秩父槍ヶ岳〜典型的な遭難パターンに陥りかけるも自力下山・・・
- GPS
- 06:16
- 距離
- 4.5km
- 登り
- 902m
- 下り
- 816m
コースタイム
西武秩父
08:22御花畑〜08:42三峰口
08:50秩父鉄道・三峰口駅バス停(川又経由・中津川行き)
09:45相原橋バス停着 〜 登山開始
■■
09:50相原橋
10:03野鳥観察小屋10:06
10:24野鳥の森歩道終点の標識
11:06固定ロープ11:14
11:21秩父槍ヶ岳(1341m峰)
11:39TVアンテナ(男性2人組と会う。この日会った唯一の登山者)
11:47秩父槍ヶ岳(1430m峰)11:50
11:52北西方向の踏み跡を頼りに尾根を行く分岐(諏訪神社へ下る想定だったが、、、)
12:12地図にはない見晴らし台岩(約1,380m)12:17
12:24三角点標
12:43岩に赤ペンキ印(1)
12:45岩に赤ペンキ印(2)
12:46赤い「鳥獣保護区域」標識
13:25尾根の切り立つ急壁を何とか降下
13:31滑落その1(10mほど滑り落ちる。GPSロガーの電池蓋が開いて電池が出てしまい、ログはここまでしか取れていない)
13:36尾根づたいを断念し谷へ降り始める
13:45降りたら氷結した滑沢だった(涙)
13:55頃 滑落その2〜ハンドボールサイズくらいの氷塊がゴロゴロした沢床に頭から落下するも、右腕でカバーして幸運にも打撲程度で済む
14:31凍結沢の最後のフォール部を、カニ歩きで急斜面を迂回し降りきる
14:39「彩の国ふれあいの森」の木道
14:40日当たり良好の中津川の河原で昼食休憩、着替え
15:51河原を出発〜中津川キャンプ場、吊り橋を経て車道へ
16:06歩いて中津川バス停、森林科学館へ。科学館で時間をつぶす
■■
16:58中津川バス停を最終バス出発(本来は16:55だがドライバーが「早く着いちゃうから」とのことで3分遅れ出発)
18:05「三峰口」駅着
18:15「三峰口」駅発〜18:37「御花畑」駅着
19:25「西武特急ちちぶ号」〜20:44池袋着
天候 | 快晴〜晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2011年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
●下山後・・・中津川バス停から西武バス・三峰口行〜三峰口駅 |
コース状況/ 危険箇所等 |
■野鳥観察小屋から左回りコースをとる場合、、、 ・前半は枯葉で滑りやすい。踏み跡はそこそこあるので迷いやすくはないが急坂箇所も多く注意が必要。 ・所々で両手両足を使ってクライミングの要領で登る箇所もあるので、そういった経験がないと厳しい。 ・尾根の右側を巻くルートが頻出するが、出来るだけ尾根上を歩いた方が良さそう。どうしても巻かなくては先に行けない箇所も数回あり、そこは例外だが。 ・1,341mピーク手前にある固定ロープの状態は写真の通り ・固定ロープから1,341mピークの間のわずかな距離のルートが、わりとゴチャっとしていて分かりづらいと思った。 ■諏訪神社へ下るルート 今回の最大のミス、、、私は間違えて「コンサイス」ピークのすぐ先にある分岐標識から北西に伸びる踏み跡を辿ってしまいましたが、諏訪神社へ下るルートはTVアンテナから少し下るルートらしいです。当然私は確認できていませんが、森林科学館の方にそう聞きました。 ちなみに諏訪時神社〜TVアンテナのルートは、元々は地元の方が使っていた道だそうです。私が事前に思い込んでいたような「簡単な」ルートでは決してない、とも言われました。 ■右回り(時計周り)の場合 観察小屋裏手からの左回り登りコースを実際に歩いてみて、各所で言われている通り1,341mピークから東へ下るのはかなり困難でオススメしません。地元の方からも「毎年何人か行き詰って救助依頼が出される事故が起こっている」とのこと。 |
写真
感想
今回、道を間違えて先に行けずやむを得ず降りたら沢だった、、、という典型的な遭難パターンに陥り、かつプチ滑落もしてしまったのですが、原因を検証してみました。森林科学館のスタッフとずっと話をしていた中にヒントも。
●前日、自分で1/25000地形図に書き入れたルートのうち、下山ルートが間違えていた(失笑)。書き間違えたルートのライン=尾根は、通しで歩けない状態。
●ルート書き間違いを誘発した遠因について。
今回の登りルートは、「埼玉県の山」の中で「本書最難関コース」と書かれているし、通行止め区間を含む。そのため猛烈に事前情報収集を行い、もはや地図を見なくても歩けるほど、登りルートに関する情報を頭の中に叩き込んだ。
一方、下りの「諏訪神社ルート」は、スタート地点の相原橋に戻る周回コースより難易度が低いという情報を複数見て、ネットで集団のハイカーが登っている写真をみたこともあり「踏み跡がしっかりした簡単なコースに違いない」と勝手に思いこんで、あまり情報収集に熱を入れなかった。登りルートに集中しすぎた感もある。油断したのだ。
●どのように間違えたのか?
