プチ救助。足を痛めた登山者に付き添い下山。塔ノ岳20。三ノ塔尾根↑、大倉尾根↓(行こう!歯科健診登山部)
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- GPS
- 08:50
- 距離
- 17.9km
- 登り
- 1,683m
- 下り
- 1,683m
コースタイム
- 山行
- 7:20
- 休憩
- 1:29
- 合計
- 8:49
過去天気図(気象庁) | 2019年06月の天気図 |
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アクセス |
写真
当初は寄から雨山峠〜ユーシン〜熊木沢出会〜塔ノ岳の予定でしたが、父の日で義父を交えて食事会が17時半から行われることになったので、時間の読める三ノ塔経由の塔ノ岳にしました。
後述する歩行困難な大学生に付き添って下山したため、結局食事会は遅刻しましたが。
感想
梅雨の晴れ間に塔ノ岳でトレーニング山行…の筈が、プチ救助になりました。
流れは
三ノ塔尾根経由で塔ノ岳山頂まで。
↓
大倉尾根で下山。
↓
駒止茶屋直下で「足がつった!」と、右足を抑えて座り込んでいる青年(以後A君)。
「芍薬甘草湯飲めば治る…かもよ」と、トレランのおじさんが漢方薬を与えているのを見る。
↓
足がつった程度なら、すぐ治るだろう。
そう思って一度は通り過ぎたものの
「本当に足がつっただけなのか?」
「つったのが本当としても、漢方薬でそんなに即効性があるのか?」
「そもそも、駒止茶屋程度で足がつるような青年を、これ以上進ませて良いのか?」
と心配になり、登り返して駒止茶屋へ。
↓
駒止茶屋の軒下で、右足を抑えて座り込んでいるA君。
登り返すまで10分程度かかったと思いますが、それだけ時間が経過しても足の痛みが引かないのなら、ちょっと厳しい状況のようです。
A君は5人パーティーのメンバーで、他のメンバーを見ると大学生っぽいが、装備や服装を見るとあまりガチな登山はやっていないように見えました。
下山を勧めるにあたって、まずA君を始めとしたパーティーと信頼関係を築き、こちらの提案を受け入れてもらえるようにしないといけません。
私「さっき、トレランの人から漢方薬もらってた子だよね?足の痛みは治ったかい?」
笑顔で話しかけます。まだ痛みはおさまらないとのこと。漢方薬も万能ではないようです。
右足のふくらはぎがつったと言っていますが、つったのであれば10分も症状が持続するでしょうか?お医者さんでないので診断はできませんが、なんにしても下山した方が良いでしょう。
テーピング、トレッキングポールの有無を聞くと、パーティの誰も持っていないとのこと。
一般論としてパーティーであれば一人が潰れた場合、全員で下山が原則です。しかし、通りすがりの善意の第三者である私が、パーティ全体の下山を指示することはできません。
私「私の予備のテーピングを使うかい?」
まず、可能な範囲の応急処置を行い、信頼関係を築くことを優先します。
A君「お願いします」
テーピングの仕方を知っているかとパーティーの人に聞きますが、誰もやり方を知りません。まいったなあ。
正確にやるにはスマホで画像検索をするべきなのでしょうが、目の前で検索しだしたら「信頼できる人なのか?」と疑念を持たれてしまいます。
記憶に頼り、A君のかかとからふくらはぎにかけて、ややテンションをかけて30センチほどのテーピングを2本貼りました。足の痛みの原因はわかりませんが、少しはマシになるかもと私が常備している痛み止めも飲んでもらいました。
信頼関係構築の一環として「塔ノ岳には20回登頂していること」「歯科医師で、ある程度の医学的な知識があること」も告げます。
私のトレッキングポールをA君に持ってもらい、片足を痛めた状態での歩き方を指導します。段差、階段は痛めている足を先に下ろし、無事な方の足を次に下ろすようにします。
私が一度丹沢主脈縦走の途中で左膝を痛めた時、この方法で自力下山した事がありました。痛めている足を極力曲げず、伸ばしたままで降りる(登る)のです。
練習してもらうと、トレッキングポールを使ってならなんとか自力歩行が可能のようです。
A君はほっそりした体型で、身長は170センチ程度。体重を聞くと55キロ。大学生にしてはずいぶん軽いように思います。ただ、背負搬送はまず無理ですし、トレッキングポールが2本しかないとタンカを作るのには心許ありません。
時間は13時。ゆっくりでも自力歩行が可能なら、明るいうちに大倉まで降ろすことは可能でしょう。
ただ、A君が下山することを了解するか?そしてリーダーの判断も仰がねばなりません。善意の第三者である私が、勝手に指示を出すわけにはいかないのです。
押し付けにならぬよう、信頼関係を築きつつ、こちらの言い分を受け入れて貰うには「状況の把握」「相手の立場を慮ること」「提案を行い、向こうの受け入れられるラインを探る」ことです。歯科医療で患者さんに対して治療やセルフケア、生活習慣の改善等のアドバイス、提案をする場合と同じです。
私「大学の山岳部かな?部長さんは?」
尋ねると、若い女性が名乗り出ました。(以後Bさん)
Bさん「部長ではありませんが、この班のリーダーは私です」
ん?この班?他にも班があるの?
