硫黄岳(過去レコです)。
- GPS
- 32:00
- 距離
- 12.9km
- 登り
- 1,284m
- 下り
- 1,290m
天候 | 1日目 雨から雪に。 2日目 快晴。 |
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過去天気図(気象庁) | 2007年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
左程の危険個所はありません。 |
写真
感想
八ヶ岳に登ろうと、1週間前に本沢温泉に予約を入れた。この1週間熱が出ていたので、なるべく短い距離ということで桜平から登ることにした。2日前、突然沖縄付近に台風が発生し、太平洋沿岸に沿って北上しているという。2007年10月27日、岐阜は雨が止んでいた。6時に出発し、中央高速で恵那山トンネルを抜けたあたりから雨が降り始めた。ナビを夏沢鉱泉に合わせ、諏訪ICからメルヘン街道を走る。メルヘン街道から右の脇道に入ってしばらくすると、ナビは、「目的地周辺です」と案内を終えてしまう。はて困ったもんだと、地図を取り出して思案する。桜平手前の「三井の森」にナビを設定し別荘地の中の道を行くと、唐沢鉱泉という案内が出始めるが夏沢鉱泉という文字は無い。別荘地が終わるとようやく唐沢鉱泉と夏沢鉱泉の分岐に出て、ここで始めて夏沢鉱泉という案内があり、まずはひと安心。道は車一台が通れる荒れた林道であるが、山は今が盛りと黄色に染め上げられている。車は揺れに揺れて桜平に到着。車の中で雨具を着込んで、降りしきる雨の中、車止めのある林道に入る。林道をしばらく登ると、終点にソーラーパネルを張り付けた夏沢鉱泉の小屋がある。中に入って玄関土間でカッパの上着を脱ぎ、靴を脱いで食堂に上がる。薪ストーブが炊かれた温かい食堂で昼飯にうどんを注文する。数人いる客はみんな主人と顔なじみのようで、わたしにも話し掛けてくる。主人が家で栽培したものだと言って、食べられるよと、ほうずきを差し出す。ほうずきを食べるのは始めてだが、酸っぱくってミニトマトの食感があり、結構旨い。出されたうどんは見かけはまずそうだが、食べてみると旨い。温かい部屋でたっぷりと休憩をとり身体もなまってしまったが、取りあえず本沢温泉までは行かないといけないので、シブシブ雨の中に。林道は終わり、小石がゴロゴロし、水が流れる山道となる。夏沢沿いの山道を少し登った所に、オーレン小屋の水力発電所がある。ここから小屋まで電気をあげているとのことである。所々にちょっとした登りがあるが、総じて緩やかな登りで疲れることは無い。オーレン小屋に入り、ここでも上着と靴を脱ぎ、薪ストーブの周りに陣取る。濡れたタオルをストーブにあてると湯気が出て、タオルはすぐに乾く。コーヒーを飲みながら主人と話しをする。「今日は稜線へは行かない方がいい。風邪でもひくのがおちだ」と云う。わたしはもう風邪をひいているのでこれ以上悪くなっては大変だと、当初、本沢温泉まで行って時間があったら登ろうと考えていた天狗岳は断念する。オーレン小屋からは少し急になった山道を登り夏沢峠に向かう。峠の手前から雨はみぞれに変わり、峠では雪となった。単独行の若い男が一人いて、わたしに話し掛けてくる。山に登ろうかそれともどこかの小屋に行こうかと悩んでいるので、オーレン小屋の主人が話していたことを教えてあげる。それでも決心がつかないようで、わたしはその男をおいて峠を下りに掛かる。林の中に入って風はおさまるも、雨は一向に止む気配は無い。