科学館で尋ねたところ「TVアンテナのところから少し下る感じでルートをとる」そうだ。帰宅後よく調べたら、確かに「TVアンテナのところに中津川方面の道標がある」と書かれていた。実はTVアンテナでこの日唯一の登山者と会ったのだが、ひとがいたせいもあってTVアンテナは写真を撮ってそくそくと先へ進んでしまっていた。道標を見ていたら結果は変わっていただろうか・・・。
ネットなどで事前情報収集した中で、TVアンテナより先に進んだ「1430mピークのところから北西方向の尾根に踏み跡あり」という情報が共通して複数見られた。地形図を見ると、その尾根を真北にたどっていくとちょうど諏訪神社にたどり着く格好になるので、勝手にその尾根がルートだと思いこみ、地図に書き入れた。
ネットでこのルート図を見つけることが出来なかったが、さほど気にならなかった。
●失敗の概要
最初に踏み跡をたどって尾根を進んだ道は、間もなくして踏み跡がなくなり急な下りでおかしいし、やけに西の方角だったので一度戻った。戻る途中に東側に別の尾根があり、それ以東には尾根がなかったことから、この尾根に違いない、と進んでみた。(後から地形図とGPSログを見比べると、この尾根ですら自分で書き入れた尾根より西側だった)
間もなく右手に切り立つ岩峰。これを左に巻きながら尾根に立つと、本日一番の見晴らし台。後ろを振り返って1,430mピークを望むと、ほぼ同じ高さだった。ログで調べたらここは約1,380mの標高だ。狭い頂上には秩父槍ヶ岳コースと違って遮る木々がないので、見晴らしが抜群。写真を撮りまくるが、台状で進行方向は完全に切り立った状態、先に進めないので降りざるを得ない。何かの木に大きく赤いペンキで文字が書いてあったが、風化して解読できず。
降りてからも険しい道が続くが、すぐに三角点標や岩に赤いペンキで印がつけられていたり、鳥獣保護区域の標識もあり、間違えてはいないだろう、ただそれにしても険しい、、、と思いながら歩を進めた。またこの先、最後までずっと「踏み跡ってほどではないが、何となく道になっているような」感覚を引きずりながら進んだのだが、これらはケモノ道だったのか。。。いまだに、この2つの赤ペンキ印、鳥獣保護区域標識の意味するところが解読できていない。どこと結ぶルートなのか。。。
さて、一応痩せ尾根を歩けたので先に進むと、すぐに切り立った岸壁で稜線を通して歩けず左に巻いたりしているうちに、尾根も巻き道も行けない激急斜面の連続になる。その斜面をなけなしのクライミング技術で、木や岩をつかみながら這うように進むが、垂直に降りるケースなどもあり、ザイルなしでは到底無理なルートになっていた。ちなみにザイルは持ち合わせていませんでした。
で、方角も自分が地図に書いたライン=真北とは違って西北西なので右手に見えてきた別の尾根にトラバースし方向を修正。その後あたりで一度滑落。もろい土の斜面を木の根や幹だけを頼りに下っていたら、木が折れたのか足下が崩れたのか、10mくらい滑り落ちて右大殿筋と左膝を強打。恐る恐る自分の身体を確認すると、骨折はしていないようだ。ラッキーだ。下山後に気付いたが、ザックの外側に括り付けていたGPSロガーの電池蓋がはずれ電池が飛び出してしまい、ログがとれたのはこの地点まで。
さて、これ以上尾根づたいを続けると、いつでも滑落の恐れがあり、そのストレス、恐怖から登山のセオリーに反するが、もう谷床へ降りることを決心。1つ明るい兆しとして、北の方角のそれほど遠くないところに車道、集落が見えていた点。これは非常に心強く「絶対に自力下山できる」という強い意志を保てた。地形図上も、北上すればいずれ車道に出る形で、行く手を阻むものはなさそうだった。
しかし降りるのも容易ではなく、道無き超急斜面で足下は脆い。雪山じゃないのに尻セードに近い格好をとったり、逆に向いて降下したり、、、谷床に近づいていくのだが、そこには絶望が待っていた。というのも地図に載っていないが、そこは沢だったのだ。沢じゃないだろうから降りても大丈夫と思っていたのだが万事休す。典型的な遭難パターンだ。更に悪いことに、その沢は全面凍った”滑沢”なのだ。これで事故が発生する要素が揃ってしまった。
