神室山 国道108号より秋田・山形県境稜線往復
- GPS
- 13:05
- 距離
- 16.0km
- 登り
- 1,434m
- 下り
- 1,514m
コースタイム
- 山行
- 9:35
- 休憩
- 0:09
- 合計
- 9:44
- 山行
- 3:40
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 3:40
天候 | 13日〜快晴、14日〜曇り時々晴れ(視界は良好) |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年02月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
雪山バリエーションです。 |
写真
感想
神室連峰の稜線は美しい。その山々や稜線に至るまでの多くの尾根もまた、スッキリと明瞭だ。神室の稜線に魅せられて少しずつ自分なりに歩いてきたが、やりきっていない宿題のように心に引っかかったままのルートがあった。国道108号鬼首道路から取りつき、秋田・山形県境の分水嶺を西に辿り、主峰神室山に登頂するルートだ。このルートは長く、上部には細い稜線も待っている。tooleさん始め多くの岳人が登ってきており、私もいつかこのルートで神室山に登ってみたいという憧れは持ち続けていた。
天候や雪面の状況など、かなりの好条件で、何より自分自身の体力が充実している時でなければ、歩き切ることはできないだろう。先日、2シーズンぶりに登った雪山では、改めて体力の低下を思い知らされた。言うまでもなく、山は逃げないが自分の状況は変わるのだ。
ところで、米山悟著「冒険登山のすすめ 最低限の装備で自然を楽しむ」(ちくまプリマー新書)では、イグルーの作り方が詳しく紹介されている。私も山中でイグルーを作り、一度泊まってみたい・・必要となるノコギリは庭木の剪定で折ってしまっていたので、新しく購入した。場所は神室山東側、秋田・山形県境稜線上のP1,115.6mそばの平坦地がいい。2012年5月に神室山から藪漕ぎ混じりで尾根を下ってきた際、あまりのロケーションの良さに、いつかここにテン泊してみたいものだと思ったことがあったのだ。
週末好天の予報が出た。週の前半に降り続いた雪がまだ落ち着いておらず、長い距離を歩くのは厳しいだろう。神室山の眺めを楽しみにこのP1,115.6でイグルー泊して、翌日に登ったことのない軍沢岳に回ろう。前夜のそんな考えから、当日朝の出発は遅くなり、登山開始は7時過ぎになった。以前tooleさんに教えてもらった、役内大橋秋田側の駐車場に駐車。橋を渡り、道路脇の雪壁は上部にスノーシューを突き刺し、それを手掛かりにして這い上がる。今朝のものと思われるスノーシューの跡が付いているが、とりあえず自分の思った方向へ進み、小沢を渡って杉林の急斜面に取り付いた。重荷がきついが、雪面は安定している。杉林からブナ林に変わると先ほどのスノーシューのトレースと合流、以後ほとんど使わせていただいた。
標高約840mの尾根に上がると、いっそう歩き易くなった。新雪が降り積もったはずだが、それが風によってギュッと圧縮されてなのか、程よく硬い。米山氏がイグルー向きの雪として紹介している「かるかた雪」とは、このような雪質のことを言うのだろう。
P1,035に上がると、左手の支尾根からスノーシューとスキーのトレースが合流した。右手には真っ白い神室山が展開している。以後は右に神室、左に虎毛の巨体を眺めながらの、楽しい広尾根トレッキングが続く。
青空が広がって風も無い。そして何よりとても歩き易い。こんなチャンスは滅多にない。イグルー作りよりも神室山登頂を優先しよう。P1,115.6にお昼までに着けば、そこから往復5時間見ればいいだろう。先行者のトレースも正直心強かった。
秋田・山形県境稜線上のP1,154に立つと、神室山から天狗〜小又にかけてのパノラマが広がった。P1,154から一旦下る所でスノーシューが壊れたが想定内、ワカンに履き替える。ワカンでも沈み込みは少なく、これで十分だ。P1,115.6手前の平坦地に泊り装備をデポ、いくらか軽くなって神室山へ向かう。
