巻機山(過去レコです)。
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- GPS
- --:--
- 距離
- 11.8km
- 登り
- 1,445m
- 下り
- 1,444m
天候 | 雨。 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2010年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
左程危険個所はありません。 |
写真
感想
2010年10月9日からの3連休の紅葉最盛期に、巻機山に登ることにした。朝8時、関広見ICから東海北陸道を経て、一路本日の宿泊地である新潟県南魚沼の清水へ。清水に入り、まずは明日登る巻機山の登山口を偵察。この時期、巻機山は大賑わいで、車中泊の人達で登山口の駐車場は一杯になり、溢れた車が道路脇に並んでいるという。ところが駐車場には10台程度の車がいるだけ。天気予報では明日は雨だし、まあ大丈夫だろう。
今晩の宿、「民宿 うんてん」の階段を上がって玄関を開け中に入ると、新聞紙に包まれたものが置いてあり、そこからシシの足がはみ出ている。声を掛けるも誰も出て来ない。大声で呼んでいると、ようやく一人のばあさんが現れて、名前を云うと、「う〜ん、じゃウサギの部屋にしよう。小さいほうのお風呂が沸いているから入って」と、下へ行く階段を指差す。まだ3時半なのに廊下は薄暗く、部屋の入口にかかっている動物の絵を見ながらウサギを探す。ウサギを見つけ、部屋に入るとカビ臭い臭いが立ち込め、窓を開けるとクモの巣が張っている。部屋の中にはカメムシが数匹。戸棚を開けると、さらに強烈なカビ臭さが流れ出し、その中に布団がぎっしりつまっている。男女別の浴室があり、男湯には湯が張ってなく、小さいお風呂とはどうやら女湯の事らしい。女湯で汗を流してから部屋で持参のブランデーを飲む。カビ臭い部屋で飲んでいるよりも、上の部屋へ行ってみることにする。30畳以上あろうかと思われる吹き抜けになった広い部屋、その真ん中に大きな囲炉裏があるが火は無い。誰もいない大きな部屋で寝転んでいると客が入って来る。しばらくしてばあさんがやって来て客を案内し、ついでにわたしに声を掛け、「そこのポットにお茶が入っている。わたしは50年以上民宿をやっているが、こんなに大勢くるのは始めてだ。大勢の客があるときは3人程お手伝いに来てもらっているが、キャンセルする人が多いので今日は頼まなかった」、と云う。「シシを貰ったけど料理するのは始めてだよ。クマならあるけど、あんたはシシを料理したことがあるか?」。「ありますよ、しし鍋ですが」。ばあ、「そうか、鍋か。それは良い事を聞いた」。しばらくするとダイコンとムラサキタマネギを持ってきて、「手伝って呉れ」。ダイコンおろしを作り、タマネギの皮むく。「クマはあるけどシシは始めてだ」と繰り返す。「ゴボウを入れると臭みが取れていいですよ」、ばあ、「そうかそうか、それはいいことを聞いた。ごぼうならある。今日はいったい何人泊まるんだ。3人、4人、4人、3人・・・、で何人だ? まあ適当につまんで食べればいいか」。宿帳も記入せず、何人が泊まるのかもわからないなんて、何と浮世離れしたところだ。どうやら息子が招集されたらしく、じいさんと一緒に台所で仕事をしている。息子、「むらさきタマネギはサラダ用のものだ」。ばあ、「しし鍋に入れるんだ」。また客が入って来て、「一か月前に予約した○○ですが」、「部屋はないけど」、「ええっ!」、お客は仰天するが、ばあさんにとっては一ヶ月前の予約など無いも同然。ビクともせず電話を掛け、「うんてんのばばあだけど、お客さんを案内するから」、と云って別の民宿への道を教えている。次に来た客にはじじいが応対し、お客と一緒に外へ出て行く。お客を別の民宿に連れて行ったのである。ばあさんが、「夕食の準備が出来たのでお客を呼んできて呉れ」。「夕食が出来たらしいですよ」、と一部屋づつ声をかける。客が集まって来ると、「外にあるビールと酒を運んで呉れ」。それぞれが玄関にあるビールを何本か掴み、台所からステンレスのコップと栓抜きを運び、奥の広間に並べられた長いテーブルに着く。床の間が3っつも横並びにある大きな部屋、太い柱に磨き上げられた塗りのふすま、立派な欄間。聞くと江戸時代、なんとか云う殿様が住んでいた家を、このじいさんが1億円で購入し、ここに移築したものだと云う。客は全員で十数名、見知らぬ人達が集まって酒宴が始まる。テーブルの上には山菜料理が山盛り。ビールも八海山も飲み放題。そして具沢山のしし鍋も運ばれ、じじいも加わって宴会が続く。ばあさん78歳、じいさん81歳。ばあさんは、じじいが鉄砲で仕留めて、結婚指輪の代わりにばあさんにプレゼントしたというクマの毛皮を持ち出してみんなに見せている。たらふく食って、たらふく飲んで、カビ臭い布団にくるまって眠りについた。
