美ヶ原 能の先生と達人の皆さんを案内
- GPS
- 04:53
- 距離
- 8.5km
- 登り
- 637m
- 下り
- 632m
コースタイム
- 山行
- 4:14
- 休憩
- 1:13
- 合計
- 5:27
天候 | 晴天 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2024年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
装備
個人装備 |
地下足袋+脚絆
焚き火セット
ノコギリ
弁当
水筒
軍手
ラテルネ
地図磁石
防寒具
雨具
|
---|---|
共同装備 |
ツエルト
|
感想
朝は一番の冷え込みで上着がないと寒い。この前まで猛暑の夏が続いていたのに。それでも天気は完全に保証の晴天だ。朝は冷えたので松本の上に雲海状に霧が載っていたが、常念と槍も鮮やかに見える朝だ。
急登二時間、急下降1.5時間ながらお能お仕舞で鍛えた足腰なので、メンバー9人は全く順調。小学校以来登山はご無沙汰の人や全く初登山の人もいるし、町の旅行者仕様の格好だけど問題なし。足腰ができていれば、標高差600mくらいはどうってこと無いのだ。
お能の師範と京大能楽部のOB現役、芸大能楽つながりのお師匠さんなどみなさんを美ヶ原登山に案内することに。百曲から登って王ヶ頭からのダイレクト下山周回ルート。
松本教室でのお能発表会で私はなんとか格好だけは間に合わせのお仕舞「竹生島(ちくぶじま)」と素謡「巴(ともえ)」の発表を済ませた一方、盛り上げに来ていただいたプロ、セミプロの皆様の長年積み重ねの本当の芸を観てようやく、これまで自分が何を稽古していたのかを想像でき始めた段階という始末でした。一度の発表は100度の稽古に勝ると。巨大なジグソーパズルと同じで、今は何ができるのかわからなくても良いのだと先生は仰る。土曜・日曜と、京都・東京からいらした面々と交流して、すごく優しくしてもらった。その発表打ち上げの翌日のハイキングだった。
大都市で日々働いて暮らしている人たちに、初秋の信州山歩きはヤバい。ヤマモミジの鮮やかな紅葉やイタヤカエデの黄も始まっていて、お師匠さんは地に這いリンドウの花も見つけられた。軽く汗してせせらぎの樹林を歩く楽しさよ。それに展望はほしいまま、御岳乗鞍駒ケ岳に浅間山に富士山にと、秋の日に美ヶ原から見えないこの辺りの百名山は無い。発表会の緊張を終えた開放感と、長年同じ道をともに磨いてきた仲間たちの和というのはとても尊く幸福なのだと感じられた。
山頂台地では夏の放牧牛の最後の一群がトラックに乗り込んで下山するところに遭遇。運転手の顔が太鼓のタツミさんにそっくりだったという話で腹を抱えて笑った。
山頂ホテルの食堂でカレーを食べた。以前は高!と思って思考停止だったが、最近は、外食とは高くても上手ければよいのだ、と思うようになった。インフレはお互い様だ。バーコード決済の自動販売機でモタついたが、後ろにいた親切な知らない人と協力してなんとかクリアする。
下り道では2年目女子学生に能楽部入部のきっかけをきいたら、全く知識も興味もなかったのに、誘われて訪ねてみたらすごく居心地の良い場所だった。今の日常はそれ以前では全く想像できなかったという話。今日山を歩いている事もそれ以前はまったく想像ができなかったと。人生の大きな分岐が連発する20歳くらいと話すのは本当に楽しい。山岳部でも能楽部でもこの年ごろに集中稽古するとすごく伸びる。そして一生の歩みも大きく影響を受ける。
想像もしなかった世界に持っていかれること、これこそ学びだ。事前に事後のメリットがわかるようなのは学びではないのだろう。私も、今更だけど再び想像も出来なかった局面に持っていかれてしまいたいのかもしれない。お能に関してはどんなことを目指しているのか、何故やっているのか、何が面白いのかさえもよくわからないのにやめられないのだ。わからないことが面白いとしか言いようがない。
美ヶ原は50年前、小学5年生の学年キャンプで、白いトレパントレシャツで登ったのが最初だ。次は30年前に三城からひとり山スキーで登って三峰山頂でツエルト泊、翌日霧ヶ峰までスキーで抜けた。雪が少なくてヤブスキーだったけど故郷の裏山を長い線で繋いだ。三度目は20年ちょっと前の新婚のころで妻と三城までバスで行き、7月花盛りの百曲を登って、牧場を美術館まで歩き、そこから確かバスで居眠りしながら松本駅まで戻った。バスなんて今からだと夢みたいだ。ウチから一番近い百名山だ。節目で来ているんだなと気づく。
大切な客人を松本のとっておきの場所で案内してもてなすことができ、私も満足して帰宅する。葡萄酒で妻と、発表会のときの演目やお仕舞、囃子方のみなさんの話題で持ちきりに。お能は地味の極みの芸能なのだが、深みが深すぎて、行き着けぬ底しれぬ無力感がまた良い。人生をお能に捧げた人たちと話すにつけ到底私は深淵には達せられないのだが何故かやめられない。私は真似事だけで終わりそうでそれでも仕方ないと思ってもなお引力があるし、拒絶されない優しさがある。
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