酷寒の八ヶ岳・天狗岳〜西尾根縦走


- GPS
- 32:00
- 距離
- 9.5km
- 登り
- 984m
- 下り
- 987m
コースタイム
テント泊or小屋泊
2日目:7:50黒百合ヒュッテ〜9:30東天狗岳〜10:00西天狗岳〜11:20第2展望〜第1展望〜13:35唐沢鉱泉〜15:00渋御殿湯
天候 | 1日目:雪 2日目:晴れのち風雪 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2011年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
1日目: 渋の湯〜黒百合ヒュッテ 新雪でフカフカ。トレースはいつも通りあります。危険な箇所はありませんが、ときたま足がズボっと入って沈む場所が雪の下に隠れているので注意 黒百合ヒュッテ到着時(14時くらい)の温度は-17℃ 2日目: 朝の気温-20℃ 夜に積もった雪がフカフカ。東天狗山頂付近までは晴れていたが、その後予報通り嵐に。気温は一気に下がり-25℃に。他メンバの温度計では-28℃も記録した模様。堅い雪面のトレースは、数分で消える状況。西天狗頂上はホワイトアウトに近い。渋の湯まで降りても-13℃という状況で凍えました。メンバの一人は頬に凍傷。唐沢鉱泉〜渋御殿湯はウサギ以外のトレースなし。 以下写真 Nikon D300 Nikon D300 TAMRON SPAF 17-50mm F2.8 XR Di LD Aspherical[IF] (stk) |
予約できる山小屋 |
黒百合ヒュッテ
|
ファイル |
高度記録(Pro Trek)
(更新時刻:2011/01/21 20:22)
1日目GPSログ
(更新時刻:2011/01/22 10:08)
2日目GPSログ(天狗付近からロスト)
(更新時刻:2011/01/22 10:08) |
写真
感想
今回の感想をポイントごとに。。
【雪上訓練】
黒百合平の南側にある北向き斜面で、滑落停止やスタンディングアックスビレイまでやろうとしたのだが、雪が深すぎて。。形だけでも出来たのはワカン訓練と懸垂下降くらいでした。初めてスノーバーを使った支点ビレイを試しましたが、誤ったセッティングでの支持力の弱さを思い知りました。軟雪ではスノーバー埋め込みで使うところを、打ち込みで使ったら弱いこと! 40度もない斜面なのに懸垂でテンションかけたら引っこ抜けるし。。(もちろん、墜落者はフカフカの雪に背中から落ちるだけですが)
【テント泊】
テントはかつてない快適さ。かなりの寒さを覚悟していたが、カイロを多数持ち込んだお陰で寒さがストレスになる事は一度も無かった。テント内温度も年始の高見石のマイナス10℃に対して マイナス7℃。雪が積もると断熱効果にでもなるのだろうか、と思ってしまった。
【天候】
寒さはほぼメテオテックの天気予報通り、20〜25℃の範囲。冬用ヤッケにダウンまで着込んだが、風雪が強い稜線では少し足を止めるだけで一気に体が冷える気がした。水分・産熱不足ではいろいろ起こりうる危険があると感じた。事実、メンバの一人は頬に凍傷。
一般に手・足の指は感覚が無くなったり痛くなるのでケアするのだが、顔は案外おろそかになる事もありそうなので、今後メンバー間で共有したい。
【装備】
メンバーは問題ない装備をそろえて来ていた。なのでこの寒さでも、歩いてさえいれば「凍える!!」という声は無かった。ただ問題はいくつかある。まず眼鏡。自分はしていないが、眼鏡が凍るともうどうしようもないらしい。フェースマスクや目出帽をかぶると、呼気が上部に流れる関係ですぐ曇るらしい。曇るとあっという間に凍るらしい。そのような状況をしらない自分は、後ろから見えないから待ってくれという声があっても「10mも離れてないから大丈夫だよ〜」と思いましたが、眼鏡ホワイトアウトだったのね。。ただこれは深刻な問題だ。眼鏡の上から付けられるゴーグル等で解決出来るか、については今後の課題だ。装備隊長からはアンザイレンしましょうの声もあったが、その状況を認識していなかったので結果的に実施せず。パーティー離散の可能性があるなら、行動が遅くなろうとも安心感が得られるアンザイレンは無駄にはならないだろう。
個人的なこととしては
ザックが重かった。。雪上訓練やるとかで、普段持っていかないものもあったせいか、初の16kg代に突入。ボッカ訓練なんてしていない自分にはさすがに重かった。イマイチ合っていないオスプレーのザックのせいもあるかもしれんが。。
【行動食】
行動食の摂り方も見直しが必要かと。樹林帯に到達し、落ち着いた勢いで火を使った食事にしようと思ったが無理!風が無くともマイナス20℃以下で留まるのは冷凍庫に閉じ込められるのと変わりなし。なかなか沸騰しないし、待ってる間も寒くて、かなり非効率。手袋したままで、ポケットに手を突っ込んで食べられるくらいの素早さがないと、いたずらに体を冷やしてしまうなーと。何を食べても岩のように硬いし、冷たいし。。。かなり改善の余地があると感じました。
