クラシックラッセルドロボー、檜尾岳!!
- GPS
- 13:54
- 距離
- 19.4km
- 登り
- 1,960m
- 下り
- 1,946m
コースタイム
- 山行
- 12:35
- 休憩
- 1:19
- 合計
- 13:54
天候 | 晴れ、風も予報より弱め |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2023年11月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
思いの外雪深し。特に2400mを越えてから、重く膝まで潜り込む雪が体力と時間を奪う。 |
写真
感想
最近普通の山行がめっきり減ってしまった。先週の土日は、神奈川県立山岳スポーツセンターでリードクライミング講習を受けた。80歳の久保田先生のしなやかな動きを見て驚いた。聞くところによると、クライミングは生涯スポーツになりうるようだ。力と身長のなさをムーブで補う。正に経験がものを言う世界だ。ちなみに久保田先生(男性)は156センチだ。
11月3から4日で早月劔をやってからどこにも行っていない。次の土日も県連の講習で両方埋めてしまった。そんな時、ふとカレンダーを見ると23日が勤労感謝の日なことに気が付いた。「金曜に有給を取れば木金でどこかに行けるな...」。翌日の県連の講習は近場かつ机上講習なので、木金で疲弊しても問題ない。やはり月に2回はしっかりとした山行をしたいので、計画を練ることにした。今回は同じ山岳部で異色キャラのTさんを誘ってみた。彼もたまたま予定が空いていて、色々ルートのアイデアを出し合った。お互い色んな所に既に行ってしまっているので、なかなかルートが定まらない。しかし、最後は僕の意見を半ば強引に受け入れてもらった。決まったルートはこうだ。
初日
黒川平から檜尾尾根で檜尾岳、そのまま稜線を歩き宝剣岳に登頂し、駒ヶ岳頂上山荘に幕営
2日目
朝一、木曽駒ケ岳山頂でモルゲンを楽しみ、将棊頭山に登頂して、桂小場に下山
9月の頭に伊奈川ダムから空木岳以南の周回をした。その時、本当は檜尾岳まで足を伸ばしたかった。しかし、どう頑張っても1泊2日の行程では難しく、泣く泣くスキップした。それ以来、そんなに遠くない将来に檜尾岳行かねばと思っていた。最近キレイになった檜尾避難小屋も見てみたかった。
しかし、日程が迫るにつれ、天気が怪しくなってきた。特に24日は大荒れになる予報だった。「行くか行かないか22日の天気予報で判断しましょう」とTさんと決めた。そして、22日のヤマテンでは「明け方〜早朝と夜を中心に吹雪く時間がありそう。越百山以北の稜線では西寄りの暴風となる」との予報が引き続き発表された。「これは完全にアカンやつやな...」。Tさんと相談した結果、23日は風は強めだが好天予報だったので、お互い行ったことのない檜尾岳ピストンの予定に変更することにした。
「午前5時半頃集合にしますか?」とTさんにLINEした。すると「5時でもいいですよ」と返事が返って来た。もともとの行程を決める時、僕が5時スタートを提案すると「もう少し遅くしてもらえませんか?」とTさんに言われていたので、彼の「5時でもいいですよ」という返事に少し違和感を覚えた。しかし、僕も早出は望むところなので、「では、5時に黒川平集合にしましょう」。ちなみに、道路の左手にある黒川平臨時駐車場はロープがかかっていて入れないが、そこを通り過ぎ「マイカー規制」の看板を無視して少しだけ直進すると、向いが発電所の道路の左手に数台分の駐車スペースがある。
地図を見ると、檜尾尾根は距離も短く、特に危険だという情報もなかった。帰りは、檜尾岳登山口近くに檜尾橋バス停があり、上手くいけば長い林道歩きを回避できる。バスの最終は午後4時36分で、当然余裕でその時間には帰って来られると思っていた。
完全に間違っていた
Tさんはそれを分かっていて、「5時でいいですよ」と僕に提案したということを後で知ることになる。
午前5時に黒川平に到着するには、自宅を2時には出ないといけないので、午前1時半に起きた。家族の生活音に邪魔され、2時間ほどしか睡眠を確保できなかった。今週はそもそも毎日睡眠時間が5時間ほどだったので、中々に辛い。起きてすぐキッチンに行きBalmudaでお湯を沸かす。先週末に大雪が降ったはずなので、今回はリアル雪山を想定し、久々にテルモスの山専用ボトル900mlでお湯を持っていくことにした。また深雪のリスクを考慮し、ワカンも用意した。
自宅を予定通り出発し、駒ヶ根インターを午前4時39分に降りた。黒川平はインターからものすごく近い。やはり、中央アルプス駒ヶ岳ロープウェイがあるから駒ヶ根インターはこの場所にできたのだろうか?実は、当初の待ち合わせ場所は黒川平ではなく、菅の台バスセンターの川向いにある森と水のアウトドア体験広場内の駐車場だった。しかし、インターを降りてLINEを確認すると、Tさんから「黒川平のゲートの左側の駐車スペースに止めました」と連絡が入っていた。どうやら、駐車場は閉鎖されているものの、すぐ近くに止められる所があるようだ。「そこに行きます」とLINEに返信した。
