大朝日岳 雨(過去レコです)。


- GPS
- 56:00
- 距離
- 16.0km
- 登り
- 1,672m
- 下り
- 1,671m
天候 | 雨、雨、雨。 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2009年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス
飛行機
|
コース状況/ 危険箇所等 |
とくに危険な個所はありません。 |
写真
感想
09年7月17日から19日まで、久しぶりにアミューズトラベルのツアー、「ゆっくり登る大朝日岳」に参加した。前日の7月16日夕、トムラウシでアミューズトラベルのツアーの遭難事故があったと報道していた。大朝日岳もひょっとして中止になるかなと思ったが、何の連絡もないので17日朝セントレアまで出掛けた。アミューズトラベルのカウンターでは、特に何もなかったようにチケットを渡され空港内に入った。待ち合いロビーでテレビを見ていると、トムラウシ遭難のニュースが流れている。どうやら死者も出たようである。梅雨前線が停滞する悪天候の中、JALイクスプレス機は揺れながら飛び、前線を避けて新潟方面から仙台空港に10分遅れで到着した。出口で待っていた添乗員はトムラウシの事については何もふれず、11時過ぎ、福岡からの便を待ってバスに乗り込んだ。添乗員は大阪支店の薮木さんとそのアシスタント。参加者はアミューズトラベルの札幌、名古屋、大阪、福岡の各支店が集めた女11名、男9名の20名。東北自動車道から山形自動車道へ、月山やこれから登る朝日連峰を車窓から眺めながら走り、寒河江ICでガイドの鈴木さんを乗せ、総勢23名となった。鈴木さんはマナスルや冬季ローチェなど8000m以上の山にも登り、二つの7000mの山に初登頂した経験のあるベテランガイドで心強い。初日はバス移動だけ、時間はたっぷりあるので歴史民族資料館に寄って時間を潰し、本日の宿泊地である小寺鉱泉に向かった。バスが入れる所まで行き、帰りの入浴セットを車内に預ける。鈴木さんが、「水場は豊富なので飲み水はそんなに持っていかなくて良いですよ」と云うので、ペットボトル1本と1Lの水筒だけにする。ザックをかついで200mほど川沿いの山道を歩くと、右に朝陽館の古びた建物が見えてくる。左手真っ直ぐに行くと鳥原山、右手の橋を渡ると朝日岳、それぞれの登山口となっている。橋を渡って朝陽館に入る。2階の一部屋に5人が案内され、まずはお風呂へ。風呂は一個だけ。洗い場は3人で一杯、風呂桶は2人で満杯。男性から順番に入り、あがったら次なる人に声を掛けるという具合である。同室者は北海道の二人そのうち一人は医者らしい、北九州と博多が一人ずつ、そしてわたしは本州真中から。夕食は山菜主体であるが結構美味く、缶ビールと持参の焼酎は屋久島の「三岳」を飲み、ほろ酔い加減で横になる。なんだか腰の調子が悪いので、ロキソニンを1錠服んだら眠ってしまった。
翌朝はゆっくり6時に起床。6時50分から朝食。ご飯は2回お代わりし、体調は良好であるが念のためロキソニンを服む。血圧の薬も服もうと思ったが無い。おかしいなちゃんと2錠持って来た筈なんだが、無い。昨晩ロキソニンを服んだつもりだったが、どうやら血圧の薬を服んだらしい。血圧の薬で腰の調子も良くなったなんて、これぞプラセボ効果を実感。今日は降水確率90%、起きた時は陽も射していたが、しょぼしょぼと雨が降り始め、出発するときは大粒の雨。朝陽館の前の小寺川は土色に濁って勢い良く流れている。7時50分、川から離れて登山道に入るといきなりの急登である。先頭はガイドの鈴木さん、真ん中にアシスタント、最後尾に藪木さん、わたしはその前でいつものようにマイペースで登る。暗い雑木林の中をジグザグに登り、20分ほどで小休止。雨も小止みになりカッパの上着を脱ぐ。ヨツバシオガマ、シラネニンジン、ミヤマクルマバナ。展望の無い相変わらずの雑木林の中、時々勾配は緩やかになるが、総じて急登。一服清水で再び休み、ここで給水と思いきや、ホースの先からは水一滴も出ていない。こんなに雨が降っているのにと思うと、ガイドの鈴木さんが、「ホースに葉っぱでも詰まったのでしょう」。ま、まだお茶もポカリもたっぷりあるので大丈夫。雨も大降りとなり再びカッパの上着を着る事になる。防水スプレーが効いて雨粒がはじけるが、次第にべちゃーとなって只の雨合羽と化す。1時間ほどのところでおばちゃんが吐いている。コリャいかん、今なら戻った方が良いのになと思っていたが、ザックの荷物を取り出してアシスタントのザックに詰め込み、身を軽くしてアシスタントが付き添って再び登り始める。