火打山☆月明かりのテン泊山行(二日目)
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- GPS
- 11:48
- 距離
- 19.0km
- 登り
- 1,401m
- 下り
- 1,403m
コースタイム
天候 | 第1日:はれ 第2日:晴れ後曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2018年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
十二曲がりの上部の尾根に達すると尾根の左寄りをいく夏道と右手に巻くトラバースするトレースがあるが、云うまでのもなくトラバースよりも夏道が遥かに安全。 多くのトレースが雷鳥平をトラバースして火打山の山頂に向かうが、雷鳥平への多少の登りを厭わなければ、後者のルートのほうが歩きやすいと思われる。下山の際は十二曲がりの急斜面の下では多くのトレースがあり。黒沢橋を渡る必要があるので、コースに注意。この時期に十二曲以外に他の沢筋を辿ることは雪崩の危険性が極めて高いと思われる。感想参照のこと。 |
写真
感想
高妻山の下山途中にシュラフを谷底に落とし、一時は二日続けてのテン泊山行は諦めざろう得ないか思ったが、思いもかけず黒姫駅の近くで新たなシュラフを入手することが出来たので、一路、笹ヶ峰を目指す。火打山の登山口である笹ヶ峰キャンプ場の登山者用駐車場に辿り着いたのは16時過ぎであった。昨日、戸隠キャンプ場に辿り着いた時刻よりわずかに遅いくらいの時間である。標高はさほど変わらないと思われるが妙高と戸隠では雪の質と量がかなり異なると、スキーを嗜む大学の先輩が仰っておられたが、確かにその通りなのだろう。登山口からは既にかなりの雪である。
駐車場には多くのBCのスキー客達が下山して来られている。すぐ近くにおられた三重ナンバーの車のご夫婦に雪の状態を教えて頂くが、やはり例年になく今年は雪が消失していくのが早いという。我々も急いで身支度を整えると、白樺の林に踏み出す。しかし、この日は既にかなり気が急いていたせいか、いろいろと失態をやらかす。
歩行開始後6分が経過したところで、大切なカメラを車に忘れてきたことに気がつく。微妙な時間だが、家内に赦しを請い車までカメラを取りに戻って、再びヤマレコマップの登山開始のボタンを入れ直す。この時間帯の10分、20分は非常に大きい。
最初は白樺とブナの広大な樹林の中を往く。随所の目立つブナの大木が壮麗な林相を醸し出す。やがて平坦な道は一度、黒沢に下る。沢にかかる黒沢橋からは雪解けにより水量の増した沢がかなりの迫力だ。
橋を渡り、緩やかな斜面のトラバースを往くといよいよ十二曲がりの急登である。夏道であればジグザグと急斜面を登るのであろうが、斜面につけられた数多くのトレースは多くが直登している。当たり前なのだが、下りのトレースばかりであり、先程の駐車場の様子からすると日中は相当な数の人達が通過していったに違いない。普段より重い荷物のせいかかなり時間がかかったように思われるが、十二曲は残照が残っているうちに登りきることが出来た。尾根筋に出たところで空の残照が薄らぎ、夜の帳が急に降りてくる。東側の三田原山の稜線が高いため、月が空に上るまでもう少し時間がかかる。
ここで尾根を辿る夏道に入れば佳かったのだが、尾根を右にトラバースするトレースを辿る。わずかの数10メートルほどの距離の間だが、日中の温度が高かったせいだろう、足元の雪が脆く、谷が深い。そして急に夜の闇が迫ってきたこともあり、家内にはかなりの心理的な不安が大きかったようだ。
いつしか東の空が明るくなり、稜線の上にようやく月が顔を覗かせる。ここを過ぎると夏道が露出し、岩場の急登となるが、先程の斜面のトラバースよりも心理的にはかなり安心だ。そして夏道が過ぎると針葉樹林の登りが続く。昨夜は月が登山道を明るく照らしてくれたが、樹林帯の中に届く月明かりはわずかである。普段は大したことがない斜面だが、背中の荷物が重く感じられる。斜面の傾斜が緩くなると、ようやく富士見平の下端に辿りつく。
開けた雪原はを月が煌々と照らし、幻想的な夜の光景である。樅の林の目立たないところにテントを設営する。ここでアイゼンを付けたままよろけてテントの上を踏んでしまう。気がつくと無残にも数カ所も大きな裂け目が・・・気を取り直して早々に夕食に取り掛かる。楽しみにしていた長野駅で購入したおやきも見当たらない・・・これも車に忘れてきてしまったのか。この日の夕食は黒姫で手に入れた大きななめ茸、えのき茸を用いて、春キャベツ、アスパラとソーセージの黒ビール蒸し。テントの外では明るい月のせいで星明りは疎らであるが、月のすぐ後を木星が追っていく。
早朝に起床し、まずは携行用のお湯とスープを作ろうと1リットルの水を沸かし始めた途端、テントの中でひっくり返してしまう。まさに覆水盆に帰らず。残りの水は家内の分と合わせて約1リットルほど。今日は水分との闘いにも強いられることになりそうだ。
