7歳児とゆくはじめての3000m世界・乗鞍岳
- GPS
- 03:44
- 距離
- 6.3km
- 登り
- 394m
- 下り
- 382m
コースタイム
- 山行
- 3:10
- 休憩
- 0:32
- 合計
- 3:42
天候 | 快晴 ときどき雲が覆いかぶさってきた |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2020年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス 自家用車
乗鞍観光センター↔︎畳平はアルピコ交通のバスで。人が多いのになぜかBダイヤ(本数減)。復路は10台での運行 |
コース状況/ 危険箇所等 |
快適 |
その他周辺情報 | ガストホフ千石@のりくら温泉 グリンデルワルト@すずらん温泉 どちらも素敵なお宿でした |
写真
感想
初秋の4連休、しかも後半は晴れの予想。これはどこかに行かなくては。たぶん日本列島の8割くらいの人がそう考えたことだろう。
山歩きの達人である義母との合流をねらって長野に狙いを定める。しかしコロナの影響は強く、義母は参加を断念。
かくして、山のことをさっぱり知らない我が3人家族は乗鞍岳に登ることになったのである。
乗鞍にした理由は……ええと、聞いたことある名前だから……
そんなもんである。長野の高原、安曇野から乗鞍あたりに遊び、泊まって、軽めのやまのぼりをしよう。そんなとき、高度3000mながら登山ルートの高低差300mちょっとというお気楽度No.1百名山はぴったりなのだ。
新宿から松本まで、特急あずさで向かう。あずさには「全然止まらない」やつと「各駅みたいに止まる」やつがあり、前者だと2時間半のところ後者は3時間かかる。82号だ72号だという番号の臨時のがそれだ。なお奇数列、CD席が富士山がよく見える席である。この日は見えなかったけど。
松本からはレンタカーで。国立南アルプス公園できのこ探しをしたり、安曇野のおいしいイタリアンをいただいたりと高原ライフを満喫。
山向こう、車でわりとすぐなので新穂高ロープウェイにも乗ってみる。降り口からは西穂高岳に登れるが、今回は様子見だけ。記念撮影のおじさんが完全に岐阜弁で、ここは長野でなく岐阜だと思い知る。行ったことのない土地に来たはずが、いつのまにかよく見知ったばあちゃんの地元。新鮮味がない。
ともあれ乗鞍高原に戻り、ペンションに泊まって、さあ乗鞍岳に登ろう!
山頂に近い登山口・畳平まで、乗鞍観光センターからアルピコ交通のバスで向かう。だがセンター近くの駐車場はどいつもこいつも完全に満車。しかたがないので2キロほど先、善五郎の滝入口の駐車場に車をとめる。2キロ、ひとりで歩いて観光センターに小走りで戻るハメに。何の罰ゲームなのか。
この日、ものすごい人出にも関わらず、バスの運行は本数の少ない「Bダイヤ」。Aダイヤなら出る9:00のバスも9:30のバスもなく、8:00の次は10:00。なのでえらく長い行列ができていた。
観光センターにあるカフェが、コーヒーをタンブラーに入れて渡してくれる。山の上で熱々のコーヒーが飲める、これはいいサービスだ。おやきも買い求めたが、あんこ味がなく息子は拒否。野沢菜という野菜が入るおやきなど何が面白いのか、と考えているようだ。これは父母でおいしくいただく。
数台ぶん、補助席までみっちり客を乗せたバスは森を抜け、森林限界を超えて絶景の中を進んでいく。ものすごいところに来たな、と思っていると畳平に到着。
どこから登るかよくわからない……ので、階段を降りるルートを選択。どうやらお花畑を通る道のようだが、花は時期でないようでほとんどなし。そのかわりに、いったん階段で降りたぶん、のぼりになっている。
おりてくる人も多く、道を譲ったりしているうちに息子はどんどん先に行く。待て待てひとりで行くな、と走って追いかけたら……息が! できない! 空気をどれだけ吸っても、吸えていない感じ。これが薄い空気ってやつか! 10分ほどゼーゼー言い続け、おさまった。
ものすごくゆるやかな砂利道に出る。道の両サイドがコンクリートになっていて、すかさずそこを歩く息子。落ちたらあぶないからやめれ、って止めたところ、熟練のハイカーがそこを通っていった。うーん、まあ、砂利より歩きやすいよね。
山小屋「肩ノ小屋」につくころには、「おなかすいた」しか言わなくなっていた息子。チップスをあげてもだめ、おなかすいた。これから山登りだというのに腹にモノ入れるのはどうかと思ったが、小屋でカレーうどんを食べさせる。飛びつく息子。しかし父母のカレーそばも食べたくてどんぶりを動かした息子、あえなく上にかかったカレーの7割ほどをこぼしてしまう。烈火の如くキレる妻、ごめんねって言いつつうどんを食べる手を止めない息子。逃げ出したい父。
さあ気を取り直して、乗鞍岳に登ろう。というか乗鞍岳というのはカルデラのピークをまとめた呼び名で、今回登るのは正しくは「剣ヶ峰」。つるぎがみね、ではなく、けんがみね。そんなことも知らなかったわたくしたちであります。
肩ノ小屋から上が、この剣ヶ峰登山の本番。ガレっガレの道をひたすらに登ってゆく。行き交う人が多く、うまくよけてすれ違わないと転んでしまいそう。いつも人のいない山ばかり登っている我々には新鮮である。
最初は礫、それが小さな岩になっていく。そのどれもがトゲトゲで黒いザ・溶岩石だ。この夏、同じように溶岩石からなる真鶴半島の海でコケて腕を思いっきり削ったので、この石のヤバさは熟知しているつもりだ。転ばないように気をつけようね。
小刻みに休憩、息子は都度お茶を飲む。どこで止まっても、下を見ると絶景なのだ。なんて場所! そしてできるだけ一定のペースでのぼっていく。
空がいちめんに広がり、地面の色が白く変わって、さあ山頂!!