【ルート状況】
東天狗までは、かなりの人に遭遇。嵐の前に天狗ピストンしてしまおう、というパーティーは多かったように思える。
東天狗付近では、もう登る人には出会わなかった。時折下山者にすれ違ったのみだ。遠く西天狗山頂に人が見えるがしばらくすると西尾根に向かったのか見えなくなった。東天狗山頂からは、下山口まで全く人に会わなかった。おそらく本日西尾根を下ったのは我々が最後であっただろう。
【反省点】
チームとして問題だったのは西天狗からどう進むか。。西尾根のトレースが見つからなかったため自分は東天狗〜黒百合ピストンを選択した(つもりだった)。ただ結果的にメンバ間で認識あっておらず、結局は予定通り西尾根に下山。登山道(トレース)を辿ったので危ない行動につながったわけではないが、意志疎通が出来てないとパーティーとしてはよろしくないだろう。今回そうなってしまった理由としては、お互いの声が聞こえなかったのが大きいが、そういった事態は山では予測される事態だ。以降この経験を生かしてより安全な登山が出来ればと。。
了
冬の天狗岳。「初めての冬山登山にオススメ」なんてよく書かれているし我々もそう思っていた。
ルートも2日間で9km。メンバーのほとんどが夏山で同じルートを経験済み。
買ったばかりの初アイゼン・初ピッケルを使うのにちょうど良いと、
人生初の冬山というメンバーもいました。
自分は天狗岳に登ったことはないものの、2週間前に1日目(黒百合平〜渋の湯)のコースを下山に使ったばかり。
天気のリスクがあり、装備を整えていましたが、
登山のステップアップにちょうど良いと思っていました。
核心(問題)は2日目。
黒百合平から双耳峰の天狗岳をハントして渋の湯へ下山するコース。
最初から想定外だった。
早朝時点で小屋前の温度計はマイナス20度以下。
今まで一度も凍った事が無かったコンタクトが、容器ごと凍って使い物になくなった。
(以前は、凍結を恐れてシュラフ内にも入れたりもしていたのだが、テントでは一度も凍ったことは無く、気を抜いてしまった)
仕方なく、メガネでの山行になった。
とはいえ無風だったので、防寒対策をし、歩き出せば、さほど気にならない。
東天狗から西天狗まではそんな状況でした。
西天狗岳から西尾根の岩場で急変した。吹雪始めた。
吹雪は視界を奪い。横から打ち付ける吹雪は瞬く間に睫毛を凍らせ、垂れる鼻水が氷柱となった(形容詞ではなく!)。
吹雪を避けようと、バラクバラを鼻まで覆うとメガネが呼気で曇り、瞬間に氷結し、視界を奪った。
岩場の下りでホワイトアウトとなると、当然ペースは落ちる。
体の燃焼サイクルも落ち、急に寒さを感じ始める。
手足の感覚が無くなる。雪に覆われた岩稜に慣れないメンバーが、悲鳴をあげる。
西天狗山頂から樹林帯に入るまで、恐ろしい50分間でした。
樹林帯で風は収まります。しかし、気温は下がり続け手元の温度計は-28度〜-30度(ミニ温度計の下限)。
第2展望〜第1展望の、ちょっとひらけた場所で、長時間の昼食休憩となった。
空腹感も疲労感もあり、ほっとザックを降ろした。自分は、昼食としてパン類を用意していましたが、凍っている状態。我慢して食べてみる。まともに食べられない。
サーモスに入れた生姜湯で流しこむ(サーモス以外の水はすべて氷結してしまっていた。)
飲み切る恐怖もあり、量は制限してしまう。
そうこうしているうちに、いままで経験したことのない急激な震えが全身に来た。痙攣に近い。
ザックの一番上に入れていたツェルトを取り出し体を包むが、弱くはなるが震えは止まらない。
我慢できず。予備のダウンを着る。震えは止まらない。
ストーブでお湯を炊くメンバーもいたが、そんな気力もない。待っていられない。
自分自身、症状から低体温症の自覚があり、昼食休憩をきり上げて、下山することにしました。
幸い、下山ルートはずっと樹林帯で無風でした。
コースとしても、なだらかで歩き易くトレースもあり安全は確保されていました。
下山と共に気温も上がり(すぐにマイナス10度前後になった)。
震えも、ほどなく回復しました。
天候悪化が西天狗からで、短時間で吹きさらしから樹林帯に入れコースに助けられたと思っています。
疲労と低体温症の違いに、
疲労の症状が蓄積により徐々に生じるのに対して
低体温症が、突然始まる。と言われていますが、
初期状態とはいえ、自分自身が実感するとは思いませんでした。
ビデオの電池が切れる東天狗頂上まで
核心の西天狗は撮れず
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