登山口から2時間ほどで日暮沢分岐に至り小休止。しばらく登ると三沢清水、この水場はたっぷりと水が出ていて、冷たい水で喉をうるおす。支尾根に取り付くと風も出始め、ヒメサユリが現れ始める。ここら辺りでしか見られないという、ちょっと小さめの淡ピンク色の可憐な花があちこちに咲いている。この花を目当てに登る人も多いとのことであるがちょっと萎れかけ。これはウラジロヨウラク。ハクサンシャクナゲは生気が無い。11時半、小寺山山頂に到着。座り込んで、宿が作ってくれたオムスビを取り出し、昼食とする。支尾根を風にあおられながら小朝日岳に向かって歩く。小朝日へ登る道と、頂上を巻く道の分岐で、二つのグループに分かれる。わたしは小朝日に登るグループに入り、ガイドの鈴木さんを先頭に9名で直登。12時半、小朝日の頂上に登りつき、ひと休み。一瞬ガスが晴れ、大朝日岳が姿を見せる。小朝日の急斜面を下り、熊越の鞍部に降り立つ。鞍部から登り始めると間もなく小朝日を巻いてきたグループに追い付き、ペースがゆっくりとなる。これはアカモノ。ここら辺りのヒメサユリは生き生きと輝き、それにに混じってニッコウキスゲも今が盛りと咲いている。銀玉水で小休止。少し下ったところにある湧き水は朝日連峰一の美味しい水との触れ込み。ん、柔らかくって冷たくって、たしかに美味い。ここが最後の水場、水筒にたっぷり給水。ミヤマキンポウゲが雨に濡れてピカピカと輝いている。銀玉水から階段が続き、やがて避難小屋がぼんやりと姿を現す。写真を撮ろうと思うが、我がデジカメはすでに死んでいる。小屋の横にザックをデポし、手ぶらで頂上を目指す。ここからは朝日連峰の主尾根、横殴りの雨、物凄い風に吹き飛ばされないよう、立ち止まっては登る。ミヤマウスユキソウが咲いているが、それを楽しむ余裕は無い。頂上は雨と風、全員集まっての記念撮影も早々に下山する。避難小屋に入りびしょびしょのカッパを脱ぎ、土間に掛けようとするがすでに一杯。人のカッパのうえから掛け、ビチョビチョと雨が入った靴をそこら辺に置く。アミューズに割り与えられたスペースは2階の一角と中2階。大勢の人がすでに占拠しているが、添乗員が説明して場所を空けて貰う。添乗員が湯を沸かし、それぞれが持参の食料を持ち出して食べる。わたしはまず、ペットボトルに半分以上残っていた「三岳」のお湯割り。牡蠣の缶詰、トリの揚げ物、五目飯。時間はまだ7時前であるが中2階にマットを敷いて、シュラーフを被る。人声でなかなか眠れない。うつらうつらと夜を明かす。
まだ暗いうちからごそごそと起き始め、ヘッドランプをつけてお粥を食べる。濡れたままのカッパを着て、びちょびちょの靴を履き、4時半に外に出る。薄暗い中、周りを見渡せば山また山。今日の降水確率は90%との事。ガイド達が鳩首会談。予定どうり、中岳、西朝日岳から日暮沢小屋に下るグループと、昨日登ってきた道を下るグループに分けると云う。普通はグループを二つに分けるなんてことはしないのだが、少々足を引っ張る人もいるしトムラウシの事もあり、こういう選択をしたのだろう。さてわたしはどうしたものかと悩むが、主尾根の風と雨を考えると腰が引ける。もう大朝日岳は登ったのだし何も無理することは無いと考え、腰抜けグループに入る。腰抜けグループはガイドも入れて9人、ゆっくり下り始める。すぐに雨が降り出し、大粒の激しい雨、遮るものの無い主稜線、立っていられない程の横風が襲ってくる。小朝日を巻いて下り、小寺山の登り。これからがまだまだ長い。日暮沢分岐からは風は遮られるが、水の流れる急坂をダブルストックでゆっくり下り、無事登山口に降り立つ事ができた。朝陽舘の横の小寺川は、溢れんばかりに濁流がごーごーと音を立てて流れていた。迎えのバスに乗り込み、日暮沢小屋へ向かう。日暮沢小屋のすぐ手前の道路は冠水し、勢い良く流れている。添乗員がバスから下りて様子を見に行き、運ちゃんが意を決して水の中に車を進める。渡り終わって乗客から拍手が沸く。日暮沢小屋で、無事下山した健脚組と合流し、温泉で汗を流す。仙台空港に着いた時は雨も止み、心配していた欠航もなくセントレアに降り立つ事ができた。
帰宅して見たアミューズトラベルのカタログには、「大雪山 旭岳からトムラウシ山縦走」というのがあり、体力度は4っつ星、技術度は2つ星で、対象は70歳以下となっていた。15名限定で、ガイドを入れ18名、そのうち8名が亡くなったという。死因は低体温ということであった。ツアー登山なので安心していたが、山はそれ程甘くは無く、十分な準備が必要であることを改めて感じさせられた。
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