蓼科山〜大河原峠往復
- GPS
- --:--
- 距離
- 5.7km
- 登り
- 506m
- 下り
- 504m
コースタイム
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2018年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
山頂直下の傾斜はとても急なうえに岩場です。岩のひとつひとつの大きさも山頂に近づくにつれて大きくなるのでとても難しく感じました。また高度感もあり、下を見てしまうと怖いと感じる方もいるかもしれません。本当は私みたいな山登り一年生が来ていい山ではなかったのかも… |
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
ズボン
靴下
グローブ
防寒着
雨具
日よけ帽子
靴
ザック
昼ご飯
行動食
非常食
飲料
地図(地形図)
コンパス
笛
計画書
ヘッドランプ
予備電池
GPS
筆記用具
ガイド地図(ブック)
ファーストエイドキット
常備薬
保険証
時計
タオル
ストック
|
---|---|
備考 | 山頂の岩場を行くには荷物が重すぎました…もっと絞るなりデポするなりするべきでした。 |
感想
父とゆく北八ヶ岳登山旅行二日目、メインの蓼科山の登山記録です。
前々から父に頼まれて計画したこの旅行、なんでも若いころに蓼科山に登ったものの途中でへばって敗退してしまい、心残りがあったんだとか。そうと聞いては是非成功させようとこの二か月ほど、道具選びにトレーニングと(といっても日々の軽いジョギングと数度の日帰り登山程度しかしていないのですが)準備を重ねてきました。大河原峠を意気込んで出発します。
登りはじめの勾配はそれなりに急でしたが、父もトレーニングをしてきたそうです。父との初めての登山、六月に高峰山や赤城山地蔵岳を登った時は尾根への取りつきで既に息が上がっていた父でしたが、高尾山稲荷山コースや前日のにゅうではさほど息も切らさず汗もかかず、年齢を感じさせずに登り切っています。何のトラブルもなく、事前の登山計画通りの時間で蓼科山荘まで到着することができました。山荘での小休止のあと、ついに山頂直下の急登に挑戦します。
登山を計画している段階でこの登り、これまで私が経験してきた勾配のどれよりも急であること、ガレ場であることなどを確認していましたから、父の年齢や体力のこともあり、とても心配していた場所です。ここを登りきるために考えていたのは、一にも二にも父の荷物を軽くすることでした。そのために父の荷物はとにかく最小限に、雨具・非常用の水食糧・ライト類程度に絞ってもらい、行動用の食事や水は私が持つことを考えていました。そのために日帰りにしては大きなザックを用意し、それを担いで行動するためにトレーニングを始めた経緯があります。山頂への登山道に立ってみた勾配はそれこそ垂直の壁を見上げるように見えましたが、このために準備してきたんだ。大したこたあねえ!いざ登り始めます。が……この二人分の大荷物が悪くでてしまいました。
登りはじめこそ順調にこなしたものの登るにつれて、膝ほどの高さだった岩が大きくなります。中盤程度まで差し掛かる頃からだったでしょうか、ついに腰の高さまできたように思います。こうなると登るためには足を大きく上げねばならず、すると背中の大荷物に引っ張られてのけぞる感じがある。しかも雨蓋に収納した小物類が中で動いてしまって気になってしまう。これはまずい。ここでひっくり返ったら下手すりゃ死ぬぞ。膝より高く足をあげるな、目の高さより上を掴むな、三点支持を忘れるなと自分に言い聞かせながら慎重に登るのですが岩が大きくコースも上手に取れず、うまく岩を踏めません。なんでこんな岩がでかいところに来たんだ、あっちの方が小さい岩が多いじゃないか。すぐ目の前にロープがある、コースアウトすれすれの所にまで来てしまってる。戻れ、ここに足ひっかけて横に渡って、ああ荷物が背中で揺れる、引っ張られないように山側に張り付いて……もたもた、もたもた。ここにきて自分の力量がまるで足りていないことを痛感します。更には風が強くなってきて、背中で無駄に背負ったザックを煽り始めるのです。実にまずい。父の再挑戦を助けるどころか自分が原因で、またしても失敗させてしまうんじゃないか。戻った方がいいんじゃないか、でもどうやって?登りでこんなに苦戦してるのに本当に降りられるのか?
気持ちが焦り始めたのを自覚します。落ち着かないとまずい。深呼吸して後ろを振り返ります。景色を見て落ち着こう。すると思わず声が出ました。
「うわー!すっげー何これ!」
他に登山者さんがたくさんいる中で大きな声が出ました。眼下に果てしなく広がる緑の上を飛ぶように走る雲の影。そのコントラストの彼方でくっきりと天地を分ける、八ヶ岳の明瞭な稜線……自分がいま置かれている状況をしばし忘れました。よし、これで動ける。落ち着いた。また登りはじめよう。ところが、余計なことに気づいてしまったのです。
(あれ?何この高さ?)
蓼科山山頂直下の岩場は、途中で樹林を抜ける場所があります。そこでは背後に絶景を得られると同時に、高度感も得られてしまうのでした。気づいた瞬間、手足がキュッと竦むのを自覚します。これまで私が登ってきた中で高度感がある場所はなかったのです。そういえば嫁さんと初めてデートしたのは新宿の新都庁ビルの展望台でした。高いところが怖いのを悟られないようにするのに必死だったっけ……なんてことを脈絡もなく考え始めるからもういけません。ただでさえ鈍かった手足がますます動かなくなってしまう。
上を見ると、先を行っていた父が心配そうに見下ろしています。その隣を、スタスタと歩きながら下山する人が抜けてきました。あ、そうか。それを見た時に閃きます。ビビってるからだめなんだ。ビビりさえしなけりゃあんな風に普通に歩ける場所なんだ、ここは。
「おーい、父さん。」
上にいる父に呼びかけました。人間、デカい声出しゃどうにかなるもんだ。
「俺、降りる自信ねえからもう山頂に住むわ!遭難届出さねえでくれよ!」
スタスタと降りてきたその人が足を止めました。
「わっはっは!上に山荘あるからそこでバイトして暮らせばいいよ!」
「そっすね!あ、でも冬どうすりゃいいんですかね?」
声を出して笑い合った後、また少し振り向きます。いい景色だ。もう怖くない。また登れる。もたもた、もたもた。それでもしっかり、安全に慎重に。そしてどうにか、とうとう山頂へ。
思い返して文章にしてみるだけでも冷や汗が出ます。父のセリフではありませんが、「えらいところに来ちまったな」と。自分が如何にへたっぴであるかを自覚すると同時にこのへたっぴを、あの下山の人が笑ってくれただけでどれほど助けてくれたのかも思わずにはいられません。山ってとても大変なところだけど、ものすごく楽しいところだ。
とても長くなってしまいました。反省点がたくさん、たくさん残った山行になりはしましたが、帰路に父が言ってくれた一言があったから、まあよしとすることにします。
「山登り一年生にしちゃよくやった方だ」
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