6歳児とゆくキノコといきもの大宝庫・清八山&本社ヶ丸
- GPS
- 09:54
- 距離
- 12.4km
- 登り
- 1,104m
- 下り
- 1,142m
コースタイム
天候 | 晴れのち曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2020年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
かえり:JR笹子駅 |
コース状況/ 危険箇所等 |
整備は完璧、危険箇所ほとんどなし 清八山登山口からすぐのところに2箇所の渡渉あり (水量が多く、気をぬくと足が水にインしそう) |
その他周辺情報 | またしても温泉に入れず 予定では宝鉱山に降りて都留・より道の湯に行くはずでした |
写真
感想
おもしろい名前の山があるんだよ。こんど登ってみようよ。
そんなふうに誘い、「なにそれおもしろいぜったいいく」と息子から返事をもらっていたのはちょうど1年ほど前のこと。
ほんじゃがまる。ホンジャガ、なうえにマルときたもんだ。面白そうすぎである。
だがその当時はまだ山登りを始めたばかり、どう計算しても下山は日没に間に合わない。まだ無理、だった。
それから息子はたくさんの山を登ってきた。登りは遅くとも、くだりで巻きかえすこともできるようになった。
さあ、それじゃ行こうか。1年越しの、ほんじゃがまる!
……と計画したのは1週間前でした。前日に妻が「この梅雨の晴れ間は海しかない!」と発案、即採用。予約した特急券を1週間ズラし、雨が降らないことを祈りながら過ごした。
前の晩まで、この日の天気予報は小雨。まあダメなら低山でキノコさがしするかー、と思って早朝起きてみたところ、なんと快晴!
早朝出発に巻き込まれてご立腹の妻を尻目に、おにぎりをひっさげて特急に乗り込んだ。
ほんじゃがまる。ファニーな響きだが、漢字で書くと本社ヶ丸となり一気に神々しい1630mの山だ。
しかし今回はもうひとつ狙う。おとなりの清八山に先に登り、ほんじゃがまるを経て宝鉱山に降りる。都留市で湯に浸かり、体をほぐして帰る。なかなかよいプランじゃないか。
けれど、息子にとって、山にはほかの意味がある。そう、昆虫ワンダーランドなのだ。深い山であればあるほど、そこにいるいきものは面白い。
さらに、息子にとって、山にはもうひとつ意味がある。そう、きのこファンタジアなのだ。梅雨の湿気でよく育っていること間違いなしだ。
だから、息子の興味がいろいろに向いて予定より遅くなる、それも当然ありうる。というかそっちのほうがはるかに蓋然性が高い。
息子のリュックにはこっそり、虫取りアミと虫いれ(卓上焼き海苔の空きケース)、キノコ運搬ツール類(袋とアルミホイルと緩衝剤)をセットしておいた。ほとんど空気なので軽い。もすこし大きくなったら水筒くらい持ってね?
JR笹子駅からバスで「追分」下車。もちろん歩いてもよいのだが、無駄なアスファルト歩きはなるべく減らしておこうという作戦である。国道沿いのクモノスやアリノスにひっかかられてはたまったものではない。クモとかアリで温泉逃すのはイヤよ!
バスを降りてすぐ、畑のところで息子の足が止まる。イヤな予感がしたその瞬間、息子は見たことのないビッグサイズのナミアゲハを捕獲していた。お、おう、すぐ捕まえられるならええんやで、、、
アゲハをリリースし、日差しのなかを歩いてゆく。草むらでバッタ(息子はトノサマだというが)やモンキチョウ(モンシロよりハイグレード扱い)をバシバシ捕獲していく。うん、これも狙いだから、スピード出せとは言いづらいな。
虫がないところではタラタラ歩いて全然進まない息子さん。やはりアスファルトは苦手なのだ。と、うしろから初老の男性が追いついてきた。息子に話しかけてくれる。いくつ?1年生か、すごいね! 鼻高々の息子はおじさま相手になにやら自慢をしていたが親の自分でさえよくわからない内容だった。
堰堤までが散歩コースだという男性とお別れし、ついでにコオロギを捕まえて進む。「ここの登りは本当にきついよ、がんばって」と言っていただいた。
本当にきついのか、、、
日差しを受けるアスファルトの道は、気温以上に暑い。日陰を縫うように歩いて、まだかなあまだかなあと思い始めたころに変電所に到着した。電気の音がバシバシ言っている。
変電所の先の橋を渡ってついに登山ぐ、、、でっかいトカゲ発見! 息子と一緒に捕まえる。さすがにこれはお持ち帰りしたいという息子を、いやこんな大きい子は生きていけないよ、と説得しリリース。
改めて、登山口! 登山者カウンターが2山ぶんある。それぞれ2回押して登山スタート!