聞いた話をまとめます。(聞き取りなので、もしかしたら一部私の勘違いが入っているかもしれません)
・都内某大学の山岳部で、夏の北アルプス縦走にむけての歩荷訓練に来た。
※Bさんから訂正あり。山岳部ではなくサークルだそうです。
・サークルメンバーは約20名で、5人ずつの班分けを行った。
・男子35キロ、女子25キロを目安に担ぎ、花立山荘までの往復。
・塔ノ岳山頂ではなく花立なのは、前日の大雨の影響で今日に延期になったことと、この班の集合時間が遅れて朝9時に大倉を出発になった為。
※朝7時に私が大倉を出る際、同じ部の別の班が出発するところでした。班によって集合時間がズレていたようです。
・A君は新入部員だが、事情があり2年で部に入った。以前は剣道をやっていたが、2年ほど全く運動をしていない期間があった。
・4月に入部してからの山行は高尾山くらい。
※訂正あり。高尾山だけでなく、他の山にも行ったとのこと。
・1年生男子の歩荷は30キロ目安だが、2年という立場上もう少し担がねばと思い、38キロ担いだ。
※訂正あり。30〜34キロだったそうです。
・見晴茶屋あたりの階段から、右足が痛くなっていたが、2年という立場上、1年生に対して示しがつかないと言い出せなかった。
・部長は今日は参加せず、都内の本部で連絡係。
・班のメンバーは大半が塔ノ岳は初めて。
・Bさんは3年生。塔ノ岳は3回程来ているとのこと。
・これまでの山行で、メンバーが歩行困難になったような経験はない。
・某大学には複数の登山の集まりがあり、ガチな登山部からハイキング同好会のようなものまで幅がある。A君が所属しているのは、夏に北アルプスでテント泊縦走をやるそうなので、ややガチ寄り?雪山は大学の方針で禁止とのこと。
なるほど。若くて健康な男性なのに駒止茶屋程度で足が痛くなった背景がわかりました。
夏の縦走に備えて歩荷トレーニングをすること自体はよくあることですが、事前のトレーニングや荷物の重さの設定等に問題があったようです。しかし、私がそれをこの場で説教してもどうにもなりません。まずA君を安全に降ろす事が大事です。
しかし、部長は東京の本部にいて、班のリーダーであるBさんにどこまで決定権があるのかが、話を聞いてもいまいちわかりません。
※訂正あり。東京にいたのは引退した4年生で、計画に変更が出た場合連絡することになっていたとのこと。サークルリーダーは別の班にいたそうです。
繰り返しますが、パーティのメンバーに問題が発生した場合、全員で下山が原則です。しかし、この場合は総勢20名のパーティが5人づつ4班にわかれています。1人のトラブルの為に全員が降りるという決断は難しいでしょう。
Bさんもこのようなトラブルに対処した経験がないらしく、どうしたものか決めあぐねている様子でした。
私「この先花立まで、岩場もあるしA君が登るのはちょっと無理だと思うよ。仮に登れたとしても、降りれない。そうなるといよいよ救助を呼ぶことになる。大倉尾根は概ね携帯が通じるから、救助を呼べば来てくれるとは思うけど、若い学生さんが無理して登って降りれなくなったら、説教案件じゃないかな?」
Bさんも他の部員も、顔を見合わせます。
私「提案だけど、私がA君に付き添って大倉まで降りるから、君たちは予定通り花立まで歩荷してくるというのはどうかな?私は今日このまま大倉に降りる予定で、特に急ぐ用事もない。のんびり降りるよ。もしかしたら下山中に追いつかれるかもね。」
こう提案すると、Bさんがスマホで都内にいる部長(ではなく、引退した4年生)と連絡を取ります。
Bさん「では、申し訳ないですがA君をお願いできますか」
こちらの提案は受け入れてもらえたようです。緊急時に備えてBさんとスマホの番号を交換します。A君のザックに入っていた水を廃棄してもらい、空のザックは私が持ち、A君と下山を始めます。
急登ではなるべく段差の低いルートを選び、道幅が広ければ可能な範囲でジグザグに上り下りするという原則もA君は知りませんでした。段差の大きい箇所だろうと構わずまっすぐに登っていた事も、足を痛めた理由の一つだったようです。
私がまず先に歩き、そのとおりに歩くように指示します。足の痛みはまだあるようでしたが、15分ほど歩いたら3分の小休止を繰り返します。
A君の前を私が歩きつつ、前後に目を配り、他の登山者が来たら道を譲ります。
駒止茶屋から少し降りてから『A君にもし急変があった場合に備えて、パーティから一人は来て貰った方がよかったかな?』と思いましたが、Bさんは班のリーダーという立場上抜けれないので、他の部員に来てもらうことになります。その人選をどうするかも悩みどころですので、落とし所としてはまあやむなしかなとそのまま下山を続けます。
休み休み、駒止茶屋から大倉まで3時間かけて下山しました。足の痛みはあるものの、平地をゆっくり歩く分にはトレッキングポールもいらないようです。
Bさんの班も花立に到着、下山を始めたようなのでもう私の付き添いはいらないでしょう。
A君「今回は、本当にご迷惑をおかけしました。ありがとうございました」
私「困った時はお互い様。次はA君が山で困った人を見かけたら、可能な範囲で助けてあげて頂戴」
握手をして別れました。私の判断や行動にも反省点はありますが、概ねうまくいきました。
☆
・良かった点。
使う予定がなくても、トレッキングポールやテーピングの予備は持っていた方が良い。自分が怪我した場合、他人が怪我した場合に役に立つ。
・悪かった点。
A君と2人で降りた事。途中でA君が歩けなくなっていたら、私一人では担げないし、なにか問題が起こった時に、第三者がいなければ私が全責任を負う羽目になる。
状況によっては、救助を要請するに留め、無闇な手出しをしない事も選択肢の一つ。
今回はたまたまうまくいきましたが、次回もうまくいくとは限りません。ご意見等ありましたら、コメント欄へお願いします。
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