厳冬期白山・加賀禅定道-楽々新道21時間
- GPS
- 20:59
- 距離
- 38.7km
- 登り
- 3,082m
- 下り
- 3,064m
コースタイム
- 山行
- 17:16
- 休憩
- 2:25
- 合計
- 19:41
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2019年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
1.一里野スキー場の方々は登山者にとても優しい、スキーをするなら一里野へ 2.岩間温泉への林道及び導水管尾根は降雪直後は危険過ぎる。よほど好条件でなければ立ち入らないほうが良い。 3.美女坂も危険カチカチ注意報 4.楽々新道はまさに山スキー天国 |
その他周辺情報 | 一里野温泉天領リフト割引で400円 |
写真
感想
厳冬期の白山を初めて加賀禅定道から往復したのは大魔人、この記録に僕は衝撃を受けた。加賀禅は白峰からと比較すると比べ物にならないくらい難易度は高い、アップダウン、ルート工作、滑りの厳しさ、厳冬期白峰からの往復が関脇なら加賀禅は文句なく横綱だろう。
これを成し遂げた大魔人はやはり怪物くんで自分は全く思いつかなかった山行だった。加賀禅は無雪期の下りでは何度も歩いたが登りで使ったことは一度もない。あんなコース夏でも歩く気にならない。ただこの山行が僕の心の中にいつまでも棘となって引っかかっていた。自分だって負けてられない。ただ厳冬期加賀禅から行くには何度もシールの付け外しが必要で一日雪が降らないという条件でなければ無理だ。この三連休は晴れ予報でまさに今しかないと密かに狙っていた。
ただ記録と言うからには真似ではいけない、二番煎じは全く価値が無いから自分のオリジナリティにこだわり、登りは加賀禅で白山山頂を踏み下りは楽々新道で激パウを頂くという計画にした。記録なら写真が必要だからパートナーがいる。抜群の体力、気力、下りでも付いてこれる滑り技術を兼ね備えたサブちゃんに声をかけることにした。彼も子育てて忙しくて今シーズン一度もスキーに行けてないが金沢マラソンの3時間ペースランナーに抜擢されて走り込んでいたらしいから問題ないだろう。気心も知れているし。
ただ地獄仲間には加賀禅から行くとは言っていたが楽々新道を下るとは言わなかった。七倉まで戻ってもし視界がなかったらトレースがない真っ更な滑ったことのないコースには入れても時間がかかりすぎて危険だ。まして楽々新道の厳冬期の記録は全く無いからである。トレース工作を終えた加賀禅帰還より遥かに難易度は高くなるから最終判断は現地で行うことにした。最初からできないことをやるとは言えない。
前置きは長くなったがこうした経緯でこの山行は綿密に計画されていた。そして昨日決行された。
2019.1月14日厳冬期白山・加賀禅から楽々新道周回
笈ヶ岳から下山して移動はほとんど無く一里野で風呂に入って食事をした。連休ということでスキー場は大賑わいだった。笈ヶ岳はもう過去に何度も行っているのでそれほど感動もなく山行中も頭の中は白山挑戦の事で頭が一杯だった。当初サブちゃんからは今シーズン一度もスキーをしていないので緩い山行でお願いしますと言われていたが、最初は百四丈滝でも見に行くか、と甘い言葉で誘いこの計画は前日夕方直前に伝えた。やめると言うかも知れないと心配していたが絶対がんばりますと頼もしい返答を受けた。おとこだ!
雪の状態は笈ヶ岳で把握していた。日当たりの良い斜面は固め、悪い斜面はパウダーぎっしりただ標高2000m以上は全く見当がつかない。多分雪が降っている可能性はある。スタートは23時、通常より1時間早めた。移動はなかったが何だかんだで睡眠時間は2時間半しか取れず22時に起きて支度を始めた。間もなくサブちゃんもやってきた。
23時少し前に静かで人気のないスキー場をスキーで登り始めた。すぐに両足の小指に痛みを覚えた、前日の笈で痛めたようだ。マラソンコースゆえ早くも不安で一杯だったが足指くらいもげても行くしかない。スキー場は中盤から斜度は増す、途中でクトーを付け効率よく約1時間で標高1000mを超えた。
山頂リフト終点から山の中にスキートレースが付いていた。かなり潜っていた。日当たりが良い斜面は固め悪い場所は靴程度潜るパウダーが残っていた。しかり場へ向けアップダウンを続ける。ますはサブちゃんが先頭でトレースを作ってくれた。スキートレースは途中でなくなりつぼ足跡も皆無だった。この連休中誰も入山者はいないようだった。
小指は少し下りになるともろに体重がかかり悲鳴が上がるくらい痛くなる。どうしたものか鎮痛剤の持ち合わせはない。悩んだ末に歩きにくいがスキー靴に滑走時使うベロを入れてみた。これで痛みは少し軽減されて何とか頑張れそうである。たっぷり3時間かけてようやくしかり場に着いた。加賀平野の夜景が綺麗だった。空は満天の星であった。