と、まだ簡易舗装の林道である。かなりボロボロではあるが足元はコンクリート。えーまだやまみちじゃないのー、と文句を言っている奴がいる。
やがて分かれ道に。沢に向かう左と、山を上がってゆく右、地図もってなかったら絶対右選ぶよねっていう左正解の二股であった。道しるべが立っていて、見ればわかるけれど。
そしてすぐに沢の渡渉。飛び石の間隔が広いので、歩きやすいように石を設置する息子だが、石が小さすぎて沢に沈んでしまう。何度やっても沈んでしまう。
かわいいなお前!!!
すぐにあきらめてジャンプで渡る息子であった。
しかしまたすぐ後に! 一段レベルを上げた渡渉! 今度は大人もヤバいぜ!
またしても息子は、前よりも大きな岩をうんとこせ、と設置するが、やはり沈んでしまう。無念そうである。ほんと、こんな父で申し訳ないんだけど、
かわいいなお前!!!!!!
ふたりでよく考えて、飛べそうなところを見つけてジャンプ! 無事、靴を水没させずに通過することができた。
こんな渡渉のあとも、依然として簡易舗装は続いていた。これはさすがになんとかならんか、と思ったぐらいのところで舗装が終わり、再度登山者カウンターと鹿よけネットが登場。やっと本格的な山登りか、、、
と思ったらまた車の通れる道、まだかよって思ったタイミングで道しるべが登場。ヤブのほうをさして「清八山」。まじかよ。
ヤブというか松?の茂ったところを抜けて少しジグザグ登ると、早くも高山っぼい雰囲気に! いきなりこれかい! 晴れてて遠くまで見えてきもちいいー!
このあたりにはクマイチゴ、ニガイチゴの実があった。クマイチゴは本来の甘味がなく、懲りた息子はニガイチゴをパス。父は種を噛み砕いてしまい、ニガイチゴの由来である鮮烈な苦味を味わっていた。
もうひとつあったきれいなイチゴをいただいて(これはおいしかった)進む。道は稜線をまっすぐ登っていくようだ。
特に厳しい箇所もなく、たんたんた高度が上がってゆく。息子は次々にキノコを見つけ、大好きなザトウムシと戯れている。遊んでばっかりいると、温泉入れなくなるぞー! さあ進、、、
め!?!? 足が重い! なんじゃこりゃ、体の調子悪かったかな、うまく整えてきたのにな、、、
って。まっすぐ登る稜線が、かなりキツい斜度になってる! しかも長い! 登っても登っても終わらない!
もーぱぱどうしたの、おそいよ。言うほうと言われるほうがついに逆になってしまった。しょうがないな、ちょうどいいべんちがあるからやすも? はーい、すみません、、、
今回初登場のトレイルミックス(ドライフルーツとナッツ)ややみつきホルモン(コンビニの菓子コーナーにあるハツとガツ)を食べて、息子は充電満タン!
特急と快速、どっちがいい? 特急なら黄色の葉っぱ、快速なら緑をふんでね! というので黄色を踏みました! 爆速で上がっていく息子! わーぜんぜんついてけません!