翌朝は4時に起床。テレビの天気予報では今日は1日中雨と報じている。ま、行ける所まで行って、調子が悪ければ戻れば良いと、いつもと同じように気楽なもの。囲炉裏の部屋へ朝飯と昼飯のオムスビをとりに行くと、傍に宿帳が置かれてあるので記入する。宿代8千円は昨晩払っておいたし、まだ4時半を回ったところなので、何も挨拶せず宿を出る。昨日偵察しておいたので、真っ暗な中でも余裕を持って登山口まで運転。駐車場は心配していた状況とは程遠く、数台が停まっているのみである。車の中でオムスビを1個頬張り、5時半、カッパを着込み、ヘッドランプをつけて登山口に入る。割引(ワリメキ)沢コースへの道を分け登る頃には空も白み始め、ヘッドランプはすぐに不要となる。小降りの雨も止み、40分程したところでカッパを脱ぐ。三合五尺の柱が最初に出会った合目標識。実は暗くて見過ごしていただけで、下山時に三合目、二合目の柱があるのに気が付いた。急坂を汗をかきかき登る。右手に水が流れる音。長〜い、何段にも連なった滝が、昨夜の雨で水量も増えたのだろう、勢いよく流れ落ちているのが見える。雨に濡れた黄色がかった薄茶色のいかにも滑りやすそうな土。その上に刻まれたスプーンカットに足を載せ、ゆっくり登る。何人もの人がわたしを追い越して行く。6時50分、5合目に到着しひと休み。地図を見ると、「焼松」と記されているが、それらしき松は見当たらない。雑木林の切れ目から米子沢の滝が見え、周囲の山々には紅葉が始めっている。再び急坂にいどみ、水音が左側から聞こえ出すが、ブナと雑木林に遮られて景色は見えない。やがて尾根の幅が広くなると勾配も緩やかになり、6合目に到着。地図に「六合目展望台」とあるように眺望が開ける。紅葉に染まった山肌の中、一か所だけ木々の無いあの尖った岩稜が天狗岩だろう。その上にある筈の割引岳は雲の中、そこから流れ落ちる沢はヌクビ沢。しばし景観を楽しみ、元気を取り戻して出発。いつしか灌木地帯となり、錦糸銀糸に彩られ、今や紅葉真っ盛り。灌木地帯から砂礫の開けた場所に出ると、鮮やかな紅葉の向こうに前巻機山が現れ、そこは7合目。8時25分、岩に腰を下ろし大休止。オムスビを食べながら地図を見ると、コースタイムは3時間20分。いつもより早目のペースで頑張って登って来たが、コースタイムより早かったことに気を良くし、これなら予定の11時までに頂上登れそうと元気が出る。ここからは急登の連続だが、時間に余裕が出来たのでペースを落としてゆっくり登る。やがて朽ちかけた丸太に土留めされた階段が現れ、それを少し登ると8合目。階段に腰を下ろして小休止。新しく丸太で土留めされ階段状になっているが、ネットで覆われているところを見るとこれはどうやら植生回復のためのよう。一番右側の古い丸太で土留めされた階段を調子良く登る。ササの中の階段を登り切り、前巻機山の頂上に至る。「九合目」の白い柱の横に、「ニセ巻機山」と記された柱があるが、ニセ巻機山とは何と失礼な。地図には、「前巻機(ニセ巻機)」と記され、本名は前巻機で、ニセ巻機はあくまであだ名である。家の表札にあだ名を書く奴はいない。頂上の柱はさっさと書き改めるべきだ。ここから避難小屋迄は、本日始めての下り。朽ちた木道は雨に濡れ、ここ下るのは物騒だ。大丈夫そうな木道は使うが、大概は水のチョロチョロ流れる木道の脇を下る。避難小屋まであと少しの所まで来ると、「平成22年度」と刻印された出来立ての新しい木道となる。避難小屋を横目になだらかな木道を辿ると、黄金色にたなびく草原に、点々と池塘が現れる。階段状の木道を登り、階段が途絶えて階段状の道になる。これを登ると広場があり、「巻機山頂」の柱が立っているところを見るとどうやらここが頂上らしい。まだ10時、昼食飯には少々早いが、ベンチに腰掛けオムスビを頬張る。辺りはガスが立ち込め越後三山も平ヶ岳も、目の前にある筈の前巻機さえ見えない。2人連れが上がって来て、「ここが頂上ですか?」と聞く。わたしと反対側のベンチに座っていたおじさんが、「最高点はもう少し向こうにあります。ケルンがあるだけですけどね」と云う。「ん?」わたしはてっきりここが頂上だと思ってゆっくり休んでいたのだけど。ここまで来て最高点に行かない手は無いと、ザックをデポして緩やかな丘を登る。赤く染まった草紅葉の中、10分程行くとケルンがある。平坦な道の横ちょにケルンがあるだけで、なんの印も無いので先に進む。背の低い緑のチシマザサが混じった黄金色の草原とキラキラ輝く池塘、その中を木道がずーっと続いている。この木道、下ってばかりで、どうやら先程のケルンが最高地点らしいと思い直し、引き返すことにする。頂上広場へ帰る途中、ガスがさーっと流れ、前巻機が現れる。そこへ続く、左にぐるっと回った尾根の斜面は黄金色に染まり、その中程に避難小屋も見える。立ち止まって眺めているとあっという間にガスが流れ込み、至福の時を消し去ってしまう。靴紐を締め直し下りにかかる。トントンと調子良く下るが、これから先は長丁場、こんな下り方がいつまでも続くわけが無い。いずれ膝が笑いだすのが落ち、ゆっくり下る事にする。避難小屋でトイレ休憩。九合目、八合目はやり過ごし、急坂を下って七合目で小休止。どこまでも続く下りに嫌気がさすも、六合目はやり過ごし、この間2度滑って尻餅をつき、五合目で大休止。小雨が降ったり止んだり、黄色い土の斜面はストックも滑り、支えにならない。黒い土の場所や根っ子の階段を選びながら、下る速度は嫌でもゆっくりとなり。もう一度尻餅をつきはしたが、14時28分、無事駐車場に帰り着いた。
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