インターからナビに従い中央アルプス通り(県道75号線)を走り、駒ヶ根橋を渡り、黒川平臨時駐車場(道路の左手)の前にやって来た。確かにロープが張られていて、中には入れない。僕はこの辺りに駐車スペースがあると思っていたのだが、それらしいスペースは見当たらなかった。ゲートはないものの、臨時駐車場のすぐ先には大きな看板が立っていて、「車両通行止め」とあった「駐車スペース、ないな〜...」。しばらく右往左往したものの、全く場所が分からないのでTさんにLINE電話した。すると、「その看板を無視して先に進むと発電所がありますので、その向かいです」。言われた通りに進むと、すぐにTさんの車が見えて来た。数台分の狭いスペースだったが、彼の車が1台止まっているだけだった。すぐ隣にジムニーを付け、挨拶をしに行く。お互い朝食を食べ、荷物をまとめ車の外に出た。僕はツエルト代わりにクロスオーバードーム2Gを持って来ていたので、2人で相談し、もしもの時の為に、Tさんはガスを持っていくことにした。これで最悪ビバークになっても大丈夫だ。
午前5時23分にスタートした。空を見上げると満天の星空だった。僕はスタートがブラックなのはいつものことだが、Tさんは明るくなってから出て、明るい内に行程を終えるという、最も理想的な山行しか普段しないらしい。今回は欲張りな行程を希望した僕に合わせてくれたようだ。駐車場(標高921m)から檜尾登山道入口(標高1199m)まではアスファルト道路を1時間程歩く。途中で夜明けを迎え、道路の開けたカーブから塩見岳を中心に南アルプスの山並みがキレイ見えた。2人で話しながら登っていたので、あっという間に登山口に到着した。登山口の少し手前には「檜尾橋」バス停がある。菅の台バスセンターとしらび平(ロープウェイ乗り場)を結ぶ路線バス(駒ヶ岳ロープウェイ線)の途中駅だ。この時期の檜尾橋の最終は午後4時36分だ。
登山口からはものすごく急な石階段を登る。そこからは普通の歩き易い登山道だった。引き続きずっと話ながらどんどん進んで行く。雪は1600mあたりから出てきて、1700mを超えた辺りで完全に雪道になった。しかし、まだ沈み込むような雪ではなく、引き続きツボ足で全く問題がない。赤沢ノ頭(1991.9m)を越え、2300m辺りに来た所で、雪も深くなり傾斜もキツくなって来たのでアイゼンを装着した。また同じタイミングでストックからピッケルにチェンジした。Tさんは引き続きツボ足とストックのままで行く。この辺りまでは極めて順調で、帰りのバスにも余裕で間に合うと思っていた。
様相が変わり始めたのはシャクナゲのピーク(2440m)の辺りだった。2300mくらいから徐々に雪が深くなってきていた。幸いトレースはあったものの、しっかり踏み固められたトレースでなく、その深い足穴に足を入れても体力をそれなりに持っていかれる。何故だか分からないが、2400〜2500mはそれほどアップダウンはないにも関わらず、なかなか標高が上がらなかった。自分としてはかなり登っている感覚だったので不思議だった。足を取られる深雪と邪魔っけな木々のせいで非常に歩きにくかったせいかもしれない。途中チェーンスパイクだったTさんも、上がれない斜面が出て来たのでアイゼンを装着した。
結局、シャクナゲのピーク(2440m)から小檜尾岳(2660m)までが特に進まず、小檜尾岳に着いた時には12時47分になってしまっていた。赤沢ノ頭の辺りでは檜尾岳山頂で11時半くらいを見込んでいたので、大幅に遅れたことになる。確かに歩きにくかったとは言うものの、そこまで疲れていなかったので、単純にゆっくり歩き過ぎたせいかもしれない。やはり2人で歩いていると、ソロで歩いている時と比べどうしてもペースがゆっくりになってしまうものだ。今回の失敗は、普段ソロでしか歩いていない僕が、ソロの時間軸でデュオの行程を作ってしまったことにあった。
小檜尾岳からは檜尾避難小屋が見えた。小屋は小トップに建っていて、小檜尾岳より更に上にあった。少し下りまたそこそこの斜面を登り、やっと避難小屋に到着した。時刻は1時13分で、もう帰りのブラック下山も確定だ。今更急いでも仕方がないので、少し小屋で休憩する。小屋は小トップに建っているだけあって、眺望が抜群だった。ここでテント泊すると本当に気持ちいいだろう。10分ほど休憩し、檜尾岳アタックを開始した。小屋近辺は雪が少なかったが、少し下りるとすぐに深雪へと逆戻りした。特に序盤は先人のトレースも見当たらず、自分達でラッセルして行く。しばらく行くと、先人のトレースが横に見えたが、最後はまっさらな雪に自分たちの足跡を刻んでいく。まず直登気味に右に向かって進み、雪の浅そうなところから夏道登山道に合流した。その辺りも一部深雪ラッセルになったが、最後は歩き易い道に変わり、檜尾岳の山頂標識の前にやって来た。時刻は1時40分頃だった。予定より約2時間の遅れだった。山頂は風が強かったものの、眺望は申し分なく、深雪の中を登って来た苦労が報われる。こんな最高の天気なのに、誰もいない山頂をTさんと2人で楽しんだ。
山頂を後にし、今度はTさんを先頭に小屋に戻る途中、年配の登山者が登ってきているところに出くわした。彼は博物館にありそうなピッケルを持っており、かなりの経験者の様に見受けられた。今日は檜尾避難小屋に泊まっていくらしい。「やたらとトレースがしっかりだったので、ずっとツボ足で登って来たよ!」と彼は嬉しそうに言ったので、僕らは先人がいたことを伝えた。登りは僕がずっと先頭を歩いていたので、Tさんが「私は、ラッセルドロボーのトレースをドロボーしました!」とその年配の登山者に言うと、彼は「そんなこと言ったら、俺はドロボーのドロボーのドロボーだよ」。ノリのいい彼はいつまでも話していたそうだったが、ブラック確定の僕たちは適当な所で話を切り上げ、長い下山に取り掛かった。
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