二人連れの男が登ってきて、「下で滑落があったし、道の真ん中に人間の倍ほどの鹿がいてなかなか動かないので注意したほうが良い」と言う。こんな所で滑落なんて、この人は滑落という意味がわかっているのだろうか、カモシカは見てみたいな、とか思いながら下っていく。滑落場所もわからず、カモシカに遭遇することもなく、野天風呂を右下に見て、峠から1時間ほどで本沢温泉に到着。雨が降りしきる中、カッパやスパッツが外の軒下に吊るしてある。玄関先でカッパ、スパッツ、靴を脱ぎ、こんなことで乾くことは無いと思いつつ、わたしも軒下に吊るす。案内された新館一階の一間には暖房器具は何も無く、雨に打たれて来た身には寒すぎる。とるものも取りあえず温泉に直行。鉄分の入った温泉に漬かり芯から温まり、石鹸が使えないため風呂の湯を頭からかぶるだけにとどめ、それでも汗を流してすっきりとなる。部屋の前の廊下にファンヒーターがつけられており、これ幸いと軒下のカッパを回収し階段につるして乾かす。温かくなった身体でブランィーを飲んでいると眠くなり、夕食までまだ2時間、ちょっと昼寝をしましょうと布団にもぐり込む。1時間半ほどして目を外にやるとあたり一面は銀世界と化し、大粒の雪が降っている。あっという間の出来事である。ここでこんなに積もっていては、頂上はいったいどれほどのものか、明日は峠を越えて帰るだけにしよう、と硫黄岳登頂を半ば諦める。夕食時、食堂に集まった人達は突然の冬景色にいちおうに驚きあっている。16~7名の団体さんは大阪のアミューズの企画で、添乗員の女性は今夏、朝日〜雪倉〜白馬縦走でご一緒した顔見知りの方であった。どこから来たのかと尋ねると、本沢から入ったとのことである。夕食時に生ビールを一杯、部屋でブランデーを飲み直し、八時に就寝。うつらうつらと夜を明かした。
朝、雪は止みもう溶け始めている。明るくなってくると青空が広がっているのがわかる、今日はいい天気になりそうだ。外に出るとアミューズのガイドの三浦さんが写真を撮っている。三浦さんは昨夏、立山~薬師縦走の時のガイドで顔見知りなので話しをする。ツアーの参加者は誰もアイゼンを持って来ておらず、今日は山登りは断念してこのまま本沢に戻ると言う。わたしは、「夏沢峠までは登らないといけないので峠でどうするか考えます」というと、「稜線は狭いから気を付けて、ツアーなのでわれわれは止めますが」と言って別れる。6時からの朝食時をさっさと食べ終え、部屋でザックを詰め直し、カッパを着込んでいざ出発。秋と冬が同居している。雪の積もった硫黄岳を背にカラマツの黄葉が朝の光に輝き、今日一日の好天気を約束してくれる。眼下の野天風呂の周りには人がいるが、誰も入っていない。日本一高い所にある野天風呂とのふれこみであるが、雪見をしながらの温泉はきっと気持ちの良いことだろう。暗い林の中の登山道、枝に積もった雪が水滴となって落ちてくる。すぐに汗を掻き始め、カッパを脱いで厚手のシャツだけとなる。昨日下りてきたと同じ道であるが今日は登り、おまけに雪が積もっている。ゆっくりと滑らないように注意しながら登り、1時間半ほどで夏沢峠に登りつく。やまびこ荘にはモモンガが住み着いていて、間近かに見る事ができるとの事であるが、鍵がかかっていて入れない。隣りのロッジ夏沢も締め切ったままで誰もいない。オーレン小屋方面から夫婦連れ、その後もう一人の男性が登ってきて、皆さん山に登れるかどうか思案している。「オーレン小屋のおやじさんが、登りはいいけど下りは危険だと言っていた」と言う。わたしは、雪もふかふかしているし、何せこの好天気、行ける所まで行ってみようと、目の前のピークを目指して登りに掛かる。