テントを後にし、火打山を目指す。富士見平のこう広大な雪原からは周りのすべての光景が夜明け前の青いモノトーンに支配されている。カメラのフォーカスをマニュアルにしており、私自身が朝の黎明の中でフォーカスを合わせるのに慣れていないためか、哀しいことに撮った写真が片っ端からピンボケで全滅。
黒沢岳を左にトラバースしたあたりで、東の空がかなり明るくなっていく。本来の登山コースではないが、茶臼山から火打山へのびる稜線へと急ぐ。よかった、間に合った。間もなく東の空からゆっくりと真紅の朝日が昇りはじめる。昨日とは異なり、今日はかなり空気が澄み渡っているようだ。東には遠く上越の山まで見渡せる。そして日本海が描くなだらかな円弧の先にはあるのは新潟の街だ。普段、日本海をこのような高みから眺める機会が少なく、日本海を目にするだけで感動的だ。朝日に照らされて、高妻山や北アルプスの山々がわずかに紅に染まる。
雪原に疎らに樹が生えるメルヘン的な光景の中を気ままに進む。遠目にみるとトレースの多くが火打山の手前、雷鳥平を左にトラバースして、山頂直下の斜面にいたるようだ。トレースを追って長いトラバースに入る。家内はやはりこういうトラバースには馴れないらしく、かなり緊張したようだ。
山頂への最後の登りの前に尾根の直下に荷物をデポしていざ、山頂へ。振り返ると、黒姫山の上になんと富士山が見えるではないか。それなりの急斜面であるが、昨日の高妻山の最後の急斜面を経験した後なので、楽に感じる。山頂に辿り着くと意外な先客がいらした・・・純白の雷鳥の幼鳥である。もう少しすると衣替えをするのだろうが、わずかに羽が生え変わりつつあるようだ。愛くるしいと同時に何とも神々しいその姿に思わず息をのむ。カメラのズームの限界に苛立たしさを覚えながらも、夢中でシャッターを押す。雷鳥は私は視界に入らないかのようにハイマツの淵をチョコチョコと楽しげに徘徊した後、ハイマツの中に消えていった。一瞬の出来事であった。火打山の手前のピークが雷鳥平と呼ばれる程であるから、雷鳥が多く生息する地域なのであろう。夏の北アルプスでは何度も雷鳥と遭遇してきたが、この冬の装いの雷鳥は初めてであり、その感動は筆舌に尽くしがたい。
山頂からはまさに雷鳥平にかけて稜線に沿って非常に歩きやすそうなトレースが多数ついている。斜面のハイマツに林縁にデポしたリュックを回収すると、丁度、高谷池を朝出てこられたご夫婦と擦れ違う。埼玉からいらしていたらしい。昔は足繁く通った上越の山座が全く同定出来なかったのだが、遠いピークを指し、「あれが燧(尾瀬の燧ヶ岳)だと思いますよ」と教えて下さる。下山路は日本海を望みながら絶景の尾根を快足に下る。登りも雷鳥平への多少の登りがあるものの、このコースにすれば家内のトラバースの緊張を免れたようだ。
下りでは高谷池に止まられたBCのスキー客の方達と続々と擦れ違う。富士見平のテントに戻ると二度目の朝食(早朝に起きているので昼食に相当する)を取り、テントを撤収するのに1時間近くかかってしまった。名残惜しいが、美しい光景に別れを告げて、下山を急ぐ。
指定を抑えている特急に乗るにはあまり時間がない。帰りは昨夜苦労した十二曲の尾根の上部のトラバースではなく、露出した夏道を下ることが出来、難なく通過。問題のトラバース道をBCスキーのお二人がスノーシューを装着して登っておられる。「十二曲がりは如何でした?」とお話をお伺いすると、この尾根の左手の沢(黒沢本流と思われる)から無理矢理登ってきたとのこと。それは凄い・・・しかし真似したくないことだ。
いよいよ十二曲の下りであるが、再び12爪のアイゼンを装着していると、隣の沢から聞き慣れいパラパラとという音がするかと思うと、やがて音は急速に音量が増していき、ザーッという持続音からゴロゴロという大音量の衝突音に変わり、谷間に残響が響き渡る。雪崩だ!初めて耳にする恐ろしげな音。家内のみが雪崩が崩落する瞬間を目撃していた。連日、かなりの気温差である。いつ雪崩が起きてもおかしくないない状況であろう。
何度か多少、足元を滑らせることはあったものの、順調に降りる。十二曲がりの下部からはあまりに多くのトレースかあり、トレースを辿っているうちに黒沢橋よりも下に出てしまう。橋までしっかりとトレースがついているので、同じ轍を辿る人が多いのだろう。
再び笹ヶ峰までの壮麗なブナと白樺の林を足早に過ぎ登山口に無事、帰還。レンタカーを返却し、長野駅に辿り着いたのは特急の発車時刻の約10分前であった。
色んなハプニングがあっても、最終的には得るものが沢山あって、ハッピーエンドなのが流石ヤマネコさんだと思いました。
準備不足、情報不足に注意不足の為に他ならないと思います。たまたま助けて下さる方がいらしたので、何とかなったのだと思います。私が努力したわけではありませんので。
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