神室山 (北東尾根〜東稜藪漕ぎ周回)
- GPS
- --:--
- 距離
- 11.9km
- 登り
- 1,186m
- 下り
- 1,184m
コースタイム
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2012年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
秋田県側から神室山へ登る場合は、通常なら林道に入ってから西ノ又川方向へ右折しますが、今回はそのまま役内沢沿いに直進し、二股になる地点、駐車スペースのある広い河原まで入りました。役内沢沿いの林道は落石や倒木で狭くなっている箇所がありましたが、車が通った形跡があり、そのまま進みました。 |
写真
感想
多くの登山道が切り開かれている神室連峰にあって、主峰神室山の北東及び東側は空白地帯になっている。北東に向けては、神室にしては幅広い尾根が延び、三角石山などのピークを起こしている。また東に向けては、根ノ崎口へ下りる十里長峰の合流点を過ぎると、この秋田・山形県境稜線上に夏道は無い。
私は沢歩きはできないが、幸い役内沢の奥まで林道が延びており、北東尾根に取付いて神室山頂に立った後、東稜を辿って下山すれば周回コースがとれそうだ。積雪期限定のプランだが、G.Wも過ぎて雪はだいぶ消えている。歩くとすれば藪漕ぎは避けられない。来シーズン以降に回そうか、正直かなり迷った。当日朝も決断できず、とりあえず近くまで行ってみて、雪がなさそうなら一般ルートの西ノ又コースを登ることにして出発する。
秋田自動車道を南下し、湯沢市雄勝が近付くと、神室の稜線が朝日に照らされて白く輝いているのが見える。やはり東側にはまだ残雪が十分ありそうだ。よし、北東尾根を登ろう−
役内沢沿いの林道を深く入り、広い川原のある二股付近に車を置いて、林道をさらに役内沢上流方向へ、一段高みへと上がって歩いていく。目安を付けた斜面に取付き、ブナの若木の藪の中を一歩一歩登っていく。尾根らしくなってくると、けもの道なのか少し歩きやすくなった。クマの見事な一物がデンと落ちている。道を作ってくれるのはありがたいけど、会いたくはない。通りますよ〜とばかりに、クマ鈴を振り鳴らす。
尾根はやがて、南西方向へ向きを変えていく。背丈程の笹薮に飛び込むが、ありがたいことに尾根の右手側に残雪が現れてきた。残雪は次第に多くなり、快適に登っていく。振り返ると、ポツンと山小屋を乗せた虎毛山の巨体、そして遥か北方には和賀岳の姿も確認できる。予想通りきつくはない、いい尾根だ。
神室山と三角石山を結ぶ尾根上、1214mピーク付近からは前神室から神室山への主脈がくっきりと見えるようになる。だが残雪もなくなって、笹薮のブナ樹林帯をトラバース気味に進む。尾根の左手に出ると、足元は役内沢へ切れ落ち、いかにも神室の顔だ。やがて夏道(西ノ又コース)を発見、小さな雪渓を上がって合流する。ちょうど御田ノ神だった。
あとは楽勝と思ったが、雪田となっているマミヤ平の先は藪がビッシリ、夏道がどこに繋がっているのかわからない。実は秋田側のメインルートである西ノ又コースを歩いたことがないのだ。
藪に入るよりはマシかと、少し下って雪渓を登ることにした。西ノ又沢上流部は雪渓となっており、アイゼンなら前爪を突き刺して登るような急斜面を、ピッケルを突き刺し、スパイク付き長靴で一気に登る。わずか50m程だが、グングン高さを稼いで爽快だ。花々の咲く草付きの急斜面に上がってトラバース、そして直登、ようやくレリーフピーク付近の主稜線に立つ。鳥海・月山・そして神室山頂から遠く火打岳まで一気に展望が開ける。
山頂でお会いしたのは単独の男性お二人。お一人は火打新道から登って火打・小又・神室と6時間で縦走してきたという猛者だった。微風快晴の山頂に腰を下ろして昼食。神室山頂から天狗森、そして最高峰小又山へと続く稜線の展望は一級品だ。
下山はまず小又山への縦走路を辿り、分岐を左、根ノ崎口への十里長峰コースを行く。しっかり刈払われた夏道だ。下山をどうするのか、山に入る前はもちろん、登っている間も考えていた。この東稜が難しそうなら、前神室を経由するパノラマコースを下って、林道を歩いて車に戻るという選択肢も考えた。だが車を置いた地点に下りる周回が可能なら、それに越したことはない。決め手は、1115mピークに向けてきれいに付いている雪堤だ。北東尾根を登っている時も、もちろん山頂からもその雪堤はよく見えた。そこへ達するまで藪はあるだろうが、山頂からは下り加減だ。その1115mピークから尾根を辿って下れば、無理なく戻れるだろう・・
