7歳児とゆく空と紅葉とラスト爆登りの笠取山
- GPS
- 07:18
- 距離
- 10.7km
- 登り
- 798m
- 下り
- 800m
コースタイム
- 山行
- 6:10
- 休憩
- 1:07
- 合計
- 7:17
天候 | 晴れのちくもり |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2020年11月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
整備は完璧 作場平登山口〜小さな分水嶺:整備完璧、急坂のいっさいないファミリー向け登山道 小さな分水嶺〜西峰:脚がすくむような急斜面、直登ではないからよいものの 西峰〜笠取山頂上〜水干分岐:一瞬だけど、滑落すると谷に落ちるような岩場を通る。一転してハードな山に 水干分岐〜笠取小屋〜一休坂:整備完璧、急坂のいっさいないファミリー向け登山道 |
その他周辺情報 | 大菩薩の湯 山から降りてくるとそこにある公営温泉。日が落ちると暗くてやってないように見えるけど大丈夫 完熟屋 大菩薩の湯からまっすぐ10分くらい走るとあるほうとうのおいしいお店。「一味家」なきあとこのエリアでのほうとう美味い店暫定1位(我が家調べ) |
写真
感想
笠取山に行こう。
そう思っていたのは、この土曜日のことだった。
紅葉が美しく、絶景も堪能できるというこの山、事実上車でしかアクセスできないらしい。
そんなわけでレンタカーを意気揚々と借りたものの、その日中央道はGoogleMaps上で東京から上野原まで真っ赤という恐ろしい渋滞。道志村に行き先を変えて下道で向かったところ、無事息子が車酔いを訴え愛川公園でお遊びの日になっていた(楽しかったけど)。
こんどのおやまは車はやめて電車にしようか、と息子に話したところ、いや車がいいという。ならば早起きしかない。時間が早ければ中央道もそこまで混まないだろう。
翌日の支度をすませて就寝、5時に起きておにぎりを作り雑炊用のダシをとっておく。妻は息子を
たたきおこしつつ雑炊を仕立てて容器につめる。僕が車を借りてきたところで雑炊とねむたい息子を車に積み込んで6時半に出発した。
今度こそ、の笠取山である。渋滞のない中央道はとても快適、妻と息子は朝ごはんに雑炊を食べた。高速運転中の僕はそのにおいをかいだ。勝沼で高速をおり、大菩薩峠方面へ。
しかし、問題がひとつあった。朝早く出てきたのでトイレを済ませていない。コンビニなさそうだ、困った、と思っていたら「この先最後のコンビニ」と書かれた看板を発見。よっしゃ、と思って進んだけどコンビニなんてなかったよね。
どうしようか、と思っていたところに、「無料休憩所」「休んでいってください」という看板が。ありがたく! 使わせてもらいます! なんとウォシュレットつきのピカピカのトイレ、これを無料提供しているとはどこの天使なのかと思った。
しかし、その直後に悲劇が息子を襲う。
川から戻ってきた息子、目にいっぱい涙をためている。見ると、すねにざっくりと刺し傷が。鉄の階段でころんでしまい、突起を刺してしまったようだ。すねに穴があいている。ちょっとこれはつらい。
普段めったなことでは泣かない息子が泣いている。よほどに痛いのだろう。傷口を消毒しキズパワーパッドを貼る。少なくとも血は出なくなったので、息子は安心したようだ。なぜか妻が泣いている。
足の状態をみて、歩けないくらいならやまのぼりはあきらめよう。あとは本人の意思だ。
去年5月に息子とおりてきた大菩薩峠登山口をなつかしく横目に見ながら通り過ぎる。かなり山の中に入ってきたところで、わらび餅メーカーにして温泉宿の「はまやらわ」を発見。帰りに寄ろうと思って通過したら妻が金切り声をあげた。はい、戻って買おう。
まだ8:30くらいだったが、わらび餅は売ってもらえた。温泉は日帰りはナシ、1日1組のみの受け入れで営業しているとのこと。いいな、ここ。息子は楽しそうにはねまわって、「はくとう ってなに?」(白糖)などときいている。まあ大丈夫なのかな。
ぴかぴかに整備された大菩薩ライン(国道411号)から、林道に分け入ってゆく。ヤブの中のような道を進み、いやこんなところにほんとに人は来てるの、なんて思い始めたころに車がたくさんとまっているのが見えた。笠取山への登山口、作場平橋駐車場である。
