塩見岳バットレス 滑走
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- GPS
- 32:00
- 距離
- 36.3km
- 登り
- 2,801m
- 下り
- 2,805m
コースタイム
- 山行
- 6:30
- 休憩
- 0:40
- 合計
- 7:10
- 山行
- 11:10
- 休憩
- 3:00
- 合計
- 14:10
天候 | 4月6日:晴 4月7日:晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2024年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
登りは一部乗れるがほぼ手押し。帰りは下り基調なのでほぼ漕ぎ無しで乗れる。 路面状況良くないのでロードはオススメしない。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
豊口山のコルまでは雪無し、その後は積雪あり。 桟道は一部凍結していてアイゼンが必要だった。 |
写真
感想
以前からの目標だった塩見岳バットレスを滑ってきた。
長い間滑られなかった理由はアプローチの遠さ、積雪期バットレスの情報の少なさ、北面ゆえに条件が掴みにくいことだろうか。自分たちもこの点についてはずいぶん苦労させられた。
今回は、それに見合う素晴らしいラインを引けたと思う。思うように山に入れなかったシーズンだけど、最後に良い山行ができて本当に嬉しい。
■4月6日(晴)
7:50冬季ゲート→9:10鳥倉登山口→13:00三伏峠→15:00 Co.2512(幕)
アプローチは色々と考えたが、歩きの記録が多く時間が読みやすいという理由で鳥倉林道へ。
林道を1.5時間ほど歩いて登山口へ向かうが、豊口山のコルまでは全く雪がなくアプローチシューズで進めた。ここから登山道は尾根の北側を巻くような形になり、片斜面に雪が残っていやらしい。念のためアイゼンを付け、ズボズボ踏み抜きながら4時間ほどで三伏峠。小屋明けで入山したと思しきトレースを辿ったのだが時間がかかった。ここからようやく板を履く。
板さえ履けばペースアップできると期待していたが、ここは幼木が多い上に樹間が狭くて登山道を外すことはできない。シラビソの枝の歓迎に閉口しつつ、時々板を手で持ちながら歩を進めた。
15時過ぎに良い地形を見つけたのでツェルトを張る。ここまで7時間、想定よりかなり時間がかかった。しかもこの感じ、帰りも時間を巻ける感じではない…。
下山はヘッ電が濃厚になってきたが、気にしてもしょうがないのでサッサと寝た。
■4月7日(晴)
5:10BP→6:10塩見小屋/7:10→8:30塩見岳/9:20ドロップ→10:10Co.2481/10:40→10:50C沢2400m→12:10塩見小屋/12:50→16:10三伏峠/16:30→19:10冬季ゲート
あまり早く山頂に着いても硬そうなので塩見小屋で1時間ほど休憩。小屋はGWの営業準備を始めているようだった。ここから山頂までは岩・雪のミックスで結構悪く、8時半ごろに山頂着。
バットレスを覗き込むと雪付きは問題なく、斜度も45°~最大50°程度と対応できそうな印象ではある。だが、雪面はわずかに緩んだ程度。露岩も多いラインなので今の状態で斜面に入るのはリスクが高い。緩み待ちのリミットを10時と決めて準備をした。
ハーネスにスクリュー、ハーケン、スノーバーを付け、背中にはアックスをアルペン差し。一つ一つの動作毎に緊張感が高まるが、未知の斜面への憧れをひしひしと感じる。
9:20、そろそろ行けそうな感じになってきたのでhatchが先頭で斜面にドロップ。まずは軽く横滑りで様子を探る。エッジから伝わる感触はまずまず。日射面を選べば問題なさそうだ。1ターン、2ターンと慎重にターンを繰り出す。出だしの感触は非常に良好で、気持ち良く滑ることができる。(と、この時は思っていた)
2ピッチ目。当初はスキーヤーズレフトの小ガリーに入るつもりだったが、上から覗くと繋がっているかよく分からない。スキーヤーズライト、塩見岳東峰から落ちるルンゼが綺麗に見えたのでそちらに移った。
さて、ルンゼに移ったは良いがこちらは方位的に日当たりが悪く、雪崩に磨かれたせいで全面がアイスバーンと化している。転倒が許される場所ではないのでしばらくは横滑りで高度を落とすが、日射を受けた所から落石が頻発して生きた心地がしなかった。