林間の道はすぐにジグザグの急斜面となり、滑らないよう深い踏み跡を一歩一歩確かめながらゆっくりと登る。日の当たらない林の中の雪の登山道、足先が冷たくなってくる。振り返れば雪を冠った浅間山が見え、根石岳に隠れていた天狗岳、蓼科山が頭を見せ、登るに連れその全容を現して来る。途中、降りてくるグループがあり、「頂上までいけますか」と尋ねると、「頂上までこんな調子です」と教えてくれ、それじゃ行ってみようかなという気になってくる。暗い林の中の道を大分登り、ピークを右に回りこむと朝日が当たって急に明るくなり、透き通るような雲ひとつ無い青空の下、右手前方に目指す硫黄岳が横たわり、そこに向かう真っ白な雪山にトレイルが続いている。なだらかに見えるがとんでもない。30cm以上ある深い雪を一歩づつつま先で蹴り入れ、足場を固めて登るのはしんどい作業である。真っ白な雪の上に座り込んでひと休み。遠くに雪を抱いた中央アルプス、その右手に御嶽山、乗鞍岳、北アルプスの山並みが続く。下から夏沢峠にいた夫婦連れが上がってくるのが見え、これを機会に再びトレイルを辿る。息が上がるが頂上は一歩一歩近づいてくる。もうすぐ頂上というところで下ってくる男が話し掛けてくる。昨日夏沢峠でどうしようかと迷っていた単独行の男性で、「昨日は結局オーレン小屋に泊まりました。頂上はものすごく綺麗な景色が見えますよ。あの端の方まで15分ほどですが、そこまで行くと富士山がみえます」と教えてくれる。頂上に着くと今まで見えなかった南八ヶ岳が眼前に姿を現し、横岳、赤岳、中岳、阿弥陀ヶ岳が連なりながらそれぞれが荒々しく大きく聳えている。赤岳と阿弥陀ヶ岳の間からは権現岳がのぞいている。南八ヶ岳全貌。振り返れば蓼科山の左手眼下に霧ヶ峰、車山の茶色の高原が広がり、はるか向こうに雪を冠った妙高、火打、高妻の山々が浮かんでいる。浅間山の右手はるか向こうに浮いているのは苗場山だろうか。360度、どこを見渡しても透き通るような青空の下、絶景が広がる。いける所まで行こうと、とうとう頂上まで来たのだが、この素晴らしい景色に大満足、登って来て良かった。それにしてもアミューズの人達はこの景色を見ずに引き返すはめになってしまい可哀想に、と思うとわたしの喜びはさらに増してくる。爆裂火口の絶壁を見下ろしながら、溶岩に積もった雪の上を歩いて行くと、横岳に隠れていた富士が徐々にその姿を現して来る。火口の端まで行くと、大きな富士がその全容を惜しげもなく見せ、その昔、富士と八ヶ岳がその高さを競い合っていたというのも納得がいく話しであると思わせる。硫黄岳山頂からの絶景を充分目に焼きつけ、下りにかかる。登りはあんなにしんどかったのに、30分ちょっとで夏沢峠に降り立った。ベンチに腰をおろし、ラーメンをこしらえて昼食とする。デザートに、雪を握ってコンデンスミルクをかけて作った即製掻き氷のウマイこと。昼食を食べ終え、下山開始。林の中の雪道、時折り枝から落ちる水滴が背中に入り、ゾミゾミ。オーレン小屋はやり過ごしそのまま調子よく下る。夏沢の流れは昨日よりも勢いを増している。雪の量も徐々に少なくなり、夏沢鉱泉に至る。薪ストーブの炊かれた暖かい部屋で、紅茶を飲んで温まる。桜平には雪は無く、荒れた林道をゆっくりと、黄葉を楽しみながら下る。
三井の森を過ぎ、尖石の「縄文の湯」で汗を流しさっぱりとなって、中央高速をひた走り帰宅した。雨あり、雪あり、青空あり、黄葉と雪山を一度に体験し、硫黄岳では素晴らしい景色に恵まれ、大満足の2日間であった。
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