息子はというと、痛がりはするもののやまのぼりへのモチベーションは失っていない。ケガを悪化させるわけにはいかないので、次のように決めた。
・無理をしない
・痛みが増えるようならすぐ引き返す
・うしろから押すなどのヘルプをする
ケガしてる子供に無理やり登山させるバカな親、というポジションはごめんである。
幸いにして、笠取山の登山道は傾斜がものすごくゆるい。息子は「いたいなーいたいよ」などと小声でつぶやきながらも進んでいく。あしがいたいからきゅうけいしよう、とたびたび言ってきたけれど、この登山道には要所要所でベンチが設置されていて、うまいこと休みながら進んでいくことができた。
急坂だという一休坂コースは帰りに使うことにして、ヤブ沢コースを進む。どれだけ登っても急な登りは出てこない。秋の陽が差し込む林はまだ残る赤や黄の葉が見事で、ふわーっと枯れ葉が舞い降りてくる。細い沢の清流がきらきら光る。気持ち良すぎる、なんだこの山。
息子には、足の痛みが少しでもマシになるようにと、つえを作って渡した。シラカバの伐採枝から作った、白く光るつえだ。ゴージャス。
これまでのやまのぼりでもつえを作ったことはあったが、だいたいは炎の剣となるばかり。やまのぼりのヘルプアイテムとして機能したことはなかった。
体の少し前の地面にさして、それを後ろに押すようにして前に進むんだよ。何となくわかったような、わかってないような感じで「すこしらくになった」という息子。しかしその10分後にはおちばあつめ道具と化していた。あるいは清流つつきの道具。
少し強めの風がふくと、枯れ葉がぶわーっと落ちてくる。圧巻。そして枯れ葉キャッチゲームのスタートである。息子と妻が枯れ葉を追いかけるところを撮っていたら息子に「パパもやれ」と言われた。足はあまり気にならないようだ。
つえで落ち葉をあつめて「ふまないでね」なんてお遊びをしながら進んでいくと、稜線とベンチが見えてきた。ヤブ沢峠だ。わらびもちを食べてひと休みしよう。なお「はまやらわ」のわらびもち、激ウマである。
ヤブ沢峠からは山小屋のためと思われる林道状の道を歩く。車の道ゆえ、傾斜はほとんどなし。剣のまねをしていたら笠取小屋に到着してしまった。
ここには立派なトイレとベンチ、山小屋と風呂などがある。歩道も木がしきつめてあり、ちょっとした高原のリゾート地のようだ。山梨の山奥にこんなところがあるなんて!
トイレをすませて先に進む。相変わらず傾斜はかなりゆるいけれど、木の道が少し歩きにくい。やがて雁坂分岐を過ぎ、「小さな分水嶺」が現れた。かわいらしい小高い丘、今日のごはんはここにしよう。
小さな分水嶺。ここに降った雨が、富士川、荒川、多摩川にそれぞれわかれて海に向かうのだそうだ。ここでまずはおにぎり、そしてカップめんをいただく。見晴らしは抜群、吹き抜ける風が気持ちよくて少し寒い。息子は元気にはねまわっている。
さあ、ごはんのあとは頂上へのアタックだ。草原を進むと、最後の登り坂が見えてきた。
……。なんじゃ、こりゃ!!!!
小規模ながら、ものすごい角度で坂が天に伸びている。ここをジグザグに登るらしい。
いったん谷のようなところに出る。さびた謎の機械が置いてあり、息子は即飛び乗る。そして後ろ向きに落っこちる。妻がギャーーと叫ぶ。先行のパーティーから「大丈夫ですかー!」と声をかけられる。大変申し訳ございません。
最後の超急登。まっすぐの直登ではなくジグザグなので危険度はそうないけれど、かなり苛烈である。いきなり高度をあげるので、途中で振り返るとけっこうこわい。
「あしがいたい、やすむ」と言ってはごろっと寝てしまう息子。あとちょっとだよ、後ろから押すから頑張って! それともここであきらめておりる?
と、がぜんやる気を出す息子。つえをうまく使いながら、自分の足だけでどんどん登る。そしてついに、
笠取山に登りました! ワンダフル絶景!
ここで妻が「時間がヤバい」と言い出す。そしてちょっと残念なお知らせ、ここは笠取山「西峰」、ほんとうの山頂はまだむこう。
なにそれ!!と不満そうな息子と妻。ごめんね、でもそういう山なのよ。
笹やぶの中の道を進むと、大きな岩が。その裂け目に足をのせて回り込むように越えていく。足を滑らせると谷底に落ちそう! なんだ、このいきなり中級者向けコース!
ごく短いあいだながら、およそファミリー向けとは言えない難所を通る。小さな分水嶺あたりまでとのあまりの違いにびっくり!
