《屋久島》黒味岳・小楊子川


- GPS
- 80:00
- 距離
- 22.7km
- 登り
- 1,735m
- 下り
- 1,142m
コースタイム
8月17日C1(5:50)→本流(7:30)→たんこぶ岩(12:00)→桃太郎岩が見える巨岩帯(14:00)→桃太郎岩上の右岸テラスC2標高600m(15:40)
8月18日C2(6:00)→こけしスラブ高巻きポイント標高640m。(8:30)→本流に戻る(10:40)→標高800m二股(13:00)→標高C3標高950m(16:30)
8月19日C3(5:50)→花之江河沢分岐(9:30)→F6(11:00)→日本庭園(12:40)→登山道(14:50〜15:00)→黒味岳(15:30)→デポ地(16:10)→林道(18:00)→屋久杉ランド(20:00)→安房→宮之浦フェリー埠頭前公園C4
8月20日宮の浦→鹿児島→大阪→長野
アクセス | |
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コース状況/ 危険箇所等 |
梶田さんが上海に転勤することになり、おわかれ山行として片岡さんが計画した。鹿児島の田中清隆も加わった。僕は博多の片岡さんの家で2泊して、海水浴したりうまい魚を食ったあと、鹿児島本線で鹿児島に向かい、田中君、梶田さんと集合する。高速艇の切符がキャンセルになっていてあわてるが結局みんな乗れた。 宮之浦港では酒をしこたま買い込んでタクシーで栗生、小揚子川林道へとはいる。ほどなく道がガタガタになり、タクシーが帰ってしまった。終点までビールをかついで1時間ほど歩く。沢へは急な斜面を降りなければならないので、暗くなってきたし水がちょろちょろ流れている林道上で寝ることにした。焚き火をしてシチューで晩飯。星がスゴイ。そりゃそうだ。島の回りは海、明かりなどほとんどないのだから。蠍座がやけに高い。南国にきたなーと思う。 2日目いよいよ本流に降りる。薮をこいで100m降り、いきなり15m×2ピッチの懸垂で水面に足を浸す。ぬるい。南国だ、これならいくらでも泳げると嬉しくなる。最初のプールではやくも梶やんが泳ぐが、水流が強く、撃退され、巻いた。植生が独特だ。常緑照葉樹の小ブッシュだがそれほど密生していない。この川は巨岩の沢だ。直径が10mクラスのでかい岩が所狭しと谷を埋めている。この一つ一つを越えるのに、いちいちボルダリングをしなくてはならない。しゃがんだ仲間の背中に乗ったり、空身で抜けてザック手渡しをしたり、隙間の底が10mもあるような巨岩の間を意を決してジャンプして飛びついたり、変態チムニー登りでへそのフリクションまで使ったり、ありとあらゆる汚い手を使ってこれらをクリアーしていかないと、とても時間がたりないのだ。 巨大な杉が見えはじめ、屋久島気分を盛り上げるが、桃太郎岩と呼ばれる、桃を包丁で割って間にチョックストーンをはさんだような巨岩の脇の滝を越えた所でC2とする。くたびれ果てた。盛大な焚き火でマーボー春雨。天場は右岸の高い岩だなの上。日当たりが良くて、とかげができた。梶やんのみやげの上海ねずみのしっぽがうまい。 3日目。今日は花之江河沢まではいきたいと思いながら、出発。いきなり底なしプール。米山がザック乗っかり泳法で対岸に渡る。ザイルで牽いて皆次々にわたる。これならこけしスラブ下の核心部も中を行けるかもしれないと期待していくが、ものを見てがっかり。手前のプールは泳ぎ切れる自身はあるが、取り付いた先の巨岩の間のとい状の滝は登る勇気がない。さんざん迷ったあげく、右岸を巻くことに決めた。登るごとに傾斜は増し、妙なブッシュの中の岩壁帯に迷い込み、いやーな草付きも含め、ザイルを2ピッチ出したが、そのあとは古い大きな杉の切り株のある峠状を越えて難なく本流まで戻れた。最短、ベストなルートだったと思う。