十里長峰コースを右手に分け、藪に飛び込む。覚悟して臨んだ藪漕ぎだが、ここが一番酷かった。多くの灌木に蔦も加わって、足や腕、時には指まで引っかかる。だが先日の羽後朝日岳のときと違って荷物は軽いし、距離もわずかだ。懸念した岩場のような難所も無い。
尾根の左手、役内沢へ落ちる急斜面に残雪が付いていて、トラバース。このまま下ろうか一瞬思ったが、もしも下りて行ったら、最後は草木の剥ぎ取られた急斜面で立往生してしまうことになるだろう。慎重に前へ進んでいく。
ここはめったに人の入ることの無い秋田県最深部、雄物川源流域だ。どう表現したらいいのかわからない、特別な雰囲気が漂う。晴れているから普段通りに歩いているが、もし深いガスの中だったらどうだろう・・
目当ての雪堤を登り、1115mの高みに立つ。振り返ると神室〜天狗〜小又の主稜が圧巻だ。東側から眺める神室主脈のすばらしさに感動する。1115mピークからさらに東側は、これまでとは違ったおおらかな尾根になっている。右手の高みとの鞍部は、一泊したくなるようないい雰囲気だ。
さてここからは、北に向けて延びる尾根を下る。見事なブナ林が広がり、新緑がすばらしい。幸い尾根の右手に雪堤が残っていて、ぐんぐん下ることができた。藪に入ってからも慎重に尾根を見極めながら下っていく。かすかに踏み跡もあるようだ。途中右手に行き過ぎてしまったが、すぐに修正して尾根に戻る。最後はピッタリ目当ての林道に下り立った。
自分の中で一番うれしかったのは、下山にこの尾根が良いだろうという読みが当たり、そしてピッタリ下りてこれたことだ。登りについては極端に言えば高みを目指していけばいいが、下りは判断力が問われる。この尾根は急斜面もほとんど無く、登りに使っても良いと思う。林道に雪崩の危険が無くなった頃に入山してこの尾根を登り、1115mピーク東側鞍部にテントを張って、神室や軍沢岳をピストンする・・なんていうプランも楽しいと思う。
好天に恵まれて、順調に歩き通すことができた。有り難い。ますます神室が好きになった。
コメント
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一体どこを歩いてるんですか〜!!! まだ春山続いてたのね〜
kamadam ウオッチャーの自分としては、まだ当分目が離せないかな〜
自由自在に天狗のような山行、まさに神業のレベル。前人未到、空前絶後、東北の山はこう歩くんだという教科書みたいなレコですね
この尾根、クマ遭遇率30%、「猛者」遭遇率1%、山ガさん遭遇率だと限りなく0%でしょうかね
(御田の神から夏道行かないで、沢つめて稜線にあがるところも、地味にすごいな〜)
ヤマレコだけに載せるの、もったいない。せめて東北のページのトップにピンで留めておきたい。本格派を目指す若い人に読んでほしい…
1115ピークBC案,大鏑山、そして禿まで届くんじゃないでしょうかね。来年のお楽しみね
kamadamさんは、最上山岳会の「神室」は持っておられるのかな?
次々とお褒めの言葉をいただいて、パソコンの前でペコペコ 恐縮しっぱなしです
天気に恵まれて、たまたま読みが当たっただけなので・・ ホントに天狗にならないよう、気をつけなければなりません
神室はすばらしい山域だから、山ガールさん遭遇率30%ぐらいになってほしいですよネ
でも今回は藪漕ぎで山用パンツが太もものところで破れてしまったので、0%で結構でしたが
ところでkiyoshiさんは会報誌「神室」をお持ちなのですか? 以前、役場に問い合わせたところ、山形の大きな書店にはあると言われ、書店2軒ほど当たったのですが、結局手に入りませんでした
今回登った北東尾根はともかく、下山に使った県境稜線の東稜はバリエーションとして歩かれていて、○○尾根とか名前が付いているのではないかと思うのですが、いかがでしょうか
kamadamさんの記録を見るといつも想像力を刺激されますよ
僕の辿った軍沢と繋げてみたいですね〜
あと、三角石山を通るルートを僕は密かに考えていたりしました
神室の空白地帯、徐々に踏破していきたいですね
沢を歩けない私ですので、役内沢沿いの林道は助かりました。kiyoshiさんがコメントされていた、宮城・山形県境、禿への長〜い稜線も魅力的ですよね
でも今は、tooleさんの超強力な飯豊レコに圧倒されていますよ
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