常念〜蝶@守られた二人娘
- GPS
- 32:00
- 距離
- 15.2km
- 登り
- 1,901m
- 下り
- 1,978m
コースタイム
過去天気図(気象庁) | 2009年09月の天気図 |
---|---|
アクセス |
利用交通機関:
電車 タクシー
|
予約できる山小屋 |
蝶ヶ岳ヒュッテ
|
写真
感想
この旅の道連れは、Yさん。もともと仕事仲間だったけれど、ふと話が合って意気投合しての初めての一緒の山行きだった。
今にして思えば、浮き足立ってうきうきとはしゃいでいた私たちは、さぞかし頼りない危なっかしい、初級者の女子二人だったのだろう。
新宿からあずさの始発に乗ったとはいえ、タクシーで着いた一の沢登山口からの登り始めは11時半。周りに人が少ないと思ったのは、単にスタートが遅かったからだ。
・一人目の紳士
その人は、出発してほどなく、私たちとつかず離れず共に歩いてくれた。とても静かな物腰で穏やかに、見る花ごとに、見上げる樹木ごとに、聞こえる鳥の声ごとに、その名前や由来、歴史までも、訥々と語ってくれた。急かすことも制することもしないで、私たちの歩みにごくごく自然に歩調を合わせながら、歩を紡いでいった。途中の沢では共に水休憩をとり、胸つき八丁では怖がらせることなく、でも適度な緊張感を持って注意を促してくれた。
今でもおぼろげながら思い出す、五分刈りで眼鏡をかけた、骨格はしっかりしているけど控えめな、少し寂しげな雰囲気も持った人だった。私はふとなぜか、「天使のような男の人だ」と思ったことを覚えている。
その天使の紳士に守られて、小屋に到着したのは結局、16時の少し前。山の常識からすれば、十分に遅い。登山客たちが酒に勢いを借りておしゃべりに興じる中で、その人は静かにお茶を飲んでいた。
・二人目の紳士
小屋の夕食は早い。消灯までのしばしの間、食堂に残って談笑する。私たちは地図を広げて明日のルートを考えていた。当初は一泊で翌朝、来た道を降りようと思っていたところ、Yさんが休みをとれることになり、もう一日足を延ばすことにしたのだ。隣りにいたご機嫌なおじさまたちに紙パックの焼酎を勧められ、ちびちびといただきながら、ルートの質問もしてみた。嬉しそうに張り切って色々な道を勧めてくれる。こんな道も、あんな道も、それほど危なくないよ、お嬢さんたちなら大丈夫だよ、と話が盛り上がっていく。
ひと段落したところで、そのおじさまたちが引き上げた後、反対側にいた、もうひとりのおじさまが、私たちの地図をさしながら、道の説明をしてくれた。先ほど勧められた道は決して易しくないと。無理をしないほうが賢明だと、この道ならばと教えてくれたのは、蝶への縦走路だった。
・三人目の紳士
常念〜蝶の道は、危ないところはないものの、起伏に富んだ充実の道だった。どんどん景色が変わっていく。夢中で歩く。気持ちが高揚していく。そして喉が乾く。疲労していくのがわかる。ちょうど中間地点あたりの大きな鞍部。下りに下ってきて、また急登か‥‥と、一休みした私たちが、きっとへたりこんだように見えたのか、通りかかったおじさまが、ごくろうさん、よかったどうぞ、と、大きなポットとあんドーナツの袋を手渡してくれた。ポットの中身は濃い目のハチミツドリンク、甘さが全身にしみわたって、元気がもりもり湧いてきた。あんドーナツもがつんとエネルギーに変わっていくのがわかった。
こうして私たちの山行きは守られた。返す返すも私たちは、さぞかし頼りない危なっかしい、初級者の女子二人だったのだろう。
あれから7年、少しはしっかり自立した山女になれただろうか。
あの時に守っていただいた紳士の方たちに胸を張ってお礼を言えるようになりたいと思う。
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