この高巻きに2時間を要した。そしてまたまた巨岩ボルダリングの千本ノック。そして次々現れるプール。ばんばん飛び込んで泳ぎまくる。それでも今年は水の量が少ないという。1時になって標高800mの二股。見えるだけでも2段の滝を持つゴルジュを左岸から小さく巻いて暫く進んだ所で天場に良いところを見つけた。少々時間は早いが泊まることにする。今日も心底くたびれたが、焚き火を囲めばバカ話に花が咲く。本日はマーボー豆腐ご飯だ。 4日目。今日中に海まで降りなければ明日のフェリーに乗れなくなるので、ちょっとはやめに起きて出発。といってもちょっとだ。ここからはでかい滝もいくつかあるが巻いたり登ったり。沢床が美しいナメになり、快適に水平距離を延ばせる。苔が厚く、原始の匂いがぷんぷんするナメ床だ。花之江河沢は、倒木に覆われ、第一印象が良くなかったが行くほどにナメが増え、美しくなっていく。花崗岩のナメにはストーンホールが目立つ。50cm程深さのあるそんな穴のそこに沢蟹が閉じこめられていた。井伏鱒二の「山椒魚」を思い出した。 源頭が近づいたあたりは、まるで高級ホテルの庭の様な美しい日本庭園が30分ほど続く。松、杉、しゃくなげの古木が生える間を厚い苔を載せた花崗岩のナメがゆったりと流れている。梶ヤンは「これだけの庭作ろう思たら10億はかかるでー」。そんな中で鹿が一頭死んで横たわっていた。一生をこんな楽園で過ごした幸せな鹿だったのかもしれない。日本庭園が終わると、夏道目指してしゃくなげの密林の猛烈な薮こぎだ。刺のついたツルを含む悪質な薮で、これはけっこうつらかった。道に出て最寄りのピーク、黒味岳を往復する。山頂は花崗岩の固まりで、島を囲む丸い海岸線、水平線と彼方の雲、なんとも素朴で美しい眺めだ。孤島のピークであることを実感する。利尻山と違って東シナ海のなんと暖かそうなことか。下山は南へ安房林道をひた歩きに歩き、夜のとばりが降りてもまだ歩き続けた。疲労でちんたら歩いていた3人を田中君が一足先に屋久杉ランドにつき、タクシーを呼んで迎えに来てくれた。宮之浦では翌日のフェリーに乗り遅れないように埠頭の向いの公園でゴロ寝した。朝焼けの海が本当に美しかった。 ひと月に35日雨が降ると言われる屋久島で5日いて一滴も降らなかった。幸運だった。鹿児島へ向かう船から開門岳を見ていていつまでも飽きなかった。 |
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感想
危険箇所等 梶田さんが上海に転勤することになり、おわかれ山行として片岡さんが計画した。鹿児島の田中清隆も加わった。僕は博多の片岡さんの家で2泊して、海水浴したりうまい魚を食ったあと、鹿児島本線で鹿児島に向かい、田中君、梶田さんと集合する。高速艇の切符がキャンセルになっていてあわてるが結局みんな乗れた。
宮之浦港では酒をしこたま買い込んでタクシーで栗生、小揚子川林道へとはいる。ほどなく道がガタガタになり、タクシーが帰ってしまった。終点までビールをかついで1時間ほど歩く。沢へは急な斜面を降りなければならないので、暗くなってきたし水がちょろちょろ流れている林道上で寝ることにした。焚き火をしてシチューで晩飯。星がスゴイ。そりゃそうだ。島の回りは海、明かりなどほとんどないのだから。蠍座がやけに高い。南国にきたなーと思う。
2日目いよいよ本流に降りる。薮をこいで100m降り、いきなり15m×2ピッチの懸垂で水面に足を浸す。ぬるい。南国だ、これならいくらでも泳げると嬉しくなる。最初のプールではやくも梶やんが泳ぐが、水流が強く、撃退され、巻いた。植生が独特だ。常緑照葉樹の小ブッシュだがそれほど密生していない。この川は巨岩の沢だ。直径が10mクラスのでかい岩が所狭しと谷を埋めている。この一つ一つを越えるのに、いちいちボルダリングをしなくてはならない。しゃがんだ仲間の背中に乗ったり、空身で抜けてザック手渡しをしたり、隙間の底が10mもあるような巨岩の間を意を決してジャンプして飛びついたり、変態チムニー登りでへそのフリクションまで使ったり、ありとあらゆる汚い手を使ってこれらをクリアーしていかないと、とても時間がたりないのだ。