そのあいだにも息子は生きもの捕獲の手を緩めない。光り輝くオオセンチコガネ、少し小さいセンチコガネ、飛び跳ねるカエルを旅の友に加えていく。
何度も繰り返し休み、茶をガブ飲みし、息子に呆れられて目論見より2時間、予定より1時間の遅れで清八峠に到着。すまない、少し休ませて、、、
ホルモンをやたら気に入った息子、ガツとハツどっちがでるかなほるもんくじ! なんてやっている。お前強いな、この坂登ってなんともないのか、、、!
時間の余裕はぜんぜんない。すぐ行かないと。清八山はすぐそこだ!
このさききけん、ってかいてある?と息子が聞く。道しるべに「清八山」と「この先危険」とあった。なんで読めるのか、、、?
少しの登りと、ヤマレコの地図上では山頂になってるピークを過ぎれば、すぐに清八山山頂! やりました、ついに清八山に登りました!
遠くの山々まで見渡せる絶景! 少し広い頂上広場で青い空と深緑の山々を見ながらごはんを食べよう!
父のおにぎりはいつもどおりかつお梅、そして新規開発のツナマヨであった。しかしツナマヨは全ての油分が米に吸われてパサパサ、米は油でバラバラという泣ける仕上がりであった。コンビニのあれ、どうやってんだよー?
さあしかし、行程はベタ遅れだ。割けるチーズをいただいたら今日のラスボス、ほんじゃがまるに向かおう。出発するときに恐ろしいほど軽装の男性とあいさつを交わした。
清八峠を走り抜け(※息子)、ずんずん進むと岩場に到着。かなりしっかりした岩だけど、左右が切れ落ちてないから怖くない。後ろへの滑落だけ気にしてくれ息子よ、そろそろ30キロの君が落ちてきたら体のどこかが完全にやられてしまうよ。
とはいうものの驚くべき身軽さでひょいひょい上がってゆき、見晴らしのいい岩盤の上に。うわーすごい景色だね、あああでも崖に近寄らないでスキップしないで!
ほんじゃがまるってきれいなとこだねー! という息子さん。大変申し訳ございません、まだ先にござりまするよ。えーまだなのー! と岩の上でしばしフテ寝する息子。
気を取りなおしてもういちど岩クライミング! 危険じゃないけど取手や足置きが少なくて頭を使うやつだ! でも息子はひょいひょいだ! 体軽いっていいな、もう真剣に家系ラーメンとか食べるのやめよう。
岩の隙間から、紫のきれいなお花。スミレだよスミレ、かわいいね、という息子。うーん、と思い後で調べると「ウチョウラン」という子でした。
岩を越えて岩を越えて、やっとのことでたどり着きました、ほんじゃがまる! 正しく書くと本社ヶ丸!
このときには雲がでてきて、山頂は雲海に包まれていた。こういう景色もいいね、天上世界みたいだ。
おやつを少し食べて、ここでオオセンチコガネたちとバイバイ。最後に記念撮影をさせてもらった。
さあ、進もう。なんともう4時、ちゃんと帰れるのかこれ? ともあれ迷ってるヒマはないから行くぞ、て、そっち絶対違うよ道じゃないよ! ずんずん行かないで!
