして,北海道を横断して,ここに辿り着きました.
最高に,大変でした.今回ばかり,同じ事は,もう出来ないと思います.
足は,傷だらけ,足を伸ばして海岸に座ったら,もうまともに歩けなくなっていました.

12時20分ゴール.総距離104.5km,累積標高 6950m.
所要時間は,なんと28時間.

ゴールした時にすぐに気がつき,笑ってしまったこと.海岸は,砂浜ではなく,ゴロタ石でした.何の根拠もなく砂浜と思ってました.とても海岸では,野宿できないので,歩道で寝て,朝になったら冷たくなっているところでした.
応援のため朝日温泉まで来てくれていた知人が,親切にも家まで送ってくださったので,本当に助かりました.
今回のチャレンジは,想像以上に過酷でした.単独(ソロ)のチャレンジでは,安全のために,常に余裕を持った状態であることが必要だと思っています.一か八かという計画は無責任です.それが,今回は,結果的には,全く余裕がなくなりました.幸い,事故もなく,無事に帰ってくることが出来ましたが,チャレンジの後半で,なにかトラブルがあれば,行動不能に陥っていた可能性が非常に高い状態でした.昨年の羊蹄山では,いざとなったら,骨折しようが,這ってでも下山するから大丈夫と思っていましたが,今回,ニセコ連峰の山中で,捻挫したり,骨折したりしていたら,その時点で心が折れてしまったかもしれません.そうじゃないかもしれないし,わからないのですが...
けれど,ビバーク装備を持ち,安全確保はしていました.結果的には,シュラフとシェルター,マットは使いませんでした.最初から持って行かなければ,だいぶ装備は軽量化されて,もう少し,行動にも余裕が出来たかもしれませんが,次のチャレンジに向けての予行演習という意味合いもあったので,持っていたことを後悔はしていません.それに万が一,本当に行動不能に陥った時,ビバーク装備がなければ命にかかわることもありますから,持って行ったのは正しい選択でしょう.岩内の山中で,一時的に行動不能になったとしても,一晩,身体を休めれば翌日にはまた行動を開始できます.金曜日スタートなので予備日も1日あり,月曜の勤務に支障が出ることもありません.限界ギリギリの挑戦だったからこそ得られたものもあるわけだし,多分,あんまり懲りてない気がします.時間が経つにつれて,次第に苦痛は忘却され,いい記憶だけが残ります.

完走賞もフィニッシャーズベストもありませんが,自分をちょっとほめてあげたいと思います.

冒険は終わりました.さあ,つぎの挑戦は?
To be continued.
天候 晴れ
過去天気図(気象庁) 2012年06月の天気図
アクセス
利用交通機関:
電車
装備は最小限.
18時13分札幌発JR特急北斗20号,8時10分に洞爺駅着.
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18時13分札幌発JR特急北斗20号,8時10分に洞爺駅着.
駅の前の道をまっすぐ行くと,そこが太平洋.太平洋に手を触れて,8時19分スタート.
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駅の前の道をまっすぐ行くと,そこが太平洋.太平洋に手を触れて,8時19分スタート.
三豊トンネルは,全長1970m.
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三豊トンネルは,全長1970m.
23時過ぎに,湖畔道路.
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23時過ぎに,湖畔道路.
ルスツ到着が午前1時.ルスツも霧.
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ルスツ到着が午前1時.ルスツも霧.
羊蹄山のシルエットが浮かぶ
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羊蹄山のシルエットが浮かぶ
喜茂別登山道入り口,2時52分.熊注意と言われても...
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喜茂別登山道入り口,2時52分.熊注意と言われても...
夜明け前の,羊蹄山喜茂別登山道.3時5分.
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夜明け前の,羊蹄山喜茂別登山道.3時5分.
空が白み始めています.
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空が白み始めています.
ようやく正規の登山コースをに合流,3時38分.
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ようやく正規の登山コースをに合流,3時38分.
ピークに辿り着く前に,日が昇ってしまいました.
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ピークに辿り着く前に,日が昇ってしまいました.
雲海と尻別岳が美しい.
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雲海と尻別岳が美しい.
洞爺湖,そして太平洋.
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洞爺湖,そして太平洋.
羊蹄山ピーク(1898m)5時39分.
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羊蹄山ピーク(1898m)5時39分.
倶知安登山コースを下山.
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倶知安登山コースを下山.
倶知安登山口に着いたのは,7時45分.
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倶知安登山口に着いたのは,7時45分.
羊蹄山を振り返る.
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羊蹄山を振り返る.
ニセコアンヌプリ.
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ニセコアンヌプリ.
永遠に続くかと思う,作業用階段をひたすら登る.
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永遠に続くかと思う,作業用階段をひたすら登る.
ニセコアンヌプリ(1308m )11時6分.
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ニセコアンヌプリ(1308m )11時6分.
ニセコアンヌプリから望むこれから越えていく山稜.
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ニセコアンヌプリから望むこれから越えていく山稜.
イワオヌプリ(1116m)12時42分.
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イワオヌプリ(1116m)12時42分.
ニトヌプリ(1080m)13時40分.
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ニトヌプリ(1080m)13時40分.
チセヌプリ(1134.2m)14時50分.
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チセヌプリ(1134.2m)14時50分.
チセヌプリから,シャクナゲ岳,目国内岳,岩内岳,そして日本海.
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チセヌプリから,シャクナゲ岳,目国内岳,岩内岳,そして日本海.
シャクナゲ岳(1074m)15時48分.
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シャクナゲ岳(1074m)15時48分.
シャクナゲ沼からシャクナゲ岳.
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シャクナゲ沼からシャクナゲ岳.
白樺山(931m)16時54分.
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白樺山(931m)16時54分.
16時22分.白樺山,新見峠,前目国内岳,目国内岳,岩内岳.
まだ越えなければならないピークは,残っている.
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16時22分.白樺山,新見峠,前目国内岳,目国内岳,岩内岳.
まだ越えなければならないピークは,残っている.
前目国内岳(980.4m)17時50分.
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前目国内岳(980.4m)17時50分.
前目国内岳から目国内岳を望む.
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前目国内岳から目国内岳を望む.
目国内岳の後方に岩内岳から1073ピークに連なる稜線.
1
目国内岳の後方に岩内岳から1073ピークに連なる稜線.
目君内岳ピーク1220m(1202.3m)18時33分.
2
目君内岳ピーク1220m(1202.3m)18時33分.
今日登ってきた山々を振り返る.
1
今日登ってきた山々を振り返る.
パンケ沼.残照.
1
パンケ沼.残照.
パンケメクンナイ湿原ビニール袋作戦.
2
パンケメクンナイ湿原ビニール袋作戦.
パンケメクンナイの大雪渓.
1
パンケメクンナイの大雪渓.
岩内岳(1085.3m)19時50分.
1
岩内岳(1085.3m)19時50分.
雷電山(1211.7m)21時15分.
1
雷電山(1211.7m)21時15分.
前雷電山(1203.6m)21時36分.
1
前雷電山(1203.6m)21時36分.
中山(841m)22時44分.
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中山(841m)22時44分.
12時20分ゴール.日本海.
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12時20分ゴール.日本海.
足は,傷だらけ.
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足は,傷だらけ.