と思いきやここは蚕玉岳(こだまだけ)。という名前も後から知ったのであって、なんとなくピーク的なところという感じだった。
ただここに来ると、それまでの登山道からは見えなかった、裏側のカルデラが一望できる。人が立ち入ることのできない、草原と池。こんな景色、東京じゃ見れないね。(当たり前です)
と、雲がカルデラの側から覆いかぶさってきた。文字通りガスのように、もくもくと流れていく。下から見たらわたあめみたいな雲が、目の前でいま君が見ているやつなんだよ。へー、と面白そうな息子。
どうやらここから最後の登り。道がふたつに分かれていて、木のふだに「←乗鞍岳 頂上小屋売店」とある。んー、売店はいいか、と思って右のルートをとったところ、年配の男性からイヤミを言われた。登りは左だ、と。いや、間違えたのは悪いがイヤミを言うのはどうなんだ。一瞬、雰囲気が険悪になる。
※この件、左まわりルールなんてものは存在しない、と記載されているレポートがありました。神主さんに確認をとったとのことです。参考にさせていただきます。
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-1545905.html
それにしても、デマかよおい。
気を取り直して売店のほうへ……と、今度は息子が「おしっこしたい」。えええええ!
もう下山しよう、という妻。いやあと数十メートルで降りるんかい、がんばろう、という父。さっきのイヤミ(かつ誤りの)おっさんのせいでイライラしてたのもあり一触即発ムードが漂うが、息子は「がんばる」と。OK、あとちょっとだよ。
コケモモを見つけ、鳥が飛ぶ(ライチョウじゃない?違うかな?)のを眺めながら岩を登っていくと、小さな祠。やった、山頂っ! 息子はもちろん父母にとっても人生初の、3000メートルである。
と、行列ができている。なんだろう、と一応並んでみると、山頂標識での記念撮影列だった。ハイカーさんたちが交互にカメラをお願いしあいながら、乗鞍岳山頂の板をもって写真におさまっている。我々も写真をとってあげ、とってもらう。
ここからはカルデラも、山の向こう側もよく見える。鳥が巣と思しき岩陰からさかんに飛んでは戻っている。3000メートルの山頂にあるものとしてはずいぶん立派な神社と鳥居がある。
しかし喫緊の課題は、息子のおしっこプロブレム! 神さまにあいさつをして降りよう!
神社のところから降りていくと、自動的に「下から見たときの右ルート」になる。まあたしかに一方通行のほうがより安全そう。けれどやはり、こちらをふつうに登ってきた若者たちがいた。うん、君らは悪くないよ。
岩場もくだりも絶対の自信をもつ息子、ひょいひょいとくだってゆく。蚕玉岳直下の岩場も、前を歩く人とは別ルートをとるようにして距離をとりつつ追い越してゆく。必死についていく父母。
いつのまにか、息子はおしっこのことを言わなくなっていた。真剣に岩くだりをしていたら忘れてしまったようだ。のどかわいた、お茶ちょうだいなんて言っている。じゃあひとやすみしよう、ほんとは山頂で飲みたかったコーヒーをここで飲もう。
何度かの休みをはさみつつ、着実に降りてゆく。いつしか岩の道から細かい礫の道になっている。岩よりこっちのほうがよく滑るので気をつけないと、と思っていたら案の定妻がコケていた。
肩ノ小屋が目に入ると、息子は何のために急いでいたのか思い出した様子。ダッシュでトイレに向かう。
小屋を後にすると、そこからはゆったりとした砂利道で畳平へ。10分で登れる富士見岳もあるけど、バスの時間を考えるとちょっと無理そう。
さっき通らなかった道で、長野と岐阜の県境、そして日本でいちばん高いところにあるバス停を通り、鶴ヶ池を見て畳平……と、これまたえらい長い行列ができている。こんなにたくさんの人が登ってたのか。
結局、バスは10台編成での運行となった。おつかれさま、帰り道は寝ていこう。と、父は変なところに車を置いた以上、終点ふたつ前のバス停で降りなければいけない。寝られない。いっしょにおりる!と言っていた息子はスヤスヤである。妻に託し、「すずらん橋」バス停で下車した。
駐車場までの道はゆったりとしたくだり。ただ歩くのはつまらないので道端を見ながら歩いていたら、イグチやらハツタケやらのキノコが大量に生えていた。
こうして、家族全員初体験の3000メートル登山は終了した。息子にどうだったのか聞いたところ、「けしきがよかった」「ふじさんのれんしゅうになった」「くうきがうすかった」とのこと。まあ、そんなもんだ。
300メートル程度の高低差とはいえ、薄い空気とガレ&ザレな道のおかげでそれなりに負荷のある登山だった。いろいろといい体験ができたと思う。次回からは、息子がどんぶりを押したらすぐにおさえようと心に誓った。
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