集落が見えている、ということだけを支えに(もう絶対に戻れない状況)凍った沢に沿って、氷に足を踏み入れないよう歩を進めた。しかし左右ともに切り立った斜面の底にある沢、容易に歩けるルートなどない。両側斜面は枯れ葉に埋もれていて滑りやすい。斜面を歩くことができないので沢ぎりぎりのところを歩き、沢下りを始めた。最初か2番目の少し流れ落ちている部分を、岸の岩だけを手がかりにゆっくり降りていたが、まだ序盤で慣れていなかったこともあり、ここで思いっきり滑り落ちた。沢の表面は大抵、透明でツルっとしているのだが、そこは流れ落ちる滝壺みたいなところだったから、ハンドボールかソフトボール大の氷塊がゴロゴロしている運の悪い場所での滑落だった。天地が逆になり頭から落ちているのがわかった。割とスローモーションに感じた。本能的に頭を防御するために右腕で頭をかばった結果、右肘を強打した。今回も幸運にも骨折その他大怪我無し。
以降は少しずつコツを掴んで、リスクを最大限抑える選択肢で降り続けた。最後の最後に超難関な流れ落ちに。ここは右岸斜面をトラバースするしかなさそうだが、手がかりの木や岩が殆どなかった。とりあえず木だけが頼りで、ボルダリングで多少習得していた技術を総出動させ、時間をかけて何とかクリア。
あとは人工の堰堤があって、平地にでると遊歩道、そして木々の間から何となく白く見えていたのは中津川の川面の雪だった。
日当たりの良い、1月下旬にしては暖かいその河原でやっと一息つき、着替えて昼食をとり、最終バスまでかなり時間があるのでのんびり過ごした。
やがて日が山に隠れて影ってきたので河原を発ち東側に見えた吊り橋の方へ歩いて行った。吊り橋は「中津川キャンプ場」の出入口だった。つまり諏訪神社より西側に下山したのだ。吊り橋を渡って車道に出て、西の方角へ歩いていくと「西台」バス停があり、さらに進むと終点の中津川バス停。時間はたっぷりあったので、そこにあった森林科学館というところで時間をつぶした。来場者など居らず、木工職人が何やら木の器を作っていたので、地元のいろんな話をきいた。科学館のスタッフ(1人だけ)の方とも話をして、このあたりにアイスクライミングのスポットがあることや、シャクナゲの良いポイントがあるとか、南天山の見晴らしが良いとか、そんな話をしながら、最終バスまでの時間を有効につぶすことができた。
話をうかがっていてゾっとしたのは、今回私がたどった下山ルートより西側に進路をとってしまっていたら、恐らく脱出できなかったかもしれない、という話。西側の方にはもっと酷い滑沢があるし、そこらじゅう氷結しているから無理だったかもよ、と。アイスクライミングのスポットがあるくらい凍りやすいエリアですからね。。。この辺りは地形図だけを見てもわかりません。
今回は、最も警戒していた登りルートが、ちょっと肩すかしなくらいあっさり終わってしまい、逆にノーマークだった下りルートで大失敗してしまった。ちょっとシャレにならない場面もあったし、反省すること多し。
ザイルの使い方をマスターして、必要あらば携行したい。
コメント
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ピークハンターならぬ『滑落しそうな山ハンター』ですね。急斜面の落ち葉が今にも滑りそうでコワいです。
遭難パターンに陥ってもちゃんと写真を撮るのを忘れないのが素晴らしいです。臨場感あふれるリポートこれからも楽しみにしてます。
でもリアル遭難はやめてね(>∇<;)
最近みた映画(DVD)「運命を分けたザイル」の冒頭で、「遭難事故の80%は下山時に発生する」というフレーズが出てきますが、まったくです(山のレベルが違いすぎますが)。今回下山は楽勝だと思っていましたから、、、。
写真を撮っている間は精神的に全然OK状態ですね。マジでヤヴァくなると写真なんて撮りませんから。
リアル遭難しないためにもロープワークを身に付けます(^^ しかし奥秩父、奥武蔵は楽しいですよ。
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