しかり場から先はアップダウンの連続となる。トレース皆無の加賀禅を交代でラッセルして黙々と進む。雪が多ければ巻も楽だが少なくはないが多くもないので巻は藪に遮られて難儀する。帰りに使うかも知れないので慎重にルート工作しておく。しかし口長倉山の巻きでは下りが入ってしまった。7時間かかってようやく暗闇の中に奥長倉避難小屋に着いた。二階から入って休憩した。サブはシールの具合が悪くて入念に修正していた。この条件で避難小屋は本当に大助かりで感謝で一杯だった。
小屋から出ると少し白んできた。奥長倉山を巻いて美女坂登りに差し掛かる頃はすっかり明るくなってきた。小指が痛いのでさほどペースは上げられなかった。ラッセルは靴程度で昨日新雪もあったような感じであった。二人共板はスーパーファットなので歩きやすかった。美女坂は一番の難所で核心部分は自分が先頭を行くが谷底を見ながらのスキーは勘弁して欲しい。途中から氷化してきて緊張したがウィペットで突き刺しながらスキーで稜線に登りあげた。
美女坂の頭に着くとこれまでとは一転して壮大な景色が広がっていた。はるか頭上には四塚が見えた。まだまだ先は長い、振り返ると昨日登った笈ヶ岳や大笠山に朝日が射していた。モチベーションは更に高まっていく。百四丈滝はこの時期もう立派に成長していた。例年通りだ。天池まで行ってシールを片方剥いで一気に先の鞍部まで片足で滑った。サブには滑るコツを伝授した。鞍部からは片足シールでさらに先の鞍部までスイスイ歩いた。
鞍部から四ツ塚まで標高差500m、風の通り道でシュカブラが発達していた。この登りにモンスター群が発達していた。ここにもモンスターは間違いなくいた。後述する楽々新道台地にもやはりあってモンスター群は白山の至る場所にできるようだった。ただ誰も厳冬期に入らないからわからなかっただけのようだ。
モンスターに癒やされながら四ツ塚に着いたのはスタートして12時間以上経過していた。楽々新道から帰るならここで折り返せば楽勝だが面倒でも白山へ行ってこそ価値がある。四ツ塚からまた片足シールで一気に御手水鉢まで下った。もう行くしかない。ここから山頂までは氷化斜面で氷も多くてマジしびれた。ルート工作も難しくてずっと僕が先頭でトレースを伸ばすことにした。後続のサブちゃんビビリまくりだった。
大汝の巻が終わるともう御前峰はすぐだ。山頂までの氷化斜面を嫌って裏のお池側からアタックしたがここも氷化していてウィペットを突き刺しながらスキーで登りあげた。肩まで登りあげるとようやく奥社が見えた。長い道のりだった。スタートして山頂まで14時間を超えていた。これも記録だった。すぐに奥社でお参りして無事帰還を願った。さあ急いで帰らなければ暗くなる。時間との闘いになる。時間はすでに午後2時前、日没まで4時間。
帰りは終始僕が先頭で安全なルートを切り開く。山頂直下の氷化斜面を無事滑って下で待っていたがサブが来ない、転けてはいけない場所で転けて際どかったと言っていた。大汝の巻も際どくガリガリいわせてドンピシャで御手水鉢に着いた。さあ急いで七倉まで登り返す。七倉に立って楽々新道を見ると雲はあるが視界は大丈夫だ。これは行くしかない。未知のコースへゴー。
七倉からの大斜面は素晴らしく厳冬期の火の御子峰を眺めながらかっ飛んだ。清浄ヶ原も素晴らしいモンスター群が発達していた。ここのモンスターは小ぶりなものが多かった。素晴らしい景色にうっとり、雪もパウダーであった。対岸には苦労して登りあげた加賀禅が見える。コース取りに気を使いながらガンガンパウダーを蹴散らすと遥か下に小桜平避難小屋が見えた。この斜面もパウダーが詰まっていた。楽々新道は加賀禅と大違いのスキー斜面だと思った。
避難小屋は半分出ていた。この下もずっとパウダーの林間コースが続いた。生きてて良かった。山スキー最高と思える時間が続く。はるか山並みに夕焼けの大笠山が見える。一日に朝焼けと夕焼けを楽しんだなんて初めての経験だ。厳冬期の楽々新道はこんなに素晴らしかったのか。
さて時間は押し迫り1350mからの最後の尾根に出た。すでに時間は17時を回っている。林道まで降りればもう大丈夫だ。尾根の上部は滑りやすいが下るにつれ藪が濃くなる。1100mで薄暗くなりライトを付けた。サブはサングラスを外すと言うが藪で目を突かないように気をつけるように、こんな事もあろうかと自分のサングラスは可視光線透過率が高くて暗闇使用も可能である。
最後林道直前で真っ暗になったがもう林道がすぐそこで安堵した。林道に出て山崎旅館まではボブスレー、一里野まで林道を使うか導水管尾根で下るか悩んだがもう真っ暗なので時間はかかるがより安全な林道を選択した。しかし林道は悪かった。斜度がない上にスノーシェッドが多くて難儀した。おまけにいたるところ雪崩れておりとても夜以外は使えない。導水管尾根も急で降雪直後は雪崩が怖い、まあどちらも状況が揃わないと立ち入りは無理だ。
長い長い林道を漕いで一里野スキー場に帰還したのは19時42分、すでに21時間経過しており記録づくめの完全燃焼だった。
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