装備

個人装備
HAGLOFS Gram Comp 25.425g

Polar G5 GPSセンサー(micro USBで充電
持続:20時間)
eTreX 30 バッテリー25時間:単3リチウム電池2本 
PRO TREK PRG-110CJ-9JF 

Cyber-shot DSC-RX100
iPhone4S
PHS
Bose MIE2i(結局使わなかった)

Energizer単3リチウム電池 5本(eTreX 30用2本
MYO XP用3本)
SANYO KBC-L27D(3.7V2700mAh) 2個:iPhone
Cyber-shot DSC-RX100 Polar G5 GPSセンサー用
USB-A型/USB-micro-B型コード1本
iPhone充電コード1本

PETZL MYO XP 175g(単3リチウム電池3本)
Petzl Signal 22g

Black Diamond Spotlight Bivy.487g
Minimalist Pad 53g
Sky High Bag 300 SPDX860FP sax blue regular
596g

Outdoor Research Echo Cap Glacier
Icebreaker GT150 Short Sleeved Velocity Zip Force/Panther Stitch
4DM ウルトラライト ハーフタイツ
Icebreaker GT200 Long Sleeved Chase Zip Panther/Force
Rab Kinetic Pants Pertex Shield +
180g
Rab Alpine Jacket Pertex Equilibrium
290g
Finetrack フラッドラッシュスキンメッシュソックス
Smartwool PhD Outdoor Medium Crew
Smartwool PhD予備ソックス
Montrail Rogue Racer(Streakの方が良かったかもしれませんが
ソールに泥がべったりついて固まってました.洗うの忘れてた...)
Salomon OrthoLite
Outdoor Research Flex-Tex Gaiters
montbell Wind Shell Gloves
Black Diamond Ultra Distance Z-pole 110cm(265g)
地図
Hydrapak Soft Flask 237ml マルトデキストリン.4本.400-500g(1500-1900kcal).
カフェイン入りカーボショッツ(カフェイン80mg
117Kcal) ワイルドビーン 3袋 グリーンプラム 3袋
WGHPro 5袋
モリモト クリームパン2個
コーヒーあんパン2個
カットパイン ジップロック2袋
南アルプス天然水 p-ecot bottle 550ml 2本

ロキソニン4錠.
芍薬甘草湯6包.
桂枝人参湯2包

熊鈴
MSR Pack Towl Personal M 30g
ティッシュ.コンタクトレンズ3セット
眼鏡
眼鏡ケース 眼鏡クロス 目薬 日焼け止め
ルーペ
ビニール袋2枚

現金
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コメント

凄すぎます。
snufkinjrさん

最初に経路を見た瞬間、「まじ、ヤバイ!」と声をあげてしまいました。

すっかりこのシリーズに見いられてしまいました。

考えもつかない壮絶な記録です。
まるでトランスジャパンの北海道バージョンの様です。

現地では文章では表現できないような思いも多々あったのではないでしょうか。

本当に完走、成功おめでとうございます!
2015/3/18 21:42
Ei-taroさん
週末冒険家のシリーズ楽しんでいただけてますか.
「トランス北海道」は,もう1回は出来ないかもしれません...
でも,尻別岳の喜茂別ルートが復活したので,尻別岳を加えて再挑戦というのもちょっと魅力的です.
2015/3/18 22:49
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