鶴ヶ鳥屋山方面はさきほどまでとうってかわって岩場はなし、林のなかのゆったりした道。霧が立ちこめて、涼しくて、なんとも心地いい。こんなところを息子と歩けるというのはとても幸せだ。だが時間的には相当ヤバい。
相当ヤバいんだけど、それでも虫たちには出会い続ける。センチコガネを拾い、ニワハンミョウを観察する。ここでしかできないことは全部やろう。今は日の長い季節、きっとなんとかなる。
都留市側、宝鉱山方面(温泉はこっち)への分岐を泣く泣く通り過ぎたあたりから、簡易階段が現れる。
こんなところに階段を取り付けたのは大変だったろうけれど、残念ながらかなり破損が進んでいる。歩ける部分もあるけれど、ほとんどは杭が突出してしまい、その横に踏み跡ができている。でもせっかくだからとあえて階段を歩いていたら霧の湿気で見事スリップ、あと1cmズレたら杭に背中を打ち抜かれていたような恐ろしいコケかたをした。思わずギャーとか言ってしまい、息子に驚かれた。
大きな木のうろに頭をつっこんで遊ぶなどして進んでいると、突然視界が開ける。高圧鉄塔のまわりが整理されていて、見晴らし台のようになっている。はるか頭上で高圧電線がバチバチいっているのを除けば、最高に気持ちの良い場所である。
当然あたりは草むらなので、当然息子は虫取りをスタート。バッタをとらえ、オオセンチコガネを登山道から外してやり、カマドウマの長ーい触角を観察する。時間、、、まあもういいか、、、
さて下山再開。と、進行方向に山が見えますね、、、ええええここまできて登りですかあああ! もう足がぜんぜん動かない。息子もマジか、みたいな顔をしている。
ぐったりしている僕たちの前に、この日最高の生きものが登場した。岩の上でのんびりしている、ミヤマクワガタさん!!! 父にとって実に30年以上ぶりの野生クワさんである。かっこいいねえ、と息子。そうだよ虫ならカブトよりクワガタだよ!(※父の出身地・北海道にカブトはいません)
ここを登りきって、笹子駅への降下点となる角研山山頂に到着。もうわーいとかいってる感じじゃないね、けっこうヘロヘロだね。レッツ笹子駅!
山頂近くのやや急なところを抜けると、のんびりした尾根道になった。サクサクおりる息子に何度か遅れをとり、だいじょうぶ?という顔をされながらの下山となっております! 今回ダメだとうちゃん。
ベニタケ系やテングダケ系の食べられないキノコたちがたくさん出迎えてくれる、のんびり山道。ときどきカエルがジャンプして、そのたびに息子が追いかけていく。ねー息子さん、疲れてないのですか?
一生懸命歩き続けて、林道に到着。やったねおりたね、という顔をしている息子だが、すまんまだまだ全然先だ。
林のなかの小ピーク・庭洞丸を過ぎると少し急なくだりに。破壊の天使・ドクツルタケや大きさが目立つナカグロモリノカサなどのキノコと出会いつつ、息子は大物のカエルを取り逃して憤っている。倒木がいけない、倒木のせいでカエルがすきまに逃げてしまうんだと、ひたすら倒木にクレームをつけていた。
小さめの鉄塔を過ぎたあたりからは、かなり急なくだりに。日の長い季節とはいえ、6時半を回ると森の中はほの暗くなってくる。あとはどんどん進もう、日が落ちきる前に。
林のなかのジグザグ急降下をひたすらに進み続け、やっとのことでアスファルト道に到着。ああ、本当に今日はよく歩いた。
あとは線路沿いのこの道を、笹子駅に向かって歩くだけ。電車が行ってしまわないように祈りつつ、灯りのともりはじめた駅を目指した。
そうしてついに駅に到着! そしたら電車がホームに止まってた! いそげいそげ走れ!!
最後の力をふりしぼってホームを駆け抜け、電車に乗ることができた。あとはのんびり帰るだけだ。
9時過ぎから歩きはじめて、19時過ぎに駅到着。都合、まるまる10時間の冒険だった。本当の本当によく歩いたよ、息子さん。今日は長かったね、と言うと「いつもよりおやまがたかかったからじゃない?」と。ええはい、そうなんですが。
思っていたよりハードな登りだったこと(そこで父がへばってしまったこと)、虫ゲットに制限をかけなかったこと。さらには長い行程のせいでくだりのスピードが出せなかったこと、で予想より長くかかってしまった。
けれど、下界では巡り合えない生きものたちにたくさん出会うことができた。息子にどれがいちばん感動したかをきくと「でっかいナミアゲハとったこと」だという。あっ、それ山のぼる前のやつだね!
またひとつ、素敵な冒険ができた。次は少し楽なところにしようか。それとも、もっとハードにいく? また一緒に考えてみようね。
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