P951の次のピークを越えてから、尾根は細く、傾斜も増してくる。軽やかな足取りの若い方とスライド、次に朝4時に出発したというソロの方とスライド、トレースのお礼を申し述べる。さすがに風が強くなってきた。P1,160からは特に左側が落ちたらヤバイ細い稜線が続くが、雪が程よく柔らかく、恐怖感は無い。傾斜の強い箇所を前に、下りのことも考えてアイゼンに履き替える。暖かくて素手でも平気だ。やがて主稜線に上がれば、山頂も近い。
神室山頂には15分程も留まっただろうか。白い山々の姿を目に焼き付け、途中何度も立ち止まって写真を撮りながら、夕暮れ迫る幕営地には予定通り17時に着いた。
夜中の地震は長く感じた。上から落ちてくる物は無く、雪崩も心配無い所なので不安は無かったが、家族からのメールで最大震度6強と知り、大きな被害が出ているのではと懸念した。
ツェルト脇に雪壁を作れなかったこともあり、風には一晩中煽られて、一睡もできなかった。まあ、普段から眠りの質が良くないので、これは仕方がない。イグルーを作れていたら、風の音を気にせずに眠れていたかもしれない。寒気は弱く、息子からの還暦祝いも利用して購入したダウンシュラフは暖かくて、カイロはすぐに必要なくなった。
翌朝も冷え込みは無く、まるでG.Wの頃のような雰囲気だった。11時には下山しなければならなかった。寝不足・体力不足なので軍沢岳へ登るのは次の機会に回し、山々を眺めながら、往路をのんびりと下っていった。
主脈縦走路を別とすれば、このルートは神室連峰でもナンバーワン、秋田周辺でも屈指の名ルートと言えるのではないだろうか。もちろん雪のある時期に限られる。その雪が味方になってくれて、チャンスを生かすことができたことは、幸運と言うしかない。
コメント
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さすがカマダムさんとしか言いようがありません。
羨ましすぎですけど、わたしにはとても真似できそうもありません。
息子さんから還暦祝いでダウンシュラフ購入ですか。
最高に親孝行な息子さんですね。
親の心子知らずとか言いますけど、
カマダム家では、
親の心、子にバレバレ
還暦祝いを山に使うのはバレバレでしたでしょうね
これまでは化繊のシュラフで、嵩張るだけで暖かいと感じることはなかったのですが、
さすがにダウンは違いますね。私には高価だったので10回以上は冬山に泊らないと
羽後朝日〜和賀岳も指折りの一つだと思いますが、こちらもお勧めです!
kamadamさん
夢のルートを歩かれましたね。
とてもとても羨ましいです。
白く美しい神室の山々の写真を見せて頂けて幸せです。
夜中の地震は本当にビックリでしたね。
今後の余震にも注意しつつ、雪山シーズン楽しんでください(^^)
次回、軍沢岳レコを期待しています♥
waqueさん、おはようございます。仙台はかなり揺れたようですが、大事なかったでしょうか。
今回は天候に加え、雪質が最適でした。もちろんトレースにも助けられました。
waqueさんペアもぜひ
私が幕営した場所(tooleさんが秘密のテラスと呼ぶP1,115.6の東側平坦地)もいいですよ。
羽後朝日〜和賀岳の時に幕営した場所よりも山深く落ち着いた雰囲気です。
お二人の宮城・山形県境稜線レコも見てみたいなあ
こんにちは
神室東稜ルート、やはり素晴らしいですね。
特に1,154以降の長大な展望ルートは感動ものです。
順光で雪のコンディションも良く、すぐにも飛んで行きたい気分です。
地形図では中盤(1,000Mからの登り返し)から細尾根が続きますが、写真では比較的安定した雪稜に見えますね。
今シーズンは積雪が早く、1、2度雨が有れば雪も締まりますね。
素晴らしいレコ有難うございました。
tonkaraさん、コメントありがとうございます。
この山域はなかなか好天になることが少ないのですが、本当にラッキーでした。
3月の頃のような表面が凍った雪面ではなく、1月の頃のようなフカフカの新雪でもなく、最適な雪質でした。踏み抜きはクラストしている山頂直下くらいでした。トレースに関係なく。雪国に住んでいても、山の上の雪質を予測するには、まだまだ経験不足です。
県境なので自宅からは遠いですが、標高500m程の国道からすぐに尾根に取り付くので、意外にアプローチに大変さはないですね。P1,154や軍沢岳はもっと人気が出そうな感じがします。
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