ほどなくして、笠取山山頂に到着。こんな道が長々と続いたらどうしようと本気で思った。そしてなかなかの眺望、よく見ておこう。
山頂を越えて進むと、少し急な短いくだりのあと唐松尾山へのルート、ついで一ノ瀬集落への下山道と分岐。山頂を巻くようにして、笠取小屋方面に向かう。息子は「いたみがましてきた」という。おいマジか、と思ったが、どうやら「ましになってきた」のつもりのようだ。
途中、「水干(みずひ)」という、多摩川の出発点を通る。あのデカい多摩川の最初がこれなのだ。なんとなくピンとこない顔をしてる息子さん。
少しくだったところには、多摩川の水源になる遊水があるようだ。しかし時間に余裕がないので無念のパス。
このあと道は小さな分水嶺のところでのぼりに通った道と合流。木道をおりてゆく。と、キューッと大きな鳴き声。5頭の鹿ファミリーが林のなかにいた。あちらも「ほらほら、あれが人間の家族よ」って観察していた様子。
笠取小屋に戻り、その奥から一休坂コースに入る。案内板には「急坂なので下りに使おう」的なことが書いてあった。少し覚悟をしておく。小屋から少しくだったところに水場がある。ペットボトルに少しばかりいただいてゆく。
とてもよく整備された緩やかな坂道。ヤブ沢コースよりも谷間な感じがするものの、あまり差はないようだ。さすがに走りはしないけれど順調におりてゆく息子。
ミズナラとカエデ、モミジが落とした葉で世界が埋まっている。トレースさえ見えないほどのいちめんの落ち葉、たくさんあつめて空中に投げる。息子が2歳ぐらいからずっとやり続けてきた、ハッピーバースデーごっこである。
急坂の到来を覚悟していたけれど、結局それらしい坂のないままに一休坂分岐に到着。どうやら「ヤブ沢コースより斜度がある」程度の意味だったようだ。ここに急坂の注意書きを入れるより、西峰下の激登りとか山頂付近のヤバい岩場のことちゃんと教えてよね。
もとの道に戻ってきた。さっきは足痛いって言ってここで休んだよね、さっきここで青い鳥見たよね、さっきこの「森はダム」って説明板読んだね、などなど、息子は細かく思い出しながら歩いていく。いつもよりかなり饒舌なのは、きっと足がもう痛くなくなってハッピーだからだろう。
ほどなく駐車場の車が見えてきて、登山口に到着。やったね! よく頑張った!
このころにはあたり一帯は深い霧に包まれていた。というか雲なのかな。視界は真っ白、林道を走っていくのがけっこう怖かった。
さて温泉だ。大菩薩ラインに出て、すぐに甲州市営の「大菩薩の湯」に到着。ここまでの間に珍しく寝てしまう息子、ケガしながらの山登りは疲れたよね。おつかれさま。で、温泉についたぞ起きろ!
大菩薩嶺に登ったときにはスルーしてしまったので、来てみたかった温泉なのだ。しかし陽が落ちた中でも建物はかなり暗い。思わずやっているか確認してみたが、どうやらこれが普通らしい。
湯につかりながら、息子に「今日はケガしてるよにあんな高い山のぼってすごいね、がんばったね」というと「きょうのはたかいうちにはいんないでしょ」とピシャリと言われてしまった。あ、はい、こんど高いの用意しときますね、、、そして息子はキズパワーパッドがまったく湯を通さない(つまり痛くない)ことにとても驚き、たいへん喜んでいた。ああ、そのためにとうちゃんこれ常備してんのよ。
寒いからと露天風呂を拒否られたまま湯から上がり、帰路へ。と思ったら、息子が「え、ほうとうは??」という。さっき即寝するくらいだからまっすぐ帰るかと思ったけど、山梨にきてほうとうを食べないのは許されないことのようだ。
大菩薩の湯から国道をまっすぐ10分ほど走ると、ほうとうのおいしいお店「完熟屋」がある。かつて勝沼にあった名店「一味家」を愛していた我が家だが、この春訪れたときはコロナによる長期休業中(のちにそのまま廃業)。美味しくない某チェーン店ではないところを、と探し当てたのがこの完熟屋だった。
自家製味噌使用、すりだねが相当ウマい。なにより変な観光客向け豪華ほうとうみたいなのを置いてない。好感度しかない。甲州エリアの暫定ベストほうとう店としておこう。
ほうとう1杯を平らげ、本日がんばったで賞の桃ジェラートをいただいた息子、帰りの車ではまた即寝であった。コロナ期以来久しぶりに小仏トンネル渋滞ナシの快適なナイトドライブ。
息子、ケガしても折れない丈夫な心と体に育ってくれているようだ。それがとてもうれしく、またケガした児童に登山を強要したことにならずにほっとした。山はどこまでも美しく温泉とほうとうまで得られて、今回もケガ以外見事にうまくいった山行となった。
これからは何としても、やまのぼり前の余計すぎるアクティビティは体をはって阻止すべし、と心に誓った。
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