巨大な杉が見えはじめ、屋久島気分を盛り上げるが、桃太郎岩と呼ばれる、桃を包丁で割って間にチョックストーンをはさんだような巨岩の脇の滝を越えた所でC2とする。くたびれ果てた。盛大な焚き火でマーボー春雨。天場は右岸の高い岩だなの上。日当たりが良くて、とかげができた。梶やんのみやげの上海ねずみのしっぽがうまい。
3日目。今日は花之江河沢まではいきたいと思いながら、出発。いきなり底なしプール。米山がザック乗っかり泳法で対岸に渡る。ザイルで牽いて皆次々にわたる。これならこけしスラブ下の核心部も中を行けるかもしれないと期待していくが、ものを見てがっかり。手前のプールは泳ぎ切れる自身はあるが、取り付いた先の巨岩の間のとい状の滝は登る勇気がない。さんざん迷ったあげく、右岸を巻くことに決めた。登るごとに傾斜は増し、妙なブッシュの中の岩壁帯に迷い込み、いやーな草付きも含め、ザイルを2ピッチ出したが、そのあとは古い大きな杉の切り株のある峠状を越えて難なく本流まで戻れた。最短、ベストなルートだったと思う。この高巻きに2時間を要した。そしてまたまた巨岩ボルダリングの千本ノック。そして次々現れるプール。ばんばん飛び込んで泳ぎまくる。それでも今年は水の量が少ないという。1時になって標高800mの二股。見えるだけでも2段の滝を持つゴルジュを左岸から小さく巻いて暫く進んだ所で天場に良いところを見つけた。少々時間は早いが泊まることにする。今日も心底くたびれたが、焚き火を囲めばバカ話に花が咲く。本日はマーボー豆腐ご飯だ。
4日目。今日中に海まで降りなければ明日のフェリーに乗れなくなるので、ちょっとはやめに起きて出発。といってもちょっとだ。ここからはでかい滝もいくつかあるが巻いたり登ったり。沢床が美しいナメになり、快適に水平距離を延ばせる。苔が厚く、原始の匂いがぷんぷんするナメ床だ。花之江河沢は、倒木に覆われ、第一印象が良くなかったが行くほどにナメが増え、美しくなっていく。花崗岩のナメにはストーンホールが目立つ。50cm程深さのあるそんな穴のそこに沢蟹が閉じこめられていた。井伏鱒二の「山椒魚」を思い出した。
源頭が近づいたあたりは、まるで高級ホテルの庭の様な美しい日本庭園が30分ほど続く。松、杉、しゃくなげの古木が生える間を厚い苔を載せた花崗岩のナメがゆったりと流れている。梶ヤンは「これだけの庭作ろう思たら10億はかかるでー」。そんな中で鹿が一頭死んで横たわっていた。一生をこんな楽園で過ごした幸せな鹿だったのかもしれない。日本庭園が終わると、夏道目指してしゃくなげの密林の猛烈な薮こぎだ。刺のついたツルを含む悪質な薮で、これはけっこうつらかった。道に出て最寄りのピーク、黒味岳を往復する。山頂は花崗岩の固まりで、島を囲む丸い海岸線、水平線と彼方の雲、なんとも素朴で美しい眺めだ。孤島のピークであることを実感する。利尻山と違って東シナ海のなんと暖かそうなことか。下山は南へ安房林道をひた歩きに歩き、夜のとばりが降りてもまだ歩き続けた。疲労でちんたら歩いていた3人を田中君が一足先に屋久杉ランドにつき、タクシーを呼んで迎えに来てくれた。宮之浦では翌日のフェリーに乗り遅れないように埠頭の向いの公園でゴロ寝した。朝焼けの海が本当に美しかった。
ひと月に35日雨が降ると言われる屋久島で5日いて一滴も降らなかった。幸運だった。鹿児島へ向かう船から開門岳を見ていていつまでも飽きなかった。
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