50mほど高度を落とすとようやくターンできるような雪質になってくる。ここに長居は無用とばかりに2人で急いで滑り、事前に目を付けていた小ピークのコルに乗り移った。これから下はデブリが多く、滑っても消化試合になるだけなので十分だろう。ここでドローンを飛ばし、滑ってきたラインを写真に納める。
あとはグサグサに緩んだC沢を登り返して塩見小屋へ復帰し、ようやくたどり着いた安全地帯で大休止。素晴らしい記憶を噛み締めながら下山した。
ついに塩見バットレスにシュプールを刻めた。
自分にトライする機会が巡ってきたこと、同じ目標を目指せる仲間がいること、全てが夢のような時間だった。
■メモ
・北面なので条件を掴むのが難しい。滑走を狙い始めた時はパウダーの時期も検討したが、アプローチの長さと雪崩リスクを考えると春で良かったと思う。
・下山が長いため、1泊2日で狙うなら10時頃が滑走リミットになる。2泊3日にすれば緩み待ちの余裕はかなり出てくるが、昇温と同時に落石が頻発する。どちらのリスクを取るかは考えもの。
■ドローンについて
バットレスを正面から捉えた写真はドローンで撮影した。
滑走前に飛ばすかどうかは2人で相談したが、情報を入れずに滑ることを重視して今回は滑走後のみドローンを飛ばす事にしていた。
後から写真を見る限り、別ラインの方が雪面コンディションは良かったと思う。攻めた滑りを追求するなら事前にドローンを飛ばしたほうが良かったのかも。
記録として写真を残したいという欲求・限られた情報の中でベストを探るという気持ち、その妥協点が今回の選択だったと思う。
山と向き合うと言う意味で今回の選択には納得している。
遂に塩見岳も、人に滑られて良いと考え始めたのかな、そう思えるような山行だった。
塩見岳バットレスで調べると出てくる14年前のブログ。
そこには御大こと三浦大介さんが4度もチャレンジした未知なる斜面があるとだけ書かれていた。
そんな回数チャレンジするということは、可能性があるのだろう。しかし、その遠さや情報の少なさなどから他の人が追従する様子は見られなかった。
自分がこの斜面を意識し出したのは2年前。北岳バットレスを滑った際に見た厳ついフェイス。全く可能性を見出せなかった。
その後にも近くを登山するたびに写真は撮っていたが、行けそうな感覚は無かった。
事態が加速しだしたのは今年の2月。SNS上に突然上げられた厳冬期バットレスの画像。
すぐに保存してラインを引く。残雪期の写真とも見比べて検討、、、これは行けそうだ!
あとはひたすらに機会を待つ。幸いにも今シーズンは登山でバットレスに入る人が現れて少し情報も集まった。
そして4/6。快晴無風、フリージングレベルが3000mな暖かい日が土日両方続く最高な週末がやってきた。
アプローチは、とにかく悪かった。
ブーツまで担ぐ重いシートラに踏み抜き地獄、登山道しか歩けない濃い藪と、スキー泣かせなアップダウン、、、
2日目はピッケルも弾かれる硬い氷の岩場。
果たして今回が無理だったらあと何回アプローチできるのか、自問自答しながら進んだ。
際どい氷のアプローチを経て稜線に出ると世界は一変した。
快晴無風。滑る斜面は日光に照らされて氷の溶けていく気配がする。
塩見岳に祝福されている気分になり、跳ねるように山頂に向かう。
山頂から覗いた予定していたラインはしっかりと東面で陽の光を浴びており、のんびりと準備したのちにドロップインした。
意気揚々とドロップインしたものの、滑りはギリギリであった。
少しでも日差しを受けていない面はカチカチ、日差しを受けていても雪付きが悪い箇所には氷瀑が露出していて気の抜けない横滑り。
さらに中間部以降は止むことのない落石が襲いかかってくる。幸い板に当たる程度で済んだが、壁に張り付きながらただただ祈るしかなかったあの時間は地獄のようだった。
滑りの終盤は流石に雪も緩み快適に飛ばす。あらかじめ目星をつけていた小尾根に乗っ越して安全を確保した時には感情が爆発した!!
今回滑ってみて、グレードは滑走S5-、リスクR2、登山Ⅱだと感じた。ただ、北面かつ標高も高く、これ以上の厳しさがある。
果たして第二滑走者は現れるのだろうか。あの厳しさを色んな人にも体験してもらいたい。
ドローンの記述がとても良いですね
オンサイトトライはやはり貴重!
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