秘密の道を歩きました。 〜武奈ヶ岳〜
- GPS
- 06:30
- 距離
- 13.5km
- 登り
- 1,112m
- 下り
- 1,107m
コースタイム
天候 | 台風が近づく中で様子を見ながらの山行。 スタートから金糞峠までは曇りでした。 奥の深谷に下りたところで降り出し、それからは小康状態はあるもののずっと雨模様でした。 ただ風は最後まで弱く、レインウェアさえ着ていれば心配するほどではなかったです。 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2012年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
ダケ道に最近の倒木があり、まだ迂回の踏み後は不明瞭でした。 そのほかは危険箇所はなかったようです。 広谷からイブルキノコバは初めての人にとってはルートが判りにくいかもしれません。 |
写真
感想
今は昔、小学校低学年だった私は他の男の子たちと同じように外で遊ぶのが好きな子供でした。
今から考えるとかなり空想癖があったような子供時代のお気に入りは“秘密の○○”ごっこ遊びでした。
お話やテレビの影響をもろに受けてはスパイや探偵になりきって知らない人の後をつけたり日曜日の校舎に忍び込んだりと、当時はたくさんいた悪ガキの一人でした。
近所の空き地の一角に積んであった資材やドラム缶を勝手に動かしては秘密基地を作っていたのも、同世代の男性諸氏はうなずく人も多いのでは?
何せ「秘密基地」ですからそこに至るには決められた「ルート」があって、その通りに辿らないとたどり着かないことになっていたのです。
近所の空き地ですから大人も子供も誰でも知っている場所ですし、そこで遊んでいるのはみなわかっているのですが、そのルートを通った者にとってはそこは別世界です。
毎日見ている空き地の景色が秘密の世界に変わって見えることで、当たり前の草むらの陰や資材の向こう側を覗くのもスリルを感じます。
悪者が隠れているかも・・・
宝物が埋まっていたら・・・
・・・ずいぶん芝居じみた遊びを飽きずに繰り返していたものですが、子供の頃には日常の風景がいとも簡単に異次元になったことです。
毎日通る道や場所をまるで初めて来たところのように思えてゾクゾクした記憶は微かに自分の中に残っています。
そんな記憶と仲良くしながら山を歩くのが楽しそうでぼんやりイメージしていたのですが、どうやらいい条件の山行ができそうです。
前日の土曜日はいい天気に恵まれてあちらこちらの小学校で運動会をいくつも見かけました。
明けて日曜日は・・・台風が接近中で午後から雨風が強まるとの予報でわざわざ遭難しに行くこともない日です。
ねらい目は早朝から午前中。
もちろん様子を見ながらではありますが、比良の山中を歩いてくることにしました。
この予報では登る人が少ないことは間違いないでしょうし、迷う心配はまずない山域でウロウロ歩きを楽しめそうです。
昼には下山することと決めて暗いうちからイン谷口に待機しました。
明るくなって歩き出したのが6時です。
とはいえこの黒い雲の下で夜が明けたとは思えない薄暗さ。
ヘッデンを使うかどうか考えながら歩いていました。
イン谷口から登るのは久しぶりでちょっとテンションが上がっていますが、今日は意識して歩調を一定に保ちながら登ります。
(天候の急変などでペースを上げる必要があるかもしれないので体力は残しておきたい)
比良にはまだ秋は訪れていないつもりでしたが、山の木々や足元の草の様子は夏とは違います。
微妙に黄色味を帯びた木が混じり、足元には先に色づいて落ちた葉っぱの赤がよく目立ちます。
まだ顕著ではありませんが秋の「気配」はもう感じ取れます。
雨が降りだす前に青ガレ、金糞峠を通過することができたのはありがたかったです。
濡れたガレ場を登るのはかなり気を使いますし、峠手前の急登がぬるぬる滑る状況はできれば避けたいところです。
今回自分が比良を歩いているイメージは、奥の深谷でした。
稜線ではなくて沢を歩いている自分を見たくて来たので、ここが自分にとってのメインです。
この標高ではさすがにガスに包まれて、暗さと白さが共存する狭い舞台です。
人の気配のない、見える範囲では森しかない静けさを存分に感じながら足音も忍ばせるように歩いています。
もう何度も歩いている道ではありますが、今日の天気や自分の心の持ち方が違うので全く初めての道を歩いている気分です。
霧の向こうから何が出てくるのか興味津々で目を凝らし、耳を済ませて歩いているのは冒頭の子供の頃の異次元体験に少し近づけたのでしょうか・・・
「秘密の道」発見者の自分が、もう一人の自分を案内している感覚です。
この谷でとうとう雨に降られて雨具をつけましたが、風がまだ吹かないので雨が何かの邪魔になることはありません。
ガスから次々に浮かび出る風景に気を取られて雨どころではない、妙な高ぶりを感じながら八雲ヶ原に出ました。
週末はテン泊の人で賑わうはずが今日は無人。
料金を取ってもいない、フリーのテン場なのにゴミも落ちていないきれいなサイトです。
akihoさんはじめ管理されている皆さんに感謝しながら使う私たち次第で保っていきたい大事な場所です。
ゲレンデ跡を経て山上へ・・・やっぱり久しぶりの挨拶をしておきたくなりました。
風が強いのかと思いましたがまだ大丈夫です。
八雲から武奈への登りで2人のハイカーとすれ違いました。
終日独り占めとはいかなかったですね(笑)
そこまでは望んでませんが。
山頂から北尾根で細川越に向かおうと下り始めました。
こちらに歩く人は多くないのですが、ショックを受けたのが散乱するビールの缶やゴミでした。
団体さんが尾根に座り込んで飲んで騒いだ跡のようですが、かなり以前のゴミらしいのがそのまま残っています。
この日の私は強くなってきた雨にも気を取られたままここを素通りしてしまいました。
ゴミ入れのビニール袋はザックに入っていたのに、たとえ10分でも時間を使えなかったかと悔やまれます。
今日私が来たことを山に喜んでもらえないのが恥ずかしいことでした。
広谷からイブルキノコバ、八雲ヶ原、北比良峠と辿り、ダケ道を下りました。
ダケ道では今日出会った3人目の若いハイカーとしゃべりながらなんだかあっという間に下りてしまいました。
無事にイン谷口まで下りてホッとしたことでしたが、帰宅途中の大津市内はかなりの風が吹いていました。
私は子供の頃の体験をかなり覚えている方だと思っているのですが、この歳になって再現することはできないのがほとんどです。
思い出す機会がないと記憶も自然消滅するままだと思うのですが、ちょっとしたきっかけで再現できる世界がありました。
雨の中の単独行でテンションを上げて賑やかにとはいきませんが、普段開くことのない抽斗を覗けた気